僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮)   作:楽園の主

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今回もほのぼの回です。休み2日目。読まなくても本編に問題なさそうな内容です。
麗日が香月のお手伝いをする日です。彼女以外にもそこそこ出てきますが。
それに加えて、香月の"個性"と、過去と現状の話をすこーしだけ。



第31話 ─香月の自宅へ─

「ん〜この辺かなー。」

 

麗日は太陽の元を歩いていた。

彼女は香月に誘われ、彼の自宅で手伝いをした後、遊ぼうと言うもの。

お手伝い、というのは昨日、香月が全てのお代を出してくれていたため、そのお礼としてだ。

休日故に予定も確定していたわけでないため快諾。

迎えに行こうかと言われたがわざわざ家を出てもらうのも悪いと、住所だけを受け取って向かうことにしたのだ。

 

「もうすぐ?結構近いんだね。」

 

そう話すのは耳郎。周囲には他の女子クラスメイトも居る。クラスメイト女子、全員集合だ。

 

「ふー。」

 

家から持ってきた、水筒の中身の冷たいお茶を飲み、温まった身体の温度を下げる。

季節は春だが、もう入学してから1ヶ月以上経つ。

じっと日陰に入れば涼しいが、日の元を歩き続ければ少し暑い、そんな季節。

 

「玲ちゃんびっくりするかな?」

「そりゃあ透ちゃん、4人も増えてるからびっくりすると思うわ。」

「数にして3倍!やもんね。」

 

今回誘われたのは実は麗日と耳郎の2人のみ。

予定を話し合っていたところを芦戸と葉隠は目敏く聞きつけ、着いてくることに。

もうそれならと蛙吹が麗日に、八百万が耳郎に誘われて全員集合した。

先程の会話の通り増えたことは一切、香月に告げていない。

さて、地図アプリを見るに彼の家はもう目視圏内。

念の為その家の前まで行って、表札を確認。問題なく、香月と書かれていた。

地図アプリを閉じてポケットにしまい、インターホンを鳴らした。

 

「はーい。ああお茶子ちゃんに耳郎!いらっ──」

「こん!」

「にちわー!」

「ごきげんよう、香月さん!」

「ケロ、こんにちわ玲ちゃん。」

「んー???あれ、多いな???」

 

耳郎と麗日の背に隠れていた芦戸と葉隠は飛び出しながら挨拶し、その更に後ろから八百万と蛙吹が出てきて挨拶をした。

想定していなかった物量に困惑する香月。

何故か、というところを耳郎が説明した。

 

「って訳なんだけど。」

「いやおかしいぞ?」

「まぁまぁ玲ちゃん。」

「だがな、貴様らの思い通りに行くと思うなよ?」

 

ニヤリ、と香月は笑う。

 

「え?」

「な、緑谷。」

「こんなにいるなんて聞いてないよ、香月くん。」

「いや、俺も知らなかった。今知った。」

 

困ったような顔で香月の後ろから皆の前へと姿を現した。

 

「あ、デクくんや!やっほー!」

「こ、こんにちわ麗日さん!」

 

どうやら手伝いのところのために呼んだらしく、休み一日目の午後にリカバリーガールによりさらに治癒、両手を十分に動かせるようになったため、来てくれたというわけだ。

緑谷も今来たところらしく、カバンをリビングにおいて一息ついたところだという。

 

「さ、入りな。」

 

手招きされるがままに、来客6名は香月の家へとお邪魔した。一軒家のため、広さは問題ない。

 

「あのー親御さんとかは?」

「手土産をお持ちしたんですが……。」

 

耳郎と八百万は持ってきた手土産を直接渡そうと香月にそう聞いた。

得てして女子とはそういったことには聡いものなのだろうか。

とはいえ全員で持ってくるとそこそこの量になるため、みなで出し合ったのか、袋は2つに収まっていた。

 

「ん、親いないぞ。」

「あ、そっか。じゃあ冷蔵庫いれといてよ。後でみんなで食べて。」

 

直接渡せるのがベストだが、今居ないのならば仕方ない、と出した代案だ。

香月に手渡すためにずい、と彼へと寄せられる。

 

「そうじゃなくて。俺、親もういないぞ。」

「えっ……。」

 

渡そうとした手は、返された言葉に驚愕して下げられる。

ほかのものも驚いているのか、ガサ、という袋の音だけが響いた。

 

