死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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第33話

咲夜side

 

友希那に心配をかけるなと説教を受け、練習が終わった後俺は屋敷の3階で星を見ていた。この場所は俺たちがここに初めて来たとき丸1日かけて探し当てた場所だ

 

「相変わらず綺麗だな...」

 

この場所は俺のお気に入りの1つで、晴れの日は月や星、その光を反射した海が見える最高の場所だ

 

「あっ松原に電話しないとな...」

 

あの日以来、俺と松原は毎晩電話をしている。彼女に頼まれたから仕方ないのもあるが、俺自身結構心を落ち着かせたりできる時間でもある

 

「もしもし、花音さん今大丈夫ですか?」

 

『うん、大丈夫だよ。いつもごめんね、こんな時間に電話させちゃって』

 

「中々会えないんだし、約束なので構いませんよ。俺も花音さんと話すの結構好きなので」

 

『ふぇぇ!?いっいきなりずるいよ〜!』

 

「何がですか?」

 

普通に本心を言っただけなのに何故そのようなことを言われなければいけないのだ?人の心というのはさっぱり分からん

 

『翔君、いつもより時間遅かったけど何してたの?』

 

「今海の近くの別荘にいるんですけど、そこでRoseliaとAfterglowの合宿が行われてるんですよ。友希那がどうしても行きたいと言ったので連れていったんですが...」

 

『...そうなんだ。大変だね』

 

気のせいか?松原の声から活気が失われたのは

 

「どうしました?なんだか元気なさそうですけど...」

 

『うっううん!何でもないよ!それより、どのくらいそっちにいるの?』

 

「だいたい今日から2週間を予定してますね。これから毎日練習となると少し気が重いですが」

 

本当に、その気力はどこから出て来るのだろうか?俺たちもここで練習したが、午前だけしかやってなかったぞ...

 

『頑張ってね!そうだ、帰って来たら一緒に遊び行かない?オススメの水族館があるんだけど』

 

「それはいいですけど...迷子になりませんか?」

 

『慣れてる場所なら大丈夫...だと思う』

 

「おい」

 

そこは断言しろよ。こっちが不安になってくるだろうが

 

『えへへ...じゃあ楽しみにしてるね。今度私のドラム見てね!』

 

「分かりました。ではまた明日」

 

『おやすみなさい』

 

やっぱりこの時間はいいな...心が癒される

 

気が楽になったところで自分の部屋に戻りフカフカのベッドで寝た

 

花音side

 

家で普通に夜ご飯を食べて宿題を終わらせ寝ようとしたとき、ある人から電話がかかってきた。相手は私が大好きな翔君だった

 

『もしもし、花音さん今大丈夫ですか?』

 

彼に頼んで毎晩電話させてもらっているとはいえ、私は彼の声が聞けて嬉しかった

 

「うん、大丈夫だよ。いつもごめんね、こんな時間に電話させちゃって」

 

『中々会えないんだし、約束なので構いませんよ。俺も花音さんと話すの結構好きなので』

 

「ふぇぇ!?いっいきなりずるいよ〜!」

 

わざとなのか分からないけど、翔君は私がドキッてすることを平気で言ってくる。おかげで毎日顔が熱くなる始末だ

 

『何がですか?』

 

あっ彼無意識で言ってるね。口調からして素で聞いてるもん...鈍感にも程があるよ

 

「翔君、いつもより時間遅かったけど何してたの?」

 

恥ずかしくなってきたので無理矢理話を逸らした。鈍感な彼なら気づかないだろう

 

『今海の近くの別荘にいるんですけど、そこでRoseliaとAfterglowの合宿が行われてるんですよ。友希那がどうしても行きたいと言ったので連れていったんですが...』

 

翔君、友希那ちゃんのこと呼び捨てにしてたんだ...私はさん付けだし敬語で話されてるからそのことに嫉妬してしまう。でも、問題はそれだけじゃなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして私とは会ってくれないんだろう...

 

翔君は自分と関わりすぎると私が危険な目に遭うって、心配して遠ざかって行った。それなのに、何故友希那ちゃんたちはいいのだろうか?あってはいけない黒い感情が湧いてくる

 

「...そうなんだ。大変だね」

 

『どうしました?なんだか元気なさそうですけど...』

 

「うっううん!何でもないよ!それより、どのくらいそっちにいるの?」

 

彼に悟られないようになんとか取り繕う。もっとも、彼なら気づかないかもしれないが

 

『だいたい今日から2週間を予定してますね。これから毎日練習となると気が重いですが』

 

「頑張ってね!そうだ、帰ってきたら一緒に遊び行かない?オススメの水族館があるんだけど」

 

ダメ元で誘ってみる。断られると分かっているのに、僅かな希望を頼りに誘ってしまう。しかし、彼から返って来た返事は予想外のものだった

 

『それはいいですけど...迷子になりませんか?』

 

なんと引き受けてくれたのだ。しかも心配してくれたのも、私が方向音痴なことくらい。理由は分からないけど、どうでも良くなるくらいに嬉しかった

 

「慣れてる場所なら大丈夫...だと思う」

 

『おい』

 

折角良い雰囲気になったのに、私の一言で彼からツッコミを受けてしまった

 

「えへへ...それじゃあ楽しみにしてるね。今度私のドラム見てね!」

 

『分かりました。ではまた明日』

 

「おやすみなさい」

 

また明日ということは、明日も電話してくれるのだろう。彼の優しさに嘘がないことを祈りたい

 

「あっ呼び方変えてもらうの忘れちゃったな...」

 

友希那ちゃんが大丈夫なら私も大丈夫だろうと思ってたのに、頼むのを忘れてしまった

 

「まぁいっか。明日頼も」

 

