死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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ついに第5章となりました。これが最終章となるのか、それとも6章まで続くのかは分かりませんが、これからもよろしくお願いします


最終章 歌姫たちの想いは永遠に
第64話


翔side

 

 

俺が退院してから1週間経った。学校の記憶も無く勉強はどうしようかと思ったが、そこは問題なかった。どうやら頭は良いらしく、学校に行くまでの3週間分は姉さんと琉太に教えてもらい何とかした

 

クラスの連中は記憶のない俺にいつも通りで接していたが、元々こういう性格なのか誰一人信用できない。友希那の説明でRoseliaにAfterglowはひとまず信じることにした。他のグループは何とも言えないが、モカと花音、イヴの3人は自然と信じられた。前から信じていたのかもしれない

 

「琉太。今日この後予定とかあるか?」

 

「今日はCiRCLEでバイト。てかお前も来い。最近までお前の分も俺がやってたんだぞ」

 

「それはすまん。なら俺も行くとしよう」

 

「ついでにRoseliaの練習見てやれよ。お前マネージャーなんだし」

 

「友希那に聞いてみる。今の俺にできるとは限らないしな。昨日家でギター弾いてみたら全然できなかったし」

 

「そりゃお前前から苦手だったもん。翔の担当はキーボードだ」

 

「早く言えや...帰ったらやってみるか」

 

「まぁ、いれば湊が勝手にやる気出すだろ。何か分からないことがあれば俺かまりなさんに聞け。俺は基本休憩中はAfterglowの練習見てるからスタジオにいる」

 

「了解した」

 

そういえば、Roseliaの演奏ってどうな感じなんだろうな?聞くところによるとレベルは高く、プロ同然の実力を持っているらしい。そんなところのマネージャーやってたのか俺は?

 

頭の中で色々考えているうちに気づけばCiRCLEに着いていて、中には友希那と今井、氷川がいた

 

「お前ら早いな。いつもこんな感じなのか?」

 

「えぇ。あこと燐子が来たらすぐに始めるわ。翔はどうするのかしら?」

 

「休憩になったらRoseliaの練習見るよ。何か凄くレベル高いらしいしな」

 

「そう。無理はしないようにね。貴方に聴いてほしい曲があるからそれを聴かせるわ」

 

「そうか。楽しみにしてる」

 

何だろうな?俺に聴いてほしい曲って。何か深い思い入れでもあるのか?

 

「スミマセーン!遅れましたー!」

 

「ハァ...ハァ...すっすみません...」

 

あこと白金が息を切らしながら走って来た。この季節で汗をかいてる辺り、相当走ったみたいだな

 

「時間には間に合ってるから大丈夫よ。全員揃ったことだし、行くわよ」

 

「しょー兄また後でね!」

 

「おう」

 

「翔ー!後でお姉さんがクッキーご馳走してあげるからね!」

 

「毒でもあったら嫌なんでお断りだ」

 

「酷い!?ねぇ、何でアタシだけいつもこんなに辛辣なの?」

 

仕方ないだろ。こんなコミュ力お化けどう対応すればいいのか分からねえよ

 

「相変わらずだな...俺たちもバイト始めるぞ。制服はこっちにある」

 

「了解」

 

何でバイトしてるんだと思ったらうちには金が無いらしい。花梨によると、今月分賄えるか分からないとのこと。やばくない?一応仕送りはあるらしいけど何故か必要最低限しかくれない。姉さんは以前までとある事情により一緒に暮らしていたが、必要無くなったということで帰ってしまった、らしい

 

早く休憩になんないかな?Roseliaの演奏、楽しみだな...

 

 

 

 

 

友希那side

 

 

 

 

咲夜たちと別れた後、私たちはスタジオに入り練習の準備をしていた

 

「そういえば、湊さん先程翔さんに聴かせたい曲があると言っていましたが、何ですか?」

 

あぁ、説明するのを忘れていたわね。あこと燐子は途中から来たので話が読めていないみたいだ

 

「BLACK SHOUTとLegendaryの2曲、これを彼に聴かせたいの。彼との思い出が沢山詰まった曲だから」

 

「いいけど、それじゃあ咲夜としての記憶が戻っちゃうんじゃ...華蓮さんや柏も記憶は戻したくないって言ってたし」

 

「確かにリスクは大きい。でも、この曲を聴いて何かを感じるだけでもいい。少しでも翔としての彼と信頼関係を築いていきたいから。柏からは許可も出てる。私の我儘で申し訳ないけれど、彼が来るまではこの2曲を練習したい」

 

「あこは大賛成です!だって凄くかっこいいもん!」

 

「私も...賛成です」

 

「湊さんが決めたことならそれに着いて行くだけです」

 

「も〜。その代わり、何かあったら友希那責任とってね?」

 

「勿論よ。ありがとう。それじゃあやるわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

楽しみにしてなさい、()

 

 

 

 

奏斗side

 

 

 

 

Roseliaの皆がスタジオに入った後、着替えを済ませカウンターに行くと丁度Afterglowの皆が来た。来たはいいのだが...

 

「奏斗、今からバイト?」

 

「あっあぁ。ほい、これ鍵」

 

「ありがとう。ねぇ、何か最近あたしにだけ態度おかしくない?いつもより言葉詰まってるし。視線合わせてくれないし」

 

「そっそんなことは無い。と思う」

 

「ふ〜ん...休憩まであと何分?」

 

「掃除が終わったらだかりゃ!?」

 

舌噛んだ!やばい痛い。血の味がする。マジで痛い

 

「ちょっ!?大丈夫!?」

 

「らいりょうふ...いってぇ」

 

「気をつけてよ...これ以上怪我増やさないでね?心配なんだから」

 

「あっありがとう...で、休憩までは多分30分くらいかかるから、それまで個人練習な」

 

「分かった。後で色々聞かせてもらうから覚悟しなよ」

 

「え...」

 

そう言い残すと蘭たちはスタジオの中に入ってしまった

 

「...言えるわけねえだろうが」

 

この前蘭に抱きつきながら泣いたことが恥ずかしくて目を合わせられないなんて口が裂けても言えない。それ以前勢いで蘭の唇奪ったりとか何やってんの?

