異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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31話 ほかほかぬくぬく

 

「ハンターさん、ハンターさん。付きましたニャ」

「そうか。ありがとう」

「快適だった」

「うわ、寒いね」

 

ポッケ村。

新雪の積もるこの村に、三人のハンターが到着した。

ソージはポーチから一枚の紙を取りだし、もう一度確認する。

 

「しかし、二つ名持ちのモンスターの狩猟か……」

 

彼らがこの村まで来た理由は、ソージが帰ってきたベルナ村でのやりとりにあった。

 

 

 

 

「ソージ?ソージなのか!?」

「アズール。久しぶりだな」

「ソージ?ソージなのか!?」

「グルードも。あんまし変わってないな。あとセリフが一緒だと誰が誰だかわからんぞ」

「当たり前だ。ソージが消えてから一年も経ってないしな」

 

スキンヘッドの大男が、糸目の男が、ソージの帰還を祝う。

最初はソージの右目に驚いた二人だったが、やがて受け入れた。

それどころか、訳を話したら泣きながら「よく帰ってきたなぁ」と背中を叩かれた。

 

「まさか、本当に連れてくるなんてね……」

「純愛の勝利、です!」

 

シサイナとミィナは口々にリンを称賛し、ケアもしないでボサボサになっている髪を洗いに共用浴場まで引きずっていった。

 

「ちょっま、ソージ君助けて……」

「ほらほら、乙女がそんな格好しちゃだめなの」

「あああ~……」

「生きて帰ってこい、リン」

「ソージ……辛辣」

「獅子は子を谷に落とす、と言うしな」

「かわいそう……」

 

シャロがまだ乙女戦争で生存している理由。

それは実に簡単、シャロの髪はリンと違って毎日洗っていたため、艶やかだったからだ。

さらに、モンスターの血特有の再生能力によって髪の寿命も長く、よってターゲットはリンへと移った。

 

「しっかし、ソージがこんなべっぴんを連れてくるとはな。リンも大変だ」

「シャロは俺の恋人だからな。少しでもシャロに不埒な気持ちを抱いたらたとえ恩人であろうと粉微塵にする」

「しねえって。怖えよ」

 

ソージの凄んだ目に悪鬼を見る気分になりながらも、二人はなんとか苦笑いを返すことに成功した。

と、その殺気のおかげでアズールは悩みを思い出せたようで、「おっ」と声を上げながらポーチから一枚の紙を出す。

 

 

「お前さん方、ポッケに行ってみる気はねぇか?」

 

 

 

 

『二つ名を持ったガムートの狩猟』

 

見事に厄介事を押し付けられた感のある仕事を見たソージは溜め息をつく。

は早めに帰る方法を探したいソージだが、リンもポッケ村に行ったことがないこともあり、しぶしぶ引き受けてしまったのだ。

 

「寒い」

「ん?大丈夫か、シャロ」

「ソージ……うん。もう寒くない」

 

微直立不動気味の体幹を持つシャロの頭に積もっている雪を払い、自らのコートにシャロをかくまうソージ。

もちろんシャロに抵抗する意思は無い。

むしろ、あと10秒以内にそうしなかったら自ら突入する気だったのだ。 

 

「あーっ!シャロちゃん、ずるい!」

「……恋人の特権」

「むー!」

 

頬を膨らませるリンに苦笑しながら、ソージは空を見上げる。

冷やされていることによって雲一つ無い空が視界いっはいに広がった。

 

「たしか、この村にはでかい剣があったよな」

「ああ、ツルハシで削ってくやつだね」

「でかい剣?ソージ、教えて」

 

シャロの言葉にソージは首を捻りながら昔を思い出す。

 

「そうだなぁ……昔巨人が使っていたとかで、この村にはでかい剣があったんだ。特殊な骨のツルハシでのみ削ることができて、なんかの素材になった気がするんだが……」

「結局、調べてもわかんなかったんだっけ?」

「そうだな。防具の素材になることはわかっているんだが……ん?」

 

くいくいとコートを引っ張るシャロにソージが視線を向けると、擬似二人羽織となっているシャロはソージを見つめ返す。

 

「取らないの?その剣の」

「いや、装備はそこまで強く無いし、それに言ったろ?特殊な骨が必要なんだ」

「見てみたい」

「ん?採掘するところか?」

「ん」

「古龍骨って言ったか、リン、どこかに古龍いないか?」

「そ、そんなコンビニ感覚で言われてもなぁ……」

 

一応旅を重ねて情報通になっているリンはソージを探すための盗み聞きした数々の会話を思い出す。

アマツマガツチが討伐されたこと、ユクモの生態系が壊れかけたこと、ガムートに二つ名が認定されたこと……。

 

「うわあ……」

「ん?どうした、リン」

「いや、思いつくことには思いつくんだけど……」

「教えてくれよ」

「ん……ソージ君、耳貸して」

 

ソージの耳元に口を近づけるリン。

そしてなにかをこそこそと伝え……。

 

「───うわあ」

「ソージ?」

 

かのソージをも、しかめっ面にしたのだった。

 

「おすとがろあ?」

「やめてくれシャロ、トラウマが蘇る」

「おすと───んぶっ。んーっ、んーっ」

「暴れるな、シャロ。その好奇心は命取りだ」

 

そう。

古龍、オストガロア。

二つの首を持つ大きな龍───なのだが、その正体はモンスターの骨をまとった巨大なイカなのだ。

硬い骨は肉への弾丸を防ぎ、全身から放たれる瘴気が接近しようとするハンターの体を蝕む。

当時なんの知識も対策もなく挑んだゲーム時代の二人をボコボコに返り討ちにした、モンスターである。

 

「しかし、まぁ……」

「シャロの頼みだしなぁ……」

 

目を輝かせるシャロは全世界の全生物を魅了する力があり、二人の中で『行きたくない』と『シャロの頼み』という天秤がシーソーがごとく揺れ───

 

「……いくか」

「……いこっか」

 

最終的に、二人はシャロを取ることにした。

 

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