異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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はぁい、マップを原生林にしてましたが古代林でしたごめんなさぁい!!


41話 大剣と大剣

大剣を携え、すべてを薙ぎ払わんとディノバルドが吠える。

一番早い反応をしたのは、意外にもリンであった。

背中から片方だけ双剣を抜刀、片方の目に向けて投げつける。

ソージを探して叩き上げた、戦闘スキル。

まず目を潰し、潰せなくとも牽制にはなるという、いかにもスピードアタッカーなリンならではの闘い方であった。

 

「シャロちゃん!」

「はっ!」

「炸裂弾を!」

「わかってる!」

 

シャロは急いでその場から離れ、炸裂弾をリロードする。

ディノバルドが堅牢な鱗に包まれていることは、ディノバルドを初めて見るシャロでもわかる。

ならば、まずはその硬い装甲を崩すのが先決。

とくに、大ダメージを与えるメインアタッカーのソージがいない状況では、有効打を与えられるのはシャロしかいない。シャロの額に、汗が浮かんだ。

 

リンがその場で姿勢を低くし、ディノバルドの薙いだ剣のような尻尾をギリギリでかわす。

内包する膂力が空を裂き、風の刃となって林に突っ込む。

轟音を立てて崩れ落ちていく木々を目にして、リンの表情にも焦りが受かんでいた。

 

「シャロちゃん、ソージくんは?」

「え?」

「ソージくんを見つけたんじゃないの!?」

「匂いはあった……けど、近づいてるかはわからない!……移動していたら尚更!」

「加勢は期待できないの!?」

 

シャロが俯く。

リンは口をきゅっと結んだ後、落ちた剣を回収して初めて双剣を構える。

投げた結果は刺さらなかったらしい。

 

「わかった……じゃあ、私が全部やる」

「……?」

「私が、メインを担当する!!はあああああああああっ!!」

 

リンの体から闘気が溢れ出し、オーラによって擬似的な角が生える。

「鬼人化」。彼女の奥の手であり、諸刃の剣。

オストガロア戦ではまだ理性を保てていたが、戦闘能力の増した今、理性の殆どが獣の力に侵される。

目の前の相手を殺す。ただそれだけを考えた彼女が、地面を蹴ってディノバルドに接近する。

片足でジャンプし、体を横にして空中で回転。ディノバルドの返す刃を軽々と躱し、その鱗の中に剣を差し込む。

 

「グルオオオオオオオアアアアアッ!」

「うあああああああああああああっ!!!!」

 

ダウンを取らずに、ライド状態に持っていく。

採取用ナイフではなく双剣でディノバルドの背中を斬り続けるリンを見据えつつ、シャロは貫通弾を砲塔に込めた。

リンが振り下ろされたとき、その目を目掛けて引き金を引く。

集中の極地に入り込み、神経を研ぎ澄ますシャロ。

ディノバルド以外にはなにも見えない。見ようともしない。

竜人であるからこその、常軌を逸した強靭的な集中力。

だからこそ、気づかなかった。

自分の体が、いかに無防備であったか。

突然に横から来た衝撃に感覚の全てを遮断され、シャロの瞳に動揺が映る。

 

「ッ!?」

「グルオオオオオオオアアアアアッ!!!!」

「がっ、ぐおおおおおっ!!!!!」

 

視界の隅で新手に吹き飛ばされた仲間の姿を見て、リンの理性が悲鳴を上げる。

獰猛性を失った今、通常よりも強いディノバルドに掴まっていられる道理はない。

 

「なっ、きゃあ!!」

 

ころころと地面を転がったリン。手元に剣が無いことに気づく。

さっと目を向けた先に、ちょうど床に伏すシャロの姿があった。

状況は、お世辞にも良いとは言えない。

リンも最初は、ガンナーをプレイしていた身。その過程でなぜ剣士に変えたのか、それは、狙っているとよく来る、あの小さな草食動物が原因であった。

小さな攻撃が、状況を一変させる。それは、自分自身がわかっていたはずなのに。

 

「シャロちゃん!」

「……う」

 

油断。

正気を失っていた、では説明のしようがない慢心がこの状況を引き起こした。

無論本気で戦っていたのだが、勝てると思い込んでいた分の油断は大きい。

 

「……りん」

「なにっ!」

「これ……」

 

打ち所が悪かったのか、起き上がらずに苦しむシャロが、掌から何かを転がす。

青色のボールが、地面を滑った。

 

音爆弾。

 

「ッ!」

 

バオンと大地を震わす音が響き、それにあたり一体のモンスターが顔をしかめる。

すかさずポーチから煙幕を取り出したリンは地面にそれを叩きつけ、シャロを回収して身を隠す。

 

「大丈夫?」

「自然治癒でどうにかなったけど、武器を失った」

「……絶望的って言うのかな」

「そうかも」

 

クエストではないので応急薬は無く、持ってきた回復薬にはもちろん限りがある。

自然治癒とは言っていたが、回復する量にも限界が存在すると思い、リンは自らのポーチから回復薬を取り出してシャロに飲ませた。

隠れている茂みの奥にはディノバルドが未だ健在。それどころかダメージを負った様子を見せない。

 

やはりたった二人で挑むのは愚作であったか。

 

