未だに見えぬ朝を乞う 作:明科
皆様ありがとうございます。
目を開けたのはなんとなくだった。
鼻先に何かが触れている様な、そんなくすぐったさを覚えたが故に瞼を開けたのだった。
だが視界が開けて今現在自分が置かれている状況を把握してすぐ、目を開けてしまったことを後悔した。
「···っ、」
余りの驚きに声も出ない。
それもその筈目の前には、ばいーんと表現するのが似つかわしい胸部。
それが自分の顔面に接触していたという事実に、かぁっと頭に血が上る。
兎にも角にもこの状況をどうにかしなければと、首を捻ってみるが体自体を動かすことは不可能らしい。
白いTシャツから伸びる細腕のせいで。
その細腕の持ち主は言わずと知れた、昨晩邂逅を果たした命の恩人たるミメイ=ヒイラギという女だった。
己の頭頂部に顔を押し付ける様にして瞳を閉じ、どこからそんな力がと不思議に思うほど細い腕で己の体を抱きしめて寝息をたてるミメイ。
クラピカは紙の様に無表情な彼女の寝顔を盗み見て、まだまだ起きそうにないと溜め息をつく。
所詮女の力だ、そう高を括ってこの拘束から抜け出そうとの目論見は尽く失敗に終わりそうである。
というより既に失敗した。
動かせるのは首から上と足先のみである。
そこを除いてクラピカの体には自由は与えられていない。
首を動かしてミメイの胸部と自分の顔面を引き離すことには成功したが、今の所それだけだ。
これ以上動くのは正に徒労。
昨晩味わった諦観の念が再び心に湧き上がる。
抱き枕である。
自分は今、ただの抱き枕なのである。
深い眠りについているらしいミメイの抱き枕なのである。
そう形容するのが相応しい。
「少し賢くなったのね。
そう、無駄な抵抗はしない方が良いわ。」
背中に回されていた手がすっと離れ、頭上から密やかな笑いが降ってくる。
「起きていたのか。」
顔の火照りはきっともう収まった、筈だ。
何故か上ずりそうになる声を抑えて、ミメイの顔の方に首を捻る。
「さっきね。」
まだ眠いわ、そう欠伸混じりに呟いたミメイはクラピカの視線を感じて、柔らかに口角を上げた。
「おはよう。体調は良さそうね。
顔色がまともだもの。」
「お陰様でな。それはともかく起きたのなら離れてくれないだろうか。」
がっちりホールドしていたミメイの手は緩んでいるが、僅かに足が絡まっているせいで体を起こせそうにない。
「はいはい。」
仕方ないわね、と呟きながらミメイは上半身を起こす。
その拍子に彼女が身に纏うTシャツがずり落ちて鎖骨まであらわになるのだが、クラピカの視線を気にした様子は全くない。
その上信じられないことに、ベッドから這い出た後迷いなくそのTシャツを脱ぎ捨てる。
クラピカは確信した。
寝惚けた頭でも分かってしまった。
この女は本当に自分のことを女だと思っているのだと。
昨晩の妹に似ている発言からしてまさかと思っていたが、本当にそのまさかだったとは。
もしクラピカが男だと認識していたなら、いくらミメイにとってクラピカが歳下だとしても、流石に同じベッドで寝たり目の前で着替えたりすることはないだろう。
性別を自分から偽った訳でもないのだが、今の状況に少なからず罪悪感を覚えてしまうクラピカ。
彼は真面目な質である。そして少し頭が硬い。
そして少し、ミメイのことを誤解している。
ミメイという女は目の前に男がいようと、それが何人であろうと、着替えやその他の理由により必要であるならば脱ぐ。
躊躇うことなく脱ぐ。
隠すとか隠れるとか、そのようなことは考えない。
柊家による教育、特にそっち系の拷問に対する耐性を付けるための教育の賜物である。
