死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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今回でようやく3章が完結です。それでは本編どぞ


第46話

奏斗side

 

 

「咲夜〜俺休憩いつからだ?」

 

絶賛俺は今バイト中だ。今日はまりなさんがいないので気軽に咲夜を本名で呼べる

 

「お前な...いくらまりなさんがいないからって本名で呼ぶのはやめろよ。心臓に悪い」

 

「ははっ悪りぃ。それより休憩いつから?」

 

「あと5分だ。まぁ作業はほとんど終わったし、先に休憩してろ。Afterglowもう来てるんだろ?あとは予約入ってないし」

 

こいつ本当に作業速いな。まぁお陰で蘭たちのところに行けそうだ

 

「ありがとな。じゃあ先に休憩行ってるわ」

 

「おう」

 

Afterglowが練習をしている第1スタジオへ向かう。中に入ると全力で演奏をしている蘭たちがいた

 

俺が入ったことに気づいたのか彼女らは演奏を止めた

 

「琉太、バイト休憩入った?」

 

「翔があとはやってくれるらしい。演奏止めて悪いな」

 

「ううん、来てくれてありがとう」

 

「蘭ってば〜りゅ〜君がいなくて凄い寂しそうにしてたもんね〜」

 

「ちょっとモカ!変なこと言わないで!///」

 

「まぁずっと花咲川にいたからな...久し振り、蘭」

 

俺は自然に蘭の頭を撫でる

 

「あぅ...///」

 

「おーツンデレ蘭ちゃんがデレデレだ!」

 

「やっぱ蘭は琉太に弱いな!ヒューヒュー!」

 

ひまりに巴よ。そんなこと言ってないでなんとかしてくれよ

 

「うぅ...///」

 

「なぁ、蘭が戻って来ないんだが」

 

「責任とってね〜」

 

「お前らあっさり幼馴染捨てたな!?つぐみ、俺はお前を信じているぞ」

 

「えっと...頑張れ」

 

「おい!」

 

なんて薄情な!仲間をこんな簡単に捨てるなんて...あっ俺軽く殺してたわ

 

「そんなこと言ったってどうすりゃいいんだよこれ?」

 

「とりあえず手を離したらどうだ?」

 

「あっあぁ」

 

巴に言われた通り手を離すと蘭は意識こそ取り戻したもののすげえ残念そうな顔をしていた

 

「あのぉ蘭さん?そんな残念そうな顔をされると罪悪感が湧くというか...なんかその申し訳ない気持ちになるんですけど」

 

「...終わったらまた撫でてよ」

 

「あっはい」

 

あれぇ?蘭ってこんな性格だったかな?もっとこう、クールなイメージだったんだがな

 

「そろそろ始めるか。Scarlet Skyやってくれ」

 

「分かった。みんな、準備して」

 

さて、どれだけ成長してるかなぁ

 

 

咲夜side

 

 

作業を一通り終え、用があればスタジオに来るよう書き置きを残すと俺はRoseliaが練習をしている第3スタジオへ向かった

 

「あら、翔じゃない。休憩入れたかしら?」

 

「一通りは終わらせた。後は基本人が来ない限りやることないし付き合えると思う」

 

「そう。今は休憩中だから、貴方も休みなさい」

 

「友希那に休めと言われると無性に腹が立つな。いつも俺に言われないとやらないくせに」

 

「言ってくれるじゃない?これでも前よりは休むようにしてるのよ?」

 

「どうせリサさんに言われてやってんだろ?」

 

「...」

 

はいビンゴ。Roseliaに今井がいて良かったよ。いなかったらこいつら全員死んでたな

 

「ハァ...氷川さんや白金さんもなんか言ってやってくださいよ。こいつちっとも理解しねえ」

 

「まぁ私も人のことはあまり言えませんので」

 

「えっと...その...」

 

使えねえ!氷川はまだしも白金よ、せめてなんか言えや

 

「なんなんだよこのポンコツ集団は...まともな奴はいないのか?」

 

「あら、聞き捨てならないわね。私たちは至ってまともよ?」

 

「どの口が言ってんだこの野郎」

 

「まぁまぁ2人ともその辺にしときなって!ほら、クッキー食べてリラックスしよ?」

 

「相変わらず料理がお上手なことで。おぉ、蜂蜜がなかなか効いてて美味いな」

 

「ホント!?良かったぁ」

 

「まぁ俺は甘いのより苦いやつの方が好きですけどね」

 

「そうなんだ...作ってあげたいのは山々なんだけど...」

 

