僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮)   作:楽園の主

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香月の出番は少なめ。職業体験です。
ちょろんと真面目なシーンが続きますねぇ。





第33話 ─蠢く─

 

 

 

雄英高校、仮眠室にて。

 

「DNA検査?脳無の?」

「ああ。捜査協力を依頼してる訳でもないし、情報漏洩にはなるが君には伝えなくちゃと思ってね。黒幕への手掛かりだ。」

 

オールマイトと、塚内警部は話していた。

USJにて、オールマイトが吹き飛ばした脳無。警察はそれの身柄を拘束し、様々取調べを試した。

しかし、脳無は口を聞けない、というレベルではなく、何をしても無反応。

USJでの大暴れはなんだったのか、といえるほどの、文字通り思考停止状態だったらしい。

素性調査のためDNA検査をしたところ驚くべき事実が発覚。

傷害、恐喝の前科持ちのチンピラのDNAが発見されたがそれだけではなく、脳無の体には全く別人のDNAが少なくとも4つ以上は混在していたという。

 

「……人間かそれ……?」

 

あまりの衝撃に、オールマイトはその言葉しか返せなかった。

脳無をさらに調べたところ、結論としては全身薬物などで弄り回され、安っぽい言い方をすれば複数の"個性"を扱えるだけの身体にされた改造人間、という訳だ。

 

「まァ本題は身体の件よりDNA……"個性"複数持ちの方。」

 

通常として、DNAを取り入れたからと言って複数の"個性"を扱えるわけではもちろんない。

それこそ馴染み、浸透する特性が"個性"自体に備わってない限りは"個性"の複数持ちなんてことにはなりはしない。

 

「ワン・フォー・オールを持った君ならわかるだろ。恐らく……"個性"を与える"個性"がいる。」

 

つぅ、と汗が流れ落ちる。

オールマイトには。彼らには。その存在に、心当たりがあった。

 

 

 

 

 

 

 

「体育祭での力の使い方……あの正義バカオールマイトはこと"教育"に関しちゃ素人以下だぁな。」

 

その言葉を聴きながら、緑谷はオールマイトの言葉を思い出していた。

さあ!!始めようか有精卵共!!という、初めての戦闘訓練の時に聞いた言葉。

それと同じ言い回し。考えればとぼけ方も似ている。

やはり、と合点がいった。この人が、オールマイトの先生だ、と。

 

「見てらんねぇから俺が見てやろうってんだ。さァ着ろや、コスチューム。」

 

その言葉に是と返し、コスチュームの入ったアタッシュケースを開く。

修繕されたものが戻ってきており、それに袖を通すどころか、確認するのも初だ。

入っていた取扱説明書をぴら、と確認する。

そこには彼へ向けて。

 

緑谷様へ

修繕にあたり弊社の独断で材質やデザインに少々の変更を加えましたがご了承ください。

だってこっちの方が絶対かっこいいし!

「えー……。」

 

勝手に変更したことを記した手紙のようなものであった。

もちろん、その後に全ての詳細はかかれていたが。

この所業に、サポート界というのは発目明のように、勝手な人ばかりなのか、と思ってしまった緑谷。

もちろん、きちんとしている所もあるだろうが、変わった人ばかりだ、ということについては的を射ていると言わざるを得ないだろう。

ともあれ、元々は母に作ってもらった愛着のあるスーツ。

それのβ版ともいえるそれの初陣だ。

 

「よろしくお願いします!でも……本当にいいんですか……?」

 

緑谷としては、正直に言えば完全に使いこなせる訳ではない。

開けた場所。それこそ屋外じゃなければ、もしもうっかり全力で打ってしまったりすれば、建物へのダメージが心配だ。

加えて。

 

「グラントリノさんのお身体が……。」

 

グラントリノは既に高齢の方だ。それの身を案じた。

しかし。

 

「ウダウダとまァ……じれったいな──」

 

次の瞬間には目の前から消え、真後ろを取られていた。

右前へ跳躍、そのまま反対へと翻り跳躍、さらに上へ、そして下へ。

たった一瞬で4回の跳躍をみせ、背後を取った。

 

「え?」

─WAM─

「ぎゃ!!?」

 

