死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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長らくお待たせして申し訳ありませんでした!


第75話

咲夜side

 

 

「やっと着いた...相変わらず此処に来るのしんどいな...」

 

苦手な電車に揺られ来たのはあの海辺の別荘。目的はただ一つ。俺と友希那だけが知るあの場所、彼処で死ぬためだ

 

「特に後をつけてる奴もいないし、奏斗たちにも言ってないから今バレることはないだろ。死んだ後も臭わないよう細工しとかないとだし...怠いな」

 

まぁ消息不明になった時点で奏斗や華蓮には近いうちにバレるだろうな。おそらくこの場所に来るだろう。彼奴らの身体能力があればワイヤー銃とか使えばあの場所にも行けるだろうし、遺書残しておけば後処理してくれる...筈。分からんな、彼奴らブチ切れて仏さん切り刻んできそう

 

「...さて、さっさとやりますか」

 

俺は屋敷に入りあの場所へ向かった

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

 

 

人が入ってくる気配を感じた。おそらく咲夜だろう。やっぱり此処に来た

 

「...誰もいないよな。うん。てかいるわけない。この場所知ってるのは俺と友希那だけだもんな」

 

そのもう一人が既にいるなんて思ってもいないでしょうね。一か八かの賭けだったけど、当たってよかった。今はクローゼットの中に隠れている

 

私が此処に来るに至った経緯は昨日

 

 

 

 

 

 

「夏合宿の屋敷に行きたい?急にどうしたのよ?彼処に行っても何も無いけど...」

 

華蓮さんを呼び出し放課後誰もいない教室で話していた。彼女も既に退院していて元気になっていた。脱走してこっぴどく怒られたらしいけど

 

「咲夜を止めるためです。私は彼が死のうとしているのを許すつもりは毛頭ありません。貴女が嫌と言っても連れて行ってもらいます」

 

「殺し屋に喧嘩売るとは中々肝が据わってるわね...勿論連れて行くわ。貴女は私たちの希望だから。咲夜を、弟を止めてください」

 

そう言って彼女は頭を深く下げた

 

「任せてください。必ず、彼を止めてみせます。奏斗、柏。隠れてないで出て来なさい」

 

「「!?」」

 

廊下に向けて言い放つと大きな物音がした。数秒後、教室に二人が入って来た

 

「マジかよ...気配消してたつもりだったのに」

 

「友希那さんに見破られるって結構ショックなんですけど...何故分かったのですか?」

 

「なんとなくかしら?最近結構人の気配が分かるようになってきたのよ」

 

「なるほど。いっそナイフ扱いでも「は?」申し訳ありませんでした」

 

「こっちは真面目な話をしているのだけど...それで、貴方たちは私に任せてくれるかしら?」

 

「俺はこの前も言ったからな。柏も異論は無いな?」

 

「勿論です。お兄様を頼みます」

 

準備は整った。後は一週間練った計画を実行するのみだ。お母さんたちにも言っておかないといけないわね

 

「じゃあ今日の夜友希那ちゃんの家に行くわね。これ発信機。これ頼りに家まで車で迎えに行くから」

 

「華蓮さん、車の免許持ってたんすね」

 

「本家に帰ってから遠くなったから緊急で取ったのよ。でもお陰で外出も楽でいいけどね」

 

「ではそういうことでよろしくお願いします。一か八かですけど、多分彼はあの場所に来ます。私たちの思い出の場所に」

 

 

 

♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯ ♪ ♭ ♯

 

 

 

(何はともあれ予想が当たってよかったわ。彼が死のうとしたタイミングを見計らい飛び出して食い止める。絶対に止めてやる)

 

「これをこうして...完成かな?防腐剤と防臭剤もしっかり染み込ませて、よし!こういう時は手先の器用さに感謝するわ〜」

 

ふざけてるのかしら?今すぐにでも飛び出して殴ってやりたい

 

「んじゃ、友希那には悪いが約束は放棄させてもらう。俺がいなくても頂点に立てよ。Roselia」

 

 

 

プツ

 

 

 

そう言いながら懐からナイフを取り出す彼を見て私の中で何かが切れた。もう我慢できない。許さない。

 

「いい加減に...」

 

「へ?」

 

バンッ!!

