僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮) 作:楽園の主
本編どうぞ。ゆっくりしてってね。
PM0:30 教室にて。
「今日のヒーロー基礎学だが…俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」
チャイムと同時に、担任である彼、相澤はそう言った。
見ることになった、ということは特例なのだろうか?そう思った人間が数名いた。
発言的に考えれば、その通りなのだろう。
「はーい!何するんですかー?」
そう発言したのは瀬呂範太だ。
実のところ、先生から今日、何されるかは通達されていなかった。
相澤先生はレスキューと書かれたカードを出しつつ今日やるヒーロー基礎学は災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だと伝える。
「レスキュー…今回も大変そうだな」
「ねー!」
「バカおめーこれこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ!腕が!!」
「水難なら私の独壇場ケロケロ」
生徒が思い思いのことをいい、教室がざわつく。
「おいお前らまだ途中」
鶴の一声のように、その一声で皆はピタリと声を出すのをやめた。
今回の訓練、コスチュームの着用は各自の判断で構わないらしい。
中には活動を限定するようなコスチュームもあるだろうからだ。
訓練場は少し離れた場所にあるらしく、着替えた後、バスに乗って移動する。
説明はここまでで、さぁ準備をしろと言わんばかりに先生は先に出ていった。
コスチュームの着用は自由だ、とは言ったが着ない者など居なかった。
なぜならば、着ていた方がヒーローとして学んでいるという実感が湧き、心が踊るからだ。
皆は各々のコスチュームを持ち、更衣室へ向かう。
皆の足取りは素早かった。遅ければ先生に怒られることに加えて、これからの訓練が楽しみだからだろうか。
皆は着替え終わり、バスが止まる場所へと向かう。
ちなみに、このクラスで緑谷だけがコスチュームを着ていなかった。
理由はとてもシンプルで、着ることが出来ないからだ。
先日の訓練で爆豪に壊されてからまだ直ってないのだ。
「バスの席順でスムーズに行くよう番号順2列で並ぼう!!」
ピピー、と笛を吹きながら飯田が言う。
二列で並べばたしかに流れつつ座れるのでスムーズだ。
しかしそれは四列標準であればの話。
実際のバスの席型は後ろの方は四列標準だったが前の方から中盤までは電車のように、席が横長で対面する形だった。
つまりは二列に並ばなくても比較的スムーズだったのだ。
「こういうタイプだったか!!くそう!!」
「意味なかったなー」
悔しさを叫ぶ飯田、適当に慰める芦戸。
それを見流しつつ皆はバスの座席へと座っていった。
そんな中、皆の後ろの方にいる香月は開いている座席を探す。
後ろから2番目の席が空いていた。ふと、そこを見ればいたのは耳郎だった。
香月はその隣へと移動する。
「隣、いいか?」
「え、うん。いいよ」
返事を聞いた後、彼は隣に座る。
「音楽、よく聴くのか?」
「え、うん、聴くよ。香月も聞いたりすんの?」
「まぁな。時間が空いた時はお気に入りの曲を聞いたりする程度だが…耳郎はどんな曲を聴くんだ?」
「えと、今聞いてんのはこれなんだけど…」
何気ない会話。まともに話すのは初だが会話にぎこちなさはない。
香月が話しやすい雰囲気があるかと言えばそうではない。
香月は"話しをする"のと"話をさせる"のが上手い、つまりは会話が上手いからだった。
そんな中、話の流れは"個性"へと向かう。
「このクラスでも色んな"個性"いるけど、香月の"個性"万能だよね。詳しく教えて貰った人まだ居ないけどさー」
バスの椅子へ持たれつつ彼女はそう言う。
攻撃に防御、身体能力強化までする"個性"。傍から見ればそりゃ万能にも見える。
「…ただ強いだけじゃないさ。どんな強さにしろ、強さには必ず相応の代償がある」
遠くを見つめながら彼はそう言う。
その様子に何か地雷を踏んでしまったかと思う耳郎。
「あの、なんか地雷だった?」
「いや、感慨深いことがあってな。…努力したな、と思ってよ」
「あ、そゆことか!よかった、なんかやばいこと言っちゃったかなと思って」
どうやら耳郎の思いは杞憂に終わったらしく、笑い話となった。
そんな中ふと、2人の耳に前方の者達の会話が彼らの耳に入る。
「私、思ったことをなんでも言ってしまうの。緑谷ちゃん」
「あ!?はい!?蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで。…あなたの"個性"。オールマイトと似てる」
その言葉に、何故か緑谷は冷や汗と共に焦りだした。
ぴくり、と香月は反応する。緑谷とオールマイトはなにか、先生と生徒以外に、なにか繋がりがあるのだろうか。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しないぜ?似て非なるアレだぜ。」
それに否定を入れたのは切島だ。
「しかしシンプルな増強型の"個性"はいいな!派手で出来ることが多い!…俺の硬化は対人戦じゃ強えけど如何せん地味なんだよなー」
切島鋭児郎。"個性"硬化。自身の体を硬化することが出来る"個性"で、攻撃に耐えることはもちろん、硬化した瞬間、鋭くなるので攻撃も可能。
地味だ、という言葉に緑谷はそんなことは無い、かっこいいと返した。
「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み」
ふっ、と笑いつつ言ったのは青山だ。
青山優雅。"個性"ネビルレーザー。へそから貫通能力が高く、輝くレーザーを放つことが出来る。しかし、長く射出し続けると腹を下してしまうという欠点がある。