背中からの一撃に、緑谷はよろける。

反応するので精一杯だった。呆気に取られていたのだから当たり前だが。

 

「撃つだけじゃないんですか!?実戦形式!?」

 

その言葉に、先程の動きで目の前の男の実力が見えなかったのか、と笑いながら言う。

そのまままた跳躍し、電子レンジの上へ着地、ガシャンとひしゃげた。

 

「9人目の継承者がこんな湿った男とは……オールマイトはとことんど素人だァな!」

 

再び跳躍、またしても緑谷の背後を攻撃する。

続け様に跳躍に跳躍を重ね、狭い空間を縦横無尽に跳ね回る。

速すぎる、どんな"個性"だ、と考えをめぐらせる。

だが、この場では隠れる場所も隙もない。

悠長に正体を探っている場合ではなく、まずは動きを止めることに決めた。

卵が割れないイメージ。それを強く意識して右手に"個性"を発動する。

2回背後を取られたのなら、と、背後に迫った瞬間を狙い、体勢を下げつつ、グラントリノ向けて"個性"の発動した腕を振るう。

 

「分析と予測か。だが──」

 

その腕は空を切る。いとも簡単に避けられてしまった。

 

「固いな……そして意識がチグハグだ。だからこうなる。」

 

腕を足で押さえつけられ、顔面を手で覆われる。

空を切った腕から発した衝撃は天井を叩き、ドォオ、と反響した。

絶対に捕まえた、と思ったのに。

その言葉に、グラントリノはそこなのだ、と指摘した。

騎馬戦や本戦での利用法。自分でも"個性"のことだと理解はできているはずなのだが、オールマイトへの憧れ、責任感が足枷になってしまっているのだ、と。

早く力をつけなくてはならない。それは確かだ。

しかし、敵も時間もそれを待ってくれるわけじゃない。

 

「ワン・フォー・オールを特別に考えすぎなんだな。」

「……。つまり、どうすれば……?」

「答えは自分で考えろ。俺ぁ飯を買ってくる。」

 

そういいながら、杖を手に外へと出ていく。

 

「掃除よろしく。」

「えぇ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。保須市にて。

 

「普段は依頼待ちのことが多いんだけどね。最近はほら、保須も慌ただしいからね。」

「市街パトロールは抑制になります。」

「うん、そゆこと。」

 

保須市で活動するプロヒーロー、ノーマルヒーローマニュアルの元で職業体験をしていた。

苦手なことがなく、何でも卒なくこなすことが出来るというのが特徴の事務所のヒーローだ。

ヒーローの名前については、ひとつの長所より、普通に満遍なくこなせるほうがいいという理由が込められているらしい。

 

「正直ダメ元だったけど、まさか君だけでなくインゲニウムの弟さんも、2人とも良くウチに来てくれたな。」

「事務所の理念に引かれたからですよ。私は。」

「お、ゼロくんありがとう。」

 

そんな会話を聴きながらも、飯田は周囲を見渡している。

 

(僕は、あいつが許せない。)

 

ヒーロー殺しである。現代社会の包囲網でも捕えられないという、神出鬼没ぶり。

無駄なことかもしれないが、それでも今は追わずにはいられない。

飯田の表情は、コスチュームのマスクに阻まれて見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなァ……お前たちが雄英襲撃犯……して?その一団に俺に加われと。」

「ああ、頼むよ悪党の大先輩。」

 

とあるBARにて。敵連合の主犯格である彼。

彼は今、刃物を大量に装備した風貌の男、ヒーロー殺しをスカウトしていた。

それにして、煽るような、そんな語気だが。

目を細め、少し考えたあと。

 

「目的は何だ。」

 

落ち着いた言葉で、問うた。

 

「とりあえずはオールマイトをブッ殺したい……気に入らないものは全部壊したいな。こういう……糞餓鬼とかもさ……全部。」

 

ぺら、と写真を取り出す。そこには、雄英体育祭の時の、緑谷の写真が映っていた。

そのほかにも、何枚か写真を持っていた。ほかのクラスメイトの分だろうか?

