僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮) 作:楽園の主
"序盤"個性"判断体力テストでヤオモモと違って武器使った時の記録が消されたのはなぜ?"と言ったところや
"なんで序盤から瘴気とか使わなかったの?"辺りの説明とかを軽くしました。
「お、香月!やっと使い始めたな!あと準決おめ!」
「うい、ありがとよ。」
瀬呂は試合から帰ってきた香月に労いの言葉をかけつつ、ほぼ使わなかったそれをようやくしっかりと使い始めたことに興奮していた。
「あ、緑谷。なんだまだズダボロじゃねぇか。」
「体力の問題もあって治癒はここまでしか出来なくて。」
それでも歩けて試合を見れるレベルまですぐに治せるというのはリカバリーガールさまさまだ。
どうやら試合を最初から見れていたらしく、レーザーがスゴいだの汎用性がどうだの興奮気味に会話を続けられた。
香月はほぼ聞き流した。
「はいはいありがとな。で、芦戸。俺は見ていなかったがどうだったんだ?」
「ダメだったよ〜!」
緑谷から視線を外し、芦戸に話しかけた。
芦戸はそれに悔しそうに腕を振るいながらそう答える。
試合開始と同時に飯田は走り出し、芦戸を捕まえて場外狙い。
もちろん、芦戸が易々と捕まるわけは無いが、飯田は段々と加速。
芦戸も負けじと"個性"で対抗するも酸を避けられてしまい、速度に対処しきれなくなったところをあえなく場外となった、というわけだ。
「なるほどな。さすがだな、飯田。」
「ありがとう。君も勝ち進めば決勝で会うことになる。君にも負けないぞ。」
飯田はそう、彼に放つ。
君に挑戦する、といった緑谷は既に敗退してしまったが、クラス最強格とみなに噂される轟や爆豪、香月は未だ勝ち進んでいる。
飯田はそれを超え、優勝を手にすると強い思いを持っていた。
「そろそろ始まりそうだな!ん〜……爆豪と常闇か。」
むむむ、と考えながら切島。
「高火力才能者の爆豪に対して攻防万能の常闇か。」
「これは接戦の予感だね!」
興奮しながら葉隠はブンブンと腕を振るった。
「正直予想しにくいな。爆破も強ぇけど常闇には防御されちまうだろうし……。」
うーん、と考えながら砂藤は言う。
ざわざわと開始までにみんなの意見が飛び交う。
「そういえば香月……。」
「ん?」
耳郎が話しかけてきた。その近くには上鳴と八百万も居て、視線は同じくしてそちらを向いていた。
「身体、大丈夫?」
「ん?急になんだ?そんな調子悪そうに見えるか、俺。」
「や、じゃなくてさ。」
「USJの訓練の時、あれだっただろ?」
「"個性"を使わない理由、もしかしたら、と思いまして。」
心配そうな目線で、香月を3人は見つめていた。
「ああ、そういうことか。」
香月の"個性"の情報が少ないことと、USJでの出来事も思い返すと思い当たること。
今まで香月は"個性"を使わない場面が多かった。
"個性"を全開で使った時、と言うとUSJでの山岳ゾーン。
3人が見るにそこが最大点だ。その後、回復したとはいえ、血塗れで倒れ、重体で運ばれたのは事実。
そこを考えるに、"個性"を使えば使うほど身体を壊してしまうのでは、という想像が過ったわけだ。
身近に、緑谷という存在もいることで、そういった考えが繋がりやすい。
彼も超パワーの対価に自壊してしまうからだ。
「大丈夫だ、心配されてるようなことは起きていない。」
ふふ、と笑いながら答えた。実際として彼は特に深いダメージを受けていない。
「そんなことよりほら、試合始まってるぞ。」
指を指すと既に試合は開始しており、爆豪が縦横無尽に動き回りながら爆破、それを常闇の黒影(ダークシャドウ)が防ぐ、という攻防が繰り広げられていた。
「うっぜぇなぁあああああそれェ!!!」
─Boom!!!!─
「くっ……修羅め!」
《爆豪 対 常闇!爆豪のラッシュが止まらねぇ!!常闇は八百万との試合で無敵に近い"個性"で勝ち上がったが今回は防戦一辺倒!!懐に入らせないィ!》
プレゼントマイクの実況と歓声が響き渡る。
