異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

12 / 44
この回に登場するマップは原作には登場しません。ご了承ください。


11話 義眼、開眼

「朽ちるって…まぁ良い。てか、なんでシャガルなんだ?」

『最初はおじさんも人間だったんだよ?けれど、なぜか気がついたらこんな姿に。みんなから恐れられるし、寂しかったなぁ』

「そうか…。んで?この世界にやってきた経緯は?」

『生徒がやれってうるさくてね。ゲームを試しに買ってみたら、案外面白くて。あ、ここにくる前は、教師をやっていたよ』

「ちょっとまて。モンスターハンターだろ?てことは、日本人か?」

『そうだよ?むしろ、今までなんだと思っていたのか、聞いてみたいね』

 

同郷というのは同じ世界という意味ではなかったのか…と、ソージは世界の狭さに舌を巻く。

 

「まぁ、事情はわかった。その口ぶりだとだいぶ昔からいたんだろ。あそこの場所、誰が掘り返したか知ってるか」

『ん?それはワタシが掘った穴だね。旗があるから元の姿にもどれるかと思ったんだけど、そんな機具はなさそうだし、あっても人間用でワタシには使えないし』

「まだ掘ったもの取ってあるか?それに用があるんだ」

『わかったよ。こっちへおいで』

 

そう言ったソージがシャガルマガラに連れられて入ったのは、エリア3の3分の1をしめる大きな洞窟だった。シャガルマガラはそこで生活しているようで、モンスターはいそうにない。

 

『これがワタシが掘り返したものだよ』

 

ソージの目の前にドサドサと置かれたのは、ソージの世界の物と遜色無いような、この世界にはオーバーテクノロジーな物ばかり。

 

「めっちゃ現代だな」

『だよねぇ。弄れないのが悔しいよ。ってか、その左目どうしたんだい?肉が抉れてるみたいだよ?』

「ここのモンスターにやられた」

 

機械の山を漁るソージは、シャガルマガラに事の経緯を話し始める。

ソージが全て機械を見終わった時、ちょうど話も終わった。

 

「さてと…一番気になるのはこれだな…ってなんだ、どうして泣いてる」

『いやぁ、おじさんも色々あったけど、君も苦労してるんだなって…まさかこの世界に来てすぐにイビルジョーに出会うなんて…』

 

ソージの話を聞き終えた偉大な古竜は号泣していた。

 

「泣くな泣くな、みっともない。古竜のキャラが崩壊してんぞ」

『おんおんおーん…』

 

これはしばらくダメそうだと思ったソージは、抱えた箱に目を落とす。

鋼鉄のような素材でできたシンプルな箱は、いかにもお宝が入ってそうな雰囲気を醸し出している。

箱を空けたソージの視界に入ったものは、透き通るように蒼い球体と、手袋。そして幾枚かの紙だった。

 

「どれどれ…ん?【狩人補正義眼β(かりうどほせいぎがんベータ)】?」

 

球体の正体は義眼らしい。

球体には触れず、ソージは先に説明書を読む。

 

「…ふむ。コイツ、狩陣宝石(しゅじんほうせき)でできてんのか。他にもギミックが仕掛けてあるみたいだな」

 

普通の義眼とは違い、ちゃんと色を認識できるようだ。

ますます現代、それどころか未来だな…とソージが考えていると、落ち着いたシャガルマガラがソージに話しかけた。

 

『それの中身、義眼だったんだね。丁度いいじゃないか、使ってごらんよ。その見た目、すごく痛々しいし』

「うーん…まぁ、説明書を読めば手術は必用無いって書いてるし、やってみる価値はありそうだな…。よし、やってみる」

 

ソージは付属の手袋でそっと義眼を掴み、自らの左目に当てる。

すると義眼はどうしたことか、すっぽりとソージの目にハマったのだった。

肉を食い破られた痛みはない。呆気ない成功に、ソージがぽかんとしていると…

 

「あがっ!?おああああ!?」

 

ふいに左目に痛みが走る。

義眼が微調整をしようと中でキュルキュルと動いているのだ。

それでも、目を焼かれた痛みよりはまだマシなので、今回は左目をつむるだけで済んだ。

やがて、痛みが収まった時には…

 

『急にうずくまるからびっくりしたけど、どうだい?ワタシの腕、見える?』

 

シャガルマガラがソージの左側で手を振る。

ついさっきまで左目が無かったソージには反応できないはずだが…

 

「あぁ、しっかりと見える。手に入れたぞ、新しい眼を」

 

捉えていた。

蒼い眼が動き、シャガルマガラの腕の色彩情報をソージの脳に送り込む。

自分の意思で眼を動かせる事を確認したソージは、歓喜にほくそ笑むのだった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。