死神と歌姫たちの物語   作:終焉の暁月

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久し振りに週ニ投稿できた...後書きにお知らせがあるのでそちらもお願いします


第76話

友希那side

 

 

 

「落ち着いたかしら?」

 

「あぁ。ありがとな」

 

「そう。よかった...っ!」

 

「友希那!大丈夫か!?」

 

ナイフを刺した足でずっと立っていたが、限界が来てその場に崩れ落ちてしまった。すぐに咲夜が支えてくれたので倒れることはなかった

 

「...ごめん。俺のせいで...」

 

「貴方を止められるならこのくらい安いものよ。申し訳ないけど、暫くは歩けそうにないわね。運んでもらっていいかしら?」

 

「分かってる。すぐに病院に連れて行かねえと」

 

「外に華蓮さんたちがいる筈よ。彼女らに運んでもらいましょう。手当だけしてもらったら家に帰るわ」

 

「了解。親にはどう説明するつもりだ?」

 

そういえば何も考えてなかったわね。此処に来る時にも適当に誤魔化して来たから急に足に大怪我して帰って来たら何て言われることやら

 

「適当にやり過ごすわ。それより、皆にもしっかり謝っておきなさいよ。それと、青葉さんにも。彼女だって気付いていたのだから」

 

「モカにもバレてたのか。明日会いに行くよ」

 

屋敷の外に出ると、華蓮さんと奏斗、柏が出迎えて来た。三人とも安心した顔をしているが、柏だけ若干怒っているのが分かる

 

「ちょっ!友希那ちゃんその怪我どうしたの!?咲夜、あんた何してんの!?」

 

「これは、その...俺のせいで」

 

「私が自分でやっただけです。すみませんが、病院に連れて行ってもらっていいですか?」

 

「分かった。奏斗君、友希那ちゃん運ぶの手伝って」

 

「分かりました。咲夜、話は後だ。俺と華蓮さんはお前が生きる決断をしてくれただけで十分だが、柏はそうもいかねえぞ。さっさとシバかれてこい」

 

「了解」

 

やっぱり柏は怒っているのね。車での移動中も、戻ってきたら二度と死にたいと思えないくらいにボコボコにしてやるとか言っていたし、分かってはいたことだけど...気の毒ね

 

「貴方たちの望んだ結果にはなったかしら?」

 

「怪我して来たことはいただけないが...ありがとな、湊。お前に頼んでよかった」

 

「身体を張ってまで止めたのだから許して欲しいわね。それより、紗夜にまで告白されたらしいけど、どうするのかしら?」

 

「何故知ってるんだ」

 

「様子がおかしかったところをリサに問い詰められて自白したわ。リサにバレた時点でもう終わりみたいなものよ」

 

「あの筑前煮ギャルが...」

 

あの時の紗夜の顔と言ったら今でも忘れられないわね。 リンゴのように赤くなった顔。そして、どこか諦めたような顔

 

「でも、奏斗の中では答えは既に出ている。違う?」

 

「あぁ。俺は...蘭を選ぶ。その為の準備もしているさ」

 

「そう...一つだけ約束しなさい。その選択に後悔せず、美竹さんを最後まで支えること。それが紗夜にとるべき態度よ」

 

「分かってるさ。紗夜とは最高の友人として、ライバルとして、これからも関わっていきたいからな」

 

奏斗の声には相当の覚悟を感じることができた。それが確認できただけで十分ね

 

「それより、お前は告白できたのか?」

 

「あれを告白と言っていいのか分からないけど、私の想いは全てぶつけたわ。彼に選んでもらえるかは不安だけど」

 

「お互い鈍感かよ...めんどくさ」

 

「何か言ったかしら?」

 

「何でもねえよ。まぁ楽しみにしとけ。そろそろ彼奴らも戻って来るだろ」

 

「?」

 

楽しみにしとけってどういう意味かしら?いきなり訳の分からないことを言われ頭を悩ませていると、満足そうな顔をした柏と逆に死んだような顔をした咲夜が戻ってきた。本当に何があったのよ...

 

「柏怖い...妹怖い...」

 

「いつまで言ってるんですか?早く車に乗ってください。どっかの誰かさんのせいで友希那さんが怪我したんですから」

 

「...はい。申し訳ありません」

 

咲夜が可哀想に見えてくるわ。別に私は気にしてないし、結果咲夜を止められたのだからむしろ嬉しいのだけど

 

「柏、あまり咲夜を責めないであげて。彼もかなり追い詰められてたみたいだから」

 

「...分かりました。お兄様、以後このようなことが無いようにお願いします。私だって貴方がいないのは嫌なので」

 

「分かってる。本当にすまなかった」

 

この後、病院に行ったら完治するまで暫くかかると言われ咲夜がまたショックを受けてしまうわ、家に帰ったら父に問い詰められるわでとても面倒臭かった

 