「とりあえず入ろうか。こんなとこで話もなんだろ?」

 

笑いながら香月は近くの扉を開いた。そこはリビングらしい。

確かにこのまま玄関で立ち尽くす訳にもいかない。

皆は靴を脱いで招かれるままにリビングに入った。

順にキッチンで手を洗っていく。その段階で手土産は香月の手によって冷蔵庫へと袋ごと突っ込まれた。

さてどう切り出したものか、と皆は顔を見合せている。

緑谷がみなの代わりに、と話始めようとしたその時。

 

「ケロ……玲ちゃん。何があったか聞いてもいいかしら?」

 

タッチの差で先に蛙吹は切り込んだ。

「構わない。ま、そんな深いことないけどな。」

 

全員の分のお茶を用意し、ローテーブルの上に並べていきながらそう話した。

 

「ま、よくある話さ。事件で、親が居なくなった。それだけさ。」

 

どふ、とソファに腰掛けながら説明した。

彼の親は、両親共に、同時にそうなったのだと言う。

親の職業柄、お金だけはあったらしく、香月はその金銭と、国からの補助金で生きている。

親のお金が莫大だったのか、税金で引かれたあとも普通に暮らす分には全く問題ない、と。

 

「香月くん……。」

「やーめろやめろ。今日はみんなで手伝いついでに遊ぼうって話だろ?暗いのはやめよう、な。」

「……わかった!本人も吹っ切れてるし、こっちが暗いのは違うしね!」

「お、芦戸いいねぇそういうこった。」

 

空気感がだいぶ明るく戻った。一旦それには触れないことにして、芦戸はひとつの本題へと切り込んだ。

 

「それで香月って自分の部屋あんの?一人暮らしなら全部リビングで生活できそうだけど……。」

「あるぞ。私用のものがある。パソコンとか、ゲームとか、漫画とか……。」

「2階?」

「?おう。上がって階段正面の部屋だな。」

「よしきた!!!!」

「私も!!!」

 

一瞬で立ち上がり、芦戸と葉隠はその部屋を目指して走り始めた。

 

「三奈ちゃん!?」

「葉隠さんまで!?」

「や、たしかに気になるけど流石にやばいって!」

 

止めようとするも驚いた時間が大きく、彼女は既にリビングの外へ。

階段を駆ける音が響いていた。その動きに笑う香月。

 

「香月くんいいの!?」

「ははは、構わん。想定済みだからな。」

 

そう言いながらゆっくり立ち上がり、芦戸を追って階段を登る香月。

残された5人もそれに追従し、事の経緯を見守ることに。

正直、5人も香月の私室については気になっていたところで、彼女らが既に中を見ているならついでに自分たちも、という考えでもある。

階段を登ればそこに芦戸と葉隠。しかし、芦戸はドアノブに手をかけたままで、動いていない。

 

「鍵……だと……!」

「予想されてたってこと!?」

「芦戸くん、葉隠くん。」

「「ぴぃっ!?」」

 

驚愕する芦戸の後ろ至近距離から名前を呼ぶ声。そりゃあ驚きもする。

いつもと違う声色に身体を跳ねさせ、ギギギ、と振り返った。

 

「ふゥん?許可も得ずに、人の私室を、ねぇ。これはお仕置が必要だとは思わないかな?芦戸くんに葉隠くん。」

 

微動だにせず、ニッコリと微笑んでいるものの顔に影がさしており、狼狽えさせるには十分の凄みがある。

 

「ゃ、その〜……。」

「正直に何をしようとしていたか白状しようか。さすれば仕置も軽くなるやもしれないねぇ……?」

 

ポン、と2人の肩に手を置き、香月は言う。

2人からすればなんと言い訳したものか、と言ったところだが、蚊帳の外の5人からすれば、これ香月楽しんでるな、と理解できる状況だ。

 

「その、どんな趣味があるのかとか、どんな配置してるのかな〜とか、ね?」

「あとほら!さっき空気が暗かったし明るくしたいな〜と……。」

「……私は悲しいよ。仕置を増やす必要があるねぇ……。」

「弱みをにぎれる何かがないか探そうとしてました!!!」

「エッチな本とかないか漁ろうとしてました!!!」

「ふふふ、正直でよろしい……では判決を言い渡そう……。」

 

