「アズールさん。ここって、どの辺りだとかわかりますか?」
「古代林だな。新米ハンターがよく採取に来たりする場所だな」
やっぱりか、と奏治は頭を悩ませる。これはもしや、ライトノベルなんかで流行っている、異世界転生というものではないだろうか、と。
もしそうなら、この先どうすればいいのか、元の世界に帰る手段はあるのか、と。
「知っているようだったけど、さっきのはドスマッカオ。跳躍力が高くて、スピードも速い、新米狩りのモンスターさ」
「めったに姿を出さないけど、ディノバルド、なんて大型モンスターもいるです」
グルードとミィナが古代林について解説をする。
奏治と凛は既に知っているが、ゲームの世界と今いる世界に違いがあるかどうかが知りたかったので、熱心に聞いていた。話していると時間はすぐに去るもので、奏治たちは小さな村についた。
「着いたぞ。ここが、俺達が拠点にしている村、【ベルナ】だ」
「おぉ…」
「おっきいね、奏治君…」
どうやらゲーム内で見ていたベルナは広場のようなものだったらしく、村の入り口ゲートをくぐると、のどかな雰囲気漂う、誰もが故郷と思うような風景が広がっていた。
「まずは、村長にご挨拶、だな」
「気さくな人だから、緊張しないでいいよ」
アズールについていき、見慣れた広場につく。
簡素な造りのクエスト受付や、奏治よりも伸長が小さく耳が長い、言うなればドワーフであろう鍛冶屋が並んでいる。
「村長。言われた通り、ドスマッカオの討伐をしてきやしたぜ」
「案外楽なものだったわね」
「おお、それはそれは…。ふむ?こちらの見慣れぬ御仁は、どなたですかな」
まだ若々しく、それでいて威厳を携えた男が、素早く奏治と凛に気付く。
「奏治です」
「凛です。ドスマッカオに襲われていたところを、アズールさんたちに助けて頂いて」
事前の打ち合わせ通り、容姿が良い凛が村長に話しかける。
「おや、そうでしたか…どこか、目的地はあるのですかな」
「いえそれが、あても職もなく困っていまして…」
「おや、それでしたら、この村でハンターを始めてみるのはいかがですかな?正直に言って、あなた方のように放浪をし、この村に来るものも少なくありません。ハンターになれば、ある程度は稼げますし、正式に支援もできます。いかがですかな?」
悪くない提案に、奏治は少し考える。
ハンターとなれば、色々なところに行く機会も多いだろう。
各地やその道中で、日本へ帰る方法もわかるかもしれない。なにより…
「ねぇ、奏治君。ハンターだって!」
凛が、目を輝かせている。
「あぁ、じゃあ、そうしようか。村長さん、俺ら二人、今からハンターになります」
「そうですか。では、あちらの小屋をお使いください。ハンターの装備も用意してあります」
随分と用意が良いものだが、この小屋は以前他のハンターが使っていたもので、そのハンターは1年前に寿命で死んでしまったらしい。
それを村長が改良し、いつハンター候補が来てもいいように、準備をしていたようだ。
「ソージ、リン。ついでと言ってはなんだが、向こうに見える石灰質の巨大な建物があるだろ?【龍歴院】ってんだが、そこがハンターを募集しているらしいんだ。報酬もでるし、行ってみて損はないだろうぜ?」
アズールが村の向こうを指さし、奏治に提案する。
【龍歴院】の存在は前から知っていたので、奏治は二つ返事で了承した。
「わかった。そこにも行かせてもらう」
「じゃあ案内するです。ミィナについてくるです」
結局、存在しないジパングの事や帰還の方法を聞き忘れてしまったが、自分で思っている以上にこの世界にワクワクしている自分に、まぁ後でいいかと思ってしまう奏治だった。