異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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38話 はは、なんだテメェぶち殺すぞ

「だ、大丈夫ですかニャ?」

「ぐおお……いてぇ……」

 

額を抑えるソージにシャロは謝り倒す。

なんとも運の無い男である。

がしかし、ちょっとやそっとの痛みで悶えていたら、ハンターという稼業はやっていけない。

ソージはすぐに復活すると、自分の額にクリティカルヒットした謎の破片を拾い上げた。

見えないほどの高さから落ちてもヒビも入ってない。

黒い錆を払って形の整えられたそれは、綺麗な球体であった。

 

「ふむ、丸いな」

「鍔の辺りに埋まっていた装飾の一つだと思われますニャ」

「……私、鍔の辺りまで飛ばしたんだ……」

 

そこへ復活したリンが後ろから覗き込み、その球体を見て首を傾げる。

 

「なんかソージくんの眼みたいだね」

「……どういうこと?」

「ふむ。たしかに、あのとき埋まってた義眼に似てるな」

 

シャロは正気を失っていたため、オストガロア戦についてはほとんどと言っていいほど記憶がないが、リンは違う。

見ていた。見てしまっていた。

ソージが、その義眼を抉られる様を。

 

「正直早く忘れたいんだけど、知っていて悪いことなんかないって、この世界で知ったから」

「……成長したな」

「へへへ、ソージくんのためなら新人類にだって進化するよ」

 

つまるところ、この不思議な球体は、あの義眼と何かしらの縁がありそうだ、ということだ。

 

「それでは、龍歴院の研究班に任せてはどうですニャ?」

「研究班?」

「ニャ。少し前にぶっ壊されて、それでもめげずに復活したい龍識船に、研究班があるそうですニャ。で、その研究班に新人が来たらしく……その新人が、大昔のぎじゅちゅの研究をしているそうなんですニャ」

「ほう。『大昔のぎじゅちゅ』、か」

「早めに忘れてくださいニャ」

 

目を塞いでイヤイヤ!するアイルーだが、その姿が女性陣の心をときめかせているのは知らない。

 

「ん……ぎじゅちゅ、ぎじゅちゅ」

「ニャ〜〜〜」

「かわいい!ぎじゅちゅかわいい!」

「う〜〜〜」

 

が、度が過ぎると雷が落ちてくるのは当たり前である。

二人の頭に平たいゲンコツが落とされた。

 

「何やってんだ阿呆。遊んでないで行くぞ」

「ぎじゅ……わかった、もうしない。だから見捨てないで」

「だってかわいいんだもんっ」

「リンは留守番な」

「ごめんなさいぃ!!」

 

完璧で綺麗な土下座を披露してみせるリン。様になっているのが腹立たしい。

ソージは手の内で球体を転がしながら、リンを叩き起こして洞窟を出て行った。

 

 

 

 

「……もういっぺん言ってみろ」

 

リンが震え上がった。

シャロが隅でカタカタと怯えているが、それすらも気に留めない。

 

「だぁかぁらぁ。文化的に素晴らしい発見だからこの丸っこいのよこしなさいって言ってんの。耳腐ってんの?」

 

ソージの爪が掌に食い込み、放たれる殺気がぐんとあがった。

一般人にはとうてい感じることのできない、まさに『ハンター』の殺気。

リン、シャロが怯えているということは……。

 

『おい!しっかりしろ!何があった!?』

『下に、下に怖いの、いる』

『ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ』

 

上のハンターも同様、阿鼻叫喚である。

元凶は上の騒ぎに眉を寄せると、目の前のハンターに八つ当たりをした。

よりにもよって、目の前のハンターに、

 

「大体ねぇ、ハンターって基本バカじゃん。頭の悪い落ちこぼれがなる職業でしょ、こんなの。それで、歴史的価値のあるものを見つけたら途端に権利を主張してきて……理解できる?歴史的価値って。大昔の技術には今の文化を発展させるかもしれないものもあるってことよ」

「ほうそれは知らなかったなァ……???」

「アンタねぇ。今頃眼帯ってどうなの?おおかたカッコ付けで着けてるんでしょうけど、正直言って似合わないわよ。それで、背中の大剣。これもダメ。大剣なんて使い勝手悪すぎて最悪の武器じゃ無い。そんなんだったら机持って殴りかかったほうが強いわよ」

 

我慢。我慢である。

こんなやつ、現代日本には多く存在した。

価値観の押し付け、上から見る行動、偏見による罵倒。

……が。

気分が良くなった少女は、とんでもない地雷を踏み抜いてしまった。

 

「それにアンタの連れのなにあの子?ツノのアクセサリーとかダサすぎて笑えないわよ。白い髪の毛も似合ってないし、ほんとお似合いね!!アンタらみたいな落ちこぼれはせいぜい」

 

そこで言葉は途切れた。

少女の顔の頰に、拳が飛来したからである。

軽い少女の体はあちこちに当たってゴトゴトと音を立てて吹き飛び、龍識船の壁に叩きつけられて止まった。

 

「あ……う……」

「一応それなりに頭は良い方だ。この龍識船が壊れることになったバルファルクを討伐したのも俺だ。……だが、世の中には反りが合わない奴もいる。それを理解してるから我慢してたんだが……お前は、俺に言ってはならないことを言ったな」

「う……?」

 

ソージはシャロを軽く自らに寄せ、鋭い眼光で少女を射抜いた。

 

 

「俺のシャロを悪く言うようなやつには、俺の装備を研究させない。いくら、天才であろうと、俺に理解できない分野が得意であろうとな」

 

 

少女は放り出してしまった球体を拾い上げる。

頰がじんじんといたい。それどころか、床や壁に叩きつけられたせいで身体中もいたい。

本来ならば、自分の身は既に死んでいるのだろうが。

部屋を転がり回った際に、樽を壊して中の回復薬が自分に付着したのだろう。

 

「ハンター舐めんじゃねえよ」

 

少女は反省しない。

事実、彼女はハンターにバカにされ、靴を舐めさせられた。

だからこそ、彼女は全力で研究をし、ハンターを見下せる実力を手に入れた。

 

「……アタシはね、天才なんかじゃないのよ」

 

彼女は、ただ自分をバカにしようとするハンターが許せなかっただけである。

すぐに手をあげるハンターも、カッコ付けの装備をするハンターも、全部全部嫌いだった。

 

「アタシは……アタシは……」

 

彼女は秀才である。努力の天才である。

努力して努力して、それで。

 

「緩い人生なんて送ろうとしない、ちゃんとしたハンターのサポートをしたい……」

 

ようやく、天才を越えられた。

 

「わかったわよ。やるわ、このデバイスの研究。ごめんなさいね、気に障ること言って」

 

ああ、目の前にいる人こそが、ちゃんとしたハンターなんだなと。

少女は、そう感じた。

 

……それはそれとして。

 

「ん」

「いたい!?」

「ソージをバカにした罰と、リンをバカにしなかった罰」

「しなかったのは良いことじゃないの!?」

 

その場の雰囲気に飲まれなかったのは、いけすかない、いけすかない!!とひたすらにチョップを繰り返すシャロであった。




シリアスって難しいよね、少女の名前も出てないしレギュラーになってならないのになんで少女はこんなシリアスを持ってきたんだろうね、謎だよね、
それはそれとして次回、『ソージ死す!』デュエルスタンバイ!
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