僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮)   作:楽園の主

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お久しぶりですね。東方の方を進めていたのでしばらく書いていませんでしたが、"ヒロアカがもう終わるぞ"ってことでまた書きたくなって帰ってきました。
久しぶりすぎて"??"って感じでしたがとりあえず書いたので置いておきます。

※タイトル変更しました。なんかクラス対抗みたいになってたので。


第26話 ━香月 VS 鉄哲━

「とりあえず歩けるくらいには治癒を進めたよ」

 

リカバリーガールが緑谷にそう告げる。

彼女の治癒はあくまで自然治癒を早める効果。体力の消費もあるため、それを鑑みて動ける程度に留めたのだ。

 

「ありがとうございます……。」

 

息を切らしながら、ちら、と自分の手を見る。

 

「それは短期間で酷使しまくった報いね。歪んじまった右手を戒めにするんだね。」

 

高校生のものとは思えない、痛々しい傷跡と歪んでしまった手。

 

「こういう怪我は今後もう治癒しない。」

 

驚いた顔をする緑谷と痩せ細った男性。

 

「こんな破滅的な方法じゃなくて……この子のやれる別の方法を模索しなさい。」

 

それを最後に、2人はそこを立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所は代わり、舞台の上。

 

「冷たい体に熱い漢気ィ!相手の攻撃をものともしねェ!?ヒーロー科!鉄哲 徹鐵!!

 

VS!

 

"個性"は未だにほぼ使わず!そろそろ見せてもいいんじゃねぇか!?オーディエンスも待ちかねてるぜ!ヒーロー科!香月 玲!!」

 

ボッ、とスタジアムの装飾に火が灯り、解説のプレゼントマイクの声が響く。

 

「勝ち上がったのはB組、いいねぇ、熱い展開だ。」

「A組だけが注目されてっけど俺らだって負けてねェぞ!」

「理解しているとも。我々の差とは注目度と、あとは真に敵を目の前にしたかどうかでしかない。B組を見下すつもりも、侮るつもりもない。」

 

スタジアム内で2人に言葉が交わされる。

ふと、香月の目線の先にA組が。ここまで声が届いている訳では無いが、頑張れ、と声援などが送られている気がした。

それにくる、と指で丸を描いて返した。

実際はと言うと。

 

「あ、香月気付いた。頑張れー!」

「おーあいつファンサみたいなことすんのな。」

「言うほどファンサか?」

 

声援ももちろんあるが……。

 

「そろそろ"個性"使えー!!」

「むしろそろそろボコボコに負けろー!!」

「鉄哲!!顎狙え顎!!」

「昨日の敵は今日の友、ってか?」

 

野次やむしろ鉄哲を応援する声もあった。

そして少しの間があったあと。

 

《STARTッ!!》

 

開始の合図。同時に鉄哲は走り始めた。

鉄哲の"個性"は鉄になる個性だ。肉弾戦に偏る。

それも硬くなっての殴打、もしくは爪などならば切り裂くことは出来るか、と言うくらいなのが現状。

しかし、そのタフネスは初戦を見れば言うまでもない。

香月は遠距離攻撃手段を持つ。それは障害物レースを見て鉄哲も知っていた。

近距離になれば基本的に格闘術を使う。

だからこそ、鉄哲は自分の距離になれば、というわけだ。

最も───

 

「行くぞぉぉぉ!!」

 

そこまで鉄哲自身は考えついていないが。

 

「さて、どうするかなぁ。」

 

対する香月はうーむ、と考えながら足を止めていた。

 

「考えてる場合かァ!?」

 

その頃にはもう鉄哲も目の前まで来ており、拳を握っていた。

顔面を狙ったストレートパンチ。性格の出る一手、しかし香月はこれを回避。

普通ならここでカウンターでもするところだが鉄哲の"個性"上、普通に殴れば傷つくのは香月だ。

そこで。

 

「おわぁ!?」

 