体育祭の爆豪戦を見ていた芦戸と葉隠は一体なにをされるのか、なにをさせられるのか、と。ダラダラと冷や汗が流れる。

 

「別にいいよ。」

「いいんかよ。」

 

カチャ、と鍵を開けながら許可を出した。

ズル、と滑りながら耳郎は突っ込む。その様に、麗日はブファ、と吹き出して笑っていた。

芦戸らはふぅ、と胸を撫で下ろす。が。

 

「まぁお仕置はするけどな。」

「嘘だろ????」

「その角気になっててさ。後で触っていいか?」

「あ、そのくらい全然いいよ。」

「私は?」

「んー……思いつかないからいいかな。良かったな葉隠。」

「よっしゃ玲ちゃんやっさしー!」

「えずるくない!?」

「ドアノブに触れてたのが芦戸だからってことで。ははは。」

 

その後、香月の部屋へ。

 

「画面3つあるパソコンだ!すご!ハッキングとかしそう!」

「しねぇよ。家にあったから繋げてみたんだ。なんかぽいだろ?」

「?あんま使わんの?」

「まぁ正直ゲームする時に使うかなってくらいだな……。」

「宝の持ち腐れじゃん。なんかしなよ!」

「なんか、かぁ。……ま、思いついたらな。」

 

趣味でゲームをする程度で、本当にパソコンを使った作業なんてしない香月は正直性能をもてあましていた。

することは無いが、家にあったから繋げてみた。ぽいことをしてみた、とそれだけで現状では埃を被らないよう、お掃除をしてあげるだけで眠りについていることも多いようだ。

 

「わ、これオーディオテクニカじゃん。香月楽器とか配信とかしてんの?」

「まぁある程度できるし、向こうの部屋に楽器もあるが人に見せれるレベルじゃないな。配信なんてとてもとても。」

「……今度見せてよ。ウチ、"そういうの"趣味なんよね。」

「ん〜……まぁ、機会があるなら?かな。ほんとに趣味にしてる人に見せれるほどじゃないからさ。」

「いいからいいから。約束ね。」

 

ニッ、と笑って約束を取り付けられたことに悩ましい声を上げた香月。

 

「漫画いっぱいやね。少女漫画もあるやん。……ラノベもある。」

「まぁ特定のジャンルと言うよりは色んなのに手を出す派でね。あとは家にあったものを集めて、どうせなら全部集めようと新刊を買うくらいだ。」

「あ、これ知っとる!気になってたんだよね。」

「良かったら持って帰りな、読んだらまた返してくれたらいい。」

「いいん?ありがと〜!」

 

漫画を手に取りながら嬉しそうにする麗日。

とりあえず、と3冊ほど紙袋と共に手渡した。

 

「ゲームいっぱいだね!なんか男子!って感じ。」

「ゲーム機の種類も沢山ある……香月くん、ゲーム好きなんだね。」

「ああ。実はまだあまりできてないソフトとかもあるんだが……。」

「古いのもある。すご、ゲーム屋さんじゃん!」

「ははは、気になるのあったらやってみるか?気に入ったら借りてってもいいぞ。」

「あ、これクラスのみんなが話してたヤツだ。僕も持ってるよ!」

「お、そうなんだ。集まってやるとか、通話しながらみんなでやるとかも楽しそうだな。また機会あったらするか。」

 

緑谷と葉隠はゲーム機が集う場所で興味深そうに見物。

様々な会社のゲーム機が並び、ソフトもそこそこあるとまぁ好きな人が見ればちょっとテンションの上がるような風景だ。

 

「そういえば昨日は紅茶やコーヒーが好きと。」

「ああ、どちらも好きだな。」

「それに詳しいのよ。色んな話を聞いたわ。玲ちゃんの話を聞いて爆豪ちゃんが買ったくらいよ。」

「やめろい照れるぜ。……リビングの棚にいくつか並べているんだ。気分で飲み分ける。紅茶で言えば定番というか普通なんだが、アールグレイやダージリンが好きかな。」

「まぁ!それでしたら、ローズシロップもおすすめですわ。紅茶の味から一転、花のいい香りがする甘さになりますわ。それに、リラックスできまして、睡眠の質も良くなりますのよ!」

