死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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平成最後に投稿できなかった。GWに風邪引くってなかなかやると思いません?


第52話

次の日の夜、柏に咲夜を家に呼んでもらい私は部屋で待機していた。これから彼が来るからか緊張が止まらない。心臓も耳まで聞こえる程うるさい

 

少しでも気を紛らわせようと部屋を歩き回っていると、ようやく咲夜が来た

 

「俺だ。入っていいか?」

 

「うっうん!いいよ!?」

 

やばい。声裏返っちゃった。どうしよう?変に思われてないよね?

 

「えっと...久し振り...だね」

 

「...あぁ」

 

会話が続かない。こういうときは自分のコミュ力の無さを恨む。数秒の沈黙が何時間にも思えた。だが、咲夜がそれを破った

 

「その、この前は本当に「謝らないで!」華蓮?」

 

予想通り、彼は私に謝ろうとした。だけど、絶対に謝らせない

 

「咲夜は謝らないで。今回の件、そして10年前の件は全て私の責任よ。だから...本当にごめんなさい!」

 

私は深く頭を下げた。この程度で許されるとは思っていない。だけど、今の私にできるのはそれしかなかった

 

「頭を上げてくれ、華蓮。お前は悪くない。悪いのは自分の無力さへの怒りをお前にぶつけて楽になろうとした俺だ」

 

「でも...」

 

「俺は、多分甘えていたんだ。華蓮なら助けてくれるって。だけど、甘えすぎた。そのせいで俺はお前に責任を押しつけた」

 

「そんなことない!」

 

そんなことないよ。咲夜は頑張ったよ。親の暴力に耐えて、精神的のダメージも受けた筈なのに我慢して...

 

「貴方は今まで頑張って耐えてきた。貴方の負ったダメージは大きかった筈なのに。私は何もできなかった」

 

「だけど、もう終わり。何もできないのはもう嫌なの。今度こそ、姉として貴方を守りたい」

 

「...もう何を言っても無駄だな。だがこちらのけじめとして、一言だけ言わせてもらう。今まですまなかった」

 

「...うん。これからもよろしくね、咲夜」

 

「あぁ」

 

終わったんだ。長い間続いていた罪悪感も今日で終わりだ

 

「どうやら仲直りできたみたいですね。お兄様、お姉様」

 

タイミング良く柏が入ってきた。気配感じてたしいるのは分かってたんだけど...

 

「あのさ柏、私今物凄く恥ずかしいんだけど...」

 

「そりゃ気になるじゃないですか。2人がどのような会話をするのか」

 

「そうでもなくね?別に俺はどっちでも良かったが...」

 

この男!感情が無いからって調子乗りやがって!

 

「あんたは感情無いから良いよね!恥ずかしくなくて!」

 

「んな怒ることでも...分かった!謝るから刀しまえ!」

 

こんなオドオドしてる咲夜見るのも久し振りがするなぁ。帰ってきたって感じがする。何処にも行ってないけどね

 

「2人とも仲直りした矢先に喧嘩しないでください。ほら、昨日のカレー余ってますから早く食べますよ」

 

「ホント!?よっしゃ行くぞー!」

 

「おっおい!全く...テンション変わるの早すぎだろ...」

 

当然だろう。長い間抱えていた悩みと罪悪感を全て解決させスッキリしたのだから。おそらく、今までで1番舞い上がっていることだろう

 

「咲夜も柏も早くー!私もうお腹空いた!」

 

「わーったから家で走り回るんじゃねえ!床が軋むだろうがこの野郎!」

 

「私は野郎じゃありませーんよ!」

 

きっとこれからも衝突することはあるだろう。だけど、お互いに気持ちをぶつけ合えば今日みたいに分かり合える筈。私はそう信じてる

 

 

咲夜side

 

 

華蓮と仲直りしたその2日後。放課後の体育祭練習を終え俺は友希那と一緒にCiRCLEへ向かっていた。今井はバイト、氷川は風紀委員の仕事、あこや白金もそれぞれ用事があるとのことで今日は友希那が個人でやるらしい

 

「にしても、体育祭怠いな...当日サボろっかな」

 

「貴方がサボれば羽丘が負けてしまうでしょう。琉太は花咲川につくみたいだし」

 

「俺たちリレーとか全部出なきゃならないんだぞ?嫌に決まってんだろ」

 

俺として家に引きこもりたいんだけどな...1度でもいいから丸1日ずっと寝ていたい

 

「体育祭云々の前に貴方は怪我を治しなさい。貴方のことだから走れるでしょうけど、いつまでも心配かけないで頂戴」

 

「心配してくれるのはありがたいんだが、俺を人以外の何かみたいにしないでくれるか?割と心に刺さるんだよ」

 

「感情無いくせに?」

 

「テメェ...後で覚えとけよ」

 

全く、どいつもこいつも人を何だと思ってんだ。え、殺人者?それを言われたら何も言い返せないじゃん

 

「んで?今日は何をやるんだ?俺1人だとできることも限られるが」

 

「そうね...音源は持っているし、いつもみたいにアドバイスをくれればいいけれど...翔とセッションもしてみたいし」

 

