死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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何時もありがとうございます!


第48話

咲夜side

 

 

次の週の月曜日、柏はクラスで朝練習があるとのことで先に行き俺は奏斗と朝飯を食べていた

 

「まだ2週間近く前だっつうのに朝練とは、柏も大変だねぇ」

 

「柏のクラス確か巴の妹いなかったっけ?その子は大丈夫なのか?」

 

「あこは勉強はあれだが、運動は多分できる方だ。あれだけドラム叩いてるんだし多少は体力もつくだろ」

 

それにいつもではないが、白金を置いて走ってるもんね。可哀想に

 

「何にせよ、そこは柏のイかれた運動神経が出ることだろう。彼奴この前50m走6秒代って言ってたし」

 

「うわぁ...中3の女子のタイムじゃねえ。どっからその化け物染みた身体能力が出て来るんだかね」

 

「昔彼奴も訓練だけは受けてたから、そのせいだろ」

 

10年前だから柏は4歳か5歳だな。まだ実戦には登用されてなかった筈だ。俺からも頼んでたし

 

「俺たちはまだないよな?俺話の内容全く覚えてないんだけど」

 

早すぎだろ。1度病院に行ってこい

 

「少なくとも今日はない。でも明後日くらいから本格的にやるって華蓮言ってたし、準備はしといた方が良さそうだ」

 

それにライブの方もあるし。セトリも考えた結果、何と俺の案が採用された。内容は秘密だ

 

「Afterglowはセトリとか決めたのか?そろそろ練習やらないと少しまずいだろ」

 

「蘭が決めてくれたよ。昨日からライブに向けて特訓してる」

 

「ガルパの5つの中でもRoseliaとAfterglowの2つは特に飛び抜けて上手いからな。まだまだ荒削りだが」

 

Roseliaは初めて聴いたときよりも格段にレベルが上がってきた。それこそ、フェスの予選はトップ通過できるくらいに

 

「そうだな...こちらも頑張りますかね。ご馳走様、皿洗うか?」

 

「いや、帰ってきたらでいい。長々と話したせいで時間が押してる。さっさと準備して行くぞ」

 

「うわっホントだ」

 

流石に歯は磨いて行かないとあれだし、まぁ遅刻することはないので大丈夫だろう

 

速攻で準備を済ませ家を出た

 

「...いないな。早く離れよう、家がバレるとまずい」

 

「逆によくバレないよな」

 

それは本当に思う。一体どうしたら組織にバレないような細工ができるのか。ていうか尾行してるんだし家まで突き止めろよ。まぁ巻いてるんだけどね

 

呑気にそんなことを考えていた、その刹那

 

「伏せろ!」

 

何かが飛んでくる気配を感じ、勘でしゃがみ込む。案の定先程まで俺たちの頭があった場所にナイフが飛んで来た

 

「朝っぱらなんなんだって多い!何この数!?」

 

「ちょっ!?おい待て普段の倍はいるぞこれ!」

 

住宅街だというのにまさかの20人くらいに襲われるという大惨事。いつもは10人くらいだから簡単に勝てるがこれは少々きつい。少々どころか割とガチでヤバイ

 

そんなことお構いなしとでも言うかのように連中は刀を抜き一斉に襲いかかって来る。クソッここ戦いにくいんだよな!

 

「おいどうする!?この数を捌くのは俺たちでも無理だぞ!このままじゃ最悪死ぬぞ!」

 

「走りながら戦って学校行くぞ!彼処まで着けばなんとかなる!」

 

「ああもう!なんで朝からこんな目に!」

 

まずいな...屋根からの攻撃も可能な住宅街でしかもこの数。無傷で逃げ切るのは無理だ

 

「奏斗!足刺されるくらいは覚悟しろ!ただ指1本もなくすなよ!」

 

「分かってるよ!」

 

走りながら飛んで来るナイフを避けたり切りかかって来る奴を倒したりしながら学校に全速力で向かう。これ学生の通学だよな?

