僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮) 作:楽園の主
香月頑張ります。
一回目の訓練が終わり、チーム双方がモニター室へと帰ってきた。
「今回の結果は緑谷少年と麗日少女の勝ちになった!……まぁつっても…今回のベストは飯田少年だけどな!!」
HAHAHA、と高らかに笑いながらオールマイトは言い放った。
それには飯田本人も驚いている。
皆はオールマイトに問う。勝った方にベストがいるんじゃないのか?と。
「何故だろうな~わかる人!!?」
ボッ、と残像が軽く見えるほどの速度で手を上げるオールマイト。
少し、大袈裟すぎやしないだろうか。そんなことをその場にいた数人は思った。
オールマイトの問に手を挙げた者が1人。八百万だ。
「飯田さんが一番状況設定に順応していたから。」
爆豪の行動は戦闘を見る限り私怨丸出しの独断。先生が言った通り屋内での大規模攻撃は愚策。
緑谷もほぼ同様の理由。
麗日は中盤、気が緩んでいた。そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。
もしハリボテの"核"が本物だったら最後の攻撃は危険すぎる。
3人に対して飯田は相手への対策をこなし、且つ"核"の争奪をきちんと想定していたからこそ最後の攻撃の対応に遅れが生じた。
ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘えから生じた反則のようなものだ。
そこまで全てを八百万は一人で言った。それに、場が静まる。
「ま、まぁ飯田少年もまた固すぎる節はあったわけだが……まぁ、正解だよ!くぅ…!」
オールマイトはグッ、とサムズアップをし、笑顔を保っているものの思ったより言われた、と言ったような表情をしていた。
「常に下学上達!一意専心に励まなければトップヒーローになど、なれませんので!」
他に意見はないようで、一戦目の講評はこれで終わった。
続いて、二戦目のチームの発表だ。オールマイトが引いた一つ目のボール状のくじ。そこにはK、と書かれていた。
「特別枠、出てしまったな!!これは見物だぞ!!」
その次に二つ、引いたくじにはGとI、と書かれていた。
先生とともに集まる5人。香月、耳郎、上鳴、尾白、葉隠だ。
ここから、2対3でチームを選び直す。そのくじを、目の前にオールマイトは出した。
出来れば、3人の方に当たりますようにと願って引く者が大半。
どちらでも構わないな、と考えていたのは香月だけだった。
組まれたチームは。
「ヒーロー!香月少年と葉隠少女!そして敵!耳郎少女、上鳴少年と尾白少年!」
不利な方に2人、有利な方に3人、という形になった。
5人は言われた場所へ移動する。先ほどと似たようなビルで訓練をするようだ。
その場所へとつくとまずは敵チームが入っていく。
「よろしくね!香月君!」
宙に浮いた手袋が大袈裟に手を振っている。
葉隠の"個性"は[透過]。その名の通り、彼女の体は透けて見えない。
服などは'透過できないのか'それとも'していないのか'は定かでないが、見えていた。
ちなみに彼女のヒーローコスチュームは透過という"個性"を十分に発揮するために手袋と靴だけである。
よろしく、という言葉に少しだけ手を上げて香月は挨拶を返した。
「作戦、どうする?相手3人だけど…」
うーん、と唸る葉隠。それに、香月は答えた。
「一番注意すべきなのは耳郎だ」
耳郎の"個性"は[イヤホンジャック]。
耳たぶの先がイヤホンジャックになっており、それを指すと彼女自身の心音を爆音で与える。
また、イヤホンジャックとなっている耳たぶは伸ばすことと自在に動かすことが出来、微細な音も捉えることも出来る。
