死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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遅れてすみません。早速本編どうぞ


第72話

友希那side

 

 

 

CiRCLEでの激闘から3日。私は極普通のマンションで監禁されていた。特に縛られているとかは無く、外出するなと言われているだけ。翔の母親が出かけるのはご飯の材料を買いに行く時だけでそれ以外は基本マンションの部屋にいる。買い物に行っている間に抜け出せばRoseliaに被害が及ぶ。そう脅されているため何もできない

 

「随分不機嫌そうな顔ね。特に不自由は無いでしょうに」

 

「この状況で機嫌が良かったらおかしいでしょう。目の前で殺し合いが始まって平気でいられる人なんてそうそういないわよ」

 

「ま、それもそっか。今日は咲夜を呼び出してあるから、楽しみにしてなさい。貴女の目の前で咲夜を殺してあげるから」

 

「っ!?ふざけないで!咲夜を殺し屋の道に引きずり込んだ挙句、気に食わないという理由で彼を傷つけた貴女が、今度は彼を殺す?冗談じゃないわ!」

 

こいつだけは許さない。私の大切な人を、散々傷つけたのだから。それだけでは足らず、今度は殺すと言いした。イかれてる

 

「私は真面目よ。あの子たちが裏切ったせいでめちゃくちゃになったもの。10年分の報いは受けてもらわなきゃ」

 

「報いを受けるのは貴女よ。彼は絶対に負けない」

 

私にできることは彼を信じることだけ。何もできないのはもう嫌なんだ。現実的には何もできないだろう。でも、彼を、咲夜の復活を信じることはできる

 

「その態度もいつまでもつかな...まぁいいわ。予定の時間までまだあるから、それまでゆっくりしてなさい」

 

私は彼を信じる。Roseliaのマネージャーを、私の想い人を、死神を。だから...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を助けて、咲夜

 

 

 

 

 

華蓮side

 

 

 

「じゃあ今から友希那ちゃん奪還作戦を話すわよ」

 

「了解」

 

私の病室にいつものメンバーと彗人さんを集め会議を開いた。相手はあのイかれお母さんだ。無計画で行ったら普通に死ぬ

 

「まずは翔だけど、あんたは向かってきた敵だけ殺せばいいわ。無駄な体力使ってお母さんと殺り合う時に疲れてたらどうしようもないから」

 

「分かった」

 

「私と奏斗君でできる限り翔の周りの連中を仕留める。敵にバレないようにナイフと銃メインで使うわよ。しっかり首元狙ってね」

 

「了解です」

 

「最後に柏。貴女は彗人さんと一緒に裏口から潜入。見張りとかは全員殺して構わないわ。彗人さんには音を最小限に抑えた拳銃3つくらい渡しとくから、あと2人銃の扱い上手い奴に渡しといて。貴女もナイフで首元狙って一瞬で仕留めて。そして翔とお母さんが戦ってる間に友希那ちゃんを救出して」

 

「分かりました」

 

「万が一翔以外の誰かの存在がバレたらどうする?」

 

「そうなったら強行突破しか無いわね。1人でもバレたらインカム使って連絡すればいい」

 

「でも、それだと湊が殺されかねないんじゃ」

 

「友希那ちゃんを殺せば私たちを縛るものは無くなる。言い方は悪いけど、そうすれば私たちは自由に暴れられる。幾らお母さんでも、私たち全員が本気でかかれば勝てない」

 

友希那ちゃんには悪いけど、今回は彼女を利用する。人質にとられている分、向こうにも制限がかかるからそれを狙うしかない

 

「ざっとこんなところかしら。他に何か質問はある?」

 

無言でこちらを見つめる皆を見る辺り、異論はなさそうね

 

「翔が呼び出されているのは2時間後の午後3時。それまでは各自身体を休ませましょう。30分前になったら此処を出るからね。あと、そこで盗み聞きしてる何人か、出てきなさい」

 

私が言うとドアの向こうからRoseliaとAfterglowが出てきた

 

「お前ら何やってんのさ。まさかとは言わねえが連れて行けとか言うんじゃ無いだろうな?」

 

「そのまさかよ。琉太、私たちも連れて行って」

 

「貴女たちはバカなのですか?今回は体育祭の時とは訳が違うんです。危険すぎます」

 

「危険なのは十分分かってる。でも、友希那が捕まってるのに何もしないなんてRoseliaとして、幼馴染としてアタシはできない」

 

「お願いします。なるべく迷惑はかけないようにするから...」

 

ハァ...本当にこの子たちは面倒な性格してるわね。頭痛くなってきたわ

 

「...分かったわ。その代わり、翔以外の3人の誰かと一緒にいること。これが条件よ」

 

『はい!』

 

「ハァ...紗夜に蘭、モカのギター組は俺と一緒にいろ」

 

「分かったわ」

 