「なるほど。たしかにシロップの類は使ったことがなかったな……早速今度買ってみるよ。」

「昨日はコーヒーを貰ったけれど、聞いていると紅茶も気になるわね。」

「次は八百万もつれて紅茶の買い物して見るのもいいかもな。八百万、他になにかおすすめはないか?」

「そうですわね、完全に私の趣味になってしまうのですが──」

 

ここに現物は無いが、紅茶が好き、という共通点から蛙水と八百万、香月は会話を続ける。

やはり普段から嗜んでいる八百万は知識量が多く、香月も意見を聞いていた。

そんな時。

 

「いまだ!!」

 

突然、芦戸はそんな声を上げてベッドの下を覗き込み、持っている携帯端末のライト機能でそこを照らした。

 

「……ない。」

 

むっとした顔で体を起こした。本当にエッチな本がないかどうか確認したらしい。

 

「三奈ちゃんここはあえての本棚かも!普通の本と本の間とかに!」

「そういうのはなかったよ?」

「えー?」

 

葉隠の推理(?)も虚しく、麗日に否定されてしまった。

 

「そりゃそうだろ。やましいものがあるなら部屋には入らせないさ。」

「くっ、つまんない!」

「割と楽しんでただろ。という訳でお仕置タイムだ。」

「あ、忘れてた。ほーい。」

 

そう言って芦戸は香月に近づき、少し頭を傾け、香月に角に触れやすい体勢を取った。

 

「では失礼して。……へー、やっぱ硬いんだな。動かせるのか?」

「ちょっとならね。ほら。」

 

ピコピコと上下に振られる小さな角に、香月はおおと声を上げた。

 

「感覚はあるのか?」

「爪みたいな感じかな。触られてることは分かるけど、それ自体に感覚があるわけじゃない、みたいな。」

「なるほどわかりやすいな。引っ掛けたりとかするんじゃないか?」

「ちっさいころはよくひっかけたよ!服とかダメになっちゃうことあったしね。」

 

クリクリと先をこねてみたりなどした後、その指は根元へ。

 

「なるほど。根元はこんな感じか。」

「根元っ、はちょっとくっ、くすぐったいかな〜。」

「ああごめんごめん。」

「それで!手伝いってなによ?」

「ん、そうだったな耳郎。」

 

このままだとわいわいとのんびりしているだけで一日が終わりそうなのを察知してか、耳郎は無理矢理に話の流れを作った。

さて、香月の言っていた手伝いとはなんなのか。

 

「ああ、それはだな──」

 

しゃらん、と綺麗な鋼の音。いつの間にか香月の手には刀が1本、握られていた。

 

「武器の手入れをさ、手伝ってくれ。」

 

にっこり、と香月は笑いながらそう言った。

 

「普段は一人で、直近で使ったものだけを手入れしてるんだが、今日は少し大きな規模でやろうと思ってな。しばらく使ってないものとかを念の為見ておこうかと。」

「でもウチら知識とか無いよ?」

「大丈夫大丈夫、一つ一つみて緩んでたりしないか見るだけでいいから。何となく気になるなーってところなあったらすぐ言ってくれたらいい。」

 

そう言いながら香月らは自室から出ていき、リビングを目指す。皆はついて行った。

リビングに入ると、ローテーブルを端に避け、中央に広く空間を取った。

 

「ちょっとみんな離れててくれよー。」

 

その言葉と共に、皆はキッチンの方へと撤退。香月を見守る。

えーと、と目を閉じ、額に親指を当てて考える仕草を取る香月。

少しして、それは起きた。

 

─ガシャガシャゴトッガシャッ─

「うわぁ!?」

 

空間に銀色の波紋が幾つも広がり、それから武器が落下してリビングの床を占領した。

床が傷つく、という心配をした複数名だったが、絨毯の上であったり、何らかの力が働いてるのかギリギリで止まり、そっと床に置かれていたものが多く、音ほど床へのダメージは無い。

その音は大半が武器同士がぶつかり合った音だ。

 

「このくらいか?……あぁあれもか。」

─ガシャンッ─

「増えた。」

「凄い、こんなに沢山……!香月くん、これで全部?」

「いや、1部だ。全部で……どのくらいあったっけかなぁ。」

「これでもまだ1部なのか……!ここにあるのは武器ばかりだけど、無機物を保存出来ると仮定すると───」

 

またブツブツブツブツと考察や利用方法を呟きながらノートに書き殴っている。

もはやこれも名物だなぁ、と皆はニッコリしながら見ていた。

 