 

「興味を持った俺が浅はかだった……お前は……はァ、俺が最も嫌悪する人種だ。」

「はあ?」

「子どもの癇癪に付き合えと?信念なき殺意に何の意義がある。」

 

スラ、脇腹に装備していた短い刃物を抜いた。狭い屋内でも使いやすいだろう、それを。

破壊衝動のみの彼に、さらなる成長を促すために招いたのがヒーロー殺しだ。

しかし、今彼らは戦闘になろうとしている。

一般人同士ですらないこの場では、本当の意味で命が賭かる。

 

「"先生"……止めなくてもいいのですか!?」

 

モニターに、黒い霧の男がそう話しかけた。

 

「これでいい!答えを教えるだけでは意味が無い。至らぬ点を自身に考えさせる!成長を促す!"教育"とはそんなものだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイトへの憧れが足枷……使い方は理解してる……ワン・フォー・オールを特別に考えすぎ……?」

 

それが固さに起因している、ということの、固いとは何なのか。

では柔軟な動きとは?と考えを巡らせる。

そこを深く考えた時、1人の人間の動きを思い出していた。

緑谷にとって馴染み深い、近くにいたあの男。

爆豪の、動きだ。

 

「そうか!奥の手、超必殺技みたいに考えてた!」

 

バサ、とノートを開いてペンを手に持つ。

 

「そうだよ、"個性"は体の一部!もっと、もっとフラットにワン・フォー・オールを考える!」

 

あんな近くで幼なじみを見てきたのに、なぜ今まで気づかなかったのか、と合点がいった。

そうなれば、とノートに課題とやるべき事を書きなぐる。

その様を、グラントリノは隠れて聞いていた。

 

(思考は柔軟。体育祭での動きでそこはわかっていた。……なかなか良い奴を見つけたんじゃないか?俊典……オールマイトよ。)

 

フッ、と笑って、今度こそ飯を買いに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都。とある事務所にて。

 

「正直、君のことは好きじゃない。」

「は?」

 

爆豪と対面するプロヒーローは、まず初めにそう告げた。

 

私の事務所(ウチ)を選んだのもどうせ5本の指に入る超人気ヒーローだからだろ?」

「指名入れたのあんただろが……。」イラッ…

 

その口振りに、苛立ちが前面に出てしまう爆豪。

 

「そう!最近は"いい子"な志望者ばかりでねえ。久々にグッときたよ。」

 

すっ、と自身の髪を撫でて整えながら言う。

 

「君のように凶暴な人間を"矯正"するのが私のヒーロー活動。」

 

彼はNo4ヒーロー、ベストジーニストだ。

 

「敵もヒーローも表裏一体……そのギラついた目に見せてやるよ。なにが人をヒーローたらしめるのかを。」

 

爆豪は、それを顎引いて睨むように見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

任侠ヒーロー、フォースカインド。

"個性"は4本腕。文字通り腕が4本ある"個性"だ。

肉弾戦を得意とするが、それ以上に特筆する点はそこへ持ち込むまでの、自分の得意な場面へと引き込む戦術を構築する冷静な思考だ。

そんな彼の元へは。

 

「まァ、国からお給金を頂いてるので一応公務員なんだが、成り立ち故に公務員とは何もかもが著しく異なる。」

 

そんな会話を聞かずに顔を見合わせる2人。

 

「「…………!!なんでお前が!!」」

 

そういいながらグッと握手をする2人。鉄哲徹鐵と切島鋭児郎である。

 

「おい聞けや。指名は2票入れられるんだよ。んで実務がなにかって話だが──」

 

 

 

 

 

 

 

「基本は犯罪の取締りだよ。事件発生時には警察が応援要請が来るよ。地区ごとに一括で来るんだよ。」

 

バトルヒーロー、ガンヘッド。

"個性"はガトリング。腕に銃のような器官が着いており、爪のように硬化した角質の塊を打ち出す"個性"。

彼もまた"個性"だけでなく、肉弾戦を得意としており、"個性"は威嚇射撃などにしようする。

 

「逮捕協力や人命救助などの貢献度を申告、そして専門機関の調査を経てお給料が振り込まれるよ。基本歩合だね。」

(喋り方かわいい……。)

 

