目が覚めると、目の前には刀を振りかざした何人かの知らない連中。あの野郎、変なタイミングで寝やがって...
「何年振りだお袋?随分老けたじゃねえか」
「黙りなさい。あんたたち、咲夜を殺しなさい!」
お袋が指示すると今度は15人程出てきた。その程度の数なんてな...
「邪魔なんだよ。とっとと失せろ」
先程同様、斬りかかって来た連中を八つ裂きにしてやった。やっぱり愛用の鎌の方が殺ってて楽しいな
「兄さん!友希那さん!」
「?」
声のした方を見ると柏と彗人さんが走り込んで来た。兄さんと呼ぶ辺り、記憶が戻ってることに気付いてないんだな。その手には愛用の鎌が持たされていて、少し重そうな顔してる。いや彗人さん持てよ
「久し振りだな、柏。若干見違えたか?」
「え...!?まさか...!」
「そのまさかだ。改めて久し振り、柏」
「お兄...様...うあああぁぁぁ!」
「何だ。戻ってたのか」
柏は大声で泣き出し飛び込んで来た。あの、今戦ってる最中だから離れてくれると助かるかな。あと肋折れてるから締め付けられると痛いんだよね。あと彗人さん、それ酷くね?
ドカアアアァァン!
「ヒョワッ!?」
突然後ろの壁が爆発を起こし、素っ頓狂な声を出してしまった。え、何普通に怖いんだけど
「あー怖かった!やっぱり手榴弾なんて使うもんじゃないわ!」
「誰のせいだと思ってるんですか!?貴女の方向音痴のせいでこうなってるんですよ!」
何と爆発の煙から出て来たのは華蓮と奏斗。こいつら手榴弾まで持ってやがったのか...何に使うつもりだったんだ。氷川と蘭とモカなんてげっそりしてるけど
「お前らな...こんなところまで来て喧嘩はどうかと思うぞ。てか華蓮はいつになったら方向音痴治るんだ?」
「え、華蓮って...貴方、まさか咲夜!?」
「おひさー。奏斗も久し振り」
「おー...本当に記憶戻ってる。久し振り、咲夜」
つうかよく見るとRoseliaとAfterglowの皆までいるじゃん。あ、そういえば着いて来てたんだった
「皆も随分会ってない気がするな。ま、挨拶は後だ。皆は彗人さんについて友希那の介護を頼む。奏斗、他に敵はいるか?」
「此処に来るまでの敵は全て殺した。柏たちも同じだ」
「成る程。てことは...残るはあんただけだ」
「......」
無言でこちらを睨みつけるお袋。若干焦ってはいるみたいだな。最初から部下程度じゃ俺たちに勝てないと分かっているだろうに。俺の記憶が戻ったせいか
「柏、お前は俺たちについてこれるか?」
「何年お兄様と稽古をして来たと思ってるんですか?この程度、何ともありませんよ」
「悪かった。手を血で染めさせちまって」
「構わないと言ってるでしょう。覚悟はして来ましたからね。そろそろ殺りますよ。あの人も待ちくたびれてます」
「だな...」
「私も一太刀はやらせてね」
「俺にも頼むぞ」
さぁ、初めてのXahar全員での仕事だ。友希那を傷つけた分はしっかり払ってもらおうか
「お寒い覚醒劇をありがとう。さてさて、昔の貴方たちとどっちが強いかなー」
「寒いのはあんただろ。死ねよ」
友希那が感じた痛み、思い知れ!
「Xahar、Let's go!」
「「「おう!」」」
奏斗side
咲夜の記憶が戻ったことにより、形勢は大逆転。俺たちが押していた。このままなら勝てる
(詩織さん...貴女だけは絶対に許さない。昔のことも含めて全て。だけど、蘭を危険な目に合わせたことだけは何があろうとケジメをつけさせてやる)
昔からお馴染みのコンビネーション。今はそれに柏が加わりより明確な殺意が表れた。人を殺すためだけのチームワークとでも言うべきか
『......』
今の俺たちの間には言葉などいらない。アイコンタクトのみの意思疎通。それだけで十分、互いが何をしたいのかが分かる
(柏の奴、気配消すの上手いな。詩織さんですら反応できないなんて)
思ったよりも柏が強かった。長年咲夜に鍛えられて来ただけはあるが、俺たちについてこれるとは思わなかった。咲夜は正面から対峙、俺と華蓮さんで横から動きを封じる。今はそれに柏の気配を消した奇襲攻撃が加わった
その時、柏が投げた数本のナイフが詩織さんの膝の関節に刺さった。その隙を逃さず俺と華蓮さんは腕を切り落とす。もう反撃はできない
「咲夜!いけ!」
「咲夜!」
「お兄様!」
「りょーかい!」
咲夜が巨大な鎌を振りかぶる
「俺たちが受けたことはもうどうでもいい...だがな、友希那やモカたちを巻き込んだことだけは絶対に許さねえ!死ね」
