異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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1話 あきらかに入り口が小さい

「あぁ!そこ避けろ!」

「えぇっ!?どこ?って、あぁ!」

 

とあるマンションのとある部屋、携帯ゲーム機を手に向かい合っている二人の男女がいた。

「またか…」と疲れた様子で目頭を押さえている少年、獅子狩 奏治(ししがり そうじ)が、天井を見上げて自分のミスをごまかしている少女、笹沖 凛(ささおき りん)に話しかける。

 

「上位ブラキの討伐、失敗したの何度目だ?」

「…うぅ。四度目です」

「いつも必ず三乙するの、誰だ?」

「…私です」

 

奏治はため息をつくと、傍らのメモ帳に目を落とし、そこに書かれた文に目をやる。

【キークエ一覧】と書かれた下に、おびただしい量の字が並んでいる。

二人は巷で人気のゲーム、モンスターハンターをプレイしている。

最初は順調だったのだが、途中で凛が「ブラキ装備はロマンだよ!」などと訳のわからない事を言い出し、仕方なく爆砕竜、ブラキディオスを狩りに行ったのだが…

 

「お前、近接向いてないぞ」

「しょうがないじゃん、初めてなんだもの!って言うか、奏治君だってよくそんなプレイできるよね!?始めたの、昨日でしょ?」

 

そう、奏治も凛も、超初心者。

なのに、上位まで解放している辺り、奏治の適応力とプレイヤースキルの高さがうかがえる。

 

「俺は別に、昨日徹夜して慣らしただけだし」

「だとしてもおかしいよ!なんでそんなに攻撃が上手いの!?」

「タイミング読むだけだって。伝えるの三度目、それで三乙する凛の方がおかしい」

「だってぇ、あんな巨体が空をぴょーんて跳ぶなんて誰も思わないでしょ?」

 

平和すぎる凛の脳内思考に、奏治は再度ため息をつく。そろそろ奏治の頭が熱くなってきた頃、異変は起きた。

 

「ほら、もっかい行くぞ…」

「う、うん…。あれ?奏治君、それ、何?」

「は?…って、なんじゃこりゃあ!?」

 

ゲーム機を掴もうとした腕がからぶったと思ったら、液晶に手が突っ込まれているではないか!

慌てて引き抜こうとするも、ゲーム機はくっついたまま、さらに腕を飲み込もうとする。

 

「おい、これどうなってんだよ!」

「わーすごい!液晶突き破られてないよ!」

「そこじゃねぇよ!引っ張られてる!抜くの手伝ってくれ!」

 

奏治の冗談では無いことがわかった凛は、慌てて奏治のゲーム機を掴み、奏治とは逆の方向に引っ張る。

 

「ダメ、びくともしない!」

「おいどうすんだよ!右腕無くなったら嫌だぞ!ってうわ!」

 

ついにはゲーム機は奏治の肩を飲み込んだ。

頬を引っ張られる感覚が、奏治をさらに不安にさせる。

 

「おっまっ!タッ、タスケテー!タスケんがっ!?」

「奏治くううん!」

 

頭がすっぽりとゲーム機に収まってしまった奏治は、手足をばたつかせることしかできない。

凛はもうどうすれば良いかわからず、とりあえず奏治の左腕を掴んだ。

そのままゲーム機に奏治の体ごと引っ張られ、ついに奏治も凛も、ゲーム機に収まってしまった。

その瞬間─────

 

 

 

 

世界から、【奏治】と【凛】が消えた。

 

 

 

 

 

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