そんな彼の元ヘは麗日が。本来彼女は13号のような、救助の方面でヒーローをめざしていた。

しかし、香月の言葉や爆豪との戦いにて、やりたいことだけを追求しても見聞が狭まる。

強くなればそれだけ可能性は広がるのだ、と。

故に、武闘派のヒーローの元へと行くことにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね、後は"副業"が許されているわ。」

 

もちろん、公務に定められた当時は1部で相当揉めたが、そこは市民からの人気と需要に後押しされた名残だ。

実際、事件が発生しなければヒーローは給金を貰えない。

それを副業でカバーする、という面もある。

また、ヒーローの名前を利用した販促などもあるため、持ちつ持たれつだ。

 

「というわけでこれからCM撮影なの。付き合ってね。」

 

そう語るのはスネークヒーロー、ウワバミだ。

彼女の"個性"は蛇髪。髪の先がヘビになっている、本人の美しさも相まってゴルゴンを彷彿とさせる姿だ。とはいえそれは見た目だけで、石化能力は無い。

その"個性"故にずば抜けた戦闘能力こそないが、ヘビ特有の索敵能力で潜伏や逃走を許さず迅速に捉えることから敵逮捕への貢献度は極めて高い。

 

「もっと……ヒーロー的活動を体験したいんだけどな。」

 

そこへ集うは拳藤一佳、そして八百万百。

 

「いえ!これもプロ入りすれば避けては通れぬ道ですわ!それにいいとこ無しだった私を見初めて下さった方ですもの……たんと勉強させてもらいますわ!!!」

「気張ってんなぁ……。」

 

とまぁ、各々ヒーローとはどういう職業か、というものを教えて貰い、各々の時間を過ごす。

そして、一日目、夜。緑谷は。

 

「ムニャムニャ!!Z(ゼット)!!Z(ゼット)!!」

(寝てんだよな?)

 

ご飯を買って帰ってきたらすぐに眠って(?)しまったグラントリノをさておきヒーロースーツを着て外へ出ていた。

初日は結局ワン・フォー・オールを見てもらっただけでヒーロー活動は一切していない。

さきほどネットにて検索をかけたがろくにヒットは無く、雄英高校の教師をしたのもたった1年だけ。

謎が多い老人ヒーローだ。

さて、外へ出た理由は自己鍛錬のため。"個性"について考えたことを実践するためだ。

現在の許容出来るパワー、5%を息をするように使えれば、爆豪のように飛び回ることだって不可能では無い。

使いこなせればできることは多い。相澤先生も言っていたことだ。

つらつらと言ったが、要は慣れだ。

ビルとビルの間を、指差し確認しながらイメージを固める。

トントントン、とロック〇ンのように壁ジャンプするイメージだ。

レンジで卵が割れないイメージ。それを思い起こして足に"個性"を発動し、跳ねる。

 

─ベゴ─

(まァこうなるよな───)

 

緑谷はイメージ通りとは行かず、壁にぶつかって、真下のゴミ置き場へと落ちた。

それはそうである。足に"個性"を込めるだけでは壁ジャンプはできない。

踏ん張り、腕でのクッションも必要。

2段目からは腕にも力を込めないといけない。

だが、咄嗟に"個性"を発動すれば、もしかしたら暴発も有り得る。

慣れ、という言葉が付きまとう。

 

ブツブツ「イメージ換気してたら間に合わないか……よーし、もっかい……。」ブツブツ

「何!?何!?」

「い、行こう!見ちゃダメだ!」

 

一般通過する男女にはやばい人認定されつつも、事故鍛錬を続ける。

しばらく続け、朝、いい時間になったのでグラントリノの元へ戻る。

 

「おはよう!そして!どうした!?」

「昨日ちょっと自主トレしてたら夢中になってしまい……。」

 

何度もぶつかったりしたのだろう、ドロドロに汚れ、細かな傷も多い。

実践を続けたものの、先は長いと感じたと伝えると、当然だと返される。

初めてだからだ。普通の人間ならばそうなる。

オールマイトは初期から普通に扱えていた為、根本から緑谷とは違う。

 

「オールマイトの学生時代……!!」

「ひたすら実践訓練でゲロ吐かせたったわ。」

(それでそんな恐れてたのか……!)

