死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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寝落ちしまくって遅れてしまいました。ごめんなさい

久し振りに4000超えです


第53話

咲夜side

 

 

遂に体育祭当日を迎えた。あれから組織に襲われることは1度も無く、不気味なくらいに平穏だった。何か嫌な予感がした俺は彗人さんを高校まで呼び出しいつでも対応できるようにしてもらっている

 

「わざわざすまんな。忙しいのにこんなのに付き合わせて」

 

「馬鹿言え。奴らが直接動くとなれば俺たちも動かないとならないんだし、むしろ感謝している」

 

「あくまで可能性の話だ。最近は2日に1回は襲われてたっつうのにここ1週間は1度も襲われていない。仕掛けるとすれば俺や奏斗が動きにくい今日だと思っただけだ」

 

「一応念のため何人か私服で紛れ込ませている。一般人の避難は彼らに任せろ」

 

仕事速いな。流石は若くして重大事件の最高責任者を任された人だ。部下からの信頼も相当あるのだろう

 

「組織も紛れ込んでる場合がある。怪しい奴は調べさせとけよ」

 

「分かっている。それと、上司やお前んとこの爺さんからは殺しの許可は出ている。もしもの時は好きに暴れろ」

 

「マジで?一応アレも持ってきたけど準備しておいて良かったわー」

 

「お前、まさかここで使うつもりか?あんなもん使うから警察からも死神呼ばわりされるんだろうが。ほら、3人分の拳銃は持ってきてるから、奏斗と華蓮にも渡しとけ」

 

「最早あんたが黒幕みたいだな。高校生に拳銃渡すとか」

 

「今更かよ。俺は立場上公に戦えないからな。しっかり殺れよ」

 

警察のくせに殺るとか言うんじゃない。後輩の教育に悪いでしょうが

 

「慣れてるからな。ちょっと腕が訛ってるかもしれないけど多分大丈夫だ」

 

「じゃ俺は持ち場に戻る。何かあったら耳につけた通信機に連絡よこせ」

 

「了解」

 

公に戦えないっつっても俺の家の力使えば幾らでも抹消できるのに。彗人さん馬鹿強いんだよ?有馬貴将並みに

 

「そういえば、奏斗の奴何処にいんの?花咲川軍団のどっかにいるだろうけど人が多すぎるからな...華蓮に頼もう」

 

そう思い華蓮に渡すと彼女は顔を引き攣らせていた。それどころか『頭おかしいんじゃないの...』と愚痴る程だ。まぁ急に銃を渡されれば普通はそうなるわ

 

他人にバレることも無く渡し終え、自陣に戻ると蘭以外のAfterglowの面子が蘭を慰めるという奇妙なことが起きていた

 

「お前ら何やってんの?蘭は何をそこまで落ち込んでいる?」

 

「いやぁ、琉太が花咲川に行っちゃったから一緒にいられなくて落ち込んじゃって...氷川さんに盗られるとか言ってるし」

 

「は?琉太って誰?」

 

「「「「「は?」」」」」

 

...あれ?俺今おかしなこと言ったかな...ってあぁ!

 

「ちょっ今の無しで...」

 

「しょ〜君友達の名前忘れるなんてひど〜い」

 

「翔、1回病院行くか?お前金無いみたいだし治療費はアタシたちでなんとか払うから」

 

「翔、流石に無いよ...」

 

「翔君、今のは酷いと思うなぁ」

 

「さいってぇ!」

 

やらかした。さっきまで本名で会話してたせいで思いっきり忘れてた。哀れみの視線を受けるし、蘭に関してはゴミを見るような目でブチ切れられた

 

「そんな怒らなくても...分かった!悪かった!だから足踏むのやめろ!」

 

「ふん!」

 

最後に思いっきり踏みつけられた。いや、何で蘭が怒る?

 

「しょ〜君、今の状況でやっちゃいけないよ〜。蘭はりゅ〜君のこと...」

 

「モカ!それ以上はダメ!」

 

「?あのさ、俺には蘭が怒る理由が全く持ってわからないんだけど?」

 

「翔、お前は1回死んできた方がいいぞ。そしてその鈍感を治せ」

 

「別に死ぬのはどうでもいいが、いい加減人のことを鈍感と言うのはやめてもら...痛い!モカ!お前まで人の足踏んでんじゃねえ!」

 

しかも蘭の倍くらい強いんだけど?何で?今の何処に踏む要素がある?