「あっ!ご、ごめん、つい癖で……。」

「あぁいいよ。興味深いことを聞けることもあるし、面白いしな。」

「良かったらまた後で"個性"について聞いてもいい?」

「んーそうだな、今日は休みなのに来てくれたからな。少しだけ開示してくれよう。」

「本当!?」

「やること終わってからな。」

「よしみんなやるよ!秘密を暴こう!!」

 

緑谷の言葉に是、と返すと、緑谷だけでなく葉隠や芦戸、"個性"をまだ何も聞いたことがない人たちも士気が上がる。

 

「全部本物で危ないから刃には気をつけろよ。」

 

体育祭で使ったであろう刀を抜き、注意深く不備がないか確認しながらみなに注意を促した。

皆は怪我に注意しながらも、普段見られないものを手に取って見れるからか興味深く、そして気分は高くなっていた。

 

「わ、玲ちゃん剣がバラバラになったよ!?」

 

ワイヤーで繋がってるとはいえ、剣身が幾つもに分かれたことに驚く葉隠。

 

「それは蛇腹剣だな。剣と鞭の機構を備えた武器だ。それで正常だよ。」

 

蛇腹剣。刃の部分が等間隔で分かれており、ワイヤーで繋がっている武器だ。

剣としての機構を備えつつ、鞭としても使える。

鞭として扱えば有効範囲は倍以上になり、交戦距離は自在だ。

 

「へー。これ武器として使えんの?」

「んー……俺は"個性"で動きを制御するから使えるけど、そうじゃなけりゃ使えたものじゃないな。言えばロマン武器だよ。」

 

現実問題として、そのものの強度や、それに伴い殺傷力などに問題が残され、現実には武器として存在しない。

そもそも、鞭のような機構にここまで大きな刃が点在していれば軌道に変化が生じ、通常の鞭のように扱うのは不可能だ。

それを香月は"個性"で制御可能であるからこそ可能なのであって、普通に使えばまともに扱える武器ではない。

最も、現代で使う機会があるかと言えば言葉を濁すことにはなるが。

 

「これはどうやって使うの?」

「両刃刀か。そのままだよ、両刃の薙刀みたいなものさ。で、それは真ん中で分かれるんだ。分ければ短めの刃を二刀持って戦うことも出来る。」

 

その名の通り、刀身だけでなく柄のほうにも刃がある武器。繋げると長さは2mを少し超えるほど。

それは真ん中で分かれる機構になっており、そうすれば二刀流になる。

閉所や近距離では二刀、範囲を求めれば繋げて両刃刀という武器。

こちらも現実には存在しないだろうが、先程の武器と比べれば実用は可能だ。

ただ、技術がいる、と言うだけ。

 

「これは"個性"測定の時の?」

「ああそうだな。少しだけ変形したり特殊な機構はあるが、これは純粋な質量武器だよ。」

 

巨大なハンマーを指さす芦戸に説明する香月。

香月の"個性"を込めればインパクトの瞬間に衝撃が増幅するように動いたり、ハンマーの部分が回転したりと多少の機構は存在する。

しかし、やはり真価はその質量と大きさ。振り回すことが出来るのならそれだけでも驚異となるだけの武器ではある。

もちろん、尋常じゃない膂力は必要だが。

 

「はいはーい!これはー!」

「ああそれはだな──」

 

女性陣からは見たこともないものに質問が飛び交う。

それに香月は対応しながらも点検していく。

全て破壊されていたりするものはなく、大半のものは問題すらない。

問題があると言っても幾つか少しだけ汚れていたりするだけだ。

それの手入れを香月がしながら、みなの興味に答える、という時間はしばらく続いた。

 

「……よし、終わりかな。みんなありがとう、助かったよ。」

「あんまりなにもしてないけどね。」

「ケロ、私たちほとんど見た事もない武器を質問していただけよ。」

「んー?いやいや、おかげで楽しく作業できたよ。」

 

ははは、と笑いながら返答する香月。

そうしながら"個性"を発動したのか、空間に発生した銀色の波紋へと武器らは消えていき、リビングの風景は綺麗さっぱり戻った。

 

「香月くん、この"個性"は……。」

「これは簡単に表せば倉庫だな。」

 