まあそれでも、実は案外気に入っている紐パンのことを指摘された時だけは顔を赤くするのだが。
変な所で乙女らしさの残滓が見受けられるのだ。
「クラピカ、私はもう行くわ。」
あまり見かけない珍しい服───教えて貰った所によるとセーラー服というらしい───に手早く着替えたミメイは脱ぎ捨てたTシャツを拾い上げながら、未だベッドの上に行儀良く座っているクラピカに声を掛けた。
「あ、ああ。」
ミメイの生着替えからそれとなく視線を外していたクラピカは、もう良いかと彼女の方に首を向ける。
「シャワーとトイレはこっちにあるわ。
寒かったら暖炉もばんばん使って構わない。
分からなかったらその式神に聞いて。」
ミメイはクラピカの両肩によじ登る2匹の式神を一瞥する。
式神を撫でているクラピカは預かり知らぬことだが、実の所彼等を顕現させておくのはミメイとしてはとても面倒なのだ。
彼等も元は只の紙とはいえど立派な式“神”である。
維持費としてミメイのオーラを容赦なく食い潰していく。
だがクラピカが彼等を気に入っているし、彼等もクラピカを気に入っているし、何より有事の際にはクラピカを庇う盾ぐらいにはなるだろう。
まだクラピカはミメイの保護下にある。
それならばミメイが彼(女)を守る為に己の労力を割くのは仕方のないことなのだ。
「そうだ、お腹が空いたならキッチンに行ってね。
パンぐらいはあるからお好きにどうぞ。」
壁に立て掛けてあった刀を手に取り、ミメイは自身の長い髪をマフラーの様に首に巻き付ける。
今日は一段と寒そうなのである。
窓から見えた景色は、昨晩降り続いた雪のせいで一面の銀世界。
薄い長袖セーラー服のみを身に纏った体で出てはいけない世界だ。
そんなことはミメイも分かっている。
それ故にクラピカに遠慮せず薪を使うよう言ったのだから。
だが防寒具を持っていないミメイは耐え忍ぶしかないのだ。屋外で。
「お前は食べないのか。」
鍵を手にしてドアノブに手を掛けたミメイをクラピカが呼び止める。
「あんまり時間が無いのよ。誰かさんのせいで寝坊したから。」
そう言いつつも焦っているようには全く見えないが、とクラピカは首を傾げながら、心外だと言う様に少し声を荒らげた。
「わ、私は何もしてないぞ?」
「そうね、貴方は何もしてないし貴方は悪くない。
ただいつもより暖かくて、眠りが深くなっちゃったのよ。」
それだけ、と言い残しクラピカの方を振り返ることなくミメイは出て行った。
がちゃんとドアが閉まる無機質な音が響き、部屋に残されたのはクラピカと2匹の式神。
ミメイが出て行って少ししてから布団から抜け出し、部屋を見渡すクラピカの腹からくぅと情けない音が漏れた。
「パンがあると言っていたな。」
恐らく昨晩食べたあの硬いパンだろうが、無いよりはマシである。
有難いことである。
式神達を肩に乗せたまま、狭いキッチンに足を踏み入れる。
シンクには旧式の電気ポットのみ。
食器などは小さな戸棚の中だろう。
ならばパンは、とシンク脇の引き出しを開ければ袋詰めのパンと僅かな保存食。
どれもこれも一昔前らしさプンプンのパッケージということから、店の在庫整理時にでも安価で買い叩いたものだと推測出来る。
やはりミメイは金銭的に余裕がある訳では無さそうである。
結局何を生業にしているのか聞いていないが、どうせ後ろ暗い仕事だろう。
だというのに何故、自分を助けたのだろうか。
クラピカはそれが不思議だった。
妹に似ているから、と曖昧な様な本気の様な理由を話されたが、果たしてそれは真実なのだろうか。
クルタ族が滅ぼされ、知らない世界に1人放り出され、人間の汚い所ばかり見てきたクラピカは疑心暗鬼気味である。