 

「おっおい。ホントごめんって。普通に痛いからそろそろやめていただきたいんだけど...」

 

「それは何に対して謝ってるのからな〜?モカちゃんは今超お怒りなので〜す」

 

「えっと...俺が蘭を怒らせたから?」

 

「......」

 

俺がそう言うとモカは更に体重をかけてきた。こいつ軽いからあまり変わらないんだけどな...おい、グリグリするのはやめろ

 

「巴、ヘルプミー」

 

「ハァ...お前はさっきアタシが鈍感を治せと言った時何て答えた?」

 

「えっと...鈍感を治せっつうのはやめろ?だったっけ?」

 

「何故そっちが出て来る...すまん。そっちじゃなかったな。アタシはその前にもう一言言った」

 

「1回死んでこいか?別に俺は死ぬのはどうでもいいって...あ」

 

「やっと分かったか?目の前に自分のことを大切してる奴がいるのに、翔はそれを踏み躙ったんだ」

 

「......」

 

やっぱり、感情を持つと面倒なことにしかならないな。昔の過ちを繰り返すばかり。だけど、今回はやらかした。モカの想いを...馬鹿にしたのと同じだ

 

「モカ。さっきは悪かった。お前の想いを関係無しにあんなこと言って、本当にごめん」

 

「...次言ったら絶対に許さないから」

 

「次、か...もう言わないよ」

 

それまでに生きてればの話だけどな

 

俺は優しくモカを抱き締め、少しでもモカを落ち着かせようとした筈だった

 

「しょっしょ〜君...///」

 

「翔、あんた何で泣いてんの?」

 

「は?」

 

蘭に言われて頬を触ると、微かに濡れていた。何でだよ?何で泣くんだよ?

 

「すっすまん。何で...」

 

「翔君、今日はなんか変だよ?どうしたの?」

 

「それに、何処かモカを抱き締める力強かったよ?何かあったの?」

 

「え...モカ、ごめん。痛かったか?」

 

「ううん。しょ〜君の顔、凄く悲しそうだった」

 

悲しそう?俺が?そんな筈無い。何を思ってそんなことが...死にたくないとでも思ったか?こいつらや友希那たちと離れたくないとでも思ったか?俺がそんなこと思って許される筈無いのに?

 

「翔、1回落ち着け。落ち着いて深呼吸しろ。理由を考えるのはそれからだ」

 

「...その優しさは俺に向けるなよ。巴、その優しさはAfterglowの為に使え」

 

そう言って俺は皆の元を去った。これ以上一緒にいるとどうにかなりそうだった。人目のつかない場所に移動し、その場に座り込む。自分でも何故そうしたのか分からない

 

「何やってんだこんな場所で」

 

急に後ろから声をかけられ振り返ると、奏斗が不思議そうな顔でそこにいた

 

「分かんねえよ。つうか、お前さっきの見てただろ」

 

「バレてた?お前急にモカを抱き締めるし泣き始めるし、らしくないな」

 

「俺は何処かで生きたいって願ってたのかもな。ずっと死んだ方がいいだの言ってきたけど、俺が望むべきじゃないことを望んでいたのかもしれない」

 

「そうか...俺だって生きたいさ。蘭や紗夜、Afterglowの皆と一緒にいたいし、分かってても願っちゃうんだよ」

 

「なんだ、お前もかよ」

 

「彗人さんとも話した。薄々気づいてるだろうが、一般人とは明らかに違う気配の奴がいる。おそらく組織の人間だろう」

 

「あぁ。準備しておいて良かったよ」

 

「仕掛けて来ることは確定した。そうなればもう隠せない。この件が終わったら、俺は全てを話す」

 

「その方がいいかもな。念の為4人宛に遺書みたいなの残しといたけど」

 

「考えることは同じみたいだな。俺もだ」

 

「もうある程度は話した方がいいんじゃないのか?今日死ぬかもしれないし」

 

「そうだな。俺は紗夜に話して来るよ」

 

「俺もAfterglowと友希那には話しておく」

 

俺は立ち上がり奏斗とは反対の方向に歩き出す

 

「奏斗(咲夜)!」

 

