僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮)   作:楽園の主

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あれ?ポイントあってる?………まぁいいや。
そんな気持ちです。
オリ主はほぼ出ません。最後の方にちょろんと出ます。

2021.6/20 加筆修正
試合中、及び試合後、尾白の意識があるようにしました。


第19話 ─騎馬戦決着─

「おッ…お…おおォォォ…!!!」

「爆豪落ち着けって!!冷静になんなきゃポイント取り返せねぇぞ!!」

 

ポイントをB組の男に取られた爆豪チーム。

予想通り、爆豪は怒りに打ち震えていた。

途端、爆豪は気合を入れるように手と手を合わせる。

片方の手は開き、片方の手は握って。

普通ならばパァン、と乾いた音がするのだろうが、彼の場合、爆発音が響いた。

 

「ッし進め切島…俺は今…すこぶる冷静だ…!!」

「頼むぞマジで!」

 

怒りが表情に出ていながら冷静という発言。矛盾している気もするが彼の怒りを抑えられる者はここにはいない。

騎馬の3人は怒りながらも取り返せることを願うばかりだ。

取り返すためにポイントを取ったチームを追う。

そして爆破して取り返すつもりだった。

敵チームを目の前まで捉える。そして爆破しようとしたその時だった。

 

「へえ、すごい!いい"個性"だね!」

 

そう言いながら、その男が爆豪を爆破した。爆破しようとするつもりが爆破されたのだ。

もちろん、騎馬崩しになってはいないため大きく崩れることは無かったが。

 

「俺の…!?」

「爆豪!お前もダダ被りか!?」

 

切島がそう言う。B組の鉄哲徹鐵が自身と似た"個性"だったが故、既視感を覚えたのだろう。

 

「クソがッ!!」

 

そう言いながら、爆豪は反撃。右腕を大きく振るい、相手に当たると同時に爆破。

B組の男は腕でガードしているとはいえ、爆破をまともに受けた。

しかし。

 

「僕の方がいいけどさ」

 

ダメージを全く受けていなかった。

今度は体を硬化させて爆発を耐えたのだ。

 

「んなッ!!俺の!?また被っ…」

「ちげぇ」

 

"個性"が被っている人間がまた居たのか、と切島は驚くがそれを爆豪は撤回する。

 

「こいつ…コピーしやがった」

「正解!まぁバカでも分かるよね」

 

B組、物間 寧人。"個性"コピー。

触れた者の"個性"を触れてから5分間使い放題。

コピーできる数に制限はないが、同時に2つ以上は使えない。

ハチマキを奪う過程で爆豪と切島に触れていたという訳だ。

"個性"がわかったところで、もう一度突撃しようとした爆豪チーム。

しかし、横から白いドロドロとした液体が突然現れ、物間チームと爆豪チームは分断された。

 

「凡戸!仕掛けてきたな」

「物間!あとは逃げ切るだけだ!このポイントなら確実に4位以内に入れる!」

 

そう言って物間チームは逃げる。

 

「追え!!」

 

爆豪はそれを逃がさないように騎馬に指示。しかし。

 

「固まった!すげぇ!動けねえ!」

「待って動かないで!アタシの酸で溶かすから!」

 

先程放たれた液体が切島の足にかかり、ボンドのように地面と彼の足を接着したのだ。

それを芦戸が"個性"で溶かす。しかし、切島の足も同時に溶かさないように慎重に溶かしていた。

物間チームが、遠ざかる。途中、彼は振り向いた。

 

「あ、怒らないでね。煽ったのは君だろ?ほら…宣誓でなんて言ってたっけあの恥ずかしいヤツ…えーっと…」

 

恥ずかしいヤツを強調して言ったあと、わざとらしく考えるような素振りを見せた。

 

「まぁいいや!おつかれ!」

 

爽やかに笑顔を見せて去っていった。

取り残される爆豪チーム。彼は、呟く。

 

「1位だ…ただの1位じゃねぇ…俺が取るのは…完膚無きまでの1位だ…!!!」

 

彼の怒りは、轟々と燃え盛る炎のように強くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残り時間約1分!!轟、フィールドを緑谷チームとサシ仕様にし、そしてあっちゅー間に1000万奪取!!」

