ソージは「あ゛〜〜〜〜〜〜」と空を見上げて息を溢す。
「ホントマジ死ぬかと思った」
「ソージ……目は……」
「帰ったら。帰ったらだ。なるべく触れたくない問題だしな」
布をちぎり、それを斜めに頭に巻いて眼帯のようにするソージ。
もちろん、今のソージは義眼がないので身体強化もハンターサポートの機能も使えず、果ては狩技すら使えない。
そんな状態で狩技───【獣宿し〔双頭〕】を成してのけたのは、ソージの強いプライドと硬い意志、そして目を奪われた憎しみによるものだろうか。
「……わかった。じゃあ、帰る?」
「あぁ。こんなとこにはあんまり居たくない……」
「ちょっと待ってソージくん。これ、見て……」
リンが、オストガロアにトドメを刺した場所から一歩も動かず声を上げる。
ソージはシャロと顔を見合わせて、リンの元へ向かうことにした。
「これ……なに……?」
「……は?」「……え?」
そこには、二人の目が目を疑うものがあった。
オストガロアの肉体が、ドロドロとした血になって消えていく。
そして、その血の中で唯一、原型を留めていたのは───……
「……人……?」
───心臓。コアである、人間であった。
青白い髪の毛の少年。
まだ幼さを残す顔は眠っているようだが、普通の少年とちがうのは、心臓部が引き裂かれていること。
完全に、死んでいた。
「……血。血が、紫色だ」
ソージは足元に残っている赤黒い血を指先ですくう。
人間のような赤い血の中に、微妙に紫色が混じっていた。
「……紫。紫の、薬。濃い、血液」
「……ソージ?」
オストガロアの上で、男と交わした会話。
その中に、今、指先のものに検索ワードが引っかかるものがあった。
ソージは自らの袖を掴むシャロを見る。震えていた。
次にリンを見た。何をしようとしているのかわからない様子だ。
ソージは一息だけつくと……指先に付着した液体を舐めた。
「ソージ!?」「ソージくん!?」
「……鉄の味。人間の血の味がする……けど、何かが違う。何かが、混ざってる。……そうだ、これは」
シャロの味。
そう答えようとしたとき、ソージの体に激痛が走った。
「ぐあっ!?がっ、ああああああ!?」
「ソージくん!?ソージくんっ!!」
胃の中の物を全て吐き出し、尚も悶えるソージ。
血に対する体の拒否反応。
しかし、拒否反応にしてはややオーバーな激痛。
リンが差し出した回復薬グレートを流し込み、むせながらも呼吸を整えていく。
「ウソだろ……おいおい」
自身の体験した記憶から推測していくソージ。
「シャロ。わかりきったことだが、お前はモンスターハーフなんだよな」
「……?うん」
「シャロの血と同じ味。濃い血。暴走するオストガロア。中身は人間。ありえないほどの体の拒否反応。……考えられるのはこれしかないだろ、状況的に」
シャロはソージを見上げたまま思考を読み取ろうとしているが、ソージの言葉の意味がわからないらしい。
対してリンはそのワードのおかげで言いたいことがわかったらしく、深刻な顔をしている、
「「モンスターの血」」
人間の身でありながら……モンスターの血を流し込まれ、力に耐えきれずにモンスターそのものとなってしまった末路。
男はシャロを知っていた。かつ、オストガロアに薬───血を流し込んだ。
そして何より……シャロを『マガラ』と呼んだ。
「まさか……」
「シャロも……」
「どういうこと?言っている意味が……」
沈黙が場を支配する。
「……俺たちには関係のない話だ」
「そうだね。シャロちゃん、帰ろ」
「……わかった。ついてく」
しっかりと骨や素材を回収し、3人はモドリ玉の煙を浴びた。