『死ぬなよ!』

 

俺はAfterglowの元に戻った。皆はめっちゃ心配方な顔してた

 

「も〜急にどっか行くから心配したじゃん!」

 

「すまんすまん。お前ら、1つだけ言うことがある。聞いてくれるか?」

 

「どうしたの?」

 

「俺は今日、死ぬかもしれない」

 

「...え?」

 

そう言った瞬間、モカが間抜けな声とともに力なく崩れ落ちた。巴が慌てて支えるが、モカは目の焦点が合っていない

 

「どういうことだ?説明しろ」

 

「蘭とモカは覚えてるだろ?夏合宿の時に襲ってきた変な奴」

 

「うっうん。でも、あの時は翔たちが倒したじゃん」

 

「その仲間が今此処羽丘グラウンドに忍び込んでる。それもかなりの数な」

 

「嘘...」

 

「狙いは俺と琉太、そして姉さん。俺たちが動きにくいこの日を選んだんだろう」

 

「嘘だよね?ねぇ!嘘って言ってよ!」

 

「蘭!落ち着け!」

 

「落ち着けるわけないでしょ!?でないと琉太が...死んじゃう」

 

胸ぐらを掴み怒鳴り散らす蘭だが、段々と力が失われていく

 

「勿論俺たちだってただで死ぬ訳にはいかない。最後まで足掻き続ける。だけど、死ぬ確率の方がずっと高い」

 

 

「蘭が琉太を大切に想うことはよく分かる。彼奴だって、お前を残して死ぬつもりは到底ないだろう」

 

「ねぇ、お願いだから嘘って言ってよ。怒らないからさ」

 

「残念ながら本当だ。仕掛けて来るとすればおそらくラストのガルパ勢によるライブだ。そうなると皆にまで被害が及びかねない。そうなれば俺たちは最優先でお前たちを守る。俺たちより自分たちを心配することだ」

 

「しょ〜君...死なないよね?」

 

「あくまで可能性の話だ。俺がそんな簡単に死ぬと思うか?」

 

「...ううん」

 

「じゃあ俺は友希那の所に行く。まずは体育祭を楽しめ。それと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神舐めんなよ」

 

俺はそう言い残し友希那の元へ向かう。こういう時はあの銀髪が役に立つ。友希那を見つけ声をかける

 

「友希那、話があるんだがいいか?」

 

「翔?いいけれど、どうしたの?」

 

「此処じゃ話せない。場所を変えよう」

 

俺は人から離れた場所に友希那を連れてモカたちに話したことをそのまま話した

 

「...冗談ではないみたいね」

 

「随分と落ち着いてんな。モカなんか倒れたっつうのに」

 

「私だって内心焦ってるわよ。でも、ここで取り乱しても貴方に迷惑がかかるだけ。なら私は貴方の為にできることをするだけよ」

 

「タイミングはさっき話した通りだ。当たってるかは分からないけど、お前はRoseliaを絶対に守れ。氷川さんも琉太から聞いてる筈だ」

 

「...死んだら許さないから」

 

「善処するよ。話は以上だ。死神舐めんなよ」

 

先程と同じことを告げその場を離れようとするが、少しだけ...

 

「友希那、最後に1つだけ」

 

「え?」

 

俺は友希那を抱き締め彼女の唇を奪った

 

「えっ...ちょっ...///」

 

「何でこんなことしたんだろうな...嫌だったらすまんな。俺もよく分かんねえ」

 

「//////」

 

固まった。これはまたやらかしたな?

 

「ごっごめん。そんな嫌だったか?」

 

「そんなわけ...ないじゃない///」

 

「そっそうか...」

 

「もう1回だけ、いいかしら?」

 

「えぇ〜俺自身なんであんなことしたのかよく分かってないんだけど」

 

「自分からしておいて...もういいわ」

 

友希那は背伸びをして俺にキスしてきた。身長伸びすぎじゃね?

 

「ん...///」

 

「これで充分か?俺は戻るからな」

 

何だろうな。この胸の奥で感じる何かは

 

「翔。絶対に死なないで」

 

「あぁ」

 

俺はこいつを守りたい。それだけが心に残った




読了ありがとうございました

評価や感想お待ちしております

体育祭編凄く長くなりそうなのでお付き合いしていただけたら嬉しいです

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