 

あれからしばらく時間が経ち、観客は緑谷チームと轟チームの動向に注目していた。

轟は周囲のチームを凍らせた後、氷壁によって緑谷チームと1:1になるように比較的狭目の円形フィールドを作っていた。

そして、緑谷チームから1000万をすぐに奪取、となるかと思われた。

 

「とか思ってたよ5分前までは!!緑谷なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!」

 

観客もすぐに奪取されるかと思っていた。

しかしその思いを裏切り、緑谷はポイントを保持し続けていた。

上鳴の放電、八百万の創造による牽制は常闇による黒影で防御、飯田のフィジカルも長く逃げる訳ではなく、攻撃をさばききっているため大きな問題ではない。

そして、轟の氷結はと言うと。

 

「…」

「キープ!」

 

轟チームが動きを見せた途端、キープの言葉と共に轟チームの左側へと移動する。

常に距離を置いて左側に。轟が左の炎を使わないことは緑谷も分かっていた。

左側にいることで、轟が最短で緑谷チームを氷結させようにも騎馬である飯田が引っかかってしまうのだ。

そして緑谷チームとしても不動を貫いている訳ではなく、動いているなら無闇な氷結は轟自身の首を絞めることとなる。

残り1分。轟は焦り始めていた。その時、飯田が話し始めた。

 

「皆。残り1分程…この後俺は使えなくなる。頼んだぞ」

「飯田…?」

「しっかり捕まっていろ。奪れよ!轟くん!!」

 

そういった後、飯田はぐっ、と走り出す体勢を取る。

瞬間、飯田の足のエンジン機構から、青い炎を吹き出した。

 

「トルクオーバー!!」

 

目の前の飯田は走り出そうとしている。

その言葉が放たれた瞬間、下した判断は。

 

「キー───」

 

キープ、とその言葉を放とうとしたその時だった。

 

─レシプロバースト─

 

目の前の轟チームの姿が通り過ぎ、言葉を言い終わる前に緑谷チームを通り過ぎていた。

轟が、緑谷の頭に付ける1000万を奪って。

 

「───は?」

 

緑谷は一瞬何が起きたか理解出来なかった。

実況のプレゼントマイクや観客も何が起きたか分からないが飯田が超加速を見せたことと1000万のポイントが動いたことに熱狂していた。

飯田が見せた"レシプロバースト"。

トルクと回転数を無理矢理上げて爆発力を産んだ技。

短時間超スピードを得る代わりに、しばらくするとエンストを起こして"個性"が使えなくなるという欠点がある。

クラスメイトの誰にも言っていない、言わば裏技だった。

 

「言ったろ、緑谷くん」

 

ライン際の攻防、制したのは───

 

「君に挑戦すると!!」

 

飯田だった。逆転、轟が1000万を奪い取った。

緑谷、急転直下の0ポイント。

 

「突っ込んで!!」

 

必死の緑谷の指示。

 

「上鳴がいる以上攻めでは不利だ!ほかのポイントを狙いに行く方が堅実では!?」

 

常闇の意見だった。たとえ飯田による速度上昇がないとしても、轟の氷結に八百万の創造、そして上鳴の放電、それによる黒影の弱体化。

相手の布陣が強固すぎる、という考えだ。

 

「ダメだ!!」

 

緑谷はそれを一蹴。

 

「ポイントの散り方を把握出来てない!!ここしかない!!」

 

たしかに、常闇の意見は堅実だ。しかし、それは誰が何ポイント持ってるかわかっていればの話。

残り1分弱。その時間で氷壁を破壊し、ほかのポイントを取りに行くのは無謀。時間が足りない。

故に、取り返すという方法を取らざるを得ないのだ。

 

「よっしゃ!」

 

いち早く意見に同意したのは、麗日だった。

 

「取り返そうデクくん!絶対!!」

「麗日さん…」

 

緑谷は、思い出していた。過去の、3人の言葉を。

 

─私は絶対ヒーローになって、お金稼いで…父ちゃんと母ちゃんを楽させたげるんだ─

 

(そうだ…)

 

─貴方の立場、利用させてください!─

 

(自分だけじゃない…)

 

─託したぞ、緑谷─

 

(僕を信用してくれた!3人の思いを!!僕は今!!)