 

 

「いい加減にしろ!月読命咲夜!」

 

 

私はクローゼットの扉を蹴破り彼の前に現れた。そしてそのまま彼に向かって体当たりをする

 

「友希那...なんで...」

 

その発言も、その腐った考え方も、全部気に食わない。もう止まらない。この瞳に灯るのは怒りのみ

 

「ちょっと説教よ。咲夜」

 

 

 

咲夜side

 

 

 

「ちょっと説教よ。咲夜」

 

何故此処に友希那がいる?幻覚でも見ているのか?頬を抓ってみるが、視界から彼女が消えることはなかった。現実なのか、これは

 

「人がキレてる時に頬を抓るとはいい度胸ね。話す内容が増えてなによりだわ」

 

「...なんでお前が此処にいる?俺が今日この場所に来ることは誰にも言ってねえ筈だ」

 

「貴方が考えることなんてお見通しなのよ。と言っても、此処に来るかは賭けだったけれど」

 

完全に読まれてる...友希那の奴、最初から俺が死のうとしてることに気付いてたんだ。奏斗や柏、華蓮が手を出してこなかったのは全部友希那に任せるため

 

「やられたな。柏があの日『私は』を妙に強調したように聞こえたが、こういうことかよ」

 

奏斗たちが手を出して来たならまだ戦ってわざと負けて死ぬとかはできた。だが、友希那相手にはそれもできない

 

「面倒なことしてくれたな。お陰で計画がおじゃんだよこの野郎」

 

「随分余裕そうね...そんなに長々と説教がされたいのかしら?」

 

あ、これマジギレしてるやつだわ。多分今までで一番キレてる。下手に喋ったら今以上の逆鱗に触れることになる

 

「それだけは勘弁だな。友希那の前で死ぬのは少しばかり気が引けるんだが、此処を立ち去っては...」

 

「するわけないでしょう。馬鹿なのかしら?そもそもナイフも今持ってないくせに」

 

「何言ってんの?ナイフなら...あれ?ない」

 

おかしいな。作業前に手元にあるの確認して出した筈なのに...

 

「さっき貴方にぶつかった時に奪ったわ。華蓮さんに教えてもらったの」

 

「あんにゃろぉ...!」

 

ヤバイ。完全に詰んでるやつじゃ...いや、まだ一つだけ方法があるじゃねえか。最低最悪な方法が

 

「ナイフを友希那が持ってるんなら丁度いい」

 

「何を...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が俺を殺してくれ」

 

 

 

 

友希那side

 

 

 

「お前が俺を殺してくれ」

 

彼から発せられた言葉に思わず口角がつり上がりそうになる。何故なら()()()()()()()()()()()()()

 

彼から自殺する手段を奪えば彼の性格を考えると私に殺すように頼んで来る。考えた計画を振り返ると少々危険だがやるしかない

 

(とりあえず最初は動揺しているふりをして、彼を油断させましょう)

 

「そんなこと...出来るわけないじゃない。そもそも私が何の為に此処に来たのか...」

 

「分かってるさ。正直、その気になればお前を気絶させナイフを取り返すことくらい簡単にできる。だが、友希那にそんな手荒な真似が出来るわけがない。それに、自殺だなんてそんなキザなことあまりしたかないからな。だから、お前が俺を殺してくれ」

 

腹が立つ。ここまで怒りを覚えたのはいつ以来だろうか?今すぐにでも彼の顔を殴ってやりたい。だけど、今はその時じゃない。我慢しなくてはならない

 

「友希那には手を汚させてすまないと思っている。だけど、お前にしか頼めない。お願いだ。死なせてくれ」

 

「っ...私が貴方を殺した後はどうするの?」

 

