死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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第31話

友希那side

 

4人による激闘が終わり、私たちは先に昼食をとっていた。今日の昼食は祐奈さん特製の冷やし中華だ

 

「みんなできたよー!1人ずつ持ってってー」

 

食堂にあるテーブルは私たち14人が一斉に食べられるほどの大きさだった

 

「友希那ちゃんはリサちゃんの分も持って行ってあげて。巴はひまりの分もよろしくね」

 

「「分かりました」」

 

この冷やし中華、お店でよく見るやつより見た目が華やかだ

 

「翔たちは長風呂だからね。先に食べとこうか」

 

「お風呂上がりましたー!」

 

「あれ?翔君と琉太君は?」

 

「あの2人長風呂でね。いつも遅いんだよね」

 

男子が女子よりお風呂が長いことってあるのね。意外だわ

 

「さて、部屋割りも決まったし食べたら早速練習しようか。私たちも見てあげるからね」

 

「祐奈先生は何の楽器やってるんですか?」

 

「今は先生いらないから。基本的に全部できるけどドラムが1番得意かな。ベースは当てにならないけど」

 

「お姉様、当てにならないとか言いながらできてるじゃないですか。私にも匹敵するレベルのくせに」

 

「比べる次元が違うからね?花梨こそ、キーボード人並み以上にできるじゃん」

 

この会話も何度か聞いた気がする。Xaharの苦手の水準が高すぎる

 

「会話の内容が既におかしいんだけど...祐奈さんはどっちを見てくれるんですか?」

 

「どっちでもいいよ?花梨がどっち見たいかで決めるわ」

 

「私もどっちでもいいです。...じゃあ今日はRoselia見ますね。私とお姉様は交代で見ればいいでしょう」

 

「おぉ、それ名案。Afterglowのみんなよろしくね。特に巴、ビシバシ鍛えてやるから覚悟しておいてね」

 

「よっよろしくお願いします!」

 

「それでは私は楽器のチューニング済ませて来ますね。みなさんはごゆっくり」

 

「するわけないでしょう?みんな、早く食べて練習するわよ」

 

それにしても、翔たち遅すぎないかしら?もう30分くらい経っているわよ?

 

「花梨さん、スタジオは何処にありますか?」

 

「あぁ、奥に3つありますね。1つだけ大きいので他の部屋を使いましょう」

 

今この子はなんて言ったのかしら?この屋敷にスタジオが3つ?しかも1つ大きいってどうなってるのよ

 

「...案内してもらえますか?」

 

「楽器取ってくるので待っててください。ついでに氷川さんのも持って来ますか?」

 

「私はそこに置いてあるので大丈夫です」

 

「花梨、この屋敷はどうなってるのよ。どう考えてもおかしいわ」

 

「そう言われましても...親戚が気分で作ったんじゃないですか?」

 

「そっそう...まぁいいわ。みんな食べ終わった?」

 

「アタシはオッケーだよ!」

 

「あこも食べ終わりました!」

 

「私も大丈夫です」

 

「それじゃあ行きましょうか。花梨、今日はよろしくね」

 

「分かりました。最初は全体で通してやりましょうか」

 

「分かったわ」

 

翔や花梨がいるとメニューも一瞬で考えてくれるからとても助かる

 

私たちは食器を片付けスタジオへ向かった

 

蘭side

 

ひまりも食べ終わったので、私たちはバンドの練習をしていた。今日は祐奈さんが見てくれるらしい。他のみんなが仲良かったので聞いたら、どうやらみんなのクラスの担任らしい

 

「蘭、とりあえず自己紹介しとけよ」

 

「分かってる。ギターボーカルをやっている美竹蘭です。今日からよろしくお願いします」

 

「よろしくね。それじゃあ早速やろうか。とりあえず、最初から合わせてやってみて」

 

「分かりました。みんな、準備はいい?」

 

「いいよ〜」

 

「アタシもオッケーだ!」

 

ひまりやつぐみも準備はできているみたいだ

 

「それじゃあ行くよ。アスノヨゾラ哨戒班」

 

〜♪〜

 

「どうでしたか?」

 

「思ったよりもレベルが高くて驚いたよ。やっぱり琉太君が見てるだけあってギターの2人は凄いよ」

 

「あっありがとうございます...///」

 

ここまで褒められたのは初めてなので少し照れてしまう

 

「お〜蘭が照れてる」

 

「モカうるさい!」

 

「あははは...仲良いね」

 

「これが私たちの『いつも通り』ですから」

 

「成る程ね...少し気になったのはベースが少しずれたのと、キーボードが遅れてたところがあったことかな?今からそこ修正しようか」

 

ベースのずれは私も分かったけど、キーボードまでは分からなかった。やっぱりXaharの人たちは凄い

 

「分かりました」

 

「キーボードはいいけど、ベースは私当てにならないんだよね...」

 

「全然大丈夫です!私頑張ります!」

 

「感覚的になるけど、まぁこっちも頑張ってみるよ。ドラムとギターはペースも保ててたからその調子で頑張って。巴、後でライブで使えるテクニック教えてあげるからそれまで待ってて」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「じゃあ今から30分各自個人練習やるよ。そしたら休憩挟むからそれまで頑張れ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

メニューや時間配分もしっかりしていてとてもやりやすい。しかし、未だに琉太が来ない。何やってるのかな?