 

騎馬は進む。轟の元へ。轟チームの足であった飯田は"個性"不能。

速度は麗日がこちらの重さを軽減している分こちらが有利。

緑谷は、轟に肉薄した。

 

(背負ってんだ────)

 

この試合で初めて、"個性"を使って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど、轟が1000万を奪取した少しあと。

外でもポイントが動いていた。

 

「待て!待てって!!」

 

切島のそう叫ぶ言葉が聞こえる。その言葉を、物間は聞いていた。

彼は思っている。騎馬が後ろから追ってきているだけだと。

 

「しつこいなぁ…その粘着質はヒーロー以前に人として…」

「勝手すな爆豪!!」

 

振り向いた頃には、目の前に爆豪のみが迫っていた。

まさか爆豪が騎馬から離れているとは思っていなかったのだ。

 

「円場!防壁!!」

「っしゃあ!!」

 

途端、物間の騎馬の前に立っていた円場と呼ばれた男は爆豪の方に向けてフッ、と息を吐いた。

すると爆豪は見えない壁にぶつかったかのように突然止まった。

 

「ハハ!見えない壁だ!ざまァみろ!」

 

B組円場 硬成。"個性"空気凝固。

空気を固めて壁や足場に。肺活量で大きさが決まる。

爆豪をその空気の壁で防ぎ、そのまま彼に背を向けて逃げようとしたその時。

爆豪はその空気の壁を爆破で無理矢理破壊して手を伸ばし、物間の首にかかるポイントのハチマキを2本取り返した。

 

「取られた!2本!」

 

3本所持していたハチマキのうち、2本を取られる。

その瞬間、物間チームはポイントが表示されたモニターを見る。

1位は緑谷からポイントを奪った轟の1000万1095ポイント。

2位は鉄哲チーム、1125ポイント。

3位がポイント奪取で爆豪が680ポイント。

4位が物間チーム、ポイントを取られて665ポイント。

5位が拳藤チームで625ポイント。

6位が鱗チームで115ポイント。

その他は全て0ポイントとなっている。

4位までが勝ち残り、次の種目に進むことが出来ることになるため、まだ圏内。

そして、拳藤チームは轟の氷結により行動不能。

残り時間とチームのばらつきから考えれば。

 

「この1本を死守すれば、確実に…!」

 

以前、逃げの姿勢を辞めないつもりであった。

円場の"個性"を物間はコピーし、2人で防壁を作ってほかのチームからの攻撃を防ぎつつ逃げていた。

そして、奪い返した爆豪チームはと言うと。

 

「跳ぶ時は言えってば!!」

「でもこれで通過は確実…」

 

爆豪チームの騎馬の3人も残り時間を考えてここからは強気に攻めないでも大丈夫だと考えた。

しかし。

 

「まだだ!!」

 

爆豪の声。強い声でそう言った。彼が目指すのは完膚無きまでの1位。

自分たちのポイントも物間チームから取り返して1000万ポイントを取りに行く。

それを3人に伝えた。

 

「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねぇ!!行け!!!」

 

その言葉に、3人は奮起した。

 

「醤油顔ォ!テープ!!」

「瀬呂なっと!!」

 

騎馬の左翼にいた瀬呂がテープを物間チームの方へと射出。彼らの左前方の方へと引っ付いた。

 

「!?」

「外れだ」

 

物間はそれに動かずとも当たらなかった。

 

「黒目!進行方向に弱め溶解液!」

「あ・し・ど・み・な!」

 

右翼にいる芦戸が弱めで多少粘性のある溶解液を進行方向に出した。

 

(爆豪少年!君は"言われずとも"非常に良くわかっているんだろう。常にトップを狙う者と、そうでない者の、その差を)

 