そう言うと今井は友希那の方に視線を向ける。こいつ苦いの無理らしいからな。雰囲気は大人でも舌はお子ちゃまってやつか

 

「無理に作らなくても大丈夫ですよ。これはこれで美味しいので」

 

「そろそろ始めましょう。みんな、準備して」

 

友希那の一言で全員が動く。やっぱ統率力はあるなぁ

 

「そういえば、さっきまで何の練習してたんだ?」

 

「各自苦手なところを重点的にやっていたわ。貴方が来てから合わせようと思って」

 

「成る程。それじゃあONENESS行こうか。その次はOpera of the wastelandやってくれ。感想はそのあと言わせてもらう」

 

「分かったわ」

 

 

〜♪〜

 

 

「ふぅ...どうだったかしら?」

 

「前より大分良くなってたよ。普段走り気味なあこもテンポ保ててたし、リサさんも影からじゃなく全面的に出て来るようになったし」

 

「やった!しょー兄に褒められた!」

 

「ただ、ONENESSで友希那の音の強弱がはっきりしていなかったのと、オペラで氷川さんがサビの前に一瞬だけ遅れたのが気になった。ここはすぐに直せるだろう」

 

「あの...私はどうでしたか?」

 

あぁ、白金の感想言ってなかったな。正直言って言うことないんだが

 

「白金さんは1番よくできてましたよ。ミスもなく氷川さんの遅れをアレンジでカバーした。危うく聴き逃すとこでしたよ」

 

「良かった...」

 

「もうこれ教えるところないんじゃないかな...キーボードに関しては俺いらない気がする」

 

唯一課題だった表現力も大分伸びたしいよいよ俺の立場が無くなって来た

 

「そっそんなことないです...翔さんはいつも私にアドバイスをくれますし...」

 

「まぁそう思っていただけているのなら良かったです。それじゃあもう1回やろうか。友希那、氷川さん、次は頼むぞ」

 

「「えぇ」」

 

 

〜♪〜

 

 

「どうかしら?」

 

「さっき言ったことをしっかり直せてたし、ミスもなくやり切れてたよ。みんなが1番分かってるんじゃないか?」

 

「そうね...確かに、今までで1番良くできたと思うわ」

 

「これならフェスの予選はトップ通過行ける筈だ。本戦で優勝はまだ難しいが、確実に進歩している」

 

あとはこのRoseliaでしか奏でられない音を探すだけだな

 

「貴方にそう言ってもらえてよかったわ」

 

「来年も出るんだろ?俺たちもいいか?」

 

「完全に潰しにかかってないかしら?幾ら何でもXaharを相手にするなんて無理よ。それに、トップで通過しなきゃ意味がないの」

 

「だからだよ。頂点に立つなら俺たちを超えてみせろ。ゆうて俺たちが優勝したのは3年も前だ。多少のブランクはあるし」

 

それに組織の件を片付けないと練習もできないから今から勝ちにいくのは少しきつい

 

「前から思っていたのですが、Xaharの皆様は何処で練習をしていたのですか?失礼ですがスタジオを借りるお金があるとは思えませんし」

 

えっ今その質問来る?どうしよう、家の地下にスタジオあるとか言ったら絶対に押しかけてくる。俺たちの家がバレるのは非常に不味い。組織にすらバレないように細工してあるのだ。家には昔の写真や使っていたナイフとか色々あるからな。適当に誤魔化そう

 

「実家の方にスタジオがあったんですよ。昔はそこを使っていました」

 

「今度案内してもらっていいかしら?」

 

「断る。家はバレたくないんでね」

 

「そう...残念ね」

 

「まぁいいや。次、陽だまりロードナイトと熱色スターマインやるぞ。時間的にこれが最後だ。フェスの決勝だと思って全力でやれ」

 

「分かったわ」

 

今のこいつらなら出来る筈。そういえば、友希那とモカのプレゼントどうやって渡そうかな

 

 

友希那side

 

 

練習を終えスタジオから出ると丁度Afterglowと鉢合わせた

 

「お疲れ様。調子はどうかしら?」

 

「順調ですよ。Roseliaの方はどうですか?」

 

「こっちも順調よ」

 

「友希那、蘭、お前らライブやるか?」

 

急に翔がそんなことを言ってきた。ライブをやるのは一向に構わない。経験も積んでおきたいし

 

「何時のかしら?」

 

「いや、今考えただけだが?まりなさんとも何も話していない」

 

