じゃあ、呪いの虎たち!スタートします!!
それは街を満月の月明かりが煌々と照らす時間帯。誰もないひっそりとした横浜の港。大量のコンテナが積まれているその場所には、ひときわ異なった雰囲気……なんだか近寄ってはいけなさそうな雰囲気……を放つコンテナが群れから外れた獣のように置かれている。そんな獣を遥かに離れた鉄骨の上から見下ろす二つの視線があった。
「なぜ僕がこんな仕事を…ゴホッ…理解に苦しむ」
この青年。黒い外套をまとい乾いた咳をする青白い青年こそが、そこらのチンピラなら名前を聞いただけで三日三晩ねられないどころか飯も食えないといわれる“禍犬”…芥川龍之介である。
「なにをいってるんですか先輩。あのコンテナは首領の私物が大量に入ったコンテナなんですよ?それを守る任務を与えられるということは、それだけの信頼の証ですよ」
「……ゴホッゴホッ…そうか」
そしてこの、眼鏡をかけて薄型端末を確認する金髪の女性…彼女も同じくポートマフィア構成員の一人、樋口一葉。
ポートマフィア…それは夜の支配者。横浜港湾を本拠地とする非合法組織である。横浜の夜は彼らの時間であると言っても過言ではない。その性質は残虐非道で、彼らににらまれてから一週間以上逃げ切ったものは今のところ0である。首領の命令が至上命令であり、目的のために手段を選ばないその行動からは、日本で一番残虐な組織なのではないかと噂されるほどである。
彼らがなぜ真夜中の港の鉄骨の上にいるのか。それはさきほど樋口が言った通り、マフィアの首領“森鴎外”の私物警備の担当になったからだ。(ちなみに月替わりの当番制である)
『まあ、先月の担当だった広津さんも退屈そうにしておられたし…まあそんな楽しいものでもないわよね。』
「………ん?」
薄型端末にコンテナにしかけた数々の監視システムの情報を映し出したモニターをつぶさに観察していた樋口が、不意に声をあげた。
「どうした?」
「いえ…とくに問題は…ただ、温度感知機に少し反応が…小動物かなにかかも…」
「……そうか」
芥川はそれだけ言うと、鉄骨の上から飛び降りた。
「ちょ、なにしてるんですか!!!」
念のため先輩に無線機を持たせておいてよかった…そう思いつつ樋口は自分の持っている無線機に対して怒鳴った。すると、落下によってものすごい風音がなっているにもかかわらず
「……勘だ。いますぐに応援を呼べ」
と答える芥川の声が樋口の耳には届いた。応援を呼べ?あの先輩がそんなことを言うとは…
「…了解しました。いますぐに応援を呼びます。」
「感謝する」
応援といっても今の時間だ。これる人数は限られてくるし面子も多くはないだろう。そうおもいつつこの時間帯に来れそうな人に出動命令を出すように要請した後、樋口は小さく悶えた。
先輩に感謝された……
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芥川が行動にでる3分前。黒ずくめの三人組がひそかにコンテナを狙っていた
「手はずは?」
「順調」
「監視は?」
「あー…いるわ。むこうの鉄骨の上に二人。一人は金髪の二十歳前後の女の人で、もう一人は黒髪の男の人。顔まではわかんない」
「…そうか」
「なーはやく突入してとるもんとってかえっちまおーぜー」
「大声出すな馬鹿」
そんなやりとりをしている。三人とも深夜にうろつくにしては声が若い。高校生だろうか。
「あーもーさいっあく。せっかくの新しい制服なのになんでこんなとこで寝そべって汚さないといけないのよ。しかも今何時だとおもってんの?夜更かしは乙女にとって大敵なのわからないの!?」
本当にいやそうな声で不満を撒き散らしている女性…女子高生?…は、釘崎野薔薇。呪術高等専門学校一年生で、三人のなかの紅一点。ただ少しめんどくさいのが、彼女には不平不満を隠そうともせずに口に出す癖があり、それが周りを困らせる。
「いいから。ちゃんと見てろ。もうすぐ終わる。」
三人のなかで一番頭が切れそうな黒髪の青年。伏黒恵もおなじく高専の一年生。最近よく頭痛に悩まされているらしい。まあ原因はわかっている…
「なあ伏黒。ちょっときいていいか」
「なんだ」
「今って何の時間?」
……こいつのせいだ…呪術高専一年虎杖悠仁は純粋潔白。極端な猪突猛進思考を持っていることが最近判明した。
「何っておまえ…人の話ちゃんときいてろよ…」
「アハハ。ごめんごめん。で、今何してんの?」
「…俺の式神で監視システムを無効化してる。」
「お前そんなことできんのかよ。」
「お前が話しかけてきたら成功率は下がるぞ。」
「………」
静かになった。
『まぁとはいったものの。ここで式神一通り使っちまうわけにもいかないしな…早く無効化しないと、いつ見張りが気付くかわかんねえ』
恵は呪術師のなかでもメジャーな式神使い。だが彼は影を媒体にしているところがほかの術師とは違うところである。
「よしできた。あとは…」
手をあわせて、唱える
『玉犬』
すると、彼の式神である二匹の犬が召喚された。
「アレの場所を探せ。匂いは虎杖のを嗅げばいい」
玉犬はそう指示されると、悠仁の匂いをかぎに行き、そして一直線に走り出した。
「いくぞ」
そういったとき彼の後ろには野薔薇しかいなかった。彼女はあきれ返ったような顔をして前方を見ている。答えのわかりきっている質問をしてみることにした。
「………あいつは?」
野薔薇は何も言わず、前方をあごでしゃくっただけだった。みると、悠仁はもう例のコンテナに玉犬とともに突入していた。
「…まあ、いつものことじゃない」
「…そうだな…」
そういって野薔薇と恵はコンテナに向かって走り出した…
個人的に樋口さんのデレをどうやってだそうかと試行錯誤しました。次回も読んでいただけるとうれしいです。
次回、悠仁と芥川が対面します!!!(たぶん…)