 

「...いつか伝えるからそれまで待っててくれ、蘭」

 

 

 

 

蘭side

 

 

 

 

最近奏斗の様子がおかしい。時期的にはあたしたちに奏斗たちの過去を話してくれた日以来から。話すとしどろもどろになるし、目も合わせてくれない。奏斗としての性格なのか、前よりは雰囲気が冷たくなったけどそれとは何かが違う

 

「あたし何かしちゃったのかな...?」

 

「ん?どうしたんだ蘭」

 

「何か最近、奏斗の様子がおかしいんだよね。あたしと話す時だけ」

 

「そういえばさっき舌噛んでたな〜。別にアタシたちと話す時は普通だけどな」

 

「あたしも普通だったよ〜」

 

「私も普段とあまり変わらなかったかな。前よりは少し雰囲気が冷たくなったけど」

 

「奏斗は何か言ってたの?」

 

「誤魔化された。だから何かしちゃったのかなって」

 

心当たりは特に無い。あの日以来、あたしは少しでも奏斗の心に寄り添えるようにたくさん話しかけるようになった。でも、それが鬱陶しく感じられたとしたら...

 

「嫌われちゃったかな、あたし」

 

「んなわけ無いだろ」

 

巴が速攻で否定してくる

 

「でも...」

 

「前の琉太としてだったら分からなかったけど、今は奏斗だ。素の彼奴の性格からして嫌いだったら関わりすらしないだろ」

 

「そうかもしれないけど...」

 

「あんま深く考え過ぎんなよ。蘭が聞いてもどうせまた誤魔化されるし、後でアタシが聞いとくよ」

 

「ありがとう」

 

やっぱ巴は頼りになるな。妹がいるからか姉御肌が凄い

 

「ほら、奏斗が来る前に練習しようぜ。久し振りに聴かせるのに下手になってたらシャレにならない」

 

「そうだね。30分後くらいに来るらしいからそれまで個人練習やっとけだってさ」

 

「了解。じゃあ皆やろうぜ」

 

奏斗の態度が気になるけど、今は練習に集中しないとね。どうか嫌われていませんように

 

 

 

巴side

 

 

 

練習を始めて30分後、休憩に入った奏斗がスタジオに入って来た。それと同時にアタシたちも休憩になったので、さっきの蘭の相談について聞くことにした

 

「奏斗、ちょっといいか?」

 

「どうした?あとお前ら、本名で呼ぶのは構わないけど人がいる前ではやめてくれよ」

 

「分かってるって」

 

使い分けできるようにしとかないとな。外のカフェに移動して2人で向かい合うように座る

 

「んで話って何?」

 

「蘭についてなんだけど...」

 

「!?」

 

アタシの言葉に驚いたのか奏斗は机の脚に自分の足をぶつけてしまった。何か前より可愛くなってる

 

「だっ大丈夫か?」

 

「多分...蘭が何か言ってたのか?」

 

「最近お前の態度がおかしいから嫌われたんじゃないかって心配になってたぞ。どうしたんだよ?」

 

「えっと...」

 

「大丈夫。誰にも言わないから」

 

「...まぁ巴ならいいか。蘭とひまりだけは絶対に言わないでくれ」

 

「分かった」

 

蘭は分かるけど何でひまりもなんだ?

 

「実は...」

 

 

♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯

 

 

「て訳なんだが...」

 

「......」

 

えっと...ちょっと何を言ってるのか分からない。奏斗が蘭に?まさかな。うん、アタシの聞き間違いだろう

 

「おい、何か言えよ。こちとらマジで恥ずかしいんだけど」

 

「いや、奏斗にそんな感情があるなんて...」

 

「失礼だなおい。咲夜と一緒にするんじゃねえぞ。それに今の彼奴はおそらく感情が戻ってる」

 

「アタシからしたら信じられないことなんだけど。いや、多分聞いた皆同じこと思うぞ」

 

「そんな?お前たちの中で俺は何だと思われてんだ」

 

「鈍感」

 

「あ?」

 

そう言われてもなぁ...今まで本性を隠してきた奴にそんなこと聞かれても答えようがないじゃん。それに鈍感は事実だし。2人から好意寄せられて気づかないなんてな

 

「んで、奏斗はどうしたいんだ?」

 

「そりゃいつかは伝えたいけど...とりあえず緊張せずに話せるようになりたい」

 

「それはモカの方が良いんじゃないか?彼奴経験者だし」

 

「そうなんだけどさ...バレたら危険な気がするんだよ。特にモカとひまり」

 

「あ〜そういうことか」

 

確かにあの恋愛脳ひまりは危ないな

 

「まぁそういうことだ。暫く蘭と話せないかもだけどもしもの時は頼む」

 

「了解。その前に、誤解だけは自分で何とかしろよ。蘭の奴、本当に心配になってたからな」

 

「分かってるよ。あ〜ちゃんと話せるかな...」

 

本当に大丈夫か?いっそのこと付き合わせた方が良いんじゃないか?奏斗には悪いけど、モカやひまりに話して蘭の告白を押していくとするかな。てか、モカもさっさと告ればいいのに

 

と恋愛未経験のアタシはそんな呑気なことを考えながらスタジオに戻って行った

 

 

 

蘭にどうやって説明しよう?




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