死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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今回は奏斗メインです


第54話

奏斗side

 

 

咲夜と別れた後、紗夜を探す為に2年生のいる場所へ向かった。アイスグリーンの髪がよく目立っており、すぐに見つけることができた

 

「紗夜!ちょっといいか?」

 

「琉太?別にいいけれど、どうしたの?」

 

「話がある。それも重大なやつだ。少し来てくれ」

 

「...分かったわ」

 

俺から出る雰囲気を感じ取ったのか、神妙な顔で見つめてくる紗夜。人目のつきにくい場所に移動すると俺は話を始めた

 

「まず1つ。俺は今日、死ぬかもしれない」

 

「え?」

 

最初は何を言っているのか分からないといった表情だったが、徐々に理解した彼女は信じられないといった感じになっていった

 

「嘘...よね?ただの体育祭で死ぬなんて...」

 

「夏合宿の最終日覚えてるか?俺たちを襲って来た奴のこと」

 

「えぇ。でもあの時は貴方が...まさか」

 

「そのまさかだ。組織の連中がかなりの数で忍び込んでる。狙いは勿論俺たちだ」

 

「そん...な...」

 

「伝えておこうかと思ってな。このことを知っているのは俺に翔、祐奈さん、紗夜に湊さんにAfterglowの皆。それと知り合いの警察も来てる。避難誘導は警察が何とかしてくれるさ」

 

「貴方達はどうするの?」

 

「言ったろ?狙いは俺たちだ。一緒に行けばお前達にも危害が及ぶだろうが。俺たちはまぁ殿みたいなものだよ」

 

一応殺しの許可は出ているし、遠慮無く暴れられるから紗夜達が怪我をすることはないと思いたい

 

「タイミングはおそらくラストの5バンド全員によるスペシャルライブだ。その間俺たちはステージ脇にいるから何かあったら呼べ」

 

「...分かったわ。だけど、死んだら絶対に許さないから」

 

「え〜...そこは綺麗な墓を作るとかさ〜もうちょっと何か無いわけ?」

 

「ふざけないでよ!」

 

「......」

 

あっこれは怒らせたパターンですね、ハイ

 

「私は...貴方が死んだら嫌なの。もっと貴方のことを知りたい。貴方と一緒にいたい。いつか貴方にギターで追いついて本気のセッションをしたい。だから...死なないで」

 

それがお前の想いだな。だったら、俺はそれにできる限り答えなきゃならねえね

 

「気持ちは分かった。1つ勘違いしてるけど、死ぬと決まったわけじゃない。俺だってただで死んでたまるかっての。この件が無事に片付いたら、その時は全てを話す。それまで待っててくれ」

 

「私も、できることをする。貴方は生きることを最優先にして」

 

「無理」

 

「なっ!?」

 

「今回のXaharの仕事は命に代えてでもお前達ガールズバンドを守ること。お前達に傷1つもつけさせないことだ。俺達が死ぬ云々より自分達の身を考えろボケナス」

 

「っ...分かったわよ。その代わり1つだけお願いを聞いてもらうわよ」

 

「ん?」

 

「生きて必ず私たちのところに帰って来て。私が望むのはそれだけよ」

 

何だそんなことかよ。んなもん言われなくとも分かってるってのこの脳筋め

 

「ねぇ、今失礼なこと考えてなかったかしら?」

 

「そっそんなことはない。ただの思い過ごしだ。あはは...」

 

おー怖い怖い。危うく紗夜に殺されるとこだったぜ

 

「まぁとにかく、ガルパの皆の誘導は任せたぞ。大丈夫、俺たちを信じろ」

 

「...美竹さんのところには行ったのかしら?」

 

「蘭のところ?翔が話してくれるだろうから行ってないけど」

 

「行ってきなさい。彼女は貴方を絶対に待ってる。多分この話を聞いて少なからず動揺してる筈よ。だから、行ってきなさい」

 

「...分かった」

 

まぁ念のため蘭達に会っておくかね。死ぬ可能性も十分あるわけだし

 

「じゃあ私は戻るわ。他にこのことを伝えた方がいい人は?」

 

「やめておけ。既にかなりの数の組織の連中がいる。情報が漏れたらこっちの計画が台無しだ」

 

「そうね。分かったわ」

 

「そんじゃあ蘭や俺の出番が来る前に会ってくるわ。紗夜も頑張れよ」

 