何を言っているのだろうか私たちのマネージャーは。今考えたとか舐めてるとしか言いようがない。琉太も呆れているし

 

「何それ。まぁライブならいいけど...」

 

「ただのライブじゃねえよ。対バンだ」

 

「対バン?誰とやるのよ」

 

「勿論、AfterglowとRoseliaの2つでだ。この数ヶ月で随分と成長した。そろそろどっちが上かはっきりさせないか?」

 

成る程ね...確かにAfterglowはこの辺のバンドではレベルは高い。更には琉太に鍛えられている。やる価値は十分にありそうね

 

「私たちは構わないわ」

 

「あたしもいいよ。みんなが良ければ、だけど」

 

「了解した。まりなさんにはこっちから話をつけておくよ」

 

「お願いするわね。さぁ、時間も遅いし帰りましょう」

 

「あっモカと友希那は話があるから残ってくれ」

 

「は〜い」

 

何かしら?わざわざ残らせて話がしたいということは大事なことなのかもしれないけど...隣でリサがニヤニヤしているのが実にムカつく

 

「ほんじゃ、俺は残ったメンバーの護衛でもしてるよ。さっさと済ませろよ」

 

「分かってる」

 

1人でこの暗い中この人数を守るのは少し大変だと思うけど、琉太なら余裕そうね

 

私と青葉さん、翔を除いた他の人たちは先に外へ出て行った

 

「それで話って何かしら?」

 

「別にそんな対したことじゃねえよ。2人にちょっとしたプレゼントだ」

 

そう言うと彼はポケットから小さな紙袋を2つ取り出し私たちに渡してきた

 

「これは?」

 

「開けてみろ」

 

きっぱりと言われたので素直に開けてみると、中には三日月の形をしたネックレスが入っていた

 

「おぉ〜これは中々綺麗ですな〜」

 

「オーダーメイドで作ってみたんだ。デザイン考えるのに苦労したよ」

 

「これを、私たちに?」

 

「あぁ。何時も世話になってるからな。あとは花音とイヴにも渡したよ」

 

他にもいたのね。私たちだけだと思っていたから少し悔しい

 

「ねぇ〜つけてもいい〜?」

 

「好きにしろ。適当に形見として持ってくれていればいい」

 

形見って...何よもうすぐ死ぬみたいな言い方

 

「お前らは1度体験してるから知ってるだろうが、俺と琉太は命を狙われている。近いうちに死ぬ可能性は高い」

 

「そんな...」

 

青葉さんは初めて聞いただろうから相当驚いている。まさか自分の想い人がそんな目に遭っているなんて思いもしないだろう

 

「だからせめて礼がしたくてな。意味のなかった俺の人生に意味を与えてくれてありがとう」

 

目の前の彼の姿が滲んできたのはきっと気の所為だ。そうだと信じたい

 

「安心しろ。お前らを危険に晒すようなことは絶対にしない。最期まで守り切ってやるから」

 

そこじゃないわよ...何で死ぬことが当たり前のように言うのよ...

 

「まぁ話は以上だっと言いたいが、友希那だけもう少し時間をくれ」

 

「...分かったわ」

 

「ありがとな。モカ、気をつけて帰れよ」

 

「...うん」

 

青葉さんは暗い表情で外へ出て行った。私だけに話とは何だろうか?

 

「友希那には誰よりも世話になった。だからこれを渡しておく」

 

そう言って渡されたのは、青薔薇と月が重ねられた髪飾りだった

 

「Roseliaの青薔薇、Xaharの月。俺たちを繋ぐ物だ」

 

「でも、何で私だけ...」

 

「友希那は俺に生きる道をくれた。俺がこうして楽しく過ごせているのは全部友希那のおかげなんだ。本当に、ありがとう」

 

そう言って優しく微笑む彼に私は見惚れてしまった。あぁ、貴方はズルい。そんな顔を見せられたらずっと一緒にいたいと願ってしまう

 

「ありがとう。大切にするわ」

 

「それは良かったよ。さぁ帰ろう。みんな待ってる」

 

「えぇ」

 

今髪飾りを見られるのは恥ずかしいので大事に制服のポケットへしまった

 

「おっ来た来た!なになに2人で何話してたの?モカなんかすごい大事そうに何かを持っていたけど」

 

「秘密よ」

 

「そろそろ時間もあれだし、全員俺と琉太から離れるなよ」

 

今の私は相当浮かれていたのだろう。だからこそ気づくことができなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既にこの日常が地獄へ向かっていることに

 

崩壊へ進んでいることに




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