僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮) 作:楽園の主
あ、どうでもいいですか。本編どうぞ。
朝、登校の時間。飯田天哉は学校への道を歩いていた。
あと少しで門が見える、というところで見覚えのある背中を見た。
多少の小走りでその人に追いついて話しかける。
「香月くんじゃないか。今日は少し遅いのだな」
「ああ、少し寝坊をな。」
香月は基本的に飯田よりも早い時間に学校の教室にいる。
飯田もそこそこ早めの時間には行くのだが、それよりも早い。
いつも登校中に出会うことはなかった。だからいつもより少し遅いと気がついたのだ。
「結局、"個性"は教えてくれなかったな」
「卑怯だと思うか?」
「いや!それも情報戦の1種!戦略の一つさ」
妙な腕の動きとともに話す飯田に答える香月。
門が見える、とその時、二人の目は何らかの集団を目にした。
怪訝な思いをしつつそこを通ろうと近づくと、そこに居たのが報道陣だ、ということに香月は気がついた。
そこを通る雄英生徒に何かを聞いているようだった。
しかし避けて通ることも出来はしない。門の前に陣取っているからだ。
学校へ入るには集団の真ん中を通っていかなくてはならない。
もちろん報道陣も登校する生徒のことを考えて道は開けているのだが、避けられないように上手く道を作っていた。
「教師オールマイトについてどう思ってます?」
2人はそこを通ると当たり前だが報道陣の質問が放たれ、カメラが近づく。
カメラが2人を捉えようとした時、香月は飯田の後ろへとスッ、と隠れた。
それを少し疑問に思いつつも飯田は報道陣の質問に答える。
「最高峰の教育機関に自分は在籍しているという事実を殊更意識させられますね。威厳や風格はもちろんですが他にもユーモラスな部分など、我々学生は常にその姿を拝見できるわけですからトップヒーローとは何をもってしてトップヒーローなのかを直に学べるまたとない機会であると認識しています。」
飯田はペラペラと長く答えた。まだ続くのか?と香月は思ったがどうやらその通りではなく、少々ほっとしたようだ。
その後、飯田から香月にターゲットを変えたようでマイクが香月に向けられた。
が、報道陣の質問が投げかけられる前にささっ、とそのまま校内へと入っていった。
突然の動きに驚き、焦りつつも飯田はそれについて行く。
「どうしたのだ?香月君。報道陣の質問を避けたように見えたのだが…」
理由は言わなかったが、香月は苦手でな、とただ一言だけ言った。
なぜなのか?と疑問を少し持ちつつも飯田は答える。
「なるほど、そういうことか。すまない、気が利かなかった!」
「気にしないさ」
その後も、多少の会話をしつつ教室へ向かった。
教室に入ると、数人の生徒を目にする。大半の生徒はまだ来ていない。
2人も各机へと座り、SHRが来るのを待っていた。
その後も続々と生徒達が登校してきて、教室は少しずつ騒がしくなっていった。
皆がワイワイと話す中、だんだん時間が過ぎていった。
もうすぐ時間が来るというところで皆は着席する。
しかしながら近くの人と話していた。が。
「はいおはよう」
SHRの時間が来て、相澤先生が入って来て一言そう言った。
それだけで皆は一瞬にしてピタリと声を止め、教室の中は静まる。
「昨日の戦闘訓練おつかれ。Vと成績は見せてもらった。」
その言葉に、何を言われるのだろうか、と場が緊迫する。
「爆豪。お前もうガキみたいな真似すんな。能力あるんだから」
その言葉に、分かってる、とぶっきらぼうに答えた。
「で、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か?」
「あっ!いや、その…はい…」
先生としてもちろんのこと、「出来ないから仕方ない」と緑谷には言って欲しくない。いや、言わせない。
通常、"個性"は子供の頃から備わっており、反動が来ないように扱うことは普通なのだ。
彼の"個性"は非常にパワーがある、が、それを制御できなければ意味はない。
「俺は同じことを言うのは嫌いだ。"それ"さえクリアすればやれることは多い。焦れよ緑谷」
「っはい!!」
ただの叱責するだけではなく、しっかりと激励?されたのが嬉しかったのだろうか、大きな声で返事をした。
「全員分言う時間はないからこれで終わる。そんで本題だ。…急で悪いが君らには今日…」
その言葉に、皆に戦慄が走る。
もしかして臨時のテストでもあるのか、と。
しかし、そうではなかった。
「学級委員を決めてもらう」
不安が的中せず、いつもとは違って普通に学校っぽいことで嬉しかったのだろうか、皆は学校っぽいことキター!と叫んでいた。