ただミメイに昨晩指摘された通り、警戒している様な振りをしているがその実全く出来ていないことも自覚していた。
敵か味方かも分からない人間から与えられた食べ物を口にし、共に寝ていたことに気付くことさえ出来ず。
この1年程度で研ぎ澄まされた野生の勘の様な警戒心はすっかりなりを潜めている。
「···本当に何なんだあの女は。」
いとも簡単にクラピカの警戒心を粉砕し、恐怖の様な何かを抱かせながら、それでいて嫌に心惹かれるミメイという女。
未だに素性不明の女。
今の所妹のことが大好きらしいということ、怪力で恐らく戦闘能力は高めであるということしか分からない。
戸棚の中に鍋をはじめとする使われた形跡のない調理器具があるのを発見し、ミメイは料理をしない(出来ない)という(どうでもいい)情報を入手したクラピカは、沸かしたお湯の入った湯呑みと一欠片のパン、それから小さな干し肉を手に暖炉の前に立つ。
気を利かせた式神達が暖炉に薪を投入し、2匹がかりでマッチに火をつけた。
ぼわぁと上がった火の様子を見ながら、湯呑みに浸して柔らかくしたパンに干し肉を挟んだ。
それを口に運んで噛みちぎれば、まあ悪くは無い。
昨晩の具なしスープと硬いパンとどっこいどっこいである。
「お前達の主人はどんな人間なんだ。」
答えられはしないと分かっていたが、暖炉近くで猫の子の様に丸まる式神達に問いを投げかける。
「悪人でも善人でもない、ミメイ=ヒイラギという名の女。
奴隷商人でも金持ちの愛人でもなく、生活は困窮している。
見た所私と余り歳は変わらないだろうが、家族はいないのだろうか。
話していた妹はどこにいるのだろうか。
···分からないな。全く分からない。」
そんな溜め息を漏らしながら暖炉前に蹲るクラピカに、のっぺらぼうの顔を向けてうんうん唸っていた式神達は徐に飛び上がって、ベッド横の棚から1枚の紙を2匹がかりで運んでくる。
これでどうだ、そう言うかの様に胸を張る2匹が運んできた紙をクラピカは手に取った。
「ハンター文字、か?見た所文字表の様だが。
ああなるほど、お前達は文字が分かるのか。」
合点がいったクラピカに早速答える為、式神達は文字表の“は”と“い”をペシペシ叩いた。
この紙はミメイが昔入手した文字表なのだが、未だにハンター文字が怪しくなることがあるミメイはこれを捨てるに捨てられないのだ。
そんな事情を知らないクラピカはこれは便利だと次の問いを口にする。
「あの女に家族はいるのか。」
「いる。」
ぺたぺたと床に敷かれた紙の上を歩き、文字の上で跳ねる2匹。
「どこに?」
「とおい。」
「ならば故郷は?家族は故郷にいるのか?」
「こきょうかぞくいる。とおい。あえない。」
式神達は残念そうに首を横に振る。
「仕事は?」
「ようじんぼ。ばかなぐる。」
「なるほど、用心棒か。どこのだ?」
「まふぃあのとばくじょう。ばかたおす。」
「マフィアの用心棒か···。相当良い腕をしているのだな。」
確かカタナというらしい業物の武器を持っていたが、得物負けしている訳ではなさそうだ。
まあ怪力といい、雰囲気といい、見た目通りの可愛らしい少女でないことはクラピカとて分かっていたのだが。
「歳はいくつだ?」
「じゅうなな。」
多分ね、そんなニュアンスを含ませた様に式神達は紙を叩く。
「私より4歳上か。」
にしては大人びている気もしたのだが。
だがしかし、まだ少女と呼んで差し支えない年齢内らしい。
「くらぴか。」
褒めて褒めて、と顔を擦り寄せながら順番に文字を示す。
「なんだ。」
そんな彼等が可愛らしく、クラピカは犬にやるように頭を撫でてやる。