勢いの着いた鉄哲の服を引っ張り、体勢を崩させ、香月自身はそのまま大きく跳んで距離をとった。

体勢を立て直して再び鉄哲は突撃。それに対し、彼は左手を開いた状態で前へと突き出す。

 

─ガァンッ!─

《おぉ!A組香月ようやく"個性"を見せ始めたぞォ!衝撃波?か?で接近拒否ィ!》

 

至近距離に寄ったところを、"個性"で何かを破裂させたような衝撃を発生させて鉄哲を下がらせ、自分も衝撃で後ろへと下がった。

本来なら大きく鉄哲を吹き飛ばすつもりだったのだろうが、そこは鉄哲。衝撃波を食らって金属音を響かせたものの踏ん張ってほとんど下がらなかった。

 

「効かねぇぞォ!!」

 

瞬時に前方へステップし、香月に肉薄。逆袈裟を斬るように腕を振るう鉄哲。香月はそれを体勢を斜め下へ下げて回避。

 

「おぉ、さすがだな。ほとんど下がらんか。」

「余裕ッ!かましてんじゃ!ねぇぞ!!」

 

鉄化して攻め続ける鉄哲。左フック、右下段蹴り、そのまま回った勢いで右ストレート、左回し蹴り──

様々な攻撃を繰り出すもそれを最小限の動きで香月は避け続けた。

 

(全ッ然当たんねぇ!!なんだ、コイツッ!!)

 

視線は鉄哲から外さず、その場で回避を続ける。

目線は鉄哲と合わせており、攻撃を細かく見ているようには見えない。

大きくストレートを放つ鉄哲の腕を避け、その隙に服を掴んで香月は彼を投げ飛ばす。

 

(当たんねぇ……そういう"個性"か!?)

 

香月のトーナメント初戦、尾白戦でも彼は卓越した回避性能を見せた。

今、鉄哲自身もその場に立たされてわかった。

彼は見てから避けているのではない、と。

だからこそ、そういう類の"個性"かと考えた。

その場ですぐに考えついたのは、相手の思考を読む、などだ。

実際、それに近しいことをできるプロヒーローもいる。

 

「いや、違うよ。」

 

まさに考えていたことを、それこそ思考を読んだかのように、香月は考えに返事をした。

 

「大方、"個性"による回避かと思ったわけだろう。否定させてもらうよ、今の私の回避性能に"個性"はほぼ関与していない。」

 

ほぼ、というのは相対する相手によっては肉体強化を行うからだろうか。

どちらにせよ今回、肉体強化を施しているか、というのは不明だ。

 

「予測だよ。」

「予測?」

「ああ。鉄哲、君は方向指示器をつけた車を見て、どう通るかは大まかに予測できるだろう?」

 

左右どちらかの方向指示器が点滅していれば、どちらに曲がり、自身のいる道の状況であればどういうルートを通るか。

異常な状況を除けば大体の人はわかるだろう。

ある程度成長を経ていれば、深く考えなくとも大まかな予測は可能だろう。

 

「それと同じだ。」

 

鉄哲のどちらの腕が構えられているか、目線はどこにあるか。一手前はどう攻撃してきて、その後動かしやすく、力が乗りやすい手足はどれか。それらを総合して予測を立て、回避を行っているというわけだ。

 

「あとはまぁ、君だからというのもあるな。」

「俺だから?どういうことだ?」

「はは、わかりやすいからさ。」

「てめェバカにしてんのか!!」

「いや、君の"個性"上、打撃を使うしかないだろう?なら狙う場所は限られてくる。」

 

す、と鉄哲の腕を指を指して告げる香月。確かにそうか、と鉄哲は頷く。

鉄哲の"個性"は鉄化。自身を鉄に変えることが出来るものの、その特性上、"個性"のみでの遠距離攻撃は不可能だ。

もちろん、石を投げたりなどをすれば可能ではあるが。

つまり、狙うとしたら顎や鳩尾などの急所、体側などになるだろう。

 

「香月、だったな。確かに"それ"はスゲェ。でもよ!攻撃してこねぇってことは、そういうことだろ!」

 

