今此処、羽丘学園のグラウンドには壮絶な光景が広がっていた
茶色かった筈の土は真紅の液体に染まり、そこかしこに人の腕や足、頭が転がっていた。その周りではかつて死神と呼ばれた者たちが見た者を恐怖に陥れるには十分な戦いを繰り広げていた
月読命華蓮。彼女は弟である咲夜の監視のために教師をやっていた。実年齢は18歳なのだが、親戚である理事長の権限もあり正体を偽り仕事をこなしている
そんな彼女が使うのは2本の日本刀。昔から剣捌きが誰よりも上手かった彼女は、組織内ではとても有名だった。先程殺した5人を除き残り45人で全員刀を持っている。他にも2人いるため単純計算で1人15人を相手することになる。普通なら不可能に近いだろう。だが、彼女にとっては簡単なことである
「後ろから5人、前から5人、周りで3人が私を囲んでる。まずは前の奴からやるのが妥当かな...後ろはナイフで何とかなるか」
そう呟きながら彼女は前にいる連中に狙いを定め一気に駆け出す。あまりの速さに反応できなかった連中は為す術もなく頭を跳ね飛ばされた。その瞬間、後ろから待機していた5人が華蓮に襲いかかる。今から刀を構えては間に合わない。だが
「その程度の速さで私を殺すつもり?持ってるのは刀だけじゃないのよ?」
華蓮は羽織っていたコートのボタンを一気に外した。すると、コートの裏側に何十本ものナイフが現れた。彼女はその内の5本を取り出しそれを全員の顔に向けて投げつけた。だがそう簡単にやられるわけでもなく、簡単に防がれた。しかし、ナイフを弾いた連中の目には既に華蓮はいなかった
「何処見てるのかしら?ナイフ1本に気を取られるとか頭悪すぎなんじゃないの?よくそんなので殺し屋なんてできたわね」
一体どういう足をしているのか。今の一瞬で後ろに回り込んだ華蓮は刀を逆手に持ち替え目にも留まらぬ速さで身体を回転させ奴らの身体を細切れにした。辺りに血が飛び散り、近くにいた彼女はその返り血をもろに浴びた
「ふふふ...美味しい♡」
顔についた血を舐め彼女はそう呟く。その小さな笑みには悪魔のような、妖精のような雰囲気が漂っている。久し振りの感覚に彼女は心の底から楽しんでいた
「あと3人...計算的に2人足りないけど...」
ふと思いつきガールズバンドの皆が避難している方を見ると、そこでは妹の柏が戦っていた。柏は昔訓練も受けていて、更には咲夜にも鍛えられている。だが、実践経験は0なのだ。流石に初めての実践のため苦戦しているようだった
(やっぱり柏には厳しいか...さっさと片付けて援護しないと)
周りを囲んでいた3人を殺しすぐさま柏の援護に向かう。華蓮たちの課題として、柏に人を殺させないということがあった。実践経験がないということは人殺しをしたことはないということ。そんな彼女の手を汚すようなことはさせたくないという想いの一致からできた課題だった
「柏!伏せて!」
華蓮が後ろから呼びかけた瞬間、柏はすぐに身体を伏せた。先程まで柏と戦っていた2人は突然の華蓮の出現に対応できず頭を切り落とされた
「すみません...私が非力なばかりに」
「あんたは実戦経験ないから仕方ないわよ。それより、後ろで青い顔してる子たち何とかしといてね。邪魔だから」
「分かりました。皆さん、早くこちらへ」
柏に促されガルパの皆はグラウンドの外側へ非難する。この場を出られないのは狙われている自分たちがこの場を出れば民間人に被害が及ぶ可能性があるからだ
「かっ花梨。これは...一体何なの?」
「見ての通り、お兄様たちが戦ってるんですよ。友希那さんたちも見たことあるでしょう?」
「でも...まさか人を殺すなんて」
「私も実際に見るのは初めてですけどね。それと、私はもう花梨ではない」
「え?どういうこと?」
「聞いてなかったのならそれでいいです。あと少ししたらどっかのおっさん警部が来るでしょうから、それまで何とか持たせます」
何も知らない友希那たちは只々困惑していた。いや、最早困惑する程の余裕なんて無いだろう。此処にいる全員が彼らと面識があり、多少は言葉も交わしている
中でも深い想いを抱いている友希那や蘭などの人は目の前の光景に目を瞑るしかできなかった。自分の想い人が人を殺しているなんて現実、受け入れられる筈が無い
「とにかく、皆さんは固まっててください。私1人では到底守り切れるものではありませんが...」
(お姉様の方は大方片付いたみたいですね。あとの2人もおそらく余裕でしょうし、このまま順調に行けばいいのですが...)
