「いっやあ、助かりました!まさか本当にバルファルクを討伐してしまうとは!」
「それよりもこの船、本当に直るんだろうな?」
「お任せください!」
上機嫌で笑う青年に対して、ソージはしかめっ面で答えた。
───古竜、バルファルクはソージの手によって討伐された。
突撃をかまされた龍識船は悲惨な結末を迎えたが、尊き犠牲と言うことで青年も「バルファルク討伐を見届ける事ができて龍識船も本望でしょう」と青年はソージ達に何も言わず、そのまま同行を許可した。
現在は通りがかったキャラバン隊に協力を仰ぎ、龍識船の修理をしている途中。
「それにしても、森も川もあって好都合だったよね」
「だな。ユクモの木も【堅木】状態とは」
「バルファルクの素材もたくさんくれたよ」
「転んでもただでは起きないって事か」
ちなみにこのやり取りをしているソージもシャロも、既に水浴びを済ませている。
装備に付いた血も洗い、心もすっきり。
シャロの水浴びを覗き見しようとしたキャラバン隊員が目潰しを喰らったのは言うまでもない。
「バルファルクの大剣も作れそうだしな」
「うん。よかったね」
「あ、直ったそうですよ!」
「「早っ!?」」
バラバラとプロペラを回し始めたそれを見て、ソージとシャロは叫ぶのだった。
◇
経過報告。
ユクモ村に滞在の形跡あり。
「……ふう」
リンはペンを仕舞うと、馬車の揺れに身を任せる。
経過報告としてベルナ村への定期便に乗ったリンは、装備を新調、ミツネXシリーズに身を包んで喋れば可憐に、黙っていれば艶やかに見える印象を纏っていた。
「ハンターさん、着きましたニャ」
「うん。ありがとう」
ひらりと馬車から降りたリン。
「あら、リンさん?おかえりなさい!」
「経過報告に来ました。……彼は、まだ」
「そうですか……」
紙を渡してクエストの継続を頼み、休みもしないで外へ向かおうとするリン。
その背中に、声をかける受付嬢は、手に何かを持っている。
「り、リンさん!」
「なんですか?」
「これ、ちょっとこれを見てください!」
「『ココット村に、黒髪、オッドアイの大剣使いのハンターが訪問』……。え、オッドアイ?」
「はい。それで、その大剣使いは古竜バルファルクを倒しにでかけたそうです。古竜って、つまり……」
「ソージ君だ」
ソージは転生した後の日に、『どうせなら古竜を狩ってみたい』と言っていた。
……彼がバルファルクを狩るのはまた別の理由なのだが、そのことをリンは知るよしもない。
「ココット村に、行ってみる」
「はい」
「少しでも早くいかなきゃ。飛行船の手続きってしてもらえる?」
「そう言うと思って、すでに龍歴院に通しています」
「ありがとう」
龍歴院に移動するリン。
大きな船がプロペラを回しながら着陸し、その隣ではココット行きの船が離陸の準備をしていた。
「ココット行きの船ってこれ?」
「ん?ああ、ハンターの人ですか。そうですよ、ウチがココット行きの船です」
「ベルナの受付嬢から手続きってされてない?」
「えーと。ああ、ありますね。リンって名前でよろしいです?」
「うん、いいよ」
「よし。それじゃあ客も全員来たことだし、離陸しまっせ!乗り込んでください」
隣の着陸している船とは違い、飛行船は気球タイプだ。
景観を眺めていたリンはと急かされて船に乗り込む───前に、ハンターだろうか、男の声を聴いた。
「ベルナか……。久しぶりに来たな」
「ここも初めてだよ」
「そうか?じゃあ、観光とかしてみても良いかもな。何もないけど」
注意して聴くと女もいるようだ。
カップルなら違うと思いつつも、耳に馴染む声に思わず振り向いてしまうリン。
乗り込んだ瞬間に見えた、隣の船から降りてきたハンターの横顔は……。
「ごめんなさい」
「え?何がです?」
「忘れ物をしちゃった」
「ええ……。でも、もう離陸しちゃって、戻ることはできませんよ?」
「大丈夫。次の便に乗るから」
首を傾げる飛行船の舵手に謝ると、リンは甲板の上で駆け出す。
そのまま船の
◇
「おっ、お客さあああん!?」
上空から響く声に、反射でソージは向こうの空を見上げる。
ソージの視界に映ったのは、つい先程離陸した船からなにかが落ちる光景だった。
義眼の能力で視力を上げ、重力で遠くの地に引き寄せられている謎の物体。
それは───
「そぉぉぉおおじくぅうううううん!!」
「何やってんだバカァァァアアアア!!」
「えっ、ソージ!?」
咄嗟に身体能力を上昇させ、シャロを置いて落下地点に急ごうとするソージ。
地面との衝突にとてつもない耐性を持っているハンターでも、さすがに高度が高すぎる。
くしゃっと逝って、終わりだろう。
「チッ……。遠いから、それ借りるぞ!」
「えっそれまだ途中……」
鍛冶屋に頼んでおいたバルファルク素材の大剣(作り途中)をひっつかみ、峰の辺りにあるブースターを起動させるソージ。
ロケットによる加速を我が物とし、ぐんぐん落下物との距離を縮めるが、落下物もそれなりのスピードで落ちているため、ソージの額に若干の冷や汗が生まれる。
が、それで諦めるソージではない。
「でりゃああっ!!」
大剣を地面にぶっさし、その場で大剣を中心にくるりと一回転、大剣の柄をエリアルジャンプ。
一瞬、ほんの一瞬だけ加速したソージ。
落下物とソージ、二つが重なって───
轟音と共に、土埃が吹き上がる。
なんだなんだと集まるがやの中心、土埃がはれた後には……
「まったく、無茶をしやがる」
「奏治君なら、なんとかしてくれると思って。実際、なんとかしてくれたでしょ?」
「おかえり、奏治君」
「ただいま。つっても、色々変わっちゃったけどな」
後から追い付いたシャロが、微笑み合う二人を見て絶句する。
修羅場がくるのは、明らかであった。