「でもお腹壊すのはヨクナイね!」
隣にいた芦戸三奈に欠点を指摘される。まるでナイフで心の臓を突き刺したようだった。
それに青山は見た目はあまり変わらないが結構落ち込んだようだった。
「派手で強いっつったら轟とか爆豪あとは香月だよなぁ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」
蛙吹の何気ないこの言葉に爆豪は突然立ち上がって怒号を撒き散らす。
「んだとコラ!出すわ!!!」
「ホラ」
「はは、この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげえよ」
笑いながら上鳴が彼を指さしてそういう。
「テメェのボキャブラリーはなんだコラ殺すぞ!!!」
「爆豪くん本当に口が悪いな君は」
今にも飛び出して襲いかかりそうな爆豪に、隣に座っていた人は少々迷惑そうに体を避けてみていた。
そんな会話を聞いていた女性二人、麗日お茶子と八百万百は。
「低俗な会話ですこと。」
「あはは、でもあたしこういうの好きだ!」
それからしばらく。現地に到着したバスは止まり、皆は続々とバスから出て訓練場所へと向かう。
大きな建物の扉を開くと、生徒の皆の目に入ったのは圧巻の光景だった。
前方に見える大きな噴水を中心として、多方向に色々なゾーンが見える。
雨が降るビル街のようなものだったり、炎上する都市だったり、工事現場だったり。
「すっげぇ!!USJかよ!!!」
そんな言葉を放った者もいるくらいだ。
水難事故、土砂災害、火事等、様々な災害を想定し、訓練することができるように作られた場所だ。
それを作ったのはスペースヒーロー13号というプロヒーロー。
災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的ヒーロー。
「僕が作った演習場です。その名も…嘘(U)の災害(S)や事故(J)ルーム!」
((((((USJだった!!))))))
ざわざわと話し始める生徒は尻目に、13号と相澤は少々会話した後、開始することにしたのか、13号がこちらを向いた。
「えー始める前にお小言を1つ…2つ…3つ…」
((((((増える…))))))
だんだん増えていく数字にクラスの大半の思いがシンクロした。
「皆さん、ご存知かと思われますが。僕の"個性"は"ブラックホール"。どんなものも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その"個性"でどんな災害からも人を救いあげるんですよね!!」
緑谷の知識と共に、激しく頷く麗日。
緑谷はヒーローがそもそも好きなのだが、麗日はこのヒーローが特に好きなのだろう。
「ええ…しかし、いとも容易く人を殺せる力でもあります。皆様の中にも、そのような"個性"もいるでしょう」
その言葉に、皆は神妙な空気になった。そのまま13号は続ける。
超人社会は"個性"の使用が資格制にして厳しく規制することで一見成り立っているようには見える。
だが、1歩間違えれば容易に人が殺せる"いきすぎた個性"をここが持っていることを忘れてはならない。
相澤のテストで自身の力の秘めている可能性を知り、オールマイトの対人訓練でそれを人に向ける危険性を知った。
この授業では心機一転、人命のために"個性"をどう活用するかを学ぶ。
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと、心得て帰ってください。以上!ご清聴ありがとうございました!」
終了とともに生徒達から拍手と喝采が13号先生に送られた。
相澤先生は、その声が少し落ち着いた瞬間を見計らって前に出て、開始の合図をしようとした。
しかし、彼は背後の微細な異変に気づく。
噴水のところだ。小さいものだった。黒い、霧のようなものが収束している。
だんだん大きくなっていた。そして、黒い霧の中心に、指先が見え、そして。
見知らぬ、悪意の持つ顔が、覗き込んだ。
瞬間、相澤は叫ぶ。
「ひとかたまりになって動くな!13号!!生徒を守れ!!」
黒い霧は気づかれたからだろうか、急速にその範囲を広げ、その中からは大量の人が出てきた。
「何だアリャ?入試の時みたいにすでに始まってるパターンか?」
切島の疑問の声。
「動くな!あれは敵だ!!」
それに応えた相澤。その言葉に、生徒の緊張感は一気に増す。
黒い霧の端に、目のようなものが二つ、現れた。そこから、声がする。
「13号に、イレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがいるはずなのですが…」
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」
声の低さから察するに、男だろうか。その者と、相澤は話していた。
言葉から察するに、教師側の日程表が紛失していたのだろう。
それは、目の前に存在する敵らの手に渡っていたという事だ。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…」
丁度、真ん中にいる男が喋り始める。
顔を始め、首元や腕などにたくさんの手がある。その手はまるで、後ろから彼を引き止めるように各所を掴んでいた。
それは手のみで腕などはあらず、とてつもなく異彩を放っていた。
「子供を殺せば来るのかな?」
その言葉に、ここにいる大半の者に戦慄が走る。
「敵…」
一人の男が、そう、呟く。
プロのヒーローが、何と向き合い、何と戦っているのか。
それは、途方もない悪意────
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