拳で胸を叩く鉄哲。ドン、という音ではなく、鉄化しているが故にゴォン、と金属音を響かせた。

回避するのみで攻撃したのは衝撃波のみ。

つまり鉄化した鉄哲には有効打がないのだろう、と鉄哲は考えた。

 

「さて、どうかな。……来な。」

 

ちょいちょい、と挑発するように人差し指を動かす。

 

「へッ!やってみやがれ!!」

 

再び突撃する鉄哲。香月は一歩下がり、人差し指を彼に向ける。

鉄哲は鉄化し、防御する姿勢を見せない。

切島もそうだが、自身を堅固にする以上、一定以下の攻撃ならば無視して突っ込めるのは彼らの強みだ。

しかし香月はその指先をすい、とあらぬ方向へと向けてレーザーを放った。

放たれたそれは真っ直ぐ進み、急角度をつけて鉄哲を狙った。

 

─カァン!─

「ぬ──」

 

側頭部にあたり、ダメージは無いものの体勢が少しだけ崩れる鉄哲。

しかしその程度ならば踏ん張れば済む話。足を踏み締め、体勢を戻す。すると。

 

「なッ───」

 

香月の背後にはいくつかの光球が存在していた。

数にしては6つ。

 

「会話するってことは相手に準備する時間与えてるってことだ、鉄哲。」

 

挙げていた手をす、と下ろし、鉄哲へと向ける。光球はレーザーを対象へ向けて放つ。

鉄哲は地を踏み締め、腕をクロスして全力で鉄化した。

 

《おおっとォ!!A組香月!!ようやく"個性"らしい技使い始めたぜぇ!!騎馬戦では目立たず、1回戦では使わず!ようやく見所だァ!!》

 

鉄哲にレーザーは当たり、金属音を奏でてあらぬ方へと飛んでいく。

そのいくつかは、観客席へ。セメントスは"個性"を発動し、それを防ごうとする。

 

「おっと。」

 

向けた手を上へ向けるとレーザーは急に曲がり、コンクリートの壁に当たることなく真上へと進路を変えた。観客席へと飛んでいくのが見えたからだろうか。

鉄哲はその一瞬を見逃さない。

レーザーの先を見て、進路を変えた。鉄哲から目線が離れた瞬間だ。

放されたレーザーは止んでいる。時間を与えなければ今の攻撃は来ない。

鉄哲は鉄化したまま突撃する。

 

「まぁ──」

 

鉄哲は香月のすこし前まで走り、気付く。

 

「目線を外せば来てくれるよな。」

 

自身を挟み込むように、先程の光球が出現していたことを。

数はひとつずつで合計2つ。しかしながらそれは1つから大量の光弾を放った。

再び鉄化して踏ん張り、多数の攻撃を再び耐える。

 

(用意してたヤツ全部撃った訳じゃねぇのか!)

 

ダメージこそほぼないが、左右から攻撃されると体勢が崩れる。再び、踏ん張って耐える。

左右の攻撃が止むが先か、それが先か。次は再び前からだ。

先程のレーザーとは違い、小さな破裂を伴う光弾だった。

鉄化した鉄哲にはただ自身の体勢を少し崩させるだけに留まる威力とはいえ嵐のように出されては動けやしない。

さらに彼は手を前で合わせると、鉄哲を挟むように衝撃が発生する。両側から全身を強打。

続けて手を前に衝撃波を放って鉄哲の体勢を崩させる。

腕を上から下へ、何かを振るうように振り下ろされる。

上から斧で叩き割るように、鉄槌を下すように鉄哲の頭部への攻撃。

鉄哲はその衝撃に、体を地に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

「あんな使い方もあんのか。」

「レーザー、ではなく固めて振ると。それこそ武器の延長線みてーな……。」

「やーほんと見る度に新しいのが見れんなアイツ。」

 

はは、と笑いながら瀬呂。

 

(動いてねェ……動いてっと使えねェのか?)