吹っ切れた感じで私は深い眠りについた

 

咲夜side

 

翌日、朝飯を食べた俺たちは早速練習に取り掛かっていた。今日は華蓮がRoseliaについている

 

「どうでしたか?」

 

「特に目立ったミスもなかったし、よかったと思うよ。あとは表現力とかライブ用に少しアレンジしてみたりとかしたらいいんじゃない?」

 

「そうだな。リサさんと白金さんは俺が見る。姉さんは氷川さんとあこを頼む」

 

「了解!それじゃあ早速やるよー。午前中はそれだけやろっか」

 

華蓮はドラムが得意だからあこは相当レベルが高くなりそうだ...氷川は微妙

 

「こちらもやりましょうか。まずは白金さんから、リサさんは友希那と少し待っててください」

 

「私は何をすればいいかしら?」

 

「友希那はリサさんと合わせながら自分なりに改善点を探してみろ。さっきもミスはなかったが、声に張りがなかったからそこ重点的にな」

 

「分かったわ」

 

「友希那、早速やろ!」

 

「えぇ」

 

「その、よろしくお願いします...」

 

「こちらこそよろしくお願いします。ではBLACK SHOUTのイントロのアレンジしてみましょう」

 

「分かりました」

 

それにしても、白金ってRoseliaの中で1番安定してるんじゃないか?今まで見てきた中で1番ミスも少ないし...唯一、臆病なのがネックか

 

「白金さんはどうしてRoseliaに入ったんですか?」

 

「え?」

 

「少し気になったんですよ。なんだかイメージと違ったので」

 

「私...昔から人が苦手で視線を感じると緊張で動けなくなってしまうんです...だから、そんな自分を変えたいと思って」

 

成る程ね...そういうタイプか

 

「だったら、視線を気にしなければいい。メンバー残り背中をひたすら追いかけるように見ればいい」

 

「メンバーの背中を...」

 

「友希那やリサさん、氷川さんの背中を見てれば自然と人目なんか気にならなくなりますよ。あこは横にいるし、友達を近くに感じられるでしょう」

 

「...分かりました。やってみます」

 

「そうすれば自然と緊張も解けて自由な表現が可能になります。それではアレンジの練習をしましょう」

 

「はっはい!」

 

それから30分程つきっきりで練習を見たが、飲み込みが速すぎて正直怖い

 

「どっどうでしたか?」

 

「めちゃくちゃ良かったです...この調子だと直に抜かされるな。ちょっと待っててください」

 

「何処に行くんですか?」

 

「自分のキーボード持ってきます。一緒にやりますか?」

 

「よっよろしくお願いします」

 

昨日来たときある程度のメンテナンスは済ませたが、2年程使ってないのでチューニングに時間がかかりそうだ

 

この後白金とセッションしてたら楽しくなって今井に怒られたのは別の話

 

リサside

 

アタシは翔に言われて、友希那と一緒に練習をしていた。ライブ用にアレンジしようということで、今は2人で考えている

 

「う〜ん...中々いい感じのがないな...」

 

さっきから色々なやつを試してるけど、これっ!ってやつが見つからない

 

「ここはリズムを少し変えてみたらどうかしら?そうすればテンポが良く聴こえると思うわ」

 

「分かった。友希那はどう?いい感じ?」

 

「こっちは順調よ。翔が指摘したところもよく分かったし」

 

友希那って、翔と会ってから棘がなくなったっていうか丸くなったよね。今では翔にメロメロだし

 

「燐子が独占してるから悔しい?」

 

「ちょっと!からかわないで!///」

 

「嘘だ〜。さっきから視線がチラチラ翔の方に向いてるもん」

 

「!?こっこれは...向こうは捗ってるのか気になっただけで...///」

 

「顔赤いよ友希那」

 

「誰の所為だと...」

 

「認めたね」

 

「っ〜〜〜〜〜///」

 

初心だね〜。ちょっとからかっただけでこんなに顔が赤くなるんだもん

 

「まぁ友希那の恋バナは置いといて...翔遅いな...」

 

中々来てくれないので翔の方を見ると、キーボードを持ってきた翔が燐子とセッションしてた。アタシは2人の元へ行き話しかける

 

「ヤッホー2人とも!調子はいかがかな?」

 

「白金さんの飲み込みが速すぎて正直怖いです。というわけでもうしばらくお待ちください」

 

「アタシのことも見てくれるんだよね?さっきからずーっと燐子のこと見てるけど」

 

「あと1時間くらいしたら...分かりました行きます!行くからその笑ってない笑顔はやめてもらおうか!」

 

笑ってない笑顔って何かな?アタシは満面の笑みを浮かべてるはずなんだけどなぁ...

 

「ハァ...すみません白金さん。あとはなんとか頑張ってください」

 

「はっはい...翔さんも頑張ってください」

 

「は〜い...」

 

チラッと友希那の方を見てみると、不機嫌そうな顔を浮かべていた

 

「ゆっきな〜どうしたのそんな顔しちゃって〜」

 

「別に...何でもないわ」

 

「体調悪いのか?どれどれ...」

 

翔が友希那の額に手を当てる。すると友希那の顔はリンゴとかトマトよりも赤くなった

 

「熱はないが...おっおい、顔赤いけど大丈夫か?」

 

「なんでもないわ///」

 

よくこれで気づかれないよね...感情がない故の鈍感さなのかな?

 

「翔、まずはその鈍感さを直しなよ」

 

「はい?何がですか?」

 

ダメだこりゃ...全く自覚してない

 

「まぁいっか。それじゃあよろしくね!」

 

「分かりました」

 

この後アレンジの練習をしてたら友希那の機嫌が最高に悪くなって翔と口をきかなかったのは別の話




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