異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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24話 新たな道

 

「いやー、よく帰ってきたニャ!アマツマガツチの討伐お疲れさまニャ!」

 

ゴトンゴトンと揺れる馬車の中、ソージは思案顔で窓の外を見ていた。

このまま帰っても、自らの復讐は果たせない。

だったら、もう出発したほうが良いのではないか。

穏やかな顔でアイルーと会話しているシャロを見て、ソージは考えをまとめた。

 

「おい、お前」

「ん?なにかニャ?」

「目的地変更だ。このまま他の村へ向かえ」

「え?構わニャいけど、それじゃクエスト達成報告ができニャくなりますニャ」

「お前がしてくれ。俺たちの分の報酬はお前が取っていっていい」

 

願ってもいない高収入にウキウキするアイルー。

それを横から見るシャロに、ソージはこんどは申し訳なさそうな顔で話しかける。 

 

「悪いなシャロ。討伐報酬が無くなっちまった」

「私はソージについてく。ソージが要らないというのなら私も要らないよ」

「悪いな」

「大丈夫。それよりソージ、どこに向かうつもり?」

「そうだな…おい、ココットに向かえ」

「お任せニャ!」

 

ココット。

聖なる剣が眠ると言われる村。

逆に言えばそれ以外特徴はないのだが、ソージはココットにある可能性を見ていた。

ココットの近くの狩場(フィールド)では、最近隕石がよく降るのだという。

その隕石はいつも細く、そして煤焼けているらしい。

 

「…バルファルク」

「バルファルク?」

「あぁ。この前話した古竜だ」

 

隕石の情報はすべてバルファルクが出現したときの情報と一致しており、ソージはそこに目をつけた。

リオレイアは既に倒し、リオレウスには逃げられてしまったが目に傷をつけた。見つかるのも時間の問題だろうという考えか、ソージはまずバルファルクとイビルジョーを探そうという手に出たのだ。

 

「リオレウス、か」

 

左目に手を当て、しみじみと呟くソージ。

が、その手に手を重ねる者がいた。

言わずもがな、シャロである。

 

「大丈夫」

 

ソージがリオレウスと戦ったのはシャロと会う前のこと。

シャロはリオレウスがなんなのかは知らないし、無論ソージの痛みを知れるはずもない。

だが、シャロには確信があった。

自分とソージがいれば、敵はないと。 

自分は、ソージの役に立てる、と。

 

「……ありがとな」

「んっ」

「あのー、お二人さん。申し訳ニャいですけど、そろそろココットにつくニャ」

「ああ、わかった」

「ありがとう」

 

返事をしながらもまだくっつきあっている客二人(ソージとシャロ)にため息をつきながら、アイルーは馬に指示をとばす。

馬車の遥か上空で()()()()()()が飛来していたのにも気づかずに。

 

 

 

 

「ついたニャ。ココットですニャ!」

「あぁ、ありがとう」

「また会えたら、どこかで」

「お達者でニャ~」

 

手を振りながら馬車を操りユクモに帰るアイルー、それに手を振り帰すシャロ。

ソージはゲーム時代でみた光景と同じ殺風景な村にどこか安心感も得つつも疑問を抱いていた。

 

「…平和だな」

 

とても隕石に怯えているとは思えない。

目付きを鋭くして辺りを見渡すソージに近づく者が一人。

 

「おお、おお!その出で立ち、さてはハンターですかな?」

「ああ、この村の村長か?」

 

テカテカと頭を光らせたよぼよぼのじいさん。

「ハラヘットンナ」というセリフが一時期有名になった人である。

ゲーム時代は彼のボイスを逆再生すると「これから 始まる 物語りは」となることから制作者のお気に入りか、などと噂もされていた、ゲームの外ではとても有名な人でもある!

 

「いやはや、カンゲイしますぞ」

「…や、まぁいい。それより聞きたいことがあるんだが」

「なんですかな?」

「俺たちにハンターかどうか聴いたってことは、なにかハンターに用事があるんじゃないのか?」

「ほぉ。お気づきでしたか。じつはここ最近、モンスターに脅かされていまして」

 

ほらきた、とソージは口角を上げる。

村長は光る頭をかきながら、照れ臭そうに口を開く。

 

「ババコンガが村の作物を盗んでいくのですよ」

「だああっ」

 

改名前のノリのよさが残っていたのか、コケてしまうソージ。

しれっと横にいて支えてくれたシャロの頭を撫でながら、ソージは辺りを見渡した。

 

「あのなあ。ババコンガとかそういうしょぉぉぉぉおおおもない事じゃなくて、他にないのか?ほらなんか、村を消し去りそうな事とか」

「ふぅむ…しかし、村に最近あったことと言えば隕石が多く落ちることくらいしか…」

「それだろそれをもっと重視しろよ」

 

ソージの言葉に村長は髭を撫で、「重視と言われましても…」と後ろを振りかえる。

そこには水色の髪の青年が、机の上につっぷしていた。

 

「あそこの少年が、『何もないです!これが古竜の鱗だとか、近いうちにこの村に古竜が来そうとか、全くないですから!』と全て引き取ってしまったしのう…」

「おいアイツ叩き出せ」

 

村長との話に区切りをつけて青年のところへ向かうソージ。

近づいて耳を傾ければ、「あっ、あっ、あっ、どうしましょう…」と仕切りに呟いていた。

ソージが首襟を掴み、ユサユサと青年をゆすれば、「わひゃあっ!?」と奇っ怪な声を上げる。

そこへシャロが行動の意味はわからずとも銃口を突きつける。

 

「オイ」

「知っていることを全て吐くこと」

「ひええ…なんなんですかぁ…」

 

涙目で叫ぶ青年とその襟首を掴む青年の絵面にココットの住人がドン引きしている中、ソージはその青年にこっそりささやいた。

 

「赤い彗星」

「───ッ。なにか知ってるんですか」

「お前しだいだ」

「………話を聞きましょう」

 

完全にカツアゲな状況に、ココットの住人はさらに引いた。




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2222字のゾロ目でした!(だからなに

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