観客席で見ていたオールマイトは、彼を見ながら、そう考えた。

そして、場では爆豪が後ろへ向けて爆破。

溶解液の上を爆破の推進力と瀬呂のテープを巻きとる力で滑るように走り、物間の真隣まで一瞬で詰め寄った。

物間達の作戦は確かに合理的だった。しかし、惜しむ点は一つ。

爆豪が理解していたであろう、常にトップを狙う者とそう出ない者の差。そして、彼のそれに対する執念。

それを、考慮しなかったことである。

 

「爆豪!!容赦なしぃぃ!!!」

 

円場の空気の壁を破壊し、物間のコピーした爆破の攻撃を自身の爆破で押しのけて爆豪はポイントを奪い返した。

 

「次!!デクと轟んとこだ!!」

 

残り時間、20秒。爆豪は2チームのところへと向かう。

一方、彼らは。

 

(どの道、当てはしない!!)

 

そう思いながら、緑谷は"個性"を発動して轟へとその手をむける。

その時、過去の経験を思い出していた。

USJで敵連合がやってきた時。脳無に対して"個性"を発動して攻撃した。

初めて人に対して"個性"を発動した時だ。

奇跡的に、制御ができていたのだ。

 

(空を切るように!防御を崩す!)

 

轟の防御をしようとしている左手。少しだけ炎を纏ったそれを"個性"を発動した力で払う。

当たりはしない、それでも衝撃で払うことが出来た。

 

(左…!俺は何を…!?)

 

緑谷の"個性"に何かを感じとったのか、何故か己の制約を破って無意識に左の炎を使おうとしていた。

それを緑谷は払って無効にはしたが。動揺。大きな隙が轟に出来た。

 

(痛むけど…壊れてない!)

 

彼は制御出来たことをオールマイトに伝えた時。彼はイメージが大切だと言っていた。

故に、緑谷は体育祭が始まるまでの2週間。ずっとイメージを反芻していたのだ。

実際それで、制御はできた。

 

(ポイントが見えないように裏返しにしてるけど!1000万は最後に取った…!)

 

そして、彼は手を伸ばす。轟の首にかけられたハチマキに。

 

「これだァァァああ!!!」

 

轟が持つハチマキを1つ、奪取。緑谷、執念の奪還。再び1位に舞い戻った。

 

「取った…取ったぁぁぁああ!!」

 

かに、思われた。

 

「待ってください!そのハチマキ…違いませんか!?」

 

発目の言葉に、ハッとしてポイントを確認する。

そこには、60ポイント、と書かれていた。

万が一に具えて轟は場所を変えていたのだ。

やられた、というわけだ。

 

「甘いですわ!緑谷さん!」

「轟くん!しっかりしたまえ、危なかったぞ!」

 

60ポイントじゃもちろん圏外。

残り時間は10秒ほど。

 

「もう1回突っ込んで!!」

 

再び緑谷は轟チームに肉薄。目の前まで捉える。

 

「常闇くん!」

「上鳴!」

 

お互い同時に指示を出した。常闇の黒影による攻撃を行いながら接近して行く。

轟としてももちろん抵抗しないわけはない。

上鳴の放電で黒影による攻撃を防御、さらに接近拒否。

 

 

轟は緑谷の攻撃を防ごうと構える。

瞬間、氷壁が爆破によって崩され、爆豪が飛来してきた。

 

「デクゥゥゥアア!!!」

 

第3勢力。爆豪は爆破により宙を舞い、来訪。空中でスピードを出すも一瞬、どちらが1000万を持ってるか、悩んだ。

轟はハチマキを裏に、緑谷は手にしていたからだ。

 

「麗日さん!」

「おっしゃぁ!!」

 

"個性"により、体重を軽減。緑谷は迫る。

 

「─くっ!」

「うぇい…」

 

轟チーム、飯田は走行不能、そしてこのタイミングで上鳴も放電できる電力を失っていた。

 

「ッ!!半分野郎ォォオオ!!」

 

爆豪は轟が1000万のハチマキを持ってると確信、彼も轟へと迫る。

 

「八百万!」

 

八百万から創造した鉄パイプを受け取り、それを氷結させ、迎撃体勢を取った。

 

「くぅぅうう!!」

 

緑谷の腕が、轟に伸びる。

 

「TIME UP!!!」

 

