ゴウン、と渓流のエリア4に大きな音が響く。
渓流のモンスターは大慌てで逃げ出し、草むらの陰から震えながら音の元凶を見る。
太陽の光を反射する白い鱗、岩すら切断しそうな牙に爪。
大地を揺るがす古竜、シャガルマガラ。
そして、その背中から飛び降りる二つの影。
「…ついたか」
「長く楽しい飛行だった」
ソージとシャロである。
ソージはゲーム内で飽きるほど見た地形をVR感覚で見れるためキョロキョロし、そしてシャロもまた、新しく見る世界にキョロキョロしていた。
『それじゃ、ワタシは帰るよ。ソージや、キャンプの場所はわかるよね?』
シャガルマガラは穏やかな目で草むらを見る。
怯えながらも「こわくない?こわくない?」と草むらから這い出てくるモンスターに優しく微笑み、次に二人に視線を向ける。
「あぁ、大丈夫だ。今まで、世話になったな」
「ありがとう。あなたのお陰でソージに出会えた」
『どういたしまして。あっ、そういえば』
「なんだ?」
『ワタシが来た頃に龍歴院に小さいコがいたんだよ。よくサポートしてあげたけど、元気にしてるかなぁ』
「それなら、会ったらあなたの仲間って挨拶しとく?」
『頼むよ、ワタシの生前の名前は【レンジ】だ。あのコは、ハンターをサポートする船を作るって夢、叶えられたのかなぁ…』
「【レンジ】、だな。わかった。もしも会ったら伝えておく」
シャガルマガラ────レンジは一言だけ『ありがとう』と呟くと、その翼を大きく羽ばたかせた。
咆哮をあげながら帰っていくレンジ。
レンジの姿が見えなくなるまで、二人はずっと空を見上げていた。
◇
「さて、そろそろ行くか」
「わかった。キャンプに行くんでしょ?ソージについてく」
ソージは転生前の記憶を便りにキャンプを目指していく。
後ろのシャロはキョロキョロと辺りを眺め、自分が遅れていることに気づくと慌てて小走りでソージの隣へ移動する。
「ソージ。ソージは、復讐を終えたらどうするつもり?」
「故郷に帰る方法を探す」
「…ソージの故郷って、どんなところ?」
ソージは目を義眼にした経緯はシャロに話したものの、自分が異世界から来たことは話していない。
ソージの言う遠い故郷とやらがシャロの好奇心をくすぐったのだ。
「そうだな…まず、モンスターがいない」
「いない?少ないじゃなくて?」
「そうだ。だから、シャロみたいな人間は空想上の物として扱われてる」
「そう…」
ソージはシャロの頭にちょこんと生えている角を撫でる。
くすぐったそうにするシャロは、故郷を思い出して微笑むソージの顔を見て驚愕した。
暗かった。
その蒼い左目は、機械のはずなのに持ち主の感情を深く表している。
哀しみに溢れたソージの目は、どうみても故郷を懐かしんでいるようには見えない。
急いでシャロは話の続きを促し、ソージの顔を直視しないようにうつむいた。
「…次は?」
「次?そうだなぁ、工業が発達しているな」
「工業?」
「シャロが見たら驚くと思うぞ?鉄の牛が走るんだ」
「鉄の牛…」
ソージは電車の事を言っているのだが、もちろんシャロはメタリックボディで爆走するラージャンを思い浮かべた。
そうこうしているうちにキャンプについた二人。
「ここがキャンプだ。人が来るまでここで待ってなきゃな」
「ん。ベッドがある」
「食料はあっちから持ってきた生肉があるから、それを焼いて過ごすか」
「わかった。ソージ、気球が飛んでたら空砲を撃つ」
「そうしてくれ。ベッドはシャロが使え、俺は床で寝るからな」
手慣れたようすで装備のマントを床に敷こうとするソージに、シャロは提案する。
「どうして?ベッドはおっきい、ソージも一緒に寝よ?」
「…どうしてそうなるんだ。少しは気遣いを考え…」
「…ダメ?」
乙女の必殺技、上目遣いを発動させたシャロに、ソージはたらりと冷や汗を流し…
「狭くても文句言うなよ」
「んっ。むしろ嬉しい」
ラノベのテンプレが、ここに君臨したのだった。
おまけ
ひゃろ「ソージ、あーん」お肉ずいっ
掃除「自分で食べられる…」
ひゃろ「…ダメ?」シャロ は 上目遣い を 放った!
掃除「…あーん」
ひゃろ「♪」
ソージさんはシャロの上目遣いに弱い。
ハイここテストにでますよー