その後、皆は我こそはと手を挙げ始める。
それも、ほぼ全員。手を挙げていないのは片手で数えれるほどしかいなかった。
通常、普通科などでは学級委員といえば雑務、というイメージで敬遠されがち。
しかしヒーロー科では「集団を導く」という点においてトップヒーローの素地を鍛えられるとしてとても人気なのだ。
「リーダー!やるやる!」
「委員長!やりたいですそれ俺!!」
「僕の為にあるやつ☆」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
このクラスでもそれは例外ではなく、控えめな性格なのだろう生徒も手を挙げていた。1人妙な発言をしているやつはいたが。
そんな中、やはり香月の手は上がらなかった。
それに轟は気がついた。
「…お前は立候補しないのか?」
彼が話しかけたのは右隣の席にいる香月 玲だ。
左手を上げつつ、そう話しかけた。
あまり話しかけられることがないだろうと思っていたのだろうか、話しかけられた香月は少し驚いたような顔をして轟の方を見る。
「…まぁ見てな。投票になるからよ」
「?…そうなのか?」
「ああ、なるね」
その言葉の後。ワイワイと騒ぐ中、一つ、大きな声が上がる。
「静粛にしたまえ!!」
その言葉に、皆は声のした方を見た。飯田だ。
「多を牽引する責任重大な仕事だぞ…!やりたい者がやれるものではない!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!」
ただならぬ雰囲気に皆は気圧される。
「民主主義に則り真のリーダーを決めるというのなら…これは投票によって決められるべき議案!!」
「そびえ立ってんじゃねぇかなぜ発案した!?」
飯田は発案しつつも手は天を貫くかのように真っ直ぐにあげられていた。
彼としても、やりたいことには変わらないのだ。
投票によって決める、とは言うにも皆にあってからまだ間もない。
信頼、というには日が浅すぎるのだ。そうなると、自分に票を入れるのは当然。
しかし、だからこそ複数票取ったものが真にふさわしいのでは、と彼は言った。
どうですか、と先生に言ったところ、時間内に決まるならなんでもいいそうで、案は受け入れられた。
「ほら、な?」
「…本当だな」
そんな会話を2人がした後、黒板に、皆が名前を書いていく。
皆が名前を書き終わり、投票が始まる。
投票の方法は、紙に名前を書いてそれを教卓にある箱へと入れる、と言った感じだ。
皆は名前を書いて続々と入れていく。
投票の結果、ほぼ全ての人間は1票。自分で自分に入れていた。
が、そんな中。
「僕3票!?」
緑谷 出久が3票で、八百万 百が2票だった。
これにより、緑谷が委員長、八百万が副委員長となった。
しかしそれに異論を唱えるものは当然いない。
緑谷は訓練の時などで分かったが、なんだかんだアツイ所がある。
八百万は講評の時に意見をいい、それが素晴らしいものだったりカッコいいところがあるからだ。
「1票…わかってはいた!さすが聖職と言ったところか…!しかし!入れてもらった1票!それはとてもありがたい!!」
「他に入れたんだなお前…自分に入れりゃなんとかなったかもしれないのに何やってんだ飯田…」
数名の同情を受けた飯田であった。
このあと午前の授業と昼休みを挟み、午後の授業でほかの委員決めをするようだ。
HRが終わり、その後はまた授業が始まった。
時は過ぎ、お昼。
昼食を求めて生徒の皆が大食堂へと向かう。
基本的に、弁当を持つ者はいない。なぜなら。
雄英高校の大食堂には、クックヒーロー ランチラッシュがいるからだ。
彼の料理の腕は超一流、その上に高校生の財布に優しい程の安価で食べることが出来るのだ。
この1-Aの皆もそれはもちろん例外ではなく、ぞろぞろと教室から出ていく。
「あ、香月君。よかったら一緒に行かない?」
「緑谷か。ああ、いいよ」
呼びかけに気付き、彼は頷いて緑谷について行く。
他には麗日お茶子、飯田天哉がいた。今日はこの4人で昼食を食べるようだ。
大食堂へとついた彼らは注文を終え、皆で席に座る。
「人、凄いなぁ…」
緑谷が人の多さに気圧される。
ヒーロー科の他にも、サポート科や普通科など、全ての学科の生徒が一堂に介するから、それはそれは多人数になる。
4人が注文を終え、席につき、食べ始めた頃。
「いざ委員長をやる、となると務まるか不安だよ…」
「ツトマル」
「大丈夫さ」
「問題ないと思うがな」
3人とも問題は全くない、と自信ありげに言った。
緑谷のここぞという時の能力や判断力は"多"を牽引するのに値する、と飯田は考えていたらしく、それを緑谷本人に伝える。
「だから君に投票したのだ」
(僕に投票したのは君だったのか!)