 

レーザーを使い始めてから彼は全く動いていない。

考える爆豪。自己でそれを違う、と否定。

USJの時に動きながら使っているのは見ていた。

範囲を広めたり、手数を増やすなら集中するために足を止めるのかもしれない。

軌道を変更したレーザーを見るに射程はかなり長い。

対抗策を練り続ける爆豪。

彼なりに香月のことは評価している。

故にこそ、ここで勝利し、自分は彼と戦うことになると確信めいたそれがあった。

 

「さすがにどちらにしろ苦戦しそうだな、爆豪!」

「うるせェ、黙って見てろ。」

 

爆豪は自身は勝利するのだと。幼なじみのそれとは一線を画すのだと。誰よりも差をつけて、頂点に登るのだと。

そのために、頭をフル回転させていた。

 

 

 

 

 

 

再びレーザーを多数、鉄哲に向けて集中砲火する香月。

 

「ウオオォォオオ!!」

 

そのレーザーを鉄化で受けながらも前進。警戒して踏ん張り続けるのも良いがこのままでは埒が明かない。

香月は"個性"を使い始めてから移動しておらず、そこまで離れていなかった。

近づいて距離は超近接、殴れる距離だ。

鉄哲は拳を握り、力を込めようとした。香月は既に拳を振り上げていた。

鉄哲は鉄化している。ただこの拳なんぞ、耐えて自分の攻撃を、カウンターを通してやる。

そう思って拳を握る。

 

「そう来てくれるよな。ほれッ!」

─バカァン!!─

「うぉお!?」

 

香月が鉄哲を殴ることはもちろんない。その拳は床に叩きつけられた。体勢が下がり、同時に鉄哲の拳を避けながらだ。

かと思えば、鉄哲の足元が爆ぜ、床ごと彼は上へと吹き飛ばされた。

間髪入れず、香月は跳躍。鉄哲の胴に足を引っ掛ける。

そして。

 

「ぬわぁ!」

 

鉄哲を蹴り飛ばした。勢いよく、真っ直ぐに場外へと吸い込まれ、ドッ、と土を跳ねさせながら落ちた。

勢いよく蹴り飛ばした彼に、損傷は全くない。

 

「鉄化した鉄哲を無傷で……?」

 

B組の人間が呟く。

確かに、空中で鉄の塊を斜め下へ真っ直ぐ蹴り飛ばすほどの強打であれば通常の人間の足など粉砕されてしまう。

また、その場合は躊躇なく蹴り飛ばせるものでもないだろう。

しかし彼は"音もなく"、容易に蹴り飛ばした。

皆へ向けてか、鉄哲へ向けてか、彼は答える。

 

「なんてことはない、足で投げただけさ。」

「鉄哲くん場外!!」

 

香月、勝利。準決勝進出。大きな歓声がスタジアムに響く。

 

「さすがのタフネスだったよ。次は場外のないルールで、やりあってみたいものだな。」

 

場外で立ち上がり、砂を払う鉄哲にそう言葉をなげかけた。

 

「……ハッ!望むところだ!!」

 

そうしてお互い、拍手を背に控え室へと戻っていく。

次の試合は、爆豪と常闇だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……?」

 

常闇が控え室に入ろうとした時、何者かの陰が見えた。

そういえば、香月はまだ帰ってきてなかったな、と思いながらドアノブに手をかける。

扉を開けば、そこには彼がいた。

椅子には腰掛けず、立ち上がり、片手で机に手をついて体を支えている。

もう片方の手で、頭を抱えながら。なにか、考えているのだろうか。

 

「香月、どうしたのだ。」

「……あー、んー、あァ。常闇か。……いや、なんでもない。わた……や、俺は戻るよ。試合、応援している。」

 

そう言って控え室を去っていった。

 

「……。」

 

違和感を感じたが、しばらくあとは試合。

また、後で声をかけてみよう、と考えながらもそれを一旦振り払った。

 




香月のこの先をどうしようか悩むところ。
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