「がはっ!」
「きゃっ」
奏治と凛は、なんの脈絡もなく草原に投げ出された。痛みで目が覚めた二人は、情況を確認する。
先に異変に気付いたのは凛の方だった。
「よっしゃあああ!右腕ある!」
「…ねぇ奏治君、これって…」
「あ?なんだ…って!」
余りの光景に奏治はフリーズする。
なんせそこは、さっきまでいた部屋とは違い、頬を撫でる爽やかな風、木の実を食べる首の長い動物────そう、そこは。奏治と凛が行き着いた先は!
「なんじゃこりゃあああ!?」
「一体なにが…」
──────平原だったのだから!──────
やけにリアルな風と、晴れきった視界に、奏治はこれが現実だと捉える。
そして、信じられないことに、この平原に見覚えがある事にも驚く。
「ねぇ奏治君。これってさ…」
「あぁ、これは確かに…」
「「モンスターハンターのフィールド」」
同じ答えが出た事に安堵すると同時に、これからどうなるのかという不安が二人を襲う。
とにかく気を紛らわせたい一心で、周りに注意を張る。それがいけなかったのかもしれない。
草むらから覗く、黄色い目と目が合ってしまったのである。
「ねぇ、奏治君」
「言うな。俺だって信じられない」
ガサガサと音を鳴らして草むらから出てきた黄色い目の持ち主。
緑の鱗と赤いトサカをつけた、大人一人と大して変わらない大きさの生物だ。
それだけなら奏治はまだ安心していただろう。鋭く剥かれた牙と牙の間から垂れるヨダレが無ければ。
「ねぇ、奏治君」
「言うな。俺だって信じられない」
「これってさ…私たち、やばくない?」
怯えが伝わったのか、大きな生物は舌舐めずりをしてこちらへ向かってくる。
やがて、奏治は一息つくと。
「言うなって言ってんだろぉぉぉぉ!!!」
凛の手を引き、全力で逃げ出した!
「キュルアアアアっ!!」
「うわぁぁぁぁぁあ!!」
明確な死の恐怖。
離れていても伝わる振動が、まだ逃げ切れていない事を知らせる。
「あっ!?」
不意に、右手で握った凛の手が、するりと抜けた。
「凛!?くっそ、このバカ!」
どうやら転んだらしい。
その場で座り込んでしまう凛を背にかばい、追ってきた生物と対峙する。
やっぱりドスマッカオ───なんて事ばかりが頭をよぎり、この情況を打破するアイデアが何一つ思い浮かばない。
「奏治君、私の事はいいから逃げてよ!」
「なに悲劇のヒロインぶってんだこのヤロウ!さっさと立てよ!」
「ご、ごめん、足挫いちゃったみたい…」
「なんでそんなテンプレなミスするんだよ!」
合理的に考えるなら、一人で逃げたほうがいい。
ドスマッカオを怯ませ、さらに逃げるすべが見つからないのだから。
しかし、なぜだか奏治には、凛を置いて逃げることは出来なかった。
「キュルアアアアっ!!」
「ッ───」
ドスマッカオが一歩引き、蹴りの態勢をとる。やられる、そう本能で感じとったとき───
ズバァッッッ!
肉を切る音が辺りに響き、前のめりに倒れ伏したドスマッカオの背後から、大柄な影が現れる。
逆光で顔は見えないが、その影は奏治と凛に対してこう言うのだった。
「フゥ…お前さんたち、大丈夫か?」