「えー!ヤオモモの時は超攻撃してきたのにー!」
「なにかタネが……?」
芦戸が疑問の声を上げながらそう叫ぶ。八百万は真剣にそれが何故かを考えている。
実際のところは常闇の"個性"である
騎馬戦でチームを組んだ緑谷、麗日─クラス外で言えばサポート科の発目も知っているはずだ─は知っているが、大半のクラスメイトは知らない弱点。
光の元では操作性が上がるものの攻撃性は下がってしまう。
爆破の光で
相性最悪、というわけだ。
しかし、その弱点は爆豪も知らない。
その点では、緑谷は常闇に転機は訪れる可能性は十分にあり、勝機はまだまだある、と考えていた。
「チッ!!」
舌打ちしながら爆豪はさらに突撃。
(読みが甘かったか……
常闇としては疲弊を狙った長期戦が狙いだった。
しかし、思惑とは違い、爆豪はますます機敏になっていく。
爆豪の"個性"は掌の汗腺から爆発する物質を出して爆破するわけで、運動すればするほどそれは苛烈になる。
長期戦になれば、疲弊どころかヒートアップしていくわけだ。
爆豪は爆破で常闇に急接近、真正面から爆破。
常闇はそれを
「掴め
指令通り、掴もうとして腕を伸ばすも爆豪はこれを爆破で回避。
《裏を取ったァ!》
回避しつつその勢いのまま後ろを取った。
それを
しかし。
─閃光弾(スタングレネード)─
爆破により強烈な光と爆煙が発生。その後、マウントを取りつつ、片手で絶え間なく小さな爆破を起こし続けた。
「……知っていたのか……。」
「数撃って暴いたんだバァカ。まァ……相性が悪かったな。同情するぜ。」
爆破の光により
「詰みだ。」
「…………まいった……。」
常闇、降参にて爆豪勝利。ミッドナイト先生のその声により会場は沸き立つ。
「常闇くん、悔しいな……。」
感情移入したか、麗日はそう呟く。
「マジか。俺常闇行くと思ったわ。」
「彼も無敵ではないということか。」
本音を言う瀬呂に、誰かの真似をしつつ上鳴は返答した。
「光が弱点か?なるほど、
爆豪の戦い方を見て、切島ははそう呟く。
「お前とんでもない奴にケンカ売ったな。」
「いやいや、あいつの"個性"の相性運がいいだけさ。」
「結局A組パラダイスかよ、クッソゥ!」
「悔しいな、鉄哲。」
B組でもざわざわと言葉が飛び交う。
観客も、見ていたプロヒーローも勝敗はともかく今年の1年は粒揃いだ、とさらにテンションが上がっているようだ。
「って、ことは爆豪とやんのは香月か。」
「ん?ああそうだな。」
ようやく"個性"を使い始めた香月に、才能マンの爆豪の戦いには注目だと感じているらしい。
クラスの複数名が興奮したように予想を話し合う。もちろん、次の試合である、轟VS飯田の試合についても。
「……全部出さないと怒るよなぁあいつ……。」
ため息をつく香月。彼は"個性"こそ全て使っていないが、個別の状況においては十全に最善を尽くしていた。
もちろん彼にとって思惑あって"個性"を全て使わないという選択を取っているのだが、それを爆豪は良しとしないだろう。
「そりゃそうだろうな。こんんんな目をしながら襲いかかってきそうだよな!」
指で目を無理矢理ツリ目にする上鳴に笑う瀬呂達。
「てかなんでよ?いつまで使わんつもりよ。」
みなが全力を出す中、全力を出さずに、というのは相手への敬意を欠いている、という見方もできる。
実際のところ、思うところがあるクラスメイトも多少はいる。
緑谷が放った轟への言葉に、通ずるところが少しあるからか。
その証か、複数名がチラ、と緑谷と轟の方を見た。
「まぁいくつかあるがね。理由は。」
1つは見た目が非常に悪いこと。この雄英体育祭はその結果や過程を世の中に見せ、プロヒーローからの指名にて職場体験をする、という意味もある。
それにおいて見た目というのは非常に重要だ。いくら強烈でも被害が甚大になったり、外見が良くなければやはりイメージは悪い。
戦いの目線を言えばプロにもきっと自分たちには見えない面を見てくれるだろうが、職場という場に出るにあたって扱い辛い"個性"というのはやはり評判は悪いだろう。
2つは情報を制限すること。この雄英体育祭は全国様々な人が見る。それはもちろん、