咲夜は彼女の頭を切り落とした。その光景はまるで死神が処刑を行っているかのような、そんな感じだった
「ハァ...ハァ...終わったぞー!!!!」
『しゃあああぁぁ!』
「アハハハ!何これあっさりすぎない!?もっと苦戦するかと思ったんだけどー!」
「咲夜の記憶が戻ったからでしょ!やっぱお前バケモンすぎ!アハハハ!」
「柏だろ!?此奴気配消すの上手すぎ!何処にいるのかさっぱり分かんねぇ!」
「ちょ、皆さん笑いすぎですって...ククク」
何か皆に引かれてる気がするけど、まぁいいよな。お腹痛え
「ククク...あー笑いすぎて折れた肋がやばそう。奏斗ちょっと肩貸して」
「了解。それにしてもよくこのタイミングで記憶戻ったな。持ち前の運の良さが働いたか?」
「みてえだな。彗人さん、後片付け頼んでいいか?それと俺らの武器もまたしまっておいてくれ」
「既に手配してある。お前らは帰ってゆっくり休め。今度何か奢ってやるよ」
「俺はサラダバーで」
「俺は串カツ食べ放題」
「私スイーツバイキングー!」
「私はお寿司が食べたいです」
「お前らせめて一つに絞りやがれ!俺の給料飛ばす気か!」
見事に食べたい物別れたな。咲夜は相変わらずサラダバーだし。本当に戻ったみたいで良かった
「お前らも帰るぞ。友希那は念の為月読命家の病院で2、3日入院だ。他の奴らも怪我は無いみたいだし、明日から学校あるんだから休んどけ」
唯一変わったところと言えば気遣いができるようになって素直になって、表情が柔らかくなったところくらいか。これも、彼奴らのお陰なのかな
「奏斗、お疲れ様。カッコよかった」
「蘭か。人を殺すところがカッコイイというのはおかしいぞ。まぁありがとな。俺たちも少しだけ入院するからまた果物頼む」
「分かった」
ようやく、全てが終わった。あとは蘭にこの想いを伝えることと...
(咲夜、死ぬことだけは許さねえからな。ちゃんと生きろよ)
これから死ぬつもりであろうバカ死神を生かすことくらいか
蘭side
湊さん奪還作戦の次の日。いつも通り学校に行って適当に過ごした後、あたしはすぐに奏斗のところへ行った。勿論、果物も忘れずにね。でも、今日の目的はそれだけじゃない
「奏斗大丈夫かな?昨日あたしを守ろうとしてちょっと怪我させちゃったし...」
そう。実は奏斗はまた怪我をしていたのだ。そこまで深いものではなかったが、それでも痛い筈だ。病院に着いて面会の手続きを済ませ病室へ向かう。中には何かの小説を読んでいる奏斗がいた
「お、蘭じゃねえか。ありがとな」
「大丈夫。それより、昨日の傷は大丈夫?」
「軽く切られたくらいだし何ともねえよ。慣れてるからな。昔やらかして両足の骨折られた時に比べたらマシだ。
「ヒッ...」
話を聞いただけでゾッとする。両足折られたらそこからどうやって生活するの?
「そんな怖がらなくてもいいわ。それより今日の果物は...」
「はいはい。今日は洋梨とブドウ持って来たから、洋梨に皮剥けるまでブドウ食べて待ってて」
「あざす」
本当に果物好きだね。子供が面白そうなおもちゃ見つけた時の顔してるもん。そんな彼の顔を見てるだけであたしの心は満たされていく
「退院はいつになるの?」
「明日にはしていいって。湊も怪我ないし明日には退院できる。咲夜と柏は怪我が多いからあと3日くらいはいるかな。華蓮さんは脱走した」
「はい?」
いや何してんの?此処に来た時看護師さんが妙に騒がしかったのはそのせいか。Xaharってやっぱり自由だね
「俺の見舞いもいいけど、湊のところも行ってやれよ。今日はRoseliaの連中皆用事あって来れないらしいから」
「そうなんだ。後で行っておく。はい、洋梨剥けた」
「いっただっきまーす」
物凄い勢いで梨とブドウが減っていく。お腹空いてたのかな?まぁいいや。此処に来たもう一つの目的を果たさなきゃ
「...奏斗、少し話し聞いてもらっていい?」
「ん?ひひお(いいぞ)」
飲み込んでから喋れ
「色々あったけど、あたしたちを守ってくれて改めてありがとう。奏斗と出会って半年になるけど、まだ知らないことの方が多いね」
「まぁ最近になって話したからな。急にどうしたんだ?」
「最初はこの感情が何なのか分からなかった。でも、湊さんに言われてこの気持ちを自覚して、それから色々頑張って...本当の奏斗の姿を知れて」
「蘭?」
伝えるんだ。この想いを。長い間溜めた気待ちを今、全部ぶつけるんだ
「あたしは...宮本奏斗、貴方が好きです。あたしと、付き合ってください」
ついに決着がつき、全てが終わった咲夜たち。残り少ないですが、今後もよろしくお願いします