異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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35話 穿つ、双頭の双刀

 

大気が揺れた。

張り詰める空気が冷や汗となり、シャロとリンの首筋に流れた。

 

それほどまでのプレッシャー。

オストガロアをそのまま纏ったかのような重圧に、他でも無いソージ自身が驚愕した。

 

「おおおおおおおおオオオオオオオッ!!!!」

 

腹の奥から抉り出すような声。

蒼い稲妻が両手に流れ、二つの(とう)が───いな、双つの(とう)が今、その鎌首をもたげた。

肩に水平に右腕を構え、左手は上げた右腕と平行に。

左足を前に出し、踏ん張る右足を少し曲げる。

 

「こいよ、双頭さんよ」

「キュアアアアアアアアアアアアッッッ」

 

オストガロアは吠えた。

 

ドリルのような触手が、唸りを上げてソージに迫る。

ソージはほんの少し、右足を曲げた。

ソージの目の前に触手が刺さる。

 

「ソージくん!押すよ!」

「応!」

 

助走をつけたリンのキックが、ソージの()を蹴る。

ソージは既に、宙に浮いていた。

曲げた右足をバネのように一気に戻し、リンのキックによる反発も乗せ、ソージは触手の上を踏むことに成功した。

 

一歩一歩が大きく、速く、疾い。

あっという間にオストガロアの真上に立つと、意思を持つように動く両腕によって、連撃を食らわせた。

目に止まらない速さで動く刃が、オストガロアの硬い装甲を少しずつ削り取っていく。

その動きはまるで、オストガロアの触手による攻撃のようだった。

ソージが振りかぶる。最後の一撃。

 

「オオオオオオオオオオオラアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

全力を込めた一撃はオストガロアの真上に大きなバッテン印をつけた。

だが、それだけ。

 

「(あと一歩、届かなかった……!)」

 

限界を超えた状態での狩技の使用によってぴくりとも動かなくなった腕。

汗がだくだくの状態で落下するソージ。

しかし、ソージは知っている。

 

 

 

 

 

───こんなところで、終わるはずが無いことを。

 

 

 

 

「行け、シャロォォォォォォォォッッッ!!!!」

 

きらりと、空が光る。

シャロは既に、弦を引き終わっていた。

 

「っ」

 

シャロが右腕を離す。

 

先程とは違い、凛とした雰囲気。

張り詰めた空気の、違い。

有音と無音。

動と静。

劔と弓。

 

ビシュン、と、空気を割く音。

 

 

上に上に、矢が昇る。

 

 

 

極限まで引き伸ばされた時間が、矢を遅くして見えた。

 

 

 

 

そして、今。矢の先端が見えたとき。

 

無数の矢を以て、時の速さが戻った。

 

「キュアアアアアアアアアアアア!?」

 

その矢が全て、オストガロアの甲羅に突き刺さる。

ソージがつけたバッテン印の真ん中に、無数の矢が、完璧な計算と速度を持って刺さり続ける。

矢の上に矢が。

その矢の上の矢が。

矢は刺さり続けてタワーと化し、そして最後に───

 

───さきほど上げた、特大の矢が突き刺さった。

 

ゴン、と、鈍い音がなる。

巨人の杭となった矢の塔は、1つ、また1つと深く刺さり、やがて、その硬い外郭にヒビを入れた。

 

「……【アローフォール】」

 

シャロが呟いた瞬間、硬い骨が全て砕け散る。

その角は、紫の稲妻に輝いていた。

 

「リン。ソージと私は動けない、あとは、頼んだ」

「ラストを取るみたいで気が乗らないけど……そういうことならわかった。全力でやるよ」

 

リンは進み出した。

舞い散る外郭の中を突き進む。

四肢を投げ出して倒れているソージを少し愛おしそうに見た後、ソージとは違うちゃんとした双剣を取り出し。

そしてその指にはまった、狩陣宝石の指輪が、輝いた。

 

「【ラセンザン】ッ!!」

 

前方に突き出された双剣が、オストガロアの柔らかい部分に刺さる。

そして、心臓の手応えを確認すると。

狩技、【ラセンザン】のセオリー通り、両手をこじ開けて引き裂いた。

 

()()()古竜が、生き絶えた瞬間だった。

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