「ではリサさんとひまりさんのベース組は私といてください。白金さんとつぐみさんキーボード組は彗人さんといてください」

 

「じゃあ宇田川姉妹は私が受け持とうかな。2人とも絶対に私から離れないでね」

 

作戦は決まった。あとは実行するだけ。そして、咲夜の復活を祈るだけ

 

「皆、絶対に友希那ちゃんを助け出すわよ!」

 

『はい(おう)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

翔side

 

 

 

 

ついに約束の時間がやってきた。場所は少し離れた場所にある廃ビル。廃ビルにしては少し綺麗な辺り、連中が隠れ家にしてたんだろう

 

「今から中に入る。皆も準備頼むぞ」

 

『『『了解』』』

 

確認をとった後、俺は意を決して中に入った。静寂に包まれた中は何処か物々しさを感じる

 

「よく来たわね。待っていたわ」

 

後ろから声がして振り返るとそこには姉さんによる俺たちの母親が立っていた

 

「言われた通り来たぞ。友希那は何処だ?」

 

「この上にいるわ。着いて来なさい」

 

此処で無駄な抵抗をしてやられては意味が無いため、素直に命令に従う。階段を数階分上がり目的地であろう部屋の前に来たところで何かを感じた俺はとっさにバク転で躱すと、さっきまで俺がいたところにナイフが数本刺さっていた

 

「やっぱりこのくらいじゃやられてくれないか...流石に身体は感覚で覚えてるみたいね」

 

「ふざけてんのか。さっさと友希那を返せ」

 

「いるじゃないそこに」

 

「翔!」

 

「友希那!大丈夫か!?」

 

「私は大丈夫よ!それよりも今は貴方が...」

 

「さ、再開もできたことだし...」

 

詩織はそう言うと指を鳴らした。その瞬間、四方八方から敵が出てきた

 

「死ね、咲夜。やれ!」

 

彼女の合図で一斉に襲いかかって来た。俺も同時に刀を抜き応戦する

 

(数が多過ぎる...このままじゃすぐに殺られる...!)

 

その時、以前受けた傷が俺を襲った。そしてそのまま体制を崩し敵の内の1人から腹に蹴りを喰らった。枝が折れたような音がした辺り、ヒビは確実に入っただろうな

 

(やば...意識が...)

 

やがて俺は深い闇に落ちていった

 

 

 

 

 

 

『おーい、俺を救うんじゃなかったのか?』

 

「うるせえな。んなこと言ったってあれは無理だろうよ...」

 

『そうか?あの程度なら俺の鎌使えば一瞬なのに』

 

「そんなもん持ってんのかよ...頭おかしすぎるわやっぱり」

 

『んで?お前はこのまま終わっていいのか?少なくとも俺は嫌だよ?』

 

「そりゃあな。友希那をまだ助け出してねえからな。終われるわけねえだろう」

 

『本当はあの体育祭の日、死ぬつもりだったんだよ』

 

「え、俺死にたかったの?」

 

『あぁ。だが、中途半端に生き残ってまた友希那を危険な目に遭わせちまった。だから、今度こそ友希那を守って...俺は人知れず死にたい』

 

「それが、お前の望みなのか?」

 

『あぁ』

 

お前の望みは眠りと破滅の夢だけ。虚しいものだな。いつの間にか、欲しがっていいって勘違いしてた

 

『できるか?』

 

「...あぁ」

 

あの日目覚めてからの短い期間が走馬灯のように蘇ってくる。以外と楽しそうにしてたんだな...

 

 

『おやすみ、翔。お疲れ様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢は、もういい

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

 

「翔!しっかりして!」

 

お腹に蹴りを受けた彼はそのまま動かなくなってしまった。敵は彼を取り囲みトドメを刺そうとしている

 

「案外あっけなかったなぁ...もう殺していいよ」

 

『了解』

 

「待って!私はどうなってもいい!彼を殺さないで!」

 

「はい黙った。その目で大好きな人が死ぬ瞬間を焼き付けておきなよ」

 

嫌。やめて...お願いだから...

 

「やれ」

 

彼女の指示により全員が一斉に刀を振りかぶる

 

「翔!」

 

彼が殺される。そう思ったその瞬間

 

 

 

「ただまー」

 

 

ズバババババババババ!

 

 

彼を取り囲んでいた連中が一瞬にしてバラバラに切り裂かれ、辺りに血が舞い離れていた私にまでかかった。何が起こったのか分からなかった。詩織の方を見ると私とは正反対でニヤリとしていた

 

「おやおや...」

 

彼女の視線の先には意識を失っていた筈の彼が立っていた。先程とは雰囲気がまるで違う。私はこの雰囲気を感じたことがある。彼はもう、神道翔ではない

 

 

 

 

 

「ごちゃごちゃ...うるせえんだよ」

 

 

死神の復活だ

 




読了ありがとうございました

ついに復活した死神。因縁の相手との最終決戦、お楽しみに

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