「えぇ。琉太もまずは体育祭を楽しみなさい」

 

「了解」

 

さて、羽丘勢に行くがてら組織の動向を把握しておくとするか。今日の為に昔使っていた俺の武器もしっかり手入れして持ってきてある。今は柏が全部管理してるけどな。華蓮さんも自分専用の持ってるけど、1番エグいのは咲夜だ。あれはヤバイTHE死神だ

 

「にしても、かなりの数いるな...これ本当に大丈夫か?嫌な予感しかしない。おっ蘭発見。らーんー」

 

「!!琉太!」

 

俺が名前を呼ぶと蘭やAfterglowの皆はこっちに走って来ておまけに抱きついて来た。いや人目を考えなさいお前は

 

「...話は翔から聞いてる。琉太も行くんだよね?」

 

「あぁ。こればっかりは俺達が招いたことだ。責任は取らなきゃいけない。安心しろ、そう簡単に死なねえよ」

 

「翔にも死んで欲しくない。彼奴が死ねばモカが悲しむから。でも、あたしは琉太が死ぬ方がもっと嫌だ」

 

「蘭...」

 

あーあ。折角冷静に保ってたっつうのにこれじゃもうダメだ

 

「だから...絶対に」

 

「それ以上は喋るな」

 

俺は蘭の口を塞いだ。指や手じゃない。キスをして塞いでやった。自分でも何でこんなことをしたのやら分かってない

 

「ん!?///ちょっ琉太!?恥ずかしい...///」

 

「ハァ...これでいいだろ。さっきから俺達が死ぬだの言いやがって。俺達がそんな簡単に死ぬと思うか?合宿の時の見てそう思うか?」

 

「でも...今回は...」

 

あーもう!こちとら元気付ける為にやってんのに逆効果じゃないのか!?慣れないことするんじゃなかった!

 

「おい、それ以上喋ればもう1回やるぞコラ。そう簡単に人を殺してんじゃ「いいよ」...何が?」

 

「琉太になら、されてもいいよ」

 

「あのなぁ、そういうのは俺からしておいてあれなんだけど好きな人に言うものだぞ?」

 

「...バカ」

 

何かバカって言われた。そう思ってたら蘭の顔が目の前に迫っていた。背伸びって案外伸びるのな

 

「ん...プハァ...///」

 

「蘭...お前何かいつもと違う」

 

「それはあたしのセリフ。死んだら許さないから、覚悟しておいてよ」

 

赫く染まった顔からとんでもないお言葉をいただいた。蘭の場合余裕で墓石蹴りそうだな。うん、死ぬのは嫌だな

 

「了解。んじゃ、俺は戻る。何かあったら3人の誰かに言え。花梨もいるから」

 

「分かった。気をつけてね」

 

何回人のこと心配するんだ。そんなにしてたら身が持たないぞ。そういえば、あの高校生に拳銃を渡す基地外は何処に行った?挨拶くらいしておかないとね

 

「あの人も大変だな...一緒に戦ってくれるんなら割と余裕で勝てると思うんだけどな。立場上無理か」

 

昔は結構荒れてたから街の不良を俺達3人で殺し回っててその度に彗人さんにボコられて...何気にあの頃は楽しかったな

 

「彗人さん、こんちはっす」

 

「おぉ奏斗。久し振りだな。アレはもらったか?」

 

「呆れたような顔した華蓮さんからもらってるよ。あんたも殺ればいいのに」

 

「あのなぁ。警察の俺がお前達と一緒に戦って殺してたら瞬間ネットで叩かれるぞ。別に3人で勝てるだろ」

 

「あんた俺達より強いだろ」

 

「あの頃はお前達もガキだったからな。今は1人相手でも勝てる気がしない。俺も歳とったんだよ」

 

ジジイか

 

「まぁいいや。客の避難は任せるからな。ガールズバンドの皆も逃がしてやってくれ。人質に取られたら俺達が何とかする」

 

「分かった。既に配置には付けてるから安心しろ。半分は柏に指揮を任せてある。お前と咲夜と華蓮は思う存分暴れてこい」

 

「そいつはありがたいな。んじゃ俺は戻るわ」

 

「おう。死ぬなよ。死んだら俺に責任が回る」

 

「はいはい。何回死ぬなって言われればいいんだか...」

 

皆俺達を舐めてんのか?今までに死にかけたことは幾らでもあるけど、最終的には全部叩きのめしてるからな。この前のやつはノーカンで

 

「さてと、時間的にそろそろ俺達の出番だな。ハァ...めんどくさい」

 

リレー種目は基本全部アンカーとして出ることになっている。その方が盛り上がるらしいけど、今はそれどころじゃないんだよな...帰りたい

 

俺のそんな祈りは届くことなく、まずは学年対抗のリレーが始まってしまった。いや、皆速くない?レベル高すぎだろこの羽丘と花咲川...