微細な音をキャッチできるということは相手の位置をサーチできるという事だ。
しかし、現時点で彼にそこまでの情報はない。
情報があるとしても伸びることのみ。その上で、彼は言う。
耳たぶから伸びるプラグ、自在に操れる上に伸びるとなってはリーチが長く危険。
あと、耳たぶの先がイヤホンジャックになってるって事は音関連、微細な音もキャッチできるだろう。
つまりはこちらの居場所は丸わかり。恐らく索敵して仕留めてくるなら最初に来るのはおそらく彼女だ。
それか、彼女を核の防衛に回して常に音に気を付けさせ、その都度指示を出して尾白と上鳴で勝負を仕掛けてくるだろう、と、考えを葉隠に伝えた。
「すごいね!そこまで考えれるなんて!私じゃ思いつかなかったよー!」
「考えすぎだってよく言われるけどな」
「そんなことないよー!」
そうこうしているうちに五分が経過し、自分たちが訓練開始時間になった。
2人は入口から堂々と入り、息を殺して歩いていく。
5人以外が存在しない以上一番頼りなり得るのは音だ。
雑音がないから足音や声が響きやすい。静かにしていればそれだけで相手を補足しやすくなるのだ。
1階にいるうちは自分たち二人以外の音はしなかった。
2階で、敵と遭遇する。上鳴だった。
曲がり角から顔だけを出し、道を確認すると彼の背が見えたのだ。
「先に仕掛ける。隙を見て捕獲を」
「わかった!」
ヒソヒソと話す。そして、上鳴が異変に気づいたその瞬間に既に香月は動き出していた。
姿を現し、走って上鳴に近づき、少し跳んで回し蹴りを首へ叩き込もうとした。
しかし上鳴も少し前に気づいていたようでそれをしゃがんで回避する。
その後、香月が追撃しようとするも上鳴はそれを放電し、香月に回避行動を取らせることによって追撃をさせなかった。
距離を取り、二人は睨み合う。
「こちら上鳴。2階で香月と交戦中、尾白こっちに来れるか?」
[わかった、見つけたら後ろから仕掛ける]
「了解」
上鳴としても迂闊に攻撃は出来ない。
彼の"個性"は[帯電]。
確かに電気や雷の攻撃というのは初動を除けば最速の攻撃となり得るが彼は指向性を持たせることは出来ない。
つまり帯電するか、放電するか。それしか手はないのである。
また、彼にも限界はある。浪費はしたくないのだ。
近づいてきたところに放電するか、こちらから近づき、スタンガンのようにして相手を気絶させるか。
とった手段は、攻勢に出ること。
相手が何をしてくるかは分からない。しかし、行動させるまでもなく気絶させることが出来ればそれが一番だ。
走り寄る上鳴。微弱に帯電し、打撃攻撃を躊躇させるようにしていた。
しかし。
「ッ!っとマジかよ嘘だろ!」
近づいてくる上鳴に対して、微弱とはいえ帯電しているのにも関わらず全く躊躇せずに打撃攻撃を繰り出したのだ。
香月の足が上鳴の体を捉えようとするも、上鳴は腕で防御する。
「ッ…」
蹴りを放った香月は足をそのまま振り抜こうとしたが微弱な帯電のせいで少々怯み、当てただけになってしまう。
(おっも!!)
それでもなかなかに重い一撃によろめくが、負けじと上鳴も拳による攻撃をしようとする。
しかし香月はそれを避けてバックステップで距離を取った。
さて、次はどうするか。考えているところ、香月は行動を起こした。
すっ、と腕を引いて構える。すると手に光が集まっていた。
まるで、これから何かを放つぞ、と言わんばかりに。
("個性"か!?構えるってことはレーザーか!?)
出されても防御及び回避を行えるよう限界まで警戒する。尾白の増援を待っている今、このタイミングで後ろから仕掛けてくれれば上鳴として嬉しいのだが、どうやらそれは望めないようだ。
まだ少し、時間はかかりそうである。
上鳴は意識を目の前の香月に集中させた。
その時、一つの通信が入る。
[ちょ、上鳴後ろ!!]