「いつもやってんじゃねえか。まぁ友希那が望むなら俺はそれに答えるだけだ。ギターとベースなら持ってきてるが、どうする?」

 

キーボードは持ち運び少し怠いし、ドラムセットはそもそも持っていない。華蓮から借りれるだろうけど、後で直すの大変だからな。まぁ此処の機材借りればいいけどね

 

「じゃあベース頼もうかしら。曲はどうしましょう?」

 

「気分的にLegendaryだけど、体育祭のセトリに入ってないからな。セトリに入ってる曲にしよう」

 

「そうね。なら、セトリの曲を一通り通してやりましょうか」

 

うわぁキッツ。いつもならできるけど、今は腕が痛くて多分1曲しかできない。こういう大事な時に役に立たないのが腹立つ

 

「すまん。自分で言っておいてあれなんだが、今は1曲が限界なんだ。最初の曲だけやろう」

 

「あっ...ごめんなさい。無理をさせてしまって」

 

「いや、こっちこそ力になれなくてすまない。じゃあやろうか」

 

「...えぇ」

 

あ〜嫌な思いさせちゃったかな。あれだけ自分で覚悟を決めたっつうのに。情けないな。本当に

 

 

友希那side

 

 

今日はRoseliaのメンバーは皆用事で来れないらしく、私と翔の2人だけとなった。普段は周りに人がいるのでそこまでだが、2人きりということを自覚すると妙に緊張してしまう。いい加減なれないかしら...

 

「にしても、体育祭怠いな...当日サボろっかな」

 

そういえば、彼は体育祭で殆どの種目に出るみたいね。運動が苦手な私からしたらとても信じられない

 

「貴方がサボれば羽丘が負けてしまうでしょう。琉太は花咲川につくみたいだし」

 

合同でやるのに花咲川に男子がいないのは不憫ということで琉太がそちらにつくことになった。彼には悪いが、そっちの方が翔と一緒にいられるので私としてはそっちの方が都合がいい

 

「俺たちリレーとか全部出なきゃならないんだぞ?嫌に決まってんだろ」

 

「体育祭云々の前に怪我を治しなさい。貴方のことだから走れるでしょうけど、いつまでも心配かけないで頂戴」

 

これは後から聞いたことなのだが、あの時の2人はかなり衰弱してたらしく今こうして普通に動けているのが不思議なくらいだ

 

「心配してくれるのはありがたいんだが、俺を人以外の何かみたいにしないでくれるか?割と心に刺さるんだよ」

 

「感情無いくせに?」

 

「テメェ...後で覚えとけよ」

 

事実なのだからしょうがないだろう。自分で言うくらいだし。でも、自分がやっていることが少しは結果として現れていて安心した

 

「んで?今日は何をやるんだ?俺1人だとできることも限られるが」

 

「そうね...音源は持っているし、いつもみたいにアドバイスをくれればいいけれど...翔とセッションもしてみたいし」

 

「いつもやってんじゃねえか。まぁ友希那が望むなら俺はそれに答えるだけだ。ギターとベースなら持ってきてるが、どうする?」

 

「じゃあベース頼もうかしら。曲はどうしましょう?」

 

「気分的にはLegendaryだけど、体育祭のセトリに入ってないからな。セトリに入ってる曲にしよう」

 

「そうね。なら、セトリの曲を一通り通してやりましょうか」

 

「すまん。自分で言っておいてあれなんだが、今は1曲が限界なんだ。最初の曲にしよう」

 

「あっ...ごめんなさい。無理をさせてしまって」

 

「いや、こっちこそ力になれなくてすまない。じゃあやろうか」

 

「...えぇ」

 

忘れていた。先程も言ったが、彼は今怪我をしているのだ。それも腕だけではなく、足などの体全身を。本来なら休ませなければならないのに、私は彼に付き合わせている

 

最低だ。今まで何度も経験したにもかかわらず、また同じことの繰り返し。あの時の約束は一体なんだったのだろうか?

 

「そこまで気に病むな。怪我したのは俺の責任だし、お前が気にする必要はない」

 

「...ごめんなさい。今日はアドバイスだけで大丈夫よ。これ以上貴方に無理をしてほしくない」

 

「...分かった」

 

そもそも、私なんかが彼と普通に接していていいのだろうか?私より、青葉さんたちの方が彼を笑顔にできているのではないだろうか?

 

「そういえば、その髪飾りつけてたんだな。ネックレスもよく似合ってるよ」

 

「あっありがとう///」

 

彼に貰ったプレゼント。髪飾りは寝る時などは邪魔になってしまうから外すが、ネックレスはお風呂に入る時以外ずっとつけている。そうだ。これが証明してくれている。彼の想いがこの2つに込められている。変に気にする必要は無いんだ

 

「ありがとう。おかげで少し元気が出たわ。今からセトリ通りにやるから、しっかり聴いておいて」

 

「了解。本番も近いからな。無理はするなよ」

 

「分かっているわ」

 

他人なんてどうでもいいんだ。私は私のやり方で彼を救う。もっと彼の笑顔が見たい。彼に感情の良さを知ってもらいたい

 

私はその決意を胸に力強く歌った




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