「そこにある箱の中に詰め込んでくれりゃいいよ。それかその辺に埋めるでもいいし、適当に処理してくれりゃいい」

 

そろそろ頃合いか

 

「...一生恨んでやるから、覚悟してなさいよ」

 

「ありがとう」

 

私は手に持っていたナイフを握り締め、彼の目の前に立つ。そして腕を振りかざし彼の心臓に狙いを定める

 

「目は瞑ってもらっていいかしら?ナイフが心臓に刺さるところなんて見たくないでしょう?」

 

「そうだな。よし、いつでもいいぞ」

 

彼が目を瞑ったのを確認すると私は一歩下がった。そしてそのまま腕を振り下ろし......

 

 

 

 

 

咲夜side

 

 

 

 

ナイフが肉に刺さる音がした。きっと死んだんだろうな。その割には痛みとか全く感じなかったけど、即死したのか?

 

「あぐ...く...」

 

今、友希那の声が聞こえたような...いや、そんな筈はない。俺は死んだんだ。目を開けたところで友希那がいる筈が...

 

恐る恐る目を開けるとそこには見慣れた歌姫の顔があった。しかし、表情は強張っていて、何かに耐えているような感じがする

 

 

 

...ポタ

 

 

 

 

「え?」

 

何だ今の音?水が落ちたのか?雨漏りなんてする筈ないしそもそも晴れだった筈。足元を見るとそこには深紅の血の池。だが、それは俺のではない。俺は死んでいない

 

「友希那...おま、なんで」

 

友希那は自分の足を刺したのだ。俺を殺すふりをして、動揺したふりをして、ずっとこの機会を待っていたのだ。彼女は自分に刺したナイフを勢いよく抜いた。そしてそれを投げると

 

 

 

パチィン!

 

 

頬に鋭い感覚が伝わった。それが彼女からのビンタだと気付くのに数秒かかった

 

「本心を言いなさいよ!咲夜!」

 

「ゆき...」

 

「何度も約束したわよね!頂点に立つまで見届けるって!私たちを支えるって!体育祭の日も誓ったわよね!それを今更放棄ですって!?ふざけんじゃないわよ!」

 

「俺...は...」

 

「もう十分生きた?もういい疲れた?悔いはない?ここまで来ると逆に褒めたくなってくるわ!よくそんなくだらないこと考えついたわね!どれだけ近くで貴方を、貴方だけを見て来たと思ってるの!?本心じゃないことくらい分かるわよ!」

 

「たった半年の付き合いだけど、それでも、私にだって分かる!本当の貴方を!嘘偽りのない貴方を!私をここまで惚れさせておいて置いて逝くなんて絶対に許さない!」

 

「何を...言って」

 

「私は...咲夜、貴方が好き。世界で誰よりも、愛してる」

 

「!?」

 

友希那は俺を抱き締め、甘く囁いた。俺はバランスを崩し膝をついてしまった

 

「例え貴方が希望を失っても、世界から嫌われようとも、自分を信じれなくても、私は貴方を愛してる。貴方を信じてる」

 

「だから...生きて。頂点のその先も、私たちを、私を支えて、そばにいて。貴方の存在が私に力をくれる。私には貴方が必要なの」

 

「...生きてもいいのか?生きたいと願っていいのか?こんな俺でも、誰かに愛されていいのか?誰かを愛してもいいのか?」

 

「えぇ。世界が許さなくても私は許す。いつまでも、私は貴方の味方よ。Roseliaのマネージャーは貴方以外務まらない。不安に襲われても分かち合えばいい。壁にぶつかっても一緒に乗り越えればいい。今の貴方にはそれが出来る」

 

「...少しだけ、このままでいさせてくれ」

 

「気が済むまでこのままでいなさい。貴方は一人じゃないから」

 

それから俺は友希那の胸で泣いた。涙が枯れるまで、ずっと




次回の投稿もいつになるかわかりませんがよろしくお願いします!
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