そうしていれば2匹は顔を見合わせてから、長い文を紡ぐ為に協力して紙上の文字を叩き始めた。
「みめい、さみしい。ひとり。みんないない。さみしい。
だからくらぴかいる、うれしい。」
「···。」
「くらぴか、ばいばいだめ。」
「···あの女も1人なのか。」
故郷は遠く、家族には会えず、いつからかは知らないが1人でいたらしいミメイ。
確かにそれは寂しいことだ。
同族を皆殺しにされたクラピカにもよく分かる。
廃墟となった故郷は遠く、一族は死に絶え、1人で命からがら生きてきた。
「だがあの女は孤独を寂しいと感じる様な女か?」
そんな可愛らしい雰囲気···ではあるが、見た目はそれらしいが、どうにも信じきれない。
「ほんとはさみしい。すなおくない。」
「すなおくない···素直ではないのか。」
「いじぱり。まけずきらい。」
「意地っ張りで負けず嫌い、か。
それは本当か?」
「ほんと。」
ペラペラな頭が取れそうな勢いで頷く。
「そう、なのか。」
信用しきることは出来ない。
心を許しきることは出来ない。
だがもう少し話をしてみたいと、クラピカはそう思った。
────────
「寒かったけど、今日は客自体が少なかったから楽だったわ。」
白い息を吐き出して、暗い夜道の中職場から帰途につくミメイ。
今日も今日とて、朝からずっと住処である小屋に帰ることなく用心棒業に勤しんでいた。
寝坊気味だったせいで朝ご飯を抜いての勤務だったが、途中客からクッキーを貰った為、深夜を回った今の今まで腹はどうにかもっている。
とはいえ柊家での教育のお陰で、何日か飯抜きでもどうにかなるのだが。
「ツナ缶も貰えたし、今夜はこれをツマミに1杯やろうかしら。」
夜空を見あげれば、灰色の雲の切れ間に金の丸。
ふむ、冬の月というのもなかなかどうして乙なものである。
『酒ないよ。』
「気分よ、気分。」
容赦なく水を差してくる鬼宿に、貴方は雅ってものが分からないのね、とせせら笑いを返した。
「よい、しょ。」
賭場の主人に施しとして貰ったツナ缶、それが幾つか突っ込まれたビニール袋を左手に提げて、右手で鍵穴に鍵を差し込んだ。
錠前が錆びているのか、やはり鍵を回すのに結構な力が必要である。
直した方が良いんだろうか、そんなことを考えながらボロい掘っ建て小屋のドアを開けた。
「ただいま。」
さっき賭場で見た時計が示していた時刻は深夜。
どうせクラピカは既に寝てしまっているだろう、そう予想していたのだが、ドアを開けた向こう側は明るい。
「あれ?」
後ろ手でドアを閉め、部屋の中の音を聞き漏らさないよう耳をすませる。
ガチャガチャとキッチンの方が騒がしく、どうやらクラピカはそこにいるらしい。
一体全体何をしているのだろうとひょこりと顔を覗かせれば、クラピカはコンロの火を見て顔を顰めている真っ最中だった。
「何してるの?」
音もなく背後に近付いて耳元でそっと囁く。
クラピカはビクリと肩を揺らし、振り返った顔には驚きで見開かれた目があるが、ミメイが見るにクラピカの反応は悪くない。
ミメイが声を掛けるほんの少し前、何かが近付いていると無意識的に感じていたのは確かだろう。
「い、いたのか···。」
「いたわよ。で、何してるの?」
コンロにかけられているのは、賭場の主人から貰ったもののミメイは触れてもいなかった小さな鍋。
「何か作ってみようと意気込んだ···のだが、大したものは出来なかった。」
「へえ、料理出来るのね。」
クラピカを押しのけて鍋の蓋をパカリと開ける。
その途端キッチンにほんのり溢れ出すのは、塩と砂糖と野菜と肉、それらが入り交じった料理らしい香り。
「スープ、かしら。」