 

「がっ...チィッ!この野郎...」

 

避けきれず1人の刀が足に刺さる。痛みには慣れてるから問題はないがこの状態はいよいよまずい

 

「咲夜!だいじょう...ぐあっ!」

 

「奏斗!?クソッ!」

 

両足を刺され身動きが取れなくなっている奏斗をすかさず助けに行くが、状況で言えば最悪だ

 

「おい!立てるか!?」

 

「あっあぁ...イテェなこれ。どうする、学校までは近づいたが」

 

「俺も片足をやられてる。今のままで戦っても死ぬのは見えてる。走れるか?」

 

「ギリギリだな。煙幕今日は持ってねえし」

 

「1個だけある。本当は閃光弾の方が良かったが、これがあれば十分だ。5秒後行くぞ」

 

「5、4、3、2、1...行くぞ!」

 

ボフン!

 

辺りに煙が立ち込め、視界が遮られる。そのうちに俺たちは走り逃げ出すことに成功した。あの煙には麻酔効果もあるし追って来ることはないだろう

 

 

 

♪ ♭ ♯ ♪ ♯ ♭

 

 

 

「ハァ...ハァ...着いた......」

 

何とか学校に着き、お互い肩を貸しながらズルズルと歩いて行く。奏斗の方はもう限界のようで足が全く動かせないみたいだ

 

「ハァ...すまん咲夜。余計な手間かけさせちまって」

 

「気にするな。俺も片足が痺れてきた。多分麻痺の毒でも塗ってあったんだろ」

 

「これで教室最上階とか最悪だな」

 

「ほら、荷物よこせ。今のお前じゃ無理だろう」

 

「すまん、ありがとう」

 

右に奏斗、左に2人分の鞄を持ち少しずつ階段を上って行く。1年の階に着くのに10分かかった

 

「なんか気まずくないかこれ?いきなり傷だらけで教室入るとか」

 

「しかも30分近く遅刻してるしな...とりあえず中に入ろう」

 

身体の状態もあれなので教室のドアを開け俺たちは倒れこむように中に入った

 

「えっ...翔!?琉太君!?」

 

「ハァ...ハァ...」

 

「もう無理...」

 

華蓮をはじめクラス中の人が寄ってくる。勿論その中にはAfterglowの4人もいる

 

「翔!琉太!しっかりしろ!」

 

「2人とも大丈夫!?」

 

「しょ〜君!」

 

「2人ともしっかり!」

 

3人目はモカか...初めて聞いたなこいつの大声は

 

「巴!琉太君に肩貸してあげて!翔、捕まって」

 

華蓮が俺に手を差し伸べて来る。その手を掴もうとした瞬間、ふとある想いが浮かんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故()なんだ

 

あのとき俺を見捨てたくせに...逃げたくせに...!

 

 

パァン!

 

 

「...え?」

 

 

俺はその手を払った

 

「ちょっと翔、今はとりあえず保健室に...」

 

「今更なんなんだよ...」

 

「え?」

 

「今更なんなんだよ!こんなときだけ手を差し伸べやがって!」

 

「しょ...う...?」

 

俺は怒りに身を任せ華蓮の胸倉を掴み黒板に叩きつけた

 

「あのとき俺を見捨てた臆病者が!自分の保身をはかって逃げたお前が!今更手を出すんじゃねえ!」

 

「っ!それは...」

 

「それはなんだ!?何か間違いでもあるか!?何もせずに見ていただけのお前が!」

 

「翔!いい加減にしろ!」

 

「てめぇは黙ってろ!」

 

「黙るのはお前だ!時と場を考えろドアホ!」

 

「っ!」

 

ようやく落ち着きを取り戻した俺は華蓮を離した。だが、怒り自体は収まっていない

 

「...巴、琉太に肩貸してやれ。こいつは今歩けないから負担はでかいが頼む」

 