 

 

咲夜side

 

 

俺の自殺騒動から二日後、普段通りに学校へ行った。朝まずすぐにモカに謝りに行くと屋上へ来いと言われたため向かうと、そこには何やら緊張した様子のモカがいた

 

「来たぞ、モカ。先に俺から話していいいか?」

 

彼女は無言で頷く。ここまで無口になられると調子が狂うけどまずは謝らなければならない

 

「...モカ、本当にすまなかった。お前や友希那たちの気持ちも考えず自分勝手に死のうとして...お前らを傷つけた。ごめん」

 

「...本当は、あたしもあの場所に行きたかった」

 

「咲夜と湊さんの思い出の場所っていうのはすぐに予想できた。でも、あたしはその場所を知らない。何もできない自分が嫌だった」

 

「モカ...」

 

「このことはイヴちんたちも知ってるし、どうせ電話で怒られたんでしょ〜?」

 

「何から何までお見通しか...あぁ。こっぴどく叱られたよ。でも、お陰で気付けたんだ。こんな人殺しの死神でも、想ってくれる人はいるんだって、愛されていいんだって。おまけに告白までされたよ。されて嬉しい告白なんてこの前の友希那との一件以来だ」

 

“嬉しい”なんて感じるの何年ぶりだろうか?この10年間、つまらない日々を過ごして、毎日毎日上っ面の告白受けて、ストレス発散に街の不良殺しまくって。いつしかストレスすら何も感じなくなって...

 

「咲夜は変われたと思う?」

 

「あぁ。お前たちのお陰でな。でも、最初に俺を変えたのは...モカ、お前なんだ」

 

「え?」

 

「あの日、お前と共通の好きなものが見つかって、毎週山吹ベーカリーに朝早くから並んで、お互い買いすぎて沙綾に怒られて...あの日々が楽しくてしょうがなかった。モカが俺に感情をくれたんだ」

 

「だから...本当にありがとう、モカ」

 

心からの感謝。俺が彼女に伝えなければならない言葉。口下手だけど、俺なりの精一杯の気持ち。全てぶつけた

 

「...折角諦められそうだったのに〜諦めきれないじゃ〜ん」

 

「モカ?」

 

「あたしは、咲夜が好きだよ。初めて一緒にパンを買いに行ったあの日から、ずっと好きだよ。だから...あたしと...」

 

最後の方は涙を堪えきれなくて言葉が出なくなってしまっていた。しかし、彼女は強かった

 

「あたしと...付き合ってください。咲夜」

 

彼女からの想い。四度目の嬉しいという感情。目の前には秋と言うには冷たすぎる風に白の髪を靡かせる少女。俺を変えてくれた人。こちらも真剣に答えなくてはならない

 

「...モカの気持ち、凄く嬉しかった。でも、お前の気持ちには答えられない。俺は...友希那が好きだ」

 

「イヴちんたちの告白も断ったんでしょ〜?」

 

「あぁ。でも、この答えに後悔はしない。後悔はモカや花音、イヴにも失礼だ。お前たちの本気の想いを俺の身勝手な気持ちで壊すなんて、許される筈がない」

 

「やっぱり、咲夜は変わったね〜」

 

「変えたのは何度も言うがお前たちだ。本当に感謝してる。また身勝手な気持ちになるが...モカ、これからも、俺と“最高の友人“として、一緒にいてほしい。死神がこれからどうするのか、モカにも見届けてほしい」

 

「...ゔん。咲夜も、あたしのこれからを見届けて」

 

「勿論だ。これからもよろしくな、モカ」

 

「...因みに〜湊さんとどれくらい差があったか聞いていい〜?」

 

こいつ...今までのムードを全てぶち壊しやがって...まぁ、彼女らしいな

 

「正直、友希那がいなかったらダントツでモカだったな。あの場にいたのがモカだったら危なかったかもしれん」

 

「そっか〜。もうちょっと頑張ればよかったな〜」

 

「全く...さぁ、そろそろ戻るか。授業始まっちまう」

 

「そ〜だね」

 

「改めて、これからもよろしく。モカ」

 

「もち〜。油断してると湊さんへの意識がモカちゃんに向いちゃうぞ〜?」

 

「気を付けておくよ」

 

この時のモカの笑顔は今まで見た中で最高の笑顔だった




読了ありがとうございました!

前書きでも書きましたが、一つお知らせがあります



この『死神と歌姫たちの物語』が完結した後、時間に余裕ができたら新作を出そうかなと考えております入試があるので暫くは書けないかもしれませんが...

RASの恋愛もの書こうかと思ってるのですが、ヒロインで希望があれば感想、もしくは活動報告にて書いていただけたら嬉しいです。ご協力お願いします

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