「朽ちるって…まぁ良い。てか、なんでシャガルなんだ?」
『最初はおじさんも人間だったんだよ?けれど、なぜか気がついたらこんな姿に。みんなから恐れられるし、寂しかったなぁ』
「そうか…。んで?この世界にやってきた経緯は?」
『生徒がやれってうるさくてね。ゲームを試しに買ってみたら、案外面白くて。あ、ここにくる前は、教師をやっていたよ』
「ちょっとまて。モンスターハンターだろ?てことは、日本人か?」
『そうだよ?むしろ、今までなんだと思っていたのか、聞いてみたいね』
同郷というのは同じ世界という意味ではなかったのか…と、ソージは世界の狭さに舌を巻く。
「まぁ、事情はわかった。その口ぶりだとだいぶ昔からいたんだろ。あそこの場所、誰が掘り返したか知ってるか」
『ん?それはワタシが掘った穴だね。旗があるから元の姿にもどれるかと思ったんだけど、そんな機具はなさそうだし、あっても人間用でワタシには使えないし』
「まだ掘ったもの取ってあるか?それに用があるんだ」
『わかったよ。こっちへおいで』
そう言ったソージがシャガルマガラに連れられて入ったのは、エリア3の3分の1をしめる大きな洞窟だった。シャガルマガラはそこで生活しているようで、モンスターはいそうにない。
『これがワタシが掘り返したものだよ』
ソージの目の前にドサドサと置かれたのは、ソージの世界の物と遜色無いような、この世界にはオーバーテクノロジーな物ばかり。
「めっちゃ現代だな」
『だよねぇ。弄れないのが悔しいよ。ってか、その左目どうしたんだい?肉が抉れてるみたいだよ?』
「ここのモンスターにやられた」
機械の山を漁るソージは、シャガルマガラに事の経緯を話し始める。
ソージが全て機械を見終わった時、ちょうど話も終わった。
「さてと…一番気になるのはこれだな…ってなんだ、どうして泣いてる」
『いやぁ、おじさんも色々あったけど、君も苦労してるんだなって…まさかこの世界に来てすぐにイビルジョーに出会うなんて…』
ソージの話を聞き終えた偉大な古竜は号泣していた。
「泣くな泣くな、みっともない。古竜のキャラが崩壊してんぞ」
『おんおんおーん…』
これはしばらくダメそうだと思ったソージは、抱えた箱に目を落とす。
鋼鉄のような素材でできたシンプルな箱は、いかにもお宝が入ってそうな雰囲気を醸し出している。
箱を空けたソージの視界に入ったものは、透き通るように蒼い球体と、手袋。そして幾枚かの紙だった。
「どれどれ…ん?【
球体の正体は義眼らしい。
球体には触れず、ソージは先に説明書を読む。
「…ふむ。コイツ、
普通の義眼とは違い、ちゃんと色を認識できるようだ。
ますます現代、それどころか未来だな…とソージが考えていると、落ち着いたシャガルマガラがソージに話しかけた。
『それの中身、義眼だったんだね。丁度いいじゃないか、使ってごらんよ。その見た目、すごく痛々しいし』
「うーん…まぁ、説明書を読めば手術は必用無いって書いてるし、やってみる価値はありそうだな…。よし、やってみる」
ソージは付属の手袋でそっと義眼を掴み、自らの左目に当てる。
すると義眼はどうしたことか、すっぽりとソージの目にハマったのだった。
肉を食い破られた痛みはない。呆気ない成功に、ソージがぽかんとしていると…
「あがっ!?おああああ!?」
ふいに左目に痛みが走る。
義眼が微調整をしようと中でキュルキュルと動いているのだ。
それでも、目を焼かれた痛みよりはまだマシなので、今回は左目をつむるだけで済んだ。
やがて、痛みが収まった時には…
『急にうずくまるからびっくりしたけど、どうだい?ワタシの腕、見える?』
シャガルマガラがソージの左側で手を振る。
ついさっきまで左目が無かったソージには反応できないはずだが…
「あぁ、しっかりと見える。手に入れたぞ、新しい眼を」
捉えていた。
蒼い眼が動き、シャガルマガラの腕の色彩情報をソージの脳に送り込む。
自分の意思で眼を動かせる事を確認したソージは、歓喜にほくそ笑むのだった。