「え?」
そう思って振り向いた時には時すでに遅し。
腕に違和感を覚え、そこを見ると確保証明テープが巻かれていた。
そう、香月が注意を引いている間に後ろから葉隠が忍び寄って確保証明テープを巻く。それが作戦だったのだ。
「くっそーそういうことか…」
はぁ、と溜息をつきつつ上鳴はビルから出ていく。
その時、短い時間で2人は話し合った。
「振り返って私を見ようとしたってことは…」
「恐らく核の場所には耳郎がいるな」
「だね。だったら多分私だけが行って核を確保しに行くって言うのは難しいかもしれないね」
尾白を香月と戦わせ、その間に核を葉隠が隠密行動しながら取りに行くのはたしかに有効だ。
核を守っているのが耳郎でなければ、だが。
隠密行動をしたところで音がすべてバレているならばそれは無意味。
一番有効な手立てを潰してくるあたり、相手もよく考えている。
時間はまだある以上、2人が選んだ戦略は各個撃破だ。
このまま尾白を捕まえた後、2人で耳郎を狙う。
時間が足りないと思ったなら核を狙う…という方向で訓練を進めていくようだ。
その頃敵チームは。
[一人多いっていうアドバンテージ、もう無くなったね。ウチらしかもういないよ。ったく何やってんだかあいつ…]
「終わったことは責めても仕方が無い、二人で追い詰める方法を考えよう」
これまで通り守りと攻めの二手に分かれて時間まで粘るか、隙があれば確保、という形で進めるようだ。
一人多いというアドバンテージが無い以上、2人で攻めるのは危険。
葉隠は確かに隠密行動に特化しているとはいえ恐らく戦闘能力はほぼないと考えた2人は危険視しているのは香月のみ。
[…そこ、曲がったらいるよ、背中を取れる。足音は一つだから多分どっちかいないと思う。他に足音は聞こえないし、多分どこかで葉隠さんが隠れてるかも]
「…見えた、いるのは香月君だけだよ。そっちは葉隠さんに気をつけてね。…交戦する」
そう言って尾白は通信を切る。尾白は接近戦で戦う者だ。
"個性"は尻尾。太く長く、大きな尻尾が生えている。
ただそれだけではあるのだが手が3本あるようなもので、単純に手数も多くなるし力も強い。
雄英の実技試験を乗り越えて来たあたり"個性"を扱う技術量はとても高いようだ。
尾白が足音と気配を消して後ろから攻撃しようと角を曲がる。
香月はまだ気付いていないのか、通信機器に片手を当てていて振り向かない。
葉隠と通信しているのだろうか。
足音を極限まで減らすため、跳ぶ。香月の背に向けて。
そして、尻尾を空中で振るい、身体を攻撃しようとしたその時。香月は振り返らずに伏せて尻尾を避けた。
(やっぱり気付くか!)
それを予見していた尾白は勢いそのままに香月を飛び越え、身体を反転させて香月と向かい合う。
(彼は見る限り遠距離でも強みを発揮する!そうなればこっちは不利になる!近接で"個性"を使う暇を与えない!!)
すかさず彼は香月に接近して左拳で突きを放つ。
香月はそれをするりと回転しながら避けてそのまま足を振り上げ、尾白へと攻撃。
しかし彼は腕を使ってそれを防御、後に尾で香月を薙ぎ払う。
香月は尾に向かって手を向けて"個性"を発動した。
尾白の尾での攻撃が香月の手の直前でまるでなにか壁に阻まれたように突然止まる。
キンッ、と小さな音を立てながら。尾白はそれに一瞬に驚く。
香月はそれを見逃さなかった。尾白の顔に香月の腕がバッ、と迫る。
どうやらその一撃は顔を打撃するための一撃ではなかったらしく、尾白はサッ、と体勢を低くして避けることが出来た。
横や後ろへと避けようとしないあたり、反撃を考えた行動なのだろう。
そのまま勢いをつけて香月の体へ拳を叩き込む。
攻撃を受けた香月はその勢いを利用して大きく後ろへと下がって距離を取った。
「ふむ、上手いな」
しかし当たったものの堪えていないようで平然とそう言う香月。
尾白の尾の攻撃を防いだ時のように攻撃に合わせて障壁を発生させ、ダメージを防いだようだ。
集中し、香月から目を離さない尾白。その時。
─カラン…─
「!?」
尾白の後方から音が聞こえた。まさか後ろに葉隠が来たのか、と勢いよく振り返る。そのせいで隙ができる。
香月はそれを見逃さず、攻撃を仕掛けた。
手を押し出すようにまっすぐ伸ばす。すると何かが尾白へと真っ直ぐ飛んでいく。
「くっ!」
何かを放たれた事に気づき、彼は正面を向いて顔を守ろうと顔の前で腕を交差させる。
交差させた腕を中心に、痛みが体を襲う。
どうやら威力はさほどでもないもののレーザーのようなものが発射されたようだ。
「!どこ行った!?」
防御を外し、視線を香月に向けようとしたが、そこに既に香月はいなかった。
[前の曲がり角から階段に向かって走ってる!足音は一つ、多分葉隠さんは近くにはいない!]