非生物のみになるが、異空間に倉庫のようなものを持っているらしい。

自分でも許容限界のことは考えたことはなく、今のところ限界に陥ったことは無いと言う。

倉庫からは彼の任意で物を出すことが出来、やろうと思えば高速で射出することも可能。

また、中にある物質は、中にある間のみ時が止まっているかのように劣化しないのだと言う。

 

「私の"個性"はその場で創造しますから、根本から違いますわね。。」

「よく説明聞けばなるほどって感じね。」

 

体育祭中に、武器を使わない理由について、八百万とは方式が違うからだ、と答えていた。

それについては皆、そういうものだと漠然と理解していたが、説明を聞けば確かに、という訳だ。

その場で作ったものではなく、あるものをその場に出してきてボールを打つ、となると、確かに"個性"は使用して取り出して手にいるが、ハンマーは"個性"としてこの場で作りだした訳では無い。

というわけで、念の為アウトとしたわけだ。

聞けばなるほど、と言ったところ。だがここで疑問点がある。

 

「そもそもさっきのは全部どこで手に入れたの?」

 

ということ。

"個性"使用のアウトラインについて、どこかから持ってきたりしているのならアウトで納得だ。そもそもそう言ったアイテムを使うのならば、プロヒーローにしても許可が必要。

現在において、無許可でサポートアイテムを作成すると言ったことに関してはなかなかに厳しく見られている。

しかし香月が"個性"で過去に作り出したものを保管している、という形なら全てに"個性"が関わっており、アウトだということ自体が議論に値することになる。

 

「そこは秘密だ。」

「ここまで来たなら全部教えてよ玲ちゃん!」

「残念だったな芦戸、全部教えてもらうには玲ちゃんの好感度が足りないな!」

 

ばっ、と格好をつけたポーズを大袈裟にとっておどけて見せた香月。

 

「ケロ、恋愛系のゲームかなにかかしら。」

「まぁ攻略対象って柄じゃないけどな、俺。」

「する側やもんね。」

「同感、そう思うよ私も。」

 

至極真面目に麗日はツッコミをいれ、耳郎は追従しつつため息をついた。

 

「さ、これにてお手伝い完了!貸し借り無しだぞ、お茶子ちゃん。」

「ん〜……何となく釈然とせんけどわかった!」

 

麗日は思ったよりも大変な作業をしておらず、受け取ったものに対してお返しがこれでも少し足りないのでは、と感じているわけだ。

しかし、本人が納得しているし、食い下がり続けるのも失礼かもしれないので納得することにしたのだ。

思ったより早めに終わった為、あとは遊ぶだけ。

まずはお礼に、と香月は紅茶とお菓子を用意することに。手土産に持ってきてもらったお菓子もここでみなで分けることにした。

立ち上がると、緑谷は手伝うよ、と着いていった。

みながワイワイと会話するのをBGMに、カチャカチャと食器の音が響く。

 

「香月くん、ちょっといいかな。」

「んー?」

「"事件"、って……?」

「気になるよな、そこ。みんな深く聞かないから意外だな、と思ってたところだ。」

 

優しいなとも思ったけどな、と付け加え、少し笑う。

 

「……約5年前。"個性"研究所襲撃事件。聞いたことあるか?」

「!!それは……オールマイトを初めに、大勢のプロヒーローが鎮圧に向かった事件、だよね。」

 

とある町にある"個性"研究所。そこで研究資料を求めた(ヴィラン)が多数襲撃。

最初は現地のプロヒーローが対応していたが、(ヴィラン)が組織的であり、苦戦。

その後、オールマイトを始めとした他のプロヒーローも到着、鎮圧した。

しかし、後続が到着した時には既に研究者が少なくない数が犠牲になってしまっていたという事件だ。

 

「香月くんの親は……。」

「そこの研究者だったよ。どっちもな。」

 

吹っ切れているのか、約5年という時間が既にたっているからか。

理由はどうかは不明だが、香月は表情を変えず、淡々とそう説明した。

 

「……ごめん。軽率に聞いていい内容じゃなかったよね。」

「いや、いいんだ。気にするな。心に傷があったりして言いたくないなら言ってないしな。」

 

困ったように笑いながら香月はそう言った。

 

「……その時から、香月くんはここに1人で?」

「ああ。国からのサポートが手厚いしな、不便はあまりしていないよ。」

「そっか……大変だったんだね。」

 