「シャロちゃん、ソージくんはどこに行ったかわかる?」

「……わか、ると思う。けど、わかったとしてもディノバルドの目を盗んで逃げるのは……」

「困難、ってこと?」

「…………」

 

こくりと頷いたシャロを横に、リンは自らの思考をフル回転させた。

この場にソージがいたなら、間違いなく戦況は変わる。だが、恨むべきはディノバルドが未だに周囲を警戒していること。

気が立ったディノバルドに先程の草食竜も叩き潰され、すでに肉片となっている。

となれば、……囮。その存在がいれば、シャロは間違いなく逃げ出せる。

 

「シャロちゃん、私が戦うから、ソージくんを探してきて」

「ダメ。それじゃリンが死ぬ」

「……そうかなぁ?」

「クエストじゃないからリタイアができない。救助も来ない。わかってるはず」

「へへへ」

「笑ってる場合じゃない……!」

「でもまぁ」

 

リンは乾いた笑いを溢す。

不安そうにリンを見つめるシャロであったが、鼻をひくりと動かすと何かに気づいたように後ろに振り向いた。

 

「リン」

「なに?」

「もしかしたら、こっちに来るかもしれない」

「ソージくんが?」

「うん」

 

轟と大気が揺れ、暗雲が立ち込めて雲行きが怪しくなる。

シャロが来ると言った瞬間にこの有様だ、きっと彼はやってくる。

 

「……じゃあ、どこにいるかわかりやすいように」

「ん。暴れるが吉」

 

リンの狩陣宝石が光る。狩技の兆し。

シャロは煙幕の残りをリンから拝借し、足元の石を手一杯に拾った後にリンに視線を送った。

行動の開始。

 

リンが茂みから飛び出すのに反応したディノバルドが咆哮をあげる。

プレッシャーに心臓を掴まれたような感覚を覚え、体が強制的に立ち止まってしまうリンだったがすぐに立て直して疾走を始めた。

そして、横にローリングをした瞬間にリンの元に煙幕が投げつけられる。

突然の目眩しに眉を潜めるディノバルド。尻尾を薙いで煙を払ったそこに、リンの姿がすでにないことに気づく。

同時に、もう片方の竜人に、武器を回収する時間を与えてしまったと。

顔の横に大きな衝撃を受け、のけぞるディノバルドにリンが飛び乗る。

既にリロードしてあった貫通弾をとりあえず顔面に撃った結果だが、幸運にもそれが戦況を覆す一手となったのだろう。

 

ソージが来る。

 

たったそれだけのことで、勝機が見出せる。体に力が湧いてくる。

カリスマ性のない英雄でも、信ずる人にとっては何よりの活力となり、戦う意志を奮い立たせる。

自らを死の淵から救ってくれた英雄が。

自らと一緒に育ち、強くなった英雄が。

 

「「私たちを、救ってくれる」」

 

雷が、落つ。

 

 

 

 

蒼き光はひた走っていた。

度重なる轟音と、ディノバルドの咆哮が、何かしらのことがあったことを物語っている。

闘気は稲光となって森を焼き、蹴った地面はえぐられ、土を弾いて穴を穿つ。

木の幹に反射して直角に曲がり、木々の隙間を縫って疾走する。

背中に背負った大剣がバチバチとスパークを起こし、再びその刀身に灼熱を宿す。

ディノブレイズ。奴との戦いで手に入れた素材で自作した、大剣の銘。

熱した岩石のようなそれの温度が最高潮に達した時、蒼き光は溜息をついた。

やはり、一人にはさせてくれないらしい。

蒼き光は、崖から飛び降りた───。

 

 

 

 

投げ飛ばされたリンが、仰向けに寝たことでいち早くソレの存在に気づく。

慌てながら撤退するリンの姿で何があったのか察したシャロはその場で耳を塞いでしゃがみ込んだ。

そして、互いの頬がピリリと静電気を感じたとき。

 

ゴオオオオオオオオンッッッ!!!!

 

灼熱を以た雷が、一直線に大剣竜に落ちた。

 

「グルオオオオアアアアアッ!?!?」

 

顔面に刃物がめり込み、凄まじい痛みを頬に覚えたディノバルドは体をよじらせ、その存在を振り払った。

それが、過去に戦い、そして互角にわかり合った単眼のハンターであることに気づくのに、そう時間はかからなかった。

怒りと興奮の咆哮をあげるディノバルドを手で静止し、雷はその口を開く。

 

「ヒーローは遅れてやってくるんだよ」

「「ソージ」くん!!!!」

「待たせたなヒロインども。ってかなんできた。説明しろ」

「ソージの隣にあるのが私だから」

「把握」

「えっねぇちょっと!私は!?ねぇ!?」

 

義眼の働きで生まれた体内電気を放出し続けるソージ。

ボロボロの格好に炎を吐く大剣、そして全身から大量の電気を放出。

いよいよもって厨二の権化と化した姿になったソージに引きつつも、リンも涙を浮かべた。

少なくとも、ソージが過去より強くなったことは明らかである。

ならば。

この三人がそろって、勝てぬ相手など、いない。

 

「ソージくん、ほら、戦闘の前にあのセリフ!」

「あ?あのセリフか?」

「わくわく」

「……ったく、しょうがねぇ。俺もテンションが上がってんだ。ノらなかったらビリビリの刑な」

 

 

 

 

 

「1狩り行くぞ!!」

 

 

 

 

 

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