奥の手は持っておくものだ、というのは彼もよく言う言葉。
3つは──
「楽しむためでもあるけどな。」
「お前そればっかだな香月……。」
「勝っても楽しくなけりゃ俺は嫌だからな。逆に負けても楽しけりゃ、明るい気持ちでいられるならそれでいい。」
その表情はUSJで見せたそれを、瘴気をみんなに使いたくない、という風にも見える。
「そもそもだ。"あれ"はこういう舞台、こういう1対1で使うには適してない、という見方も出来るんじゃあないか?……じゃあ、八百万に考察でも聞こうか。」
「私ですか?では……。」
顎に手を当て、考える八百万。
「……視界、でしょうか。」
「なるほど、視認性の悪い毒霧をばら撒くと相手が見えにくくなる……ってことか。」
八百万の言葉に、合点がいったように瀬呂は呟く。
相手が見えていないということはその瞬間の相手の動きは分からないということ。
もちろん、音や気配などで何となくわかる者もいるだろうが、完璧に把握するとなるとそれこそそういった"個性"が必要となるだろう。
「じゃあ初めの戦闘訓練で使わなかったのはなんでだよ?」
「あービルとかの密室だと超効果的だよな。んー……。」
「仲間がいたからじゃないかしら。」
峰田の質問に対して考え込む切島、それに思いついたことを蛙吹は言った。
なるほど、とみなが頷きつつ香月の方を向いた。
「……その通り。いくら相手に対して有効だとしても味方を巻き込んじゃあ意味が無い。」
八百万が味方なら使ってたかもな、と追加した。
確かに、彼女が味方ならガスマスクなど、対処出来る装備をすれば一方的に相手に瘴気を押し付けられるだろう。
かも、というのは陣営がヒーロー側の訓練の特性上、もし救助対象がいたら?という過程が存在するならまた使うことは出来ない、となる。
もし
手段として葉隠を最上階の核の場所で守護してもらい、その下のフロアを全て瘴気で覆う、などら考えられる。
果たして香月がそれをしたかというと不明だ。
「俺があの場面で使ったのは目立つ為ってのが1番、あとは複数戦になる可能性が高かったからだ。」
あの場面、というのはもちろんUSJの事件のときだ。
危険性と注目率を上げて自身を対処しなければ面倒なことになると思わせて攻撃を自分に集中する意図があったということ。
ヘイトを自身に向ける、ゲーム的に言えばタンク役といったところ。
怪我人が多かったため、というのもあるが自分一人で時間稼ぎをして他の人間の対処への準備をさせるため、という意図もあった。
後者としては、複数との戦闘で、こちらが1人ならば広範囲の瘴気で視界を潰す事で相手の連携をやりにくくしたり、常に瘴気の中で1対1を繰り返すことだってできる。
残念ながらあの場面では相手がワープ系の"個性"がいたことと、周囲に味方が多かったことから活かせなかったが。
「その辺はわかったけど、じゃあ武器は?」
「ああ、あれは使わないんじゃなくてどちらかというと使えないんだ。」
「でもヤオモモ使ってるよ?」
「俺のそれとは方式が違うからな。」
八百万は"個性"により、その場で武器や防具すらも創造して扱う。
だが、香月は今まで見せていたそれらを取り出しているだけでその場で作っている訳では無い。
なので、"個性"を使ってその場で創るそれとは違う為、やめておいた方がいいのでは、と自己解釈したわけだ。
「え、でも障害物競走で使ってたくね?」
「その後に思いだしたんだよな、相澤先生の言葉。」
「……あー、初日の"個性"使った測定の時のやつか。」
ハンドボール投げの際、相澤先生に"それは微妙なラインだ"と言われた時のことだ。
それをよく考え、障害物競走で使って以降、使わないことにしたと言う。
「なるほど……実はそんな考えて使ってなかったのな。てっきりほんとに楽しむためだけかと思ったぜ。」
「……ははっ。」
微妙な間の香月の笑い。
「おいまさか後付じゃねぇだろうな???」
「べべべべべべ別にそそそそそそそそんそんそんなことななななななッいぞ。」
