異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

16 / 44
今回演出上長くなってしもた…すまぬ…


15話 出逢いと想いと遊覧飛行

「…?」

 

本来聞こえるはずもない肉声に、ソージは振り返る。

その瞬間、ソージは息を呑んだ。

そこに座っていたのは、一人の少女。

腰元まである長い髪に、真紅の瞳。

なにより目を引くのは、その頭にちょこんと突き出ている薄灰色の角。

まるでそれ()がそこにあるのが当たり前かのように、そこに鎮座している。

 

「あり、がとう」

 

躊躇いがちに自らにかけられた言葉に、ソージは顔色一つ変えず、少女に問いかけた。

 

「俺以外に、人間はいたのか?」

 

ただ、それだけ。少女にはなんら興味が無いのだ。

対する少女も、そんな反応は慣れていると言わんばかりに問いかけに応える。

 

「いたのは肯定。でも、私以外モンスターにやられた」

「その角は?」

「モンスターと人間の間に産まれたから生えてきたもの。物心ついたときから生えていたから、それ以上はわからない」

 

思ったよりも自分が知りたい情報を持っていると考えたソージは、ポーチから自前の回復薬をとりだし、その詮を開けながら少女に近づく。

と、回復薬を飲もうとしたソージの頬に、躊躇いがちに手が伸ばされる。

その自然な動作に反応できなかったソージは、アッサリとその手に捕まってしまう。

どうでる、とソージが身構えていると、少女はソージの瞳を覗いて言った。

 

「あなたの眼、とっても綺麗」

 

左目、つまり義眼に映る少女の顔。

まだ幼さが残り、そしてその真紅の瞳には決意や諦めなどの、様々な感情が渦巻いている。

 

「…コイツは自前の眼じゃない。作りもんだ」

「作り物?」

「たまたまそこにあったから使ったってだけだ」

 

言葉を濁すソージの顔に、『余計な詮索はしないほうがいい』と感じ取った少女は、立ち上がってソージを見上げる。

 

「これから、どうするの?」

「どうもなにも、ねぐらに戻って寝るだけだ。大陸を渡るには船やらが必要だしな」

「大陸を、渡る?」

 

ハァと溜め息を吐いたソージは、自らがここに来た経緯と、大陸を渡る船を自作しようとしている事を明かす。

ずっとそれを聞いていた少女は、ソージの話が終わったその時、自らがした決意をソージに明かすのだった。

 

「決めた。私、ソージについてく」

「…は?モンスターに襲われる足手まといを連れていく気はないぞ」

「大丈夫。私も戦える。だからこそこの場所で生きていられた」

「…だったら、なんで襲われるんだよ。追い払えよ」

 

突き放すソージに、少女は一瞬だけ躊躇うと、すぐにソージに言い放った。

 

「し、死のうと、思ってた」

「ん…?」

「ずっと歩いても人は見つからない。親も死んだ。周りにはモンスターがたくさんいて生きるのが難しい。だから、だから…」

「もう諦めようって?」

 

言い辛いことを代わりに言われた少女は、こくりとうなずく。

しばらくの沈黙、ソージは何度目かの溜め息を吐くと、少女を手を引き、先程昇ろうとした崖へ向かう。

きょとんとする少女は、ソージについて行き、ソージに抱えられて崖を昇る。

 

「あの、何を…?」

「いいから、黙ってついてこい」

 

片手の腕力だけで少女を抱えながら崖を昇るソージ。

少女は腰だけもたれ、エセお姫様だっこのような形でしがみついているので、その景色は見えない。

そして大きな衝撃、少女の視線がガクンと揺れ、次に少女の視界に映ったのは─────

 

 

「……!!」

「…ふっ」

 

 

【絶景】の二文字では表しきれない光景が広がっていた。

どこまでも海が広がり、雲一つ無い空を写してたゆたっている。白いカモメのような鳥が巣から幾匹も飛び出し、鳴き声で歓迎のファンファーレを奏でる。

 

「…諦めも、死のうって想いも、この景色は全部拭ってくれた。綺麗だろう?」

「…うん。私、この景色が好き」

「そりゃ良かった。でも、この先があったらもっと楽しみたいと思わないか?」

「…?先が、あるの?」

 

この景色はとても綺麗だ。自分が今まで見てきた中で、一番。なのに、この先がある。見てみたい。

少女は頭の中でそんな事を考える。

その無言の返答に満足したソージは、再び少女を抱える。今度はエセではなく、本当のお姫様だっこ。

 

「こ、こんどは何を…?」

「まぁ見てろって」

 

少女を抱えたまま、ソージは目を5回光らせる。

点滅が終わった瞬間、ソージはジャンプした。

どこに?考えてみて欲しい。現在ソージは崖の上。

答えはもちろん、空中である。

 

「─────!」

 

もちろん落下するが、白い閃光が轟ッ!!!と二人の側を通りすぎた瞬間、二人の姿はそこ(空中)にはなかった。

 

「カアアアアアッ!!」

「どうだっ!楽しいだろう!」

「シャガル、マガラ…!?」

 

白い閃光の正体は古竜シャガルマガラ。

その背中で、ソージと少女は一時の遊覧飛行を楽しむのだった。

 

 

 

「もう一度聞く!楽しいか!?」

「楽しいっ!こんな、早くて、高くて!とっても!楽しいっっっ!」

「カアアアアアッ!!!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。