彼は未成年のため、あるプロヒーローが保護者になってくれてはいるが、香月本人の進言により彼はこの家にそのまま住むことになっている。

そのヒーローとは稀に会う程度だと、本人は語った。

 

「心配ありがとう、緑谷。お前は本当に優しいな。まぁ今楽しく生きれてるからさ、十分だよ。」

 

最後にそう呟いて、香月は紅茶を乗せたお盆を持った。

緑谷はお菓子の類を持ってそれに追従した。

その後、彼の境遇の話はせず、みなで楽しく会話とお菓子を楽しんだ。

香月は蛙吹と八百万の2人と紅茶の話をしていた。

 

「……ねぇ、近くない?」

 

そんな様を見て、芦戸がそう小さな声で耳打ちする。

特に八百万は何の気もなく、平然としているがその距離は近い。

それを受けた耳郎は、あー、と声を上げる。

 

「多分距離感バグってる人なんだよね。」

「ホント?……よーし。」

 

芦戸は確かめるためか、立ち上がって香月の横へ。

 

「ねぇねぇ玲ちゃん!コレ見てー!」

 

端末でアクセサリーのショップ画面を開きながら彼の元へ。

服飾の類について選んでいたというのは先程の会話で蛙吹や麗日に聞いていたから、これなら話題も作りやすいだろうと言うところでだ。

右手で持った端末を左にいる香月へと向けた。

 

「ん、どれだ?」

(おっ、とぉ……?)

 

動揺。ずい、と画面を見るために近づいた香月にぴく、と反応する芦戸。

肩は触れ合いそうになる距離、男女の距離感と言えば近めで、先程まで八百万と会話していた時の彼と大差ない距離だ。

しかし実際自身がその場に居ればまた印象は変わる。見ていたより、ずっと近い。

女子同士の距離感と言われれば少し納得が行くか。

耳郎の距離感バグってる、というセリフに合点が行った芦戸。

 

「私これがいいなーと思ったんだけど、玲ちゃんどう思う?」

「これか。うん、三奈ちゃん可愛いからな、絶対似合うだろうよ。」

 

玲ちゃんと呼ばれたからか、香月も芦戸を名前呼びで即座に対応した。

 

「でも俺はこっちのが好きだな。きっと綺麗にまとまってもっと魅力的になると思う。」

「へ、へぇー。なるほど、見る目あんじゃん?」

「お褒め頂き光栄ですよ、っと。」

 

ありがと、と礼を言って2人の元へと戻る。

 

「……ね。」

「うん。よくわかった。」

「普通に可愛いとか言うしな、玲ちゃん。」

「昨日なんか朝の喫茶店であーんして来──」

 

そこまで言ってあ、やばい、と感じて口を閉じたが時すでに遅し。

即座にぐりん、と芦戸と葉隠の首が耳郎の方へ向く。

 

「詳しく……説明しよっか。」

「今、私たちは冷静さを欠こうとしてるよ。」

「や、その、さ。ね!ヤオモモ!」

「どうかしましたか?」

 

無表情を装うとするも上がる口角。そのままずい、と耳郎に詰め寄った。

とりあえず2対1を避けるためか八百万に話を振る彼女。

しかし八百万はそのシーンを見ておらず、味方とはなりえなかった。

耳郎はただ、香月が食べていたパンケーキを貰う時、香月がフォークに刺して口元へ持ってきただけだ、と焦りながらも小さな声で説明した。

決して想像しているような、あーんをお互いにするようなものでは決してなかった、と。

 

「ん〜あの玲ちゃんの距離感なら有り得るか……。」

 

うむむ、と唸りながら芦戸は考え込む。葉隠はそんな訳はないと否定。

香月の距離感を知らない葉隠は、高校生の男女でそんな距離なんてどっちかは絶対意識してると興奮しながら力説した。

ならば、と葉隠に香月に絡んでみたらいいとみなが告げる。

そして。

 

「うん。近いね。」

 

戻ってくるなりあっさりと意見を翻した。

葉隠は香月に対し、意識させてやろう、と会話をしてるうちに見えない体を利用し、彼とスキンシップをとる事に。

香月が机に手を置くタイミングで自分の手を下に滑り込ませ、手を繋ぎたいのか、などとからかってやろうとしたところ。

平然と1度謝ったあと、手のサイズがどうだと話しながら本当に手を握られてしまい、葉隠はカウンターを食らった。

見えないからわかりづらいな、と困った笑顔で返されてしまい、どちらかと言うと葉隠がダメージを受けて終わった形だ。

 