 

「あーやってんねー。ほぼ同時に来るな。咲夜、調子はどうだ?」

 

「ぼちぼちだな。仕事の準備運動としてやるけど、手は抜かねえぞ」

 

「上等」

 

中学の頃も毎年俺達がアンカーをやっていたけど、毎度の如く同着でいつまで経っても決着がつかない。そろそろつけたいね

 

そんなことを考えているうちにすぐ後ろまで来ていたため、俺達も合わせて走り出した。ほぼ同時にバトンを受け取りそのまま全力で走る。途中までは並んでいたのだが...

 

「え?ちょっ?咲夜速くね!?」

 

「なんだか知らんが今日は調子が良い」

 

まさかの急に咲夜が速くなるというアクシデントがあり負けた。嘘やん。割とガチで自信あったのに...

 

「ハァ...ハァ...何だよあれ。頭おかしいんじゃねえの?」

 

「もう走りたくない...これで終わり...じゃなかった」

 

「まだ学校対抗があるからな。もう容赦しない」

 

「次も勝ってやるよ」

 

次の学校対抗ではギリギリで俺が勝った。正直に言おう、疲れた。これライブまでに体力持つかな...何かXaharも強制的に出させられてるんですよね。主に湊さんと蘭のせいで

 

「とりま昼休みになるし柏のところ行こうぜ。多分華蓮と彗人さんもいる」

 

「りょーかい」

 

さて、午後に向けて英気を養うとしますかね。もしかしたら最期の飯かもしれないしな

 

「おーい。準備はできてるか?」

 

「お疲れ様です。こちらが今日の昼食になるので、ご自由にどうぞ」

 

「「いただきまーす」」

 

うん、美味い。最早プロの味。柏の奴咲夜や華蓮さんに料理教わってから腕前もイカれやがったな

 

「しっかしまぁ、どいつもこいつもでかくなったなぁ。昔はこんなちっちゃかったのに」

 

「煩いですよ。貴方はとっとと食べて持ち場についてください」

 

世間話をする彗人さんに柏が辛辣な言葉をかける。何故かは知らないが、柏は彗人さんのことを物凄く嫌っているのだ

 

「柏もますます捻くれてきたな。誰のせいだか」

 

「華蓮だろ」

 

「私!?咲夜の方が一緒にいたよね!?ていうか私何年も柏と会ってなかったのに何でそうなるの!?」

 

「あーはいはいそうですねー。ところで、アレは何処にある?」

 

「彼処にありますよ」

 

アレとはもしかしなくてもヤバイ奴のことだろう。2メートルくらいの木箱の中に入ってるけど、目立ちすぎてね?周りの人何これ?って目で見てるけど

 

「お前アホか?連中にバレたらどうすんだ」

 

「オッサンは黙っててください。ずっと私が椅子として使ってたので大丈夫ですよ。多分」

 

「確信を持て」

 

「まぁバレてなきゃいい。午後からはライブだ。衣装にも仕込んであるし、最初はそれで何とかしろ」

 

「「了解」」

 

こういった時の指揮は基本咲夜が取っている。その方が楽に進められるしね

 

「改めて今回の目的を確認する。まず1つはガルパの皆を守ることだ。これを最優先にする。2つ目は組織の殲滅。これさえできれば他はどうでも良い。このことだけを考えておけ」

 

「うーんゾクゾクしてきた!やっぱりこの感覚好きだわ」

 

「やっぱり華蓮さんが1番狂気持ってるよな。まぁ俺も楽しみだけど」

 

「お前らもうちょっと緊張感を持って...」

 

「「お前(あんた)が言うな!」」

 

「アハハ...」

 

これが今日で終わるか、これからも続くのか。それが今日で決まる。蘭や紗夜の為にも、必ず作戦を成功させてやる




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