「了解!」
尾白はそれを追うために走り出す。耳郎と交戦させないためである。
足止めをして、時間切れまで耐え切るためだ。
葉隠と耳郎の勝負なら攻撃手段が葉隠よりも多い耳郎が有利だろうと考えて尾白は香月の足止めを集中することにしたのである。
曲がり角を曲がった瞬間、尾白は急に足を止めた。
「なッ!」
「よ、俺だよ」
目の前に突然香月が現れたからだ。
突然の出来事に驚き、急停止する尾白に隙ができる。
その隙に彼は尾白に襲いかかり、腕に確保テープを巻いた。
「…くぅ、そういうことね」
尾白の腕に確保証明のテープを巻き終えた香月。
先程の足音は香月の音ではなく葉隠の音で、彼は尾白が来るのを立ち止まって待ち構えていた。
音探知を出来るということを逆手に取った、という事だ。
「音探知ができる耳郎さんに頼りすぎたってことか…これはやられた」
やられてはいるものの、なるほどそんな手があったか、と内心で感嘆しつつ彼はビルの出口へと向かって行った。
それを尻目に彼は移動を始める。
葉隠はそのまま階段を目指しており、それを追いかける形だ。
小走りをする葉隠に追いついて話し掛けた。
「時間がないな」
「そだね、急ごう!」
二人は迷いもなく上へと続く階段へ向かっていた。
それをもちろん耳郎は察知していた。
「…やっぱり上に来るよねー…」
壁に耳たぶの先にあるプラグを刺しながら呟く。
尾白と交戦したフロアよりも下にいる可能性ももちろんある。
しかし、彼らはその可能性を考えさせないほどまっすぐとこちらへ進行していた。
耳郎は仮説を立てる。先程、階段へ向かおうとしていた時、尾白は追いかけて行こうと。
ということは、耳郎自身との戦いをさせないために足止めに行こうとしていたのだろう。
ということは上にいるのでは無いかと行動から考えたのだろうと。
「まだこのフロアまで1フロアある…少しでも時間を稼げばウチらの勝ちだ」
そう。尾白と交戦したフロアは2階。耳郎がいるのは4階だった。
3階というワンフロアを探し回るならおそらく時間はほぼ無くなり、時間が少し残っていたとしてもたった少し時間を稼げば勝ちになる。
しかし、ここで耳郎の中で懸念材料が現れた。
(!…足音が一つしかない…片方はどこ行った?)
もしかしてどこかから移動してないのか。
しかし時間が無いこの中で一人が移動しないメリットはない。
香月の"個性"が不明である以上、彼が浮かんで移動出来る手段もあるのかもしれない。
そうなると現在状況で数で劣っていることをカバーしていた音探知の効果が半減、もしくは激減したのだ。
(片方だけでも探知できる…あとは1人でどこまで防衛できるかか)
静かなビルの中に響く一つの足音は音は着実に階段へと近づき、4階まで来た。
足音の重さや特徴を考えると4階に来たのは恐らく葉隠だ。
3階を飛ばして4階に来たということはおそらく手分けしているのだろう。
耳郎にとって最悪な状況は二人共に行動していることと既に場所が割れていること。
もし香月がなにか探知系の"個性"の手を隠していたとすれば場所が割れていることになる。
(これで葉隠さんが真っ直ぐこっちへ来ればウチの場所は割れてる…どう来る?)
耳郎の心配とは裏腹に足音は階段の近くから探索していた。
どうやら耳郎の場所が割れていることはないようである。
耳郎にとって攻勢に出ることは自殺行為に近い。故にずっと防衛していた。
なぜかと言えば、耳郎の音探知は耳たぶの先のプラグを壁や床に刺しておく必要があるため、攻勢に出る時は探知が出来なく、そのあいだにハリボテの核が狙われればほぼ負けが確定してしまうからだ。
ヒーロー側2人が耳郎を探す。時間だけが過ぎていった。
そして、時が来た。
(…来る)
探知によってそれを察知した耳郎は壁からプラグを抜いて戦闘態勢に入る。
ガチャッ──
ドアが空いた瞬間、耳郎は耳たぶのプラグを伸ばして拘束しようとした。
「うわっ!」
声を上げつつドアを閉める葉隠。
拘束の手が伸びている以上近づくのは危険と判断したのだろう。
耳郎は追いかけない。尾白は追いかけたところを香月に捕えられたのだ。うかつに攻勢に出たら足元を掬われる。
「香月君、いたよ。階段から左直進、窓がある部屋。今から戦うから音探知は出来ないと思う!」
[了解、すぐに向かおう]
場所を伝えて、葉隠は準備を始める。耳郎との真っ向勝負のだ。
