新曲、かっこよかったですねぇ。ガチャですか?自分は蘭とモカが出ましたよ
ピックアップって知ってる?
咲夜side
「何で...あんたがここに...」
今回俺たちを襲撃した組織のリーダーはまさかの俺と華蓮の父親だった
「目的ならお前らが1番分かってんじゃねえのか?咲夜、お前の首をもらう。それだけだ」
「あんた如きに...!?」
何だ?足が動かない。自分でも分かるくらいに震えているし、呼吸も荒い。目の焦点も合っていないし何よりも
「咲夜!」
「!?ガハッ!」
奏斗の声で我に返った俺だが、その瞬間に腹に強い衝撃が走り身体が宙に浮いた。それがクソ親父の蹴りだと気づいたのは浮いた身体が地面に叩きつけられてからだった。それと同時に腹に強い痛みがくる
「ゲホッ!ゲホッ!なんて蹴りしてんだよ...?」
腹を押さえようと触ると何か硬いものが手に当たった。嫌な予感がして見てみると
「なっ...嘘だろ?肋が...」
先程の蹴りで折れた肋がどうやら身体の外に出て来てしまったらしい。ダメージがデカすぎるとその瞬間はあまり痛みを感じないらしいが...確かにその通りかもな
そんなことを考えていた瞬間
ビキビキビキビキ!!
「ぐっ!?ああああああぁぁぁぁ!!!!」
んだよこれ...!痛みが尋常じゃない。どう考えても人の蹴りじゃないだろ!
「咲夜!もういい。あんただけは許さない!」
「華蓮さん!1人じゃ無茶だ!」
「奏斗君は咲夜の手当てをしてて!こいつだけは...私が殺す!」
俺は痛みのあまり意識がろくに保てず、やがてその意識の大半は失われていった
華蓮side
憎い。お父さんが憎い。何もできない自分が憎い。こいつは咲夜をまた傷つけた。絶対に許さない
「あんただけは...私が殺す」
「威勢のいいことで。先に華蓮、お前から消すとしようか」
私はもう、こいつには負けない。あの頃とは違うんだ。今の私には力がある。絶対に...
コロシテヤル
友希那side
目の前で翔が蹴り飛ばされた瞬間、私は先程まで感じていた恐怖などは消え、全て怒りへと変わった。私が怒ったところで何も変わらない。それでも、あの男が許せなかった
だが、それも一瞬のこと。彼の叫びを聞いた瞬間、花梨の静止も聞かずに私は彼の元へ駆け寄った。青葉さんや松原さん、若宮さんらも一緒に来た
「翔!しっかりして!」
「ヒューヒュー...ゆき...な?」
「今は喋っちゃダメ!落ち着いて空気を吸って!」
「友希那さん!お兄様から離れてください!手当ての邪魔です!」
花梨に引き剥がされ私たちは翔から離れる。琉太も来て2人は素早い手つきで彼の手当てを進めていった
「...今はこれが限界か。柏、彗人さんに救急車呼ばせろ。家の方からって言えば手配はすぐに終わる」
「分かりました」
「琉太。翔は...大丈夫なの?」
「さぁ。今の状態が続けば死ぬ確率は高いだろうな。全く、朝お互いに死ぬなって言った矢先にこれだよ」
「うる...せぇ...」
「今柏に家の方から救急車呼ばせた。すぐに彗人さんが手配してくれるだろ。人の避難も終わってこっちに向かってるみたいだしあと少しの辛抱だ。咲夜、死んだらお前の墓燃やすから覚悟しとけよ」
よく分からないが、とりあえず救急車は手配されてるみたいで私は安心した。だけど、そうしている間も祐奈さんはあの男と戦っている
状況からして今は互角みたいだが、あの翔が一瞬でやられたのだ。とてもこのまま続くとは思えない
「咲夜、お前はあのとき何故動けなかった?お前の身体は何故そんなに震えている?恐怖の感情が何故芽生えたのか、今なら分かるんじゃないのか?感情を捨てた理由も」
そんなことを琉太は翔に問いかけていた
「翔、お願い...死なないで」
「死な...ねぇよ...ヒュー...ヒュー...約束...したからな...」
こんな苦しそうな顔をしているにも関わらず、何もできない私は只々祈ることしかできなかった
sideout