「そのさ、峰田くんとかみたいに"そういう"意識を全く感じないあたりに嫌気が来なくて、ね。」

「そうそう。しかもなんも動じてないし。」

 

そういう、というのは直接的な話、色欲や性欲ということ。

香月からは男女としての意識を全く感じず、すっと懐に入ってくるのだと言う。

 

「……なんか悔しいね。」

「うん。ドギマギしてる香月見てみたくない?」

「それは、まぁ。いつも冷静だからそういうの見てみたい感じはあるけどね。」

「でも玲ちゃん手強いと思うけどなぁ。」

 

芦戸と葉隠は絶対に香月の表情を崩してやる、と意気込んだ。

今日はまだ作戦も何も無いため後日、どこかで仕掛けようと話し合っていた。

当の本人は緑谷や蛙吹、八百万と"個性"の話などをしており、こちらの話は何処吹く風だ。

見れば、緑谷とも特に距離を遠く感じない。

恐らく男女問わずパーソナルスペースが狭い人なのかもしれない。

それはそれとして。

 

「ん、そろそろいい時間か。すまないな、お出かけしない分少々薄い日になってしまったな。」

「なんかお茶会って感じでたのしかったよ!」

 

皆、香月が謝るほど退屈でもなく、楽しめた、と返す。

"個性"のことも知れたし、得もあったというもの。

片付けは香月が自分がするから、と言ったが皆は立ち上がって片付けを手伝った。

 

「いやはや、手伝ってもらって助かったよ。」

「いやいや!昨日のお礼やから!」

「みんなもありがとな。」

 

その言葉に気にしないでいい、全然いいよ、口々に香月へと言葉をなげかけた。

さて、帰る準備をしている時。

 

「香月くん、今日の手伝いって……。」

「まぁ結果的にはな。でも彼女らには言わないことだ、無粋だぜ?」

 

しー、と口元に人差し指を持っていきながらそう言う。

緑谷は今日の工程に特に手伝いが必要には感じなかった。

ほとんどが見るだけで、手を加える必要が無いものばかりであった。

実際、香月は武器の状態には注意を払っているし、"保管されている武器は時が止まったように劣化しない"という特性があるが故に、使ってないものに不備が出る、という状態にもならないだろう。

まぁ、手伝いというのは後付けでどうでもよく、麗日が気後れしないようにという気遣いなわけだ。

貸し借り無しだ、と念を押したのもそういう事だ。

 

「緑谷は昨日来れなかったし、また休みの日に遊びに行こうな。」

「うん、もちろん!是非行こうよ!」

 

軽く約束を取り付け、本日は解散。

 

「おじゃましましたー!」

「じゃ、玲ちゃんまた明日ね!」

「ああ、また明日な。気をつけて帰れよー。」

 

香月を残し、皆は帰路へ着く。

その背が見えなくなるまで、香月は玄関でみなを眺めていた。

 

(……さて、明日の準備でもするか。)

 

見送りを終えた香月はくるりと家へと戻り、準備と家事をするという日常へと戻っていく。

明日からの学校。プロヒーローからの指名はいったい、どのようになるのだろうか。

各々、様々な思いを抱えたまま、一日は過ぎていった。

 




次の話から本編へ戻ります。
前話から2話、好きな事書いていたので結構気楽に書いてました。

メンバーが女子全員+緑谷なのはアンケートを少しだけ反映してのことです。
今回は気が向いたので反映しましたが、今後も反映されるとは限りませんので悪しからず。

次からも楽しんで書くぞー

今後、日常回を上げるとして、主人公との絡みを見たい、もしくは見てみたいのは?もしかしたらこのアンケートが採用される、かも……?

  • 男性陣(今回絡み少なかった人達。)
  • 男性陣(緑谷達。今回来なかった人達。)
  • 男性陣(上鳴や爆豪達。)
  • 男性陣(常闇や障子。)
  • 女性陣(芦戸もしくは葉隠。)
  • 女性陣(八百万もしくは耳郎。)
  • 女性陣(蛙水もしくは麗日。)
  • 女性陣(全員。まとめて来い。)
  • その他(B組や他学科。)
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