ブブブブブと小刻みに震えながら視線を外し、目を泳がせながらそう言った。
「そんな図星のテンプレみてぇなのやめろよ!」
ゲラゲラと辺りに笑いが満ちる。
さてそうこうしている間に次の試合へと展開されていた。
始まるは準決勝、舞台に立つは飯田と轟。
《さぁサクサク行くぜ!お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!飯田天哉 対 轟焦凍!!いざ尋常に!START!》
スタートのコール直後、轟は氷結を発生させる。
その規模は瀬呂の時とは違い、飯田のみを狙いつつ、次の手を考えた一撃。
それを。
「立ち幅跳び!」
その場の体勢から前へ飛び出しつつ氷結を回避。
飯田は"個性"の関係上、緑谷のような氷結を打ち消すということは出来ない。
さらに、炎を使うようになったとするなら択を迫られる。
ならば。
─レシプロバースト─
ドルル、とエンジン音が響き、飯田は急加速。そのまま蹴りを轟に放つ。轟はしゃがんで回避。
(エンジンが止まるまで約10秒ある!その間に──)
回避されたその蹴り足で着地、直後に切り返す。逆足を振り上げ、その勢いのまま轟を蹴り下ろした。
「沈める!!!」
─ガンッ!─
「っぐっ……!」
レシプロバーストにより高速化した飯田のスピードは凄まじく、轟は反応しきれず攻撃を受けて地に沈んだ。
「すげぇ!あの蹴り速すぎだろ!!」
「結構重いの入ったぞ!!」
瀬呂のときの超広範囲氷結や、緑谷のときの炎を見た観客たちは大いに沸き立つ。
轟は倒れた状態から追撃を逃れるため、体勢を戻しつつその場から脱出、さらに氷結で反撃。
パキパキと迫る氷結を瞬時に跳んで回避。
そのまま轟の服をつかみ、場外へ走る。
レシプロバーストの残り秒数は約8秒。
(このまま場外へ投げ飛ば──)
残り秒数はたしかに残っていた。しかし。
─プスンッ─
突然、パワーが落ち、ガクッとスピードが落ちた。
「
「蹴りん時。」
飯田の脚部にある、"個性"によって形成された排気筒。それの出口を氷結させていた。
轟はそのまま飯田の腕や足など、体の大半を氷結させる。
「範囲攻撃ばかり見せてたから……こういう小細工は頭から抜けてたよな。」
体を氷結させ、行動不能にして立ち上がる轟。
「ぐうぅっ……!」
「警戒はしてたんだがレシプロ……避けれんねぇな、さすがに……。」
《飯田行動不能!轟、炎を見せずに決勝進出だ!》
轟、何を思ってか緑谷戦では使った炎を使わず。決勝へ。
「飯田くん……。」
決意を聞いていた緑谷は、複雑な感情でそう呟いた。
氷結の対処が終われば、次の対決は───
「俺らだなァ。」
「ブッ殺す。」
香月、爆豪ともに悪い顔をしながら観客席で見合う。
「おいおいヒーロー志望がしていい顔じゃないぜ2人とも!」
「はは、爆豪悪い顔するだろうから合わせた方がいいかと思ってさ。」
「緊張感ないな香月……。」
2人は立ち上がり、控え室へ。爆豪は誰に話しかけるでもなくさっさと向かっていった。
「んじゃいってくる〜。」
香月は呑気な声を出しながら後ろ手を振って皆の元を去った。
「コンビニくらいの気軽な気持ちで行ったなあいつ。」
「緊張皆無かよ。」
*
《さぁ準決2戦目!俺結構ここ気になってたところだ!》
「お前もマークしてんだ、毒霧野郎。」
「呼び方のクセが凄いな……。しかもそれ1回しか使ってねぇよ。とはいえまぁ、光栄だな。クラス最強候補がマークとは、ね。」
「チッ!!」
スタジアムに2人は立つ。
《さァようやく見せ始めたぞ!ポテンシャルもさることながら"個性"も万能か!?ヒーロー科香月ィ!
VS!!
その顔本当にヒーロー志望かァ!?優勝宣言した敵面男!ヒーロー科爆豪ォ!》
プレゼントマイクの紹介に観客も沸き立つ。
「ま、やれることはするさ。やれることは、な。」
「てめェ……!!」
ははっ、と軽く笑いながらそういう香月に、苛立ちを隠す気のない爆豪。
《STARTォォオ!!》
戦いのゴングは今、鳴った。
実はこの主人公、投稿し始める前は女主人公だったりします。
別にだからといってどうということはありませんが。