確かに葉隠は耳郎のように攻撃や拘束ができる個性ではない。
しかし「見えない」というアドバンテージがある。
人は戦う時、最も視覚を頼りにする。その頼りを彼女は最初から砕いているのだ。
「よし…!」
手袋を外し、靴を脱いでドアノブに手をかける。
ちなみに、わかるとは思うが。今、葉隠は全裸である。
たしかに透明人間としては正解の選択肢。
しかし年頃の女子としては倫理的にどうなのだろうか。
まぁもしクラスの男がその裸を見ようとしても見えないから意味は無いが。
再び勢いよくドアを開いて葉隠は突入する。
向かう先は耳郎、ではなく部屋の隅だった。
サッと、入って隅の方で止まり、息を潜める。
耳郎も、入ってきたことは認識していた。
しかし、相手は物理的に姿が全く見えない。
やはり音を頼りにするしかない、そう思って床にプラグを刺しつつ、ゆっくりと見渡す。
(これで…)
部屋の中に置いてある物のうち、小さく、片手で持てる程のものを見つける。
耳郎がキョロキョロしているうち、向こうを向いた瞬間、その物を手に持ち、核の近くへと投げる。
コッ、と床に音を立てた。
「そこか!!」
耳郎は素早く床に刺さってない方のプラグを音がしたところに鞭のように振るう。
しかし、その攻撃は空振りに終わる。瞬間、葉隠は耳郎の方へと走り寄った。
「ッ…そういうこと!」
耳郎は再度プラグを伸ばして鞭のように振るうと葉隠の脇腹に当たったらしく、ビシ、と音を立てた。
しかし葉隠もただ攻撃させるだけではない。当たったプラグの先を掴んだ。
攻撃をさせないため、また、探知をさせないためでもある。
耳郎もまた、ただ掴まれるだけではない。掴まれたプラグを勢いよく縮める。
「うわっ!」
急に縮められた勢いで葉隠は耳郎の方へと接近させられる。
耳郎は既に確保証明のテープを手にしていた。
接近させられた葉隠は耳郎のテープを手にしていた手を掴んでテープが巻かれることを防いだ。
プラグを持っていた手を離し、もう片方の手も掴む。
「ね、ウチの手離してくれない?」
「そっちこそ確保証明のテープしまってよ!」
ギリギリ、と均衡していた。先に行動を起こしたのは耳郎。
離されたプラグの先を葉隠に刺し、爆音を流す。
その衝撃に葉隠の手が緩んだ。その時、耳郎は勢いよく腕を振るって手の拘束を解いて確保証明のテープを葉隠の体に巻くべく、突進する。
「かはっ…」
突進された衝撃で葉隠は肺の中の空気が抜ける。
同時に、体に確保証明のテープは巻かれていた。
突進した理由は至極簡単な話、相手が見えないからだ。
その場で腕に巻こうとしたところで、見えないなら空を切ることもある。
確実に巻くために体に突進し、そのあと体に巻いたのだ。
「あー…やられたー!」
巻かれたことを自身で確認した後、ドサッ、と床に寝転んだ。全裸で。
「見えないってやっぱ強い…さて、あとは香月か」
そういって、再び床にプラグを刺そうとした次の瞬間。
ガシャァン!!!
何かが割れた音が大きく響く。ぶわっ、と風が部屋の中に入ってきた。
どうやら窓が割れたようである。驚き、耳郎はそちらを向いた。
「これはさすがに、予想出来なかったか?」
そこには、耳郎の方を見てニヤリと笑いつつ部屋の中へと突撃してくる香月がいた。
もちろん突撃していく場所は核。それに気付いた耳郎も防ごうと耳のプラグを伸ばす。が、それは間に合わなかった。
「確保、と。」
核の近くに着地して手を核へと当て、確保したことを言葉で表す。
「んん〜!外から来るとか考えないでしょ誰も。…やられたな」
耳郎がそう呟く。瞬間、オールマイトの声が大きく響いた。
[試合終了!!ヒーローチームwin!!!]
若干ギリギリではあったが、香月葉隠ペアが勝利した。
負傷者は2名。尾白と葉隠だ。
尾白は香月の遠距離攻撃を受けたのみ、葉隠に至っては手加減された音のダメージのみ故に治療も必要ないくらいだ。
戦闘訓練にしてはとても平和な結果となった。
講評を受けるために、5人はモニター室へと戻っていく。
誰がベストになり、どんな講評を聞けるのだろうか───
何か変なところないかなー大丈夫かなーと思いながら投稿。
誤字脱字報告待ってます。
あと感想書いてくれると梓さんは喜びます。
なお。
「葉隠。窓がある部屋と言ったが…恐らく法的にも大体の部屋に窓はあるぞ」
「あ。…そ、そうだね」
(焦ってたんだな)
みたいな会話があったとかなかったとか。