このときの柏の中では嫌な予感がしていた。それに柏の予感はよく当たる。主に悪い方のときにだが
その頃、奏斗の方では
(1、2、3......15人か。まぁこのくらいならどうとでもなるか。制限もなきゃこいつも使える。時間もかけたくないしさっさと済ませよう)
宮本奏斗。表では妹尾琉太としてAfterglowのマネージャーをしている。温厚な性格故にAfterglowやギターの弟子である紗夜からは絶大な信頼を得ている。だが、仕事となるとその性格は消え、明確な殺意が表れる。キレるとあの咲夜でさえ手が付けられないとのこと
時間をかけるのが嫌いな彼は刀を構えて動かない奴らに持ち前の薙刀捌きで斬りかかる。だが、単純な攻撃のため上に跳ばれ避けられる。その隙を逃さず彼はすぐさまジャンプして薙刀を横に振る。今の攻撃で5人が真っ二つにされ死んだ。後ろの方で構えていた連中は懐から拳銃を取り出し奏斗に向けた
「ありゃりゃりゃ。そっちも持ってんのね。まぁ意味ねえけど」
奏斗は持ち手の真ん中を持ち構える。そのすぐ後無数の銃弾が飛んで来たが、彼は自分の前で薙刀を回転させ全て弾き返した。弾き返した弾が当たったのか今ので半分くらい削れたみたいだ
「残り7人...お前ら、面倒だから全員でかかってこい。細切れにしてやる」
今の彼にある感情は怒りと殺意だけだった
「蘭と紗夜に手を出したことは何があろうと許さない。覚悟しろ」
奏斗は残った7人に向かって走り出し斬りかかる。怒りのためかその速さは異常なもので、誰1人反応できなかったため全員死んだ
(こっちは終わったな。華蓮さんも終わってるみたいだしあとは咲夜だけなんだが...どう見ても彼奴舐めてるだろ)
呆れる奏斗の視線の先では咲夜が戦っていた。というよりは一方的に避けているだけだった
月読命咲夜。表では神道翔として自分が所属するバンドXaharのリーダーを、更にはRoseliaのマネージャーもやっている。しかし、表と裏で1番性格が変わるのは咲夜だろう。自分の邪魔になる存在は何があろうと消す。それが彼の流儀だ。出会った者は全員殺されたことだろう。そのため彼につけられた通り名は...死神
(そろそろ身体も温まってきたか。ていうか2人とももう終わってんのか?いや、俺が遊びすぎただけか)
他の2人が戦っている間、咲夜は攻撃を避けたり受け流したりしているだけだった。本来なら速攻で終わらせられた筈なのだが、残念なことに昼寝をしていたせいで身体が固まっていたのだ
(言われたそばからこれかよ。寝なきゃよかった...)
頃合いと判断した彼はその巨大な鎌を高速で振り回し、取り囲んでいた計14人を一瞬で殺した。3人の中でも最強なだけに、彼の相手をしていたのは組織の元幹部ばかりだった。それを瞬殺とは流石は死神と言ったところだろうか
(あと1人。ステージでこちらを見ているだけか...さっきも指揮をとっていた辺り、彼奴がリーダーなのは間違いないだろうな。それにしても、さっきの声何処かで...)
「咲夜!終わったか?」
「あと1人だけだ。多分彼奴は強い」
「こっちも終わったわよ。2人とも怪我の方は大丈夫?」
「今の所はな。だが、あまり長くは持たないだろう。友希那たちに怪我はないか?」
「えぇ。柏が頑張ってくれたおかげでね。あの子も怪我はないわよ」
「そうか。奏斗と華蓮は彼奴の注意を引いてくれ。俺が殺る」
「「了解」」
咲夜の指示により2人は左右から同時に攻撃を仕掛ける。長年3人で行動して来たため、仕掛けるタイミングはバッチリだった。しかし、リーダーと思われるそいつはいとも簡単に避け刀を抜き斬りかかる。避けられたことに驚く2人だが、すぐに対応してその攻撃を躱す
その隙に背後から鎌を振りかざす咲夜だが、それも簡単に防がれてしまった
(こいつ...!普通の奴とじゃ全然比べものにならねぇ!)
「クソッ。流石にこの程度じゃやられてくれねえか」
「もう持てる武器全部使ってでも倒すしかないわね。どうする?一応リーダーっぽいし、生かせば少しは情報手に入るかもしれないけど」
「いりませんよ。何があろうと殺す」
「俺も同意見だ。彼奴らに危害を加えたことだけは絶対に許さない」
「...全く。その程度か?」
「あ?ごちゃごちゃうるせえんだよ。喋るんならその仮面筈してから喋れ」
「ふん。お前ら3人とも変わってねえな...」
リーダーと思われるそいつはゆっくりと仮面に手を伸ばしやがてその顔が明らかになった
「なっ!?あんた...まさか」
「っ!」
「お...まえ...は...」
「久し振りだなぁ。お前ら」
その者の名は
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