 

そこまでする、その理由を、暗い表情で続ける。

 

「生半可な扱いはできなかった。亡き盟友に託された男だったからな。」

「オールマイトの先代……お亡くなりなっていたんですか?」

「んあ……?」

 

そのタイミングまで宅配が来たため、緑谷は率先してそれを受け取りに行った。

1人残されたグラントリノは、その事実を告げていなかったことに驚いていた。

ちなみに、宅配の中身は電子レンジだ。

 

「昨日"何故か"壊れちゃったからな!お急ぎ便よ!」

(ガチなのかオトボケなのか……!)

 

ご自分で踏んでませんでした?と緑谷は呟いた。

さて、朝ごはんには冷凍たい焼きを食べるらしく、緑谷にレンジで温めるように指示をした。

朝っぱらから随分糖度の高いものを食べるのかと驚きつつも、指示に従う緑谷。

大きな更にいくつか並べ、温めている間に思考を巡らせる。

呼吸をするように、ワン・フォー・オールを扱う。

それは皆がこれまで、15年間にわたって自然に培った感覚に短期間で追いつかなければならないということ。

このままでは、体を作るという地道な作業と何ら変わらない時間がかかってしまう。

時間は待ってくれやしない。

考えがまとまらないが、チン、とレンジの音が響く。

それと共に中身を取りだし、グラントリノへと渡した。

 

ブツブツ「時間は限られてる……どうすれば……。」ブツブツ

「浮かない顔してるな。今はとりあえずアツアツたい焼きを食って──

 

 

冷たい!!!」

 

「え!?ウソ!?ちゃんと解凍モードでチンしたんですけど……!」

 

ばっ、とグラントリノは電子レンジの方を見る。

 

「バッカお前!!これでかい皿でそのまま突っ込んだな!?無理に入れると中で回転しねぇから1部しか熱くならんのだ!!チンしたことないのか!!」

 

現在であれば中で回転しないタイプも開発されており、市場に出回っているが、昔は回転して満遍なくマイクロ波を当てていたもの。

そのタイプであれば1部しか温まらないのも納得出来る。

緑谷の家では回転しないタイプが採用されており、それ故にサイズのことを考慮できなかったらしい。

しなし、グラントリノのその言葉に、緑谷はインスパイアされる。

 

「あああわかった!!グっグラントリノさん!!このたい焼きが僕っ、です!!」

「違うぞ大丈夫か!?」

 

あまりに突然すぎた発言に、グラントリノはついていけずツッコミを入れることとなった。

 

「あ、いや、違くて!そのっ、わかったんです!」

 

緑谷は今まで、"個性"を使う、と言うとに固執していた。

必要な時に、必要な箇所に発動するという具合に。スイッチを切りかえていた。

だがそれでは2手3手で反応に遅れが出てくる。

ならば。

 

「初めからスイッチをすべてつけておけば良かったんだ!」

 

電子レンジのたい焼きをみてイメージが固まった。

1部にしか伝わっていなかった熱が、満遍なく伝わるイメージ。それを表すように、緑谷の全身を翡翠色の電流が走ったようにバチバチと音を立てる。

全身に、許容上限の"個性"を発動した。

 

「イメージが電子レンジのたい焼きて、えらいじみだがいいのかソレ。」

「そこはオールマイトの、っ、お墨付きです!」

 

発動することに集中しているからか、言葉が少し間が空いている。

 

「その状態で動けるか?」

 

ポイ、と杖を捨てる。その答えに、次の問いの答えがわかっているかのように、その行動に迷いは無い。

 

「わかっ、りません……!」

「試してみるか?」

「お願いします!」

 

緑谷 出久、戦闘訓練再び開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を成し遂げるにも、信念……想いが要る。無い者。弱い者が淘汰される。当然の話だ。」

 

とあるBARにて、ヒーロー殺しはそう話す。

 

「だから死ぬ(こうなる)。」

 

足で相手の腕を踏みつけ、逆の足で体重をかけて体を動かさせない。

そして、1つの短刀は首筋に当てられており、もう片方の短刀は肩に突き刺していた。

刺された彼も、黒霧に帰すよう指示するも、ヒーロー殺しの"個性"により行動ができなかった。

 

「"英雄(ヒーロー)"が本当の意味を失い、偽物が蔓延るこの社会も、徒らに力を振りまく犯罪者も……粛清対象だ。」

 