味噌もコンソメもなく、調味料として使えるのは砂糖と塩ぐらいだった筈である。
その為スープの色は無色透明に近い。
恐らく材料として使用したのは干し肉と塩漬けの野菜だろう。
半分程煮崩れて原形を保っていない具から想像出来た。
「湯を沸かして、そこに干し肉や野菜を入れて放置しただけだ。」
恥ずかしいからあまりジロジロ見るな、とミメイを押しのけて鍋に蓋をするクラピカ。
「それでも凄いわよ。クラピカ貴方、料理出来るのね。」
心做しかミメイの目に尊敬の念らしき色が浮かんでいる様にクラピカには見えた。
「母がしていたのを思い出しながら真似ただけだ。」
幼い頃、台所に立つ母の背に纏わりついて、これをやってみたいとまな板に手を出して怒られた思い出。
クラピカにとってもう遠い、遥か遠くにある優しい思い出だ。
「ふぅん、やっぱりそういうものなのかしら。」
ツナ缶の入ったビニール袋をシンクに置きながら、ミメイは興味無さそうに吐き出した。
「そういうもの、とは?」
「······私達が料理出来ないのはやっぱり料理している姿を見たことがないからなのね、って。そう思ったのよ。
やる機会も無かったし、やる必要も無かったからっていうのも勿論でしょうけど。」
手を洗ってから深皿を取り出すミメイの背中。
それが小さく、寂しそうに見えた。今のクラピカにはそう見えた。
昼間に式神達に言われた言葉のせいかもしれない。
一時的な気の迷いかもしれない。
だが確かにミメイの背中は寂しそうに見えたのだ。
そしてそのことが、何故かクラピカにとっても寂しかった。
「ミメイ。」
今まで1度も呼んだことのない、彼女の名を口にした。
「なぁに?」
振り返って2枚の深皿をクラピカに差し出してくる。
その顔は無表情に近く、取ってつけたように口角が上がっているのみである。
「おかえり。」
どうという訳でもない。
この小さな小屋の持ち主であるミメイが帰ってきた。
そこにクラピカは居合わせた。
だから言っただけなのだ。
何も考えず、自然に口にしただけなのだ。
この言葉に特に意味は無かった。
だがこのちっぽけな言葉に、ミメイの瞳は揺らいだ。
昨晩見た儚さやら何やらが入り交じった、目を離せなくなるあの色が瞳に映る。
「···た、だいま。」
そうよね、自然なことよね、そんな言い訳じみたことを呟いて、ミメイは困った様に眉を下げる。
「ああ。」
そんな彼女を安心させる様に、クラピカは小さく頷いた。
「そう···。」
目を伏せて、深皿をクラピカに押し付けて、ミメイはそっぽを向く。
どんな顔をすれば良いのか、というより自分はどんな顔をしているのか、そもそもこの感情は何だ、そんな疑問を隠す様にそっぽを向く。
深皿にスープを盛り付けるクラピカの傍で1人視線を彷徨わせ、無意識的にツナ缶入りのビニール袋を弄る。
久しぶりだったのだ。
ミメイは久しぶりだったのだ。
おかえり、なんて言われたのは。
この世界に来てからは誰にも言われたことは無かったし、真昼やシノアとは半同居生活だった為帰宅時に会う機会も少なく。
だから少し、不思議な気分になったのだ。
『単純。』
小馬鹿にした様な鬼宿の声を振り払い、ミメイはツナ缶を1つ掴んだ。
冷たい。
冷気で冷えきった金属は手が切れそうな程冷たい。
「うるさい。」
『ほんと、単純。』
「···うるさい。」
冷たさを振り払うようにツナ缶を棚に押し込めて、同様に鬼宿も心の奥底に詰め込んだ。
『面白くなってきたなぁ。
まさかこんなに早く兆候が見られるなんて。
やっぱり僕ってあったまいーいっ!』
鎖で雁字搦めにされながらも、鬼は独り嗤った。
即落ち2コマならぬ即落ち1話。