蘭と奏斗のその後
蘭side
奏斗と付き合い始めてから一週間が経った。徐々に恋人という距離感にも慣れてきて、いつも通りを過ごせるようになった。今はバンドの練習の休憩の時間だ
「ねぇ蘭、奏斗とはデートの予定立ててるの?」
「......あ」
そういえば何も考えてなかった。付き合えたことが嬉しすぎてその後のことを考える余裕がなかったのだ
「まぁ別に無理にする必要はないだろ。一先ず付き合えたんだし、奏斗の場合他の女子に靡くなんてことはないだろうから」
「そ、そうだよね...急に距離縮めすぎても変に意識しちゃうだけだし、焦らずゆっくり」
「でもさ〜この前奏斗他の子から告白されてたよ〜?」
「え」
ま、また?週に三回以上はそれ聞くの気のせいかな?付き合う前なんて聞く度に自分の臆病さにショック受けてたのに付き合った後は不安に駆られることになるなんて...
「で、でも奏斗君断ったって言ってたよ?好きな人がいるからって断ったらしくて、今だと奏斗君の好きな人は誰だって大騒ぎで...」
「だ、大丈夫だよね?あたし見捨てられないよね?」
「蘭がめっちゃ弱気になってる...こんな蘭初めて見たかも」
「心配なら公表すれば?ぶっちゃけ、Afterglow全員疑われててアタシら肩身狭くなりそうなんだよ。奏斗は別に気にしないって言ってたんだろ?」
「それはそうだけど...やっぱり公表した方がいいかな」
でも、あたし一人で決めるわけにはいかない。出来ることなら奏斗の意見を尊重したいし、不安な芽は摘んでおきたい
奏斗のことだしあたしが言えばすぐに了承してくれるだろう。そうすれば奏斗が他の子から告白されることはなくなる。でもそれは、ただのあたしの願望にすぎない。エゴでしかない
「まずは奏斗と話し合ってみなよ。しっかり話せば奏斗もちゃんと考えてくれるよ。奏斗もうんざりしてる様子だったし、多分二つ返事で了承するだろうけどね」
ひまりがそう言ってるのを聞いてとりあえず相談することが決定。そろそろ練習を再開しようかと思ったその時
「休憩入ったぞ。なんだ、そっちも休憩中かってどうした?何か話してたか?」
奏斗の疑問の声に全員の視線があたしへ向く。今話せということらしい。気を遣ってくれたのか、皆は一度スタジオの外へ出た
「皆急にどうした?蘭は行かなくていいのか?」
「その、相談があるんだけど...」
「...成る程な。すまない、不安にさせちゃったな」
「謝らなくていいよ。奏斗に惚れるのはあたしが一番よく分かってるから」
奏斗はその言葉に少しだけ頬を赫く染めた。言ったあたし自身凄く恥ずかしかったが、その姿に思わず笑ってしまう
「笑うなよ...俺だって恥ずかしくなることはあるんだからな。それより、どうする?今まで好きな人はいないから誰とも付き合わないって断ってきたけど、そういうわけにもいかないし。てか好きな人いるって言っちゃったし」
「奏斗さえよければ公表したいなって思うんだけど」
「俺はいいよ?なんかAfterglow全員疑われてるらしいからな。巴たちにもこれ以上黙ってたら迷惑かかりそうだし
やるなら早めにだけど」
よかった。まずは奏斗の了承は得られた。あとはどう公表するかだ
自分は奏斗と付き合ってるって声高に宣言するのは気が引けるし、奏斗にもそんなことあまりさせたくない。誰が一人にでも言えればすぐに広まると思うけど
「聞かれたら素直に答えるとかでいいだろ。次告白された時その子に蘭と付き合ってるって言えばあっという間だろ。正直、毎度毎度面倒だし」
「そうだね。一応聞くけど、全部断ってるよね?」
「当たり前だろ。何度も言うが俺は蘭が好きだ。他の誰にも靡きやしねえよ」
「そっか...ねぇ、今度一緒に出かけない?ちょっとだけ遠くまで」
「いいな。お互いの予定が合う日に行こうか」
よし、デートの約束取り付けた。あたしの大事な彼氏を何処ぞの馬の骨に盗られてたまるか
三日後、奏斗は告白してきた子にあたしと付き合ってることを暴露。その日のうちに中等部一年から高等部三年までの生徒約半分が絶望に崩れ落ちそうだ
残りの半分は...咲夜か。咲夜は湊さんと付き合ってるしもう半分も時間の問題かな
朝教室に入ったらクラスの皆に睨まれたのは言うまでもない
読了ありがとうございました。アンケートの方もよろしくお願いしますです