咲夜たちがそのような会話をしていたころ、華蓮は劣勢の位置に立たされていた。最初こそは互角に渡り合っていたが、先程の戦闘に加え、直前にライブもやったため体力があまり残っていなかった
「ハァ...ハァ...」
「おいおいどうした?もう限界なっちまったか?」
「黙れ!」
彼女にはもう戦略を立てるほどの余裕はなく、怒りに任せて戦っているだけだった
「あんたは私たちを地獄へと陥れた!あの子を、私を守ろうとしてくれた咲夜にあんなことをした!あんただけは...絶対に許さない!」
「ふん。確かに俺はお前たちを殺し屋の道へと引きずり込み、咲夜をあの様な目に遭わせた。だがな、それは華蓮、お前も同じだ」
「!?そんなわけ...」
華蓮の動きが止まる
「俺はあのとき態とお前の前でやっていた。その結果、お前は自分の保身を図り何も手を出さなかった。自分が同じ目に遭うことが怖かったからだ」
「違う!」
「それが事実だ。あの頃から咲夜のお前に対する態度が変わったのがその証拠だろう」
「...まれ」
「お前はただの自己中な臆病者なんだよ。華蓮」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!!!」
華蓮は我を忘れ刃に斬りかかった。まともな体制をとってもいないのに彼に通用するわけがない。しかし、今の彼女にそのような判断ができるほど意識をしっかりさせることはできなかった
「その怒りやすい性格も変わってねえな...言ったはずだぜ、相手との斬り合いで敵の刀を折りつつ敵に重傷を負わせられる角度を」
刃はその場を動かず、刀を構えるだけだった。その構えは見事なもので、隙など何処にもない。だが、怒りのためにその判断ができない華蓮は刃に斬りかかる
その瞬間、刃は走りだし刀を振った。互いの目の前でぶつかった2本の刀だが、華蓮の刀は砕け散り、同時に彼女の右肩を大きく切り裂いた
「あ......」
華蓮はその場に力無く倒れ、その周りに彼女の血が広がっていった。続けて刃は倒れた華蓮に止めを刺そうとするが
「華蓮さん!」
駆けつけた奏斗によってそれは阻止された。1度体制を整えようと下がる刃。その間に奏斗は華蓮を後ろにいる柏の元へ投げつけた
「柏!華蓮さんも重傷だ!その人はもう戦えない!すぐに手当てをしろ!蘭と紗夜も手伝え!」
「了解です!」
指示を受けた3人はすぐに華蓮の応急処置を実行する。これだけ早く手伝えをすれば何とか助かるだろう
「さて、お久し振りですねおじさん。10年ぶりですか?」
「もうそんなに経つのか。ずっと牢屋にいたから時間感覚が未だに狂ってんだよな」
「どうやって出たんですか?」
「何か何処ぞの強盗殺人犯が脱獄しようと暴れたらしくてな。騒ぎに乗じて全員で抜け出した」
「成る程...もう1度刑務所入るか此処で死ぬか、どちらがいいですか?悪いんですけど、俺は今までにないくらいブチ切れてるんでね」
「その割りには落ち着いてんな」
「闇雲にやってもこっちが殺られるだけなんでね。そろそろ始めましょうか」
「そうだな。いいぜ、かかってこい」
奏斗は刃に向かって走り出し、薙刀を思い切り振り下ろした。避けようと構えた刃だが、それは刃に届かず彼の目の前地面に刺さった。別に奏斗がトチ狂ったわけじゃない。持ち手がしなるようにできている薙刀は奏斗を空中へ投げ飛ばした
奏斗は懐からナイフを10本ほど取り出し、それを投げつけた。1本1本に間隔があるため躱すのは不可能と判断した刃は飛んで来たナイフを全て弾き返した。その間に奏斗は地面に突き刺した薙刀を抜き刃に斬りかかった。だが、それも簡単に避けられてしまった
「昔よりもやるようになったな。そろそろ俺も疲れてきたしケリをつけさせてもらう」
「やれるものならやってみてくださいよ...ハァ...ハァ」
2人は同時に走り出し、激しい斬り合いが始まった。それは凄まじいもので、近くにいれば細切れにされそうだった。互角だったそれも、段々と奏斗が劣勢の位置に持ち込まれていく。そのとき
ズキン!