そのまま、ズ、と。刃を首へとだんだん近づけて行く。

顔を掴むような、手の装飾ごと彼を断頭するつもりらしい。

 

「ちょっと待て待て……この掌は……ダメだ。殺すぞ。」

 

そういいながら五指で短刀に触れ、それを塵へと帰した。

その様子の変化に、ヒーロー殺しは目を見開く。

 

「口数が多いなァ……信念?んな仰々しいもんないね……強いて言えばそう、オールマイトだな……。」

 

ギィ、と。おぞましい笑みを浮かべながら言葉を続ける。

 

「あんなゴミが祀り上げられてるこの社会を目茶苦茶にぶっ潰したいなァとは、思ってるよ!」

 

ゾ、とヒーロー殺しの背に冷たいものが走る。

その瞬間、手を振るってヒーロー殺しへ反撃。

それを後方へ跳躍することで回避した。

 

「せっかく前の傷が癒えできたところだったのにさ……こちとら回復キャラがいないんだよ。責任取ってくれんのかぁ?」

 

ゆら、と体を怪しく振らせながらも更に戦闘を続ける意志を見せる。

一方、ヒーロー殺しは戦闘を続ける意思は見せない。

 

「それがお前か……。」

「は?」

「お前と俺の目的は対極にあるようだ。だが……"現在を壊す"……この1点に於いて俺たちは共通している。」

 

その理解を示したような言葉に、苛立ちを持って彼は返した。

最も嫌悪する人種だの言われたからだ。

だがヒーロー殺しは言う。真意を試したのだと。

死線を前にして人は本質を表す、と彼が考えているからこその行動だ。

ヒーロー殺しの目には、異質だが想いのような、歪な信念の芽が宿っているように感じたのだ。

 

「お前がどう芽吹いていくのか。始末するのはそれを見届けてからでも遅くはないかもな……。」

 

それに納得したからだろうか、先程は否定したが、交渉は成立としたようだ。

 

「始末すんのかよ……こんなイカれたやつがパーティメンバーなんて嫌だね俺……。」

「死柄木 弔、彼が加われば大きな戦力になる。」

 

本人は嫌がっているが、これからすることを考えれば戦力の増強は必要だ、と宥める黒霧。

 

「用件は済んだ!さァ"保須"へ戻せ。あそこにはまだ成すべきことが残っている!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーこんだけ街中が警戒モードだと(ヴィラン)も出てこれないよね!」

 

市街パトロールが終わり、事務所でヘルメットを外して開放感に大きく息を吐きながら2人にそう話しかけるマニュアル。

 

「そうですね。まぁ、ここで出てくる輩はとんだ阿呆でしょうね。」

「……そうでしょうか……。」

 

しかし、飯田は心ここに在らず、と言ったところだ。

 

("ヒーロー殺し"ステイン……。)

 

彼は情報を集めた。兄を、ヒーローとして殺した彼の情報を。

世間は騒いでいるからか、情報はすぐに出た。

彼は出現した7ヶ所全てで必ず4人以上のヒーローに危害を加えていた。

それが何故か、という部分は目的があるのかジンクスなのか、紙面上では読み取れないが。

そして保須では、まだ彼の兄。インゲニウムしか襲撃されていない。

ということはだ。ヒーロー殺しは、この街に再び現れる可能性が高い、ということ。

 

(来い……!!この手で……始末してやる!!)

 

飯田の目は、暗い光に染まっていた。

 

「……。」

 

その様子を、香月はじ、と見ていた。

職場体験は、まだまだ続く。

 





原作シーン、簡潔に書くってどう書いたらいいんだ……?というのが最近の考えどころ。

さらにここまで投稿してふと思ったこと。
アニオリの話どうしよっかな。

現在小説内では、原作をなんとなくしか知らない人向けにこの二次創作の主人公が出ないシーンもそこそこ書いてます。それについてですが……。

  • このまま書いてて欲しい
  • もっと詳しく書いて欲しい
  • 今より少し簡略化して書いてて欲しい
  • 回想程度くらいまで簡略化して書いて欲しい
  • ほとんど書かなくていい。情報程度でいい
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