緑谷にとっては目からウロコ状態である。
「でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの?メガネだし!」
(なにげにざっくり行くよなあ麗日さん)
その空気の中飯田は話す。
やりたいか相応しいかは別の話、僕が思う正しいを信じ、投票したのだ。と、そう言った。
ちなみに、飯田が他の人に投票したのにも関わらず、0票ではなく、1票あったのは香月の仕業だ。
自分ではなく、飯田に入れた、というのは皆は知る由もない。
「「僕…!」」
緑谷と麗日は飯田の一人称に反応を示す。
「ちょっと思ってたけど飯田くんて、坊ちゃん!?」
「坊!?」
「…発想が安直過ぎやしないか」
一人称からそう思ったらしい麗日はそう聞いた。
本人はそう言われるのが嫌で、一人称を俺にしていたらしい。
実際、彼の家系は代々ヒーロー一家。彼はその次男だった。
東京の事務所に65人ものサイドキックを雇う大人気ヒーローである、ターボヒーロー インゲニウム。
それが彼の兄だという。その事実に緑谷は興奮した。
緑谷はオールマイトオタクであり、他の全てヒーローもノートにメモをしているほどのヒーロー大好きっ子。
故に人気ヒーローであるターボヒーローインゲニウムを知らぬはずはなかった。
規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー。彼はそんな兄に憧れてヒーローを目指し始めたのだと言う。
「人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。俺よりも一枚上手である緑谷くんが就任するのが正しい」
緑谷は思った。緑谷自身、オールマイトに憧れてヒーローを目指している。
緑谷にとってのオールマイトが、彼にとってインゲニウムなのかと。
そして、次の話題を出そうとしたその時。
食堂、否、全校舎にけたたましく警報音が鳴り響く。
[セキュリティ3が突破されました。生徒の皆様は速やかに屋外へと避難してください]
飯田がそこに居た上級生にセキュリティ3とは何か、と問うと。
校舎内に何者かが侵入してきたという意味であり、三年間で初めてだという。
その音とともに全校生徒は一斉に動き始める。たった一つしかない出口へと。
そうなると、もうすし詰め状態で、動けたものではなかった。
"さすが最高峰、パニックへの対処も迅速だ!しかし、いったい誰が侵入してきたというのか?)
飯田はそんなことを考えつつも、流れに流され、窓へとベタりと張り付かされ、外を見る。
そこに居たのは、敵でもなんでもなく、報道陣が中に入ってきただけであったのだ。
そのことを皆に伝えようとするも、皆は聞く耳持たず、その上、流れに押され、言葉を発することもままならない。
先生方は恐らく対応に追われており、ここへ通達ができていないのだろう。
この場で大丈夫なことを知っている人間はどれだけいるのだろうか?
皆、気付かずパニックに陥っている。
「飯田くーん!!!」
「麗日くん!!」
彼女もまた人混みにつぶされ、身動きが取れなくなっている。
飯田は考える。
こんな時、兄なら、緑谷くんなら。2人ならどうするか、と。
「麗日くん!俺を…浮かせろ!!」
「へ!?」
麗日と飯田は手を叩き合い、その瞬間飯田の体がふわりと浮かび上がる。
麗日の"個性"は無重力。
五指の先にある肉球のようなものがあり、それで触れたものや人の重力ベクトルを無効化、無重力状態とする、という"個性"だ。
その後、辺りを見渡す。1番みなの視線が集中する場所。そこへと向けて、飯田の"個性"、エンジンを発動、壁を蹴る。
「ヌオオ!?」
しかし、見当違いの方向へと飛んでいってしまう。
次、壁に到達した時、もう一度!
そう思ったその時だった。
「力を貸そう」
「!!香月くん!?」
そこに居たのは、香月。目線が同じ位置に、だ。
よく見れば彼はまるでなにか見えないものの上に立っているかのように宙へと浮いていた。
その事実に驚いていたのもつかの間、彼に腕を掴まれた。
その状態で、香月は腕を大きく振るい、飯田は投げられ、真っ直ぐに飛んでいく。
場所は食堂の出口上方、EXITと書かれた電光看板の上だ。
その上に立ち、天井の通気口のようなものをつかむ。
短く、端的であって、大胆に。
「大丈ー夫!!!」
一言、叫んだ。その言葉に皆は飯田の方へと目線を向ける。
「ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!大丈ー夫!!ここは雄英!最高峰の人間にふさわしい行動を取りましょう!!」
その言葉に皆は冷静さを取り戻し、ゆったりと歩き始めた。
(はは、非常口のマークのようだな)
飯田の行動に素晴らしいと思いつつもその姿に笑いながら、浮いた状態から床へと戻っていった。
しばらくして警察が到着し、マスコミは撤退。昼時に起きたマスコミ騒動は幕を閉じた。
そして、午後。ほかの委員決めをする時間だ。
委員長は緑谷。投票で決まったとおりに。
取り決めを行おうとした、その前に、彼は言った。
「やっぱり、委員長は飯田くんがいいと思います」
食堂のマスコミ騒動の時、あんな風に学年問わずの人間達をまとめることが出来た。故に、飯田が委員長をするのが正しいと思った。そう、彼は皆に伝えた。
皆はそれに異論を唱えなかった。
「委員長の指名ならば仕方あるまい!」
満更でもなさそうに彼は立ち上がり、教卓の方へと歩いていき、逆に緑谷は席へと戻る。
こうして、飯田が委員長になったって話。
それにしてもマスコミは如何にして学校へと侵入してきたのだろうか?
それを知るものは、生徒にはいない───
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