プレゼントマイクの、放送が響いた。試合終了。

爆豪は轟に到達前に試合終了となり、落下。

 

「爆豪!」

「平気かお前?」

「〜〜〜ッ!!!」

 

爆豪は落下した体勢のままガンガンと地面を叩き怒りか悔しさか。感情をぶつけていた。

そして、緑谷の腕は。轟には届かなかった。

 

「くっ…〜〜〜ッ!!」

 

伸ばされた腕は何も掴むことが出来ず、行き場を失ったように、悔しそうに握りしめてそう唸った。

放送によって、順位が発表される。

 

「1位!轟チーム!」

 

1位が轟チーム。1000万を所持していた圧倒的な1位だった。

 

「…」

「勝ちはしましたけど、薄氷を踏む思いでしたわ…」

「すまない、俺のせいで迷惑をかけた…!…」

「そんなこと…!飯田さんがいなければ私たちの勝利はなかったですわ!」

「うぇいうぇい……」

 

上鳴は相変わらず戻らず、後ろでうぇいうぇいしていた。

 

「2位!爆豪チーム!」

 

2位が爆豪チーム。物間からポイントを奪い返し、且つ、物間の持っていたポイントを奪って2位。

 

「あー惜しかったなーもう少しだったのに…」

「でも、2位なら上々だって。結果オーライ!」

「そんなこと思うかよ。…あいつが。」

「…まぁ、1位じゃなきゃ納得いかねぇだろうな…」

「だァァァァッ!!!」

 

しばらく経った今も、座ってはいるものの激しい感情を口から吐き出していた。

 

「3位!鉄て…あれェ!?心操チーム!?いつの間に逆転してたんだおい!?」

 

3位が心操チーム。終盤まで0ポイントだったにも関わらず、最後の最後で3位に上がったのだ。

作戦通り、というわけだ。

 

「よし。香月と心操の作戦勝ちだな。俺、何もしてないけど…」

「安心しろ、俺も何もしてない。ナイスだ、心操」

「……」

「あれ、今…何を…?」

 

庄田は何が起こっているかわからず、周囲をキョロキョロと見渡していた。

放送が流れる中、緑谷は申し訳なさそうに騎馬をしてくれた3人の方を向いていた。

俯きながら、言葉を選ぶ。

 

「あの…ごめん…本当に…」

 

なんと言ったらいいのか。託してくれた3人に申し訳なくて、言葉が出てこなかった。

しかし、そう言われた発目と麗日は、方や溜息をつきながら、片や嬉しそうに常闇の方を指さす。

ハッとして緑谷は香月の方を向く。

 

「…お前の初撃から、轟は明らかな動揺を見せた。そして最後の瞬間、轟が緑谷に集中しているからこそ、俺もハチマキを狙った。1000万取れれば本意だったが、そう上手くはいかないな」

 

そう言いながら、香月は手に持つそれを緑谷に手渡した。

 

「それでも1本。警戒が薄くなっていた頭の方を取った。…緑谷が追い込み、生み出した。轟の隙だ」

 

そこには、610ポイントと書かれたハチマキがあった。

緑谷が取った60ポイントと総計して。

4位に、滑り込んだ。

 

「4位!緑谷チーム!以上の四組が最終種目に進出だ!!」

 

感動か、安心か。途端に緑谷は膝をついて天を仰いで泣き始めた。

まるで目から噴水のように吹き出すそれはもはやギャグ漫画である。

その横で喜ぶ麗日。

2人の様子を常闇はフッ、と面白そうに見ていた。

発目はと言うと順位に執着がないのか自身の発明品をカバンにしまったり、修理をしたり、改善点を考えていたりしたが。

そんな緑谷達を尻目に、轟は一人考えていた。

 

(左は使わねぇ。そう決めてたはずなのに…気圧された)

 

緑谷の"個性"発動の瞬間、轟は気圧されて左を使いそうになってしまった。

 

「いけねぇ、これじゃ…親父の思い通りじゃねぇか…」

 

そう、重く呟いた。

 

「1時間ほど休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!オイイレイザーヘッド飯行こうぜ!」

「寝る」

「ヒュゥ!」

 