「...分かった。翔は?」

 

「俺はいい。片足だけで済んだからな」

 

それに、もう誰の手も取りたくない。俺は立ち上がったはいいものの、血を流しすぎたせいかバランスを崩してしまった

 

だが倒れることはなく、目の前に白い頭が見えた。モカだった

 

「...あたしも行く」

 

「いらねえ。身長差を考えろ。幾ら何でも」

 

「こんな状態のしょ〜君を放っておけない!あたしはこの状況で見過ごすことなんてできない!」

 

なんだよ...それ。そう言うモカの首にはあのときあげたネックレスがあった。着けててくれたんだな...

 

「...好きにしろ」

 

それを見て安心したのか、了承の返事を出してしまった

 

教室を出る間際、少しだけ座り込んでいる華蓮の方を見た

 

 

 

その目には光は無く、ただ呆然としているだけだった

 

 

華蓮side

 

 

私は何も考えることができなかった。咲夜が私に言ったことは全て事実だ。恨まれても仕方ない、嫌われても仕方ない、そう思っていた筈なのに...彼の言葉は私の心を破壊した

 

「ごめんなさい...ごめんなさい...」

 

何も音が聞こえない。聞こえるのは私の呟く彼に対する謝罪の言葉のみ。外で吹く風の音も、クラスの生徒の声も、何も聞こえない

 

ゆ...せい!祐奈先生!」

 

「!?」

 

ようやく誰かの声が聞こえ声がした方を見ると、涙目になっているひまりとつぐみがいた

 

「ひまり...つぐみ...」

 

「先生...大丈夫ですか?」

 

「...大丈夫よ」

 

「だったら、何故泣いてるんですか?」

 

「!?」

 

慌てて頬を触ると、嫌という程に濡れていた。それほど彼の言葉がショックだったのだ

 

「翔君や先生に事情があるのは分かりました。今の先生は明らかに不安定です。それ以上自分の中に溜め込まないでください」

 

やめて。その優しさを私に向けないで。これ以上私を壊さないで

 

「私は...どうしたらいいのよ...」

 

「あっ謝れば翔君もきっと...」

 

「簡単に言わないで!」

 

「え?」

 

「彼の怒り様を見たでしょう!?彼の殺意の込もった声を聞いたでしょう!?私に対する恨みが少しは分かったでしょう!?それなのに謝ればなんて簡単なこと言わないで!」

 

「すっすみません...」

 

「もうどうしたらいいか分からない。私は...」

 

「祐奈」

 

誰かに呼ばれ振り向くと、そこにはここの理事長である瑠奈さんが立っていた

 

「瑠奈さん...見てたんですか?」

 

「校門で傷だらけの2人を見つけたからもしかしてた思って来たのよ。そしたら案の定このザマね」

 

「えぇ。もう笑う気もしませんよ」

 

「今日は家に帰りなさい。今の状態でまともに仕事ができるとは思えないわ」

 

「でも...」

 

「私から説明しておくから。このクラスは今日は私が面倒見る。1度ゆっくり休んで落ち着きなさい」

 

「...分かりました」

 

「支度ができたら理事長室に来てちょうだい。家の方から迎えを頼んでおくから」

 

「ありがとうございます」

 

ハァ...情けな。周りの人に助けられてばかり。あのとき2度と同じ過ちを繰り返さないって決めたのに。何もできていない

 

「詳しくはあの子たちから聞く。貴女は無理をしないこと、いいわね」

 

「...はい」

 

私は荷物をまとめて教室を出る。瑠奈さんに感謝しつつ、私はずっと心の中で謝っていた。あのとき何もできなかったこと。目の前の現実から逃げたこと。貴方の助けになれなかったこと

 

 

本当にごめんなさい、咲夜

 




読了ありがとうございました

いやー急にシリアスぶち込むと変な感じになりますな

評価や感想いつでもお待ちしております




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