「グッ!?クソ、こんなときに...」
数週間前にやられた傷が完治するはずがなく、それが最悪のタイミングで疼いた。この一瞬の隙を逃さず、刃は奏斗に襲いかかった。反応できなかった奏斗は薙刀を弾かれ、そのまま腹を貫かれた
「ガフッ...」
その場に崩れ落ち吐血する奏斗。刃はそのまま奏斗を蹴り飛ばし、刀を一旦しまった
「琉太!!」
さっきまで華蓮の手当てをしていた蘭と紗夜はすぐさま奏斗のところへ駆け寄った
「琉太しっかりして!琉太!」
「花梨さん!道具を貸してください!こちらで手当てをします!」
柏は手当ての道具を紗夜に投げつけ、必死に今の状況を整理した
咲夜、華蓮、奏斗。この3人があっという間に倒され、柏はどうすればいいのか分からなかった。自分が戦ったところで負けるのは目に見えている。かといって何もしなければ全員殺されるだけ。誰から見ても最悪な状況だった。ガールズバンドの全員は目の前の光景に身体が竦むだけだ
(一体どうすれば...彗人さんが来たとしてもあの人に勝てるとは思えない。私が戦ったところで時間稼ぎにもならない。お兄様が復活すれば...)
咲夜side
遠ざかる意識の中、俺は奏斗に言われたことを考えていた
『今なら分かるんじゃないのか?感情を捨てた理由も』
確かに、今の状況と感じたことを考えれば流石に分かるな。いや、最初から分かっていたのかもしれない。その理由があまりにもかっこ悪くて、現実から目を背けているだけだった
俺は、怖かったんだ。月読命刃という男が。彼奴から受けたあの痛みが。俺はその恐怖が嫌で、逃げるために感情を捨てたんだ
昔だけじゃない。今もそうだ。華蓮や奏斗が戦っているのに俺は倒れているだけ。守るべき存在も守れないまま、終わろうとしている。そんなのでいいのか?否、いいわけがない
約束したんだ。友希那たちと一緒に高みに行くと。生きて歌姫に寄り添うと。友希那やRoseliaを支えると、俺は誓った!
こんなところで...邪魔されてたまるか!
「え?翔!まだ立っちゃ...」
「友希那、聞いてほしい」
「え?」
「俺を、人を殺すことしかできなかった死神を...Roseliaのマネージャーとして迎えてくれてありがとう」
「モカ」
「しょ〜君...」
「あの日、パン屋を紹介してくれてありがとう。俺に始めての感情というものを感じさせてくれてありがとう」
「花音」
「ふぇ?」
「俺が作詞に手間取ってたとき、手伝ってくれてありがとう。こんな俺に優しくしてくれて嬉しかった」
「イヴ」
「翔さん...」
「あのとき珈琲を飲ませてくれてありがとう。一緒に時代劇ものの映画に行ったときはお前凄く興奮してたよな。見てて楽しかったよ」
「みんな...こんな俺と一緒にいてくれて、ありがとう」
「そんなの...当たり前じゃない。私は貴方と頂点に立ちたいと思ったのだから」
「あたしも...不良から守ってもらったとき嬉しかったよ。ありがとう」
「私は...翔君だから手伝ったんだよ?私こそ、我儘に付き合ってくれてありがとう」
「珈琲なら何度でも淹れてあげます!あの日、ストーカーから守ってくださりありがとうございます!」
イヴはブレねえな...まぁ、だから信じられたんだけどな
友希那たちは互いに視線を交わすと立ち上がり
「「「「ありがとう!」」」」
「!!」
あぁ...ずるいなそれは。頬に冷たい感覚が伝わり触ってみると、濡れていた。中でも1人だけとてもその姿が美しく見えた
「全く...感情ってのは面倒なものだ。お前ら下がってろ。終わらせてくる」
俺は愛用の鎌を握りしめ立ち上がった。華蓮も奏斗もクソ親父にやられたみたいだ。お疲れ様、あとは俺に任せろ
生きて帰るから...
待っててくれ、友希那
読了ありがとうございました
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