 

私は琉太のことを気にしながらも練習に励んだ

 

友希那side

 

練習にひと段落つき私たちは休憩をしていた。否、()()()()()()()。何故なら花梨が

 

『私が休憩と言ったらしっかりしてくださいね。でないとこの前友希那さんにしたことと同じことしますから。最悪それ以上もあるので覚悟しといてください』

 

と言われたからだ。私にしたことと言えば、足を払い床に叩きつけられたことだ。あれは本当に恐ろしかった

 

「それにしても、お兄様来ませんね...またお風呂で寝てるのかしら?」

 

「翔ってお風呂で寝るの?」

 

「疲れてる日なんかはたまにあるんですよ。それで次の日に風邪を引き私やお姉様に怒られる。こんな感じです」

 

こんな風にたまに抜けてるところがあるのがまた愛おしい。私はそこまで彼に惚れてしまっていた

 

「少し探して来るわ。休憩中暇だもの」

 

「それが普通なんですよ。貴女の休憩は休憩になってませんからね?それをいい加減自覚した方がいいですよ」

 

「...ごめんなさい」

 

「前から思ってたんだけど、花梨って友希那に対して容赦ないよね。友希那が簡単に口で言い負かされてるもん」

 

「リサ、少し黙ってなさい」

 

確かにその通りだが、面と向かって言われるとそれはそれで腹が立つ

 

私はスタジオを出て翔を探しに行った。彼の部屋が何処にあるのか分からないのでとりあえずリビングに行ってみる。しかし、そこには誰もおらず静かな空気が流れていた

 

「何処に行ったのかしら?彼が何も言わずに出かけるなんてそうそうないと思うのだけど...」

 

彼は普段の練習の時も何かあれば必ず私や他のメンバーにそれを伝えている。先程から何度かメールもしているのだが既読がつかない

 

1階の部屋以外は全て探したが何処にもいなかったので、次は2階を探した。外から見た時大きなバルコニーがあったのでそこにいるかもしれない。確認してみると、そこにはハンモックがセッティングされその上で寝ている翔と琉太がいた

 

「余程疲れていたのね...ありがとう」

 

まぁ苦手な電車に1時間乗せられた挙句、2時間弱によるテニス対決をすれば無理もない。練習は見て欲しかったがこればかりは仕方ない。それに、普段は冷たい顔をしている翔だがそのような面影は全く感じられないほど今の表情はやわらかかった

 

「...いっそのこと、ずっと見ていたいわね」

 

そんなことを呟きながら彼の顔に手を当てる。そして自然と彼の顔に私の顔が近づいていく。他から見たら寝てる間にキスをしようとしているように見えるが私は一切そんなつもりはない。できればして見たいのだが...

 

「...何やってるんですか?」

 

その声で全身に寒気が走った。声の主はAfterglowのギターボーカルである美竹さんだった

 

「こっこれはその...忘れて頂戴///」

 

「無理ですね。勝手にそうなっていただけでしょう?大方全然来ない翔を探しに来たと言ったところですか?」

 

「えぇ、美竹さんも琉太を?」

 

「はい。でも、流石に起こすわけにはいきませんね」

 

「そうね...練習は明日見てもらうとしましょう。そちらの練習はどうかしら?」

 

「お陰様でとても捗ってますよ。祐奈さんがとても優しい人なのでこちらからも話しかけやすくて助かります」

 

祐奈さんは陽気だから初めての美竹さんもやりやすそうだ

 

「あの人はドラムが1番得意らしいからそこはだいぶ強化されるんじゃないかしら」

 

「だといいんですけど。湊さんこそ、花梨さんは如何ですか?」

 

「相変わらずね。とても助かるのだけど...休憩が強制みたいになってしまって」

 

「ハハハ...それでは私は戻りますね。琉太の所在も分かったことだし」

 

「私もそうするわ。これ以上話して彼らを起こすのも悪いから」

 

「翔のこと、随分大事に思ってるんですね」

 

「当然よ。彼は私たちRoseliaのマネージャーで、私の大切な人だから」

 

「そうやって素直に言えるのが羨ましいです。ではまた後で」

 

「素直になるのはとても難しいけれど、自分の想いを自覚するのは結構簡単よ」

 

「...頑張ります」

 

この後練習に戻ったら顔を近づけていたのを花梨に見られていて、殺されかけたのはまた別の話

 

咲夜side

 

風呂から上がったらもう誰もおらず、奏斗と2人で昼飯を食べていた...のはいいいのだが、そこからの記憶がまるでない。記憶障害にでもかかったのだろうか?気づけばハンモックの上で寝ていて、起きたらもう夕方になっていたということだけ理解した

 

「ふわぁ〜...ねむ」

 

「あんだけ寝てまだ眠いとか...まぁ俺もだけど」

 

「俺昼飯食ってからの記憶がないんだよな。何があった?」

 

「何がって、疲れたとか言ってお前死んだような顔でハンモックセットしてそのまま寝たんだよ。それに乗じて俺も寝た」

 

「やばい。友希那に殺される」

 

「俺も蘭に殺されかねない。後で謝らないと...」

 

きっと探していたことだろう。まさか寝てて来れなかったとかバレたら絶対殺される(もうバレてる)

 

「何だろうな。何か忘れてる気がするんだよな...」

 

「奏斗もかよ。でも奇遇だな、俺もだ」

 

2人で考えること3分、一向に思い出せなかった

 

「そういえば、昼飯誰が作ったんだろうな」

 

「華蓮だろ。あの冷やし中華美味かっ...た...あ!」

 

「どっどうした?」

 

「晩飯の材料がない!ヤベェ今すぐ買いに行かねえと...!」

 

「おっ俺も行く!何にする!?」

 

「時間もないしカレーで行く。14人前計算しといてくれ」

 

「了解!」

 

そうだよすっかり忘れてた。初日から晩飯抜きとか洒落にならない。此処から歩いて10分ほどのところにスーパーがある。勿論、月読命財閥営業のが

 

俺たちは全速力でスーパーへ向かった




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