異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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36話 血の力

 

ソージは「あ゛〜〜〜〜〜〜」と空を見上げて息を溢す。

 

「ホントマジ死ぬかと思った」

「ソージ……目は……」

「帰ったら。帰ったらだ。なるべく触れたくない問題だしな」

 

布をちぎり、それを斜めに頭に巻いて眼帯のようにするソージ。

もちろん、今のソージは義眼がないので身体強化もハンターサポートの機能も使えず、果ては狩技すら使えない。

そんな状態で狩技───【獣宿し〔双頭〕】を成してのけたのは、ソージの強いプライドと硬い意志、そして目を奪われた憎しみによるものだろうか。

 

「……わかった。じゃあ、帰る?」

「あぁ。こんなとこにはあんまり居たくない……」

「ちょっと待ってソージくん。これ、見て……」

 

リンが、オストガロアにトドメを刺した場所から一歩も動かず声を上げる。

ソージはシャロと顔を見合わせて、リンの元へ向かうことにした。

 

「これ……なに……?」

「……は?」「……え?」

 

そこには、二人の目が目を疑うものがあった。

オストガロアの肉体が、ドロドロとした血になって消えていく。

そして、その血の中で唯一、原型を留めていたのは───……

 

「……人……?」

 

───心臓。コアである、人間であった。

青白い髪の毛の少年。

まだ幼さを残す顔は眠っているようだが、普通の少年とちがうのは、心臓部が引き裂かれていること。

完全に、死んでいた。

 

「……血。血が、紫色だ」

 

ソージは足元に残っている赤黒い血を指先ですくう。

人間のような赤い血の中に、微妙に紫色が混じっていた。

 

「……紫。紫の、薬。濃い、血液」

「……ソージ?」

 

オストガロアの上で、男と交わした会話。

その中に、今、指先のものに検索ワードが引っかかるものがあった。

 

ソージは自らの袖を掴むシャロを見る。震えていた。

次にリンを見た。何をしようとしているのかわからない様子だ。

ソージは一息だけつくと……指先に付着した液体を舐めた。

 

「ソージ!?」「ソージくん!?」

「……鉄の味。人間の血の味がする……けど、何かが違う。何かが、混ざってる。……そうだ、これは」

 

シャロの味。

そう答えようとしたとき、ソージの体に激痛が走った。

 

「ぐあっ!?がっ、ああああああ!?」

「ソージくん!?ソージくんっ!!」

 

胃の中の物を全て吐き出し、尚も悶えるソージ。

血に対する体の拒否反応。

しかし、拒否反応にしてはややオーバーな激痛。

 

リンが差し出した回復薬グレートを流し込み、むせながらも呼吸を整えていく。

 

「ウソだろ……おいおい」

 

自身の体験した記憶から推測していくソージ。

 

「シャロ。わかりきったことだが、お前はモンスターハーフなんだよな」

「……?うん」

「シャロの血と同じ味。濃い血。暴走するオストガロア。中身は人間。ありえないほどの体の拒否反応。……考えられるのはこれしかないだろ、状況的に」

 

シャロはソージを見上げたまま思考を読み取ろうとしているが、ソージの言葉の意味がわからないらしい。

対してリンはそのワードのおかげで言いたいことがわかったらしく、深刻な顔をしている、

 

「「モンスターの血」」

 

人間の身でありながら……モンスターの血を流し込まれ、力に耐えきれずにモンスターそのものとなってしまった末路。

男はシャロを知っていた。かつ、オストガロアに薬───血を流し込んだ。

そして何より……シャロを『マガラ』と呼んだ。

 

「まさか……」

「シャロも……」

「どういうこと?言っている意味が……」

 

沈黙が場を支配する。

 

「……俺たちには関係のない話だ」

「そうだね。シャロちゃん、帰ろ」

「……わかった。ついてく」

 

しっかりと骨や素材を回収し、3人はモドリ玉の煙を浴びた。

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