異世界ハンター放浪記   作:翠晶 秋

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42話 プロミネンスボルト・カラミティ

「うん!」「ん!」

 

元気の良い声を響かせる2人を背に、大地を蹴り接近するソージ。

既に戦ったことのある憎きハンターを目の前に、ディノバルドは咆哮を上げた。

背中にある傷も、尻尾の傷も、全てこのハンターがつけたもの。

 

「お前ら!俺はアイツと一度戦って、深傷(ふかで)を負わせた!背中と尾の付け根だ!」

「「了解!」」

 

ぶんと大剣を持って一回転し、遠心力を充分に乗せた剣がディノバルドの足に見舞われる。

バランスを崩したディノバルドが、轟音を立てて崩れ落ちる。

これを正気と見たリンはその背中に跨り、今度は採取ナイフで斬りつけつつライドし始めた。

 

「今のうちに準備を!」

「よし!」

 

砥石で大剣を研ぎ、闘気を高めて一撃を準備するソージ。

体表にプラズマが走り、火花を散らす。

散らした火花がディノブレイズに引火し、岩のような剣の表面から出る熱が、空間を歪ませる。

バキン。

ディノバルドの鱗が、折れた音。

一瞬のダウン時間を身逃さず、ソージが叫んだ。

 

「【獣宿し〔天廻(てんがい)〕】ッ!!!!」

 

体に流れるエネルギーが、螺旋を描いて一点に集まる。

隕石もかくやというスピードで落とされた一撃が、ディノバルドの強みとする大剣を模した尾に突き刺さった。

確かな手応えと共に、尻尾が体から離れていく。

 

「……部位破壊、成功」

「グルオオオアアアアア───!!!!!!」

 

ソージが跳び、その場から離れれば無数の弾丸がディノバルドの体に突き刺さった。

煙を上げる銃口の向こうで、スコープに目を当てたシャロが、今度は当たった手応えと共に微笑んだ。

スコープから目を離し、リロードを試みるシャロ。その姿を見て、草食竜が邪魔をするため突進を試み───

 

「破ッ!!」

 

双剣に、細切れにされた。

闘気を纏わせた双剣は、雑魚っ端の竜など簡単に砕く。

双剣がひらめき、次の瞬間にはディノバルドの眉間に刃を突き立てようとしていた。

硬質的な音が響き、リンの体が重力に従って落ちる。

双剣を地面に突き刺して腕力のみで態勢を戻したリン。

……この間、3秒。

 

「やるじゃねぇか」

「鍛えてますから」

「「疾ッ!!!!」」

 

一瞬で消える絶対切断の刃。

雷鳴轟く絶対破壊の刃。

互いを知り尽くしているからこそ行える、どんな龍でも崩すことのできないコンビネーション。

それが、一太刀、二太刀とディノバルドの身を切り裂いていく。

 

「リンそこっ!!」

「!?」

 

シャロの叫びに、リンが身構えると、リンの足元がぐにゃりと歪んだ。

泥か、リンがそう認識した時には、シャロは既に次の段階に移行していた。

 

「ソージ!!」

「わかってる!!」

 

ソージが右へと大剣を薙ぎ、勢いで回転しながら姿勢を低くする。

その上を通過した弾丸が、とてつもない衝撃を以てディノバルドに放たれた。

そしてそれは、始まりに過ぎない。

 

「んっ」

 

今まで動かなかったシャロがついに腰を持ち上げる。

狙いを定めるためのスコープを投げ捨て、少しでも軽くして走るのに支障をきたさないようにし、シャロはポーチの中の弾丸を両手いっぱいに持った。

 

「【全弾装填】」

 

無論、シャロは狩陣宝石を持っていない。

ではなぜ、そのシャロが狩陣宝石を使わずに狩技である【全弾装填】を使えるのか。

それは、シャロの圧倒的センスにあった。

オストガロアとの戦いで見せた【アローフォール】も、ただ、やったら出来た特技に()()()()()()()()

ソージから教えて貰った狩技の模倣こそが、シャロのセンスを遺憾なく発揮できる両分なのだった。

 

「……覚悟」

「グルオオアアアアアッ!!!!」

「疾ッ」

 

息を止め、集中の最中。

常に動き続ける的と、自分との距離。

それらを計算して、銃口から弾丸が放たれた。

結果は───全弾、命中。

 

あらゆる方向から、そして空気抵抗や反射を考えた弾の数々は、すべて同じタイミングで突き刺さった。

その衝撃は、鉄の柱がぶつかったのに等しい。

ディノバルドの巨体が、麦が風に舞うように吹き飛ぶ。

地面をえぐりながら倒れ伏すディノバルドの体。隙など、逃さない。

 

「シャロ!」「シャロちゃん!!」

「ん」

 

ソージとリンが、その大口を引っ張って顎門を閉じさせない。

シャロはゆっくりと、大タル爆弾と呼ばれる物をその口の中に放り込み……。

 

「3」

 

炸裂弾を装填し、

 

「2」

 

スコープのついていない照準を定め、

 

「1」

 

ソージとリンが手を離した瞬間を狙い、

 

「0」

 

撃ち込んだ。

 

 

 

───ッッッ!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

「がっ、げほっ」

「けほっ……うう……」

「ん…………」

 

やがて、爆風に飛んだ三人の視線の先に見えるのは……。

 

「……討伐、完了」

「やっっったぁぁぁぁ!!」

「完全勝利!!」

 

歓声を上げるハンターたち。

ぐっと拳を天に突き上げたのち、ふらりとその場に横たわる。

寄り添うように、ソージの隣にリンとシャロが並んで寝転がった。

 

「すげー気持ちいい」

「爽快」

「ほんとに、無茶するよね……」

「実際、俺1人じゃあれは倒せなかったかもな。この眼があっても」

「あ、そう、それだよそれ」

 

リンが起き上がり、ソージの右目を見つめながら言う。

 

「どうして勝手に行っちゃったの?言ってくれればよかったのに」

「……特に意味はない」

「「え」」

「一人で集中したかっただけだ」

 

シャロが大きなため息をつく。

本当に、この男は。

ヒロインを振り回すのが、得意な男だ……。

 

「色んなことができるようになった。これで、あいつも倒せるはずだ」

「……ソージ」

「ここまで来たら意地なんだ。イビルジョーも、あの男も。必ず、俺が殺る」

 

決意のこもった瞳。

より一層深まった蒼に光るその眼を見て、二人はただ、静かに頷いた。

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