そこまで放送で観客と生徒共に伝えられた。

観客もざわざわと話をしながらスタジアムから出ていく。

スタジアムの外には屋台があるらしく、祭りのように活気があるらしい。

そこでお昼ご飯を求める一般客も多いそう。

生徒達もお昼ご飯を求めてスタジアムから出ていく。

各々のメンバーで会話をしながら。

 

「一体…何が起きたんだ…?いつの間にか0ポイントになって終わったぞ…」

 

そう呟くのは鉄哲だ。騎馬戦の終盤、最後の最後までポイントを保持して2、3位に食らいついていた。

しかし、最後の瞬間。

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

カウントダウンが始まる数秒前。

 

「もうすぐ終わりだ!!気ィ抜くなよ!!」

 

鉄哲チームはポイントを保持して場を立ち回っていた。他のチームから狙われつつも、骨抜の沼などで近寄らせず、ポイントをキープしていたのだ。

その時。一瞬の隙を縫って、後ろに彼らは現れた。

そして、何かが聞こえた。鉄哲はそれに気づけなかった。

 

「あァ!?」

 

瞬間、騎馬の三人の足が止まった。

 

「なんだ!?どうしたお前ら!?」

「鉄哲」

「ッ!!あァ!?なんっ…………」

 

誰かの声を聞き、それに返答したところで、彼の意識は途切れていた。

 

「さすがだ。心操」

「いやこれ対人だとすごく強いな…」

 

香月はそう呟き、尾白は眉をひそめてそう言った。

騎馬の3人は鉄哲のハチマキを心操が取れるよう、近づく。

そして心操は全てをハチマキを奪った。

直後、Time upの声が場内に響き渡った。

 

 

 

 

───────

 

 

 

「お前らが足を止めたと思ったら誰かに呼ばれて、んで、気づけば試合が終わって……んごぉぉお!納得いかねぇぇええ!!」

 

悔しさもあるが、何が起きたのかという疑問も大きかった。

 

「悔しいわ…三奈ちゃん、おめでとう」

 

そう言うのは蛙吹だ。彼女は峰田のチームに属していた。

本来ならば峰田のチームなどお断りなのだが、作戦を聞いてチームを組んだ。

無敵かと思われた作戦だったが、いつの間にか峰田はポイントを誰かに取られ、0ポイントとなった。

その後、攻めようにも轟に凍らせられて行動不能にされてそのまま試合を終えてしまったのだ。

その悔しさを覚えつつも、最終種目に進めた芦戸のことを賞賛する。

 

「んー嬉しいけど…爆豪は轟の氷結対策で私入れてくれただけで、実力見あってるかわかんないよー」

 

そんなことを呟く芦戸。騎馬にいた瀬呂と切島に比べて活躍が少なかったが故に不安なのだろうか。

 

「飯田くんあんな超必持ってたのズルいや!」

「ず、ズルとはなんだ!あれはただの誤った使用法だ!」

 

麗日が現れて走るような仕草をしながらそう飯田に話しかけた。

ズルだと言う言葉に反応して返答する。

 

「どうにも緑谷くんには張り合いたくてな」

「男のアレだな〜っ!…ていうかそのデクくんは…?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すも、彼の姿は見えない。

 

「どこだ?」

 

彼はとある男と違う場所にいた。喧騒は聞こえるが、2人で話せる場所に。

 

「話って…なに…?」

 

轟に話があると言われて連れてこられたのだ。

辺りの騒がしさとは別に、ここはとても静かだった。

また、ある場所では。

 

「よっ。久しぶりだな!お茶しよ、エンデヴァー」

「オールマイト…!」

 

どこかの階段を下るエンデヴァーにオールマイトが話しかけた。

エンデヴァーとオールマイト。エンデヴァーの息子とオールマイトの後継者。

同じ時、別の場所。奇しくも似通った2人の邂逅。

お互い、何の話があるのだろうか。




最初は緑谷くんのチームだったのですがある理由で心操チームに。
もしかしたら常闇って書くところ香月になってるかもしれません。
確認するのもう面倒なので見つけたら教えてくださいね。(怠け)
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