ビルド&プリキュア 〜俺と私が創る未来〜 作:萊轟@前サルン
さんごの家からしばらく歩いて集合場所である"津成木町外れの丘"に着いた。現在は9時48分、みらいはまだいない。
数分後、みらいが戦兎達とは反対の方から歩いてくる。俺の横にさんごがいるのを見たみらいは驚くような顔をしていた。明日は二人きりで過ごそうと戦兎から聞いていたので驚くのも無理はない。
「戦兎……」
みらいは悲しげな表情を浮かべている。だが、その瞳には"哀愁"というのはなく鬼が宿っていた。そして数秒間下を向くみらい。次に顔を上げた時には悲しげな表情が鬼の形相へと変わっていた。
みらいの怒りや憎しみに反応した鬼石がみらいを真っ赤な炎で包んでいき、キュアミラクル インフェルノスタイルへと変身させる。
「みらい、今までお前とちゃんと向き合ってやれてなくてごめん」
「今の私に謝っても無駄だよォ?」
「今のお前に謝らなきゃいけないんだ。だって、その暴走した姿はみらいの心の内に隠れた本当の気持ちが表に現れた姿なんだから」
「はァ?」
「表ではいつも明るいから分かってやれなかった、気付いてやれなかった…だからこそみらいとちゃんと向き合う、その証明を今からする」
戦兎はそう言いながら、タカフルボトルとガトリングフルボトルを取り出し、上下に軽く振ってキャップの位置を合わせてからドライバーに2つのフルボトルを装填する。
『タカ!ガトリング!』
『 best match!』
ドライバーからの音声が鳴り響いた後、戦兎はビルドドライバーのレバーを勢いよく回す。
『 Areyou ready?』
「変身!」
レバーを回すと、前方と後方にスナップライドビルダーが現れる。戦兎は変身!という声を掛けた後、スナップライドビルダーに挟まれて変身する。
『天空の暴れん坊ー!ホークガトリング!イエーイ!』
戦兎はホークガトリングガンを片手に持ち、みらいへと向かっていく。みらいは巨大な炎の剣を生成し、両手に持って向かってくる戦兎を迎えうつ。
戦兎はみらいに近づくが、攻撃をせずにみらいの周りを高速で飛び回り、竜巻を創り出してみらいを高い場所まで吹き飛ばす。
「何のつもり⁉︎」
「みらい…俺と初めて出会った時の事を覚えてるか?みらいが腹へった俺にいちごメロンパンくれたよな!」
「グッ…そんなことは知らない」
「味の感想言えてなかったから今言わせてくれ。すげー美味しかった‼︎」
「…⁉︎」
戦兎は空中で攻撃を受け止めながらみらいに語りかける。みらいは戦兎の言葉を聞いて少し動揺する。
「あと、初めて二人で遊園地に行った日のことは覚えてるか?」
戦兎はそう言いながらみらいの腕を掴んで地面へ向けて投げ飛ばす。投げ飛ばした後、みらいが地面に叩きつけられるよりも先にみらいの下へ行き、みらいを受け止める。
「みらいがジェットコースターから投げ飛ばされた時、こうやって助けたんだぞ?あの日は今までの中で1、2を争うくらい最高な日だったなぁ…」
「…うぅ…‼︎」
みらいはだんだんと正気を取り戻してきている様子だ。それを見た戦兎はもう一押しだと思った。タカフルボトルとガトリングフルボトルを外し、ラビットフルボトルとタンクフルボトルをベルトに装填する。
『ラビット!タンク!』
『bestmatch!』
『Are youready?』
「ビルドアップ!」
『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』
ラビットタンクフォームにフォームチェンジした戦兎はドライバーのレバーを回して必殺技を発動させる。
『Ready go!』
『ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』
必殺技を発動させた戦兎はその場で高く跳び上がり、みらいへ向けて急降下していくが、ライダーキックの威力を弱めるためにみらいの周囲をぐるりと何周か回り、距離を稼いでからみらいの腹部にライダーキックを決める。
戦兎がライダーキックを弱めたおかげかみらいは吹っ飛ばされることなくその場に片膝をつくくらいのダメージで済む。
「そんな法則破りの必殺技で……私を…倒すことなんて出来ない‼︎」
「みらいを倒すつもりはない。俺はみらいに愛を伝えるつもりで必殺技を放ったんだ……愛を伝えるのに法則なんてない」
「……!うぐっ…なっ、なんなの⁉︎私の変身が‼︎」
身体にはあまりダメージを受けずとも蝕まれた精神には大ダメージだったようでみらいは段々と元のキュアミラクルへと戻っていく。証拠に右の瞳だけ紅色から紫色に変わっている。
「……これで終わりだ」
戦兎はそう言いながらドライバーから2本のフルボトルを抜いて変身を解き、みらいの元へ歩いていく。
そして充分にみらいとの距離を詰めた所で左手でみらいの後頭部に触れてその左手を自分の顔に引き寄せる。戦兎はみらいの唇に自分の唇を当てた。みらいが引き剥がさないように後頭部にある左手に力を入れる。
最初の1、2秒あたりくらいは抵抗していたみらいだったがそれ以降は自我を取り戻したのか戦兎の背中に両腕を回し、戦兎からのキスを受け入れる。
「戦兎、ありがとう…!
戦兎との数秒間のキスを交わした後、みらいはその場にゆっくりと背中から倒れるが、地面に身体全体を打つ寸前の所で戦兎がみらいを抱き抱える。
そして戦兎はみらいを抱き抱えたままさんごの方を向いてさんごへこう言った。
「……世話になったな」
「良かったですね…みらいさんと仲直り出来て」
「…そうだな」
さんごは何もないような顔でそう戦兎に言うが表情には複雑な気持ちを感じさせるような"何か"があった。戦兎はさんごにみらいとの関係の修復・進展についての感謝も伝えるつもりだったが"何か"を察して敢えて言わずにこの場を去るのだった。
戦兎は朝日奈家に帰る前に津成木町を一望できるスポットへ行って遅めの朝日に照らされた津成木町を見ながらこう言う。
「俺達の未来はきっと輝かしいものになる」
これにて2人のこの章での物語は終わりを告げるのだった……
一方の一海と幻徳はこの日もことはの捜索をしていた。半ば諦めかけている2人だったが、そんな2人の元に驚きの知らせが入る。
「リコから電話だ」
「リコ、いきなり電話かけてきてどうした?」
「2人とも早く魔法界へ向かってちょうだい!」
「なっ、何だ?何でそんなに慌ててるんだ⁉︎」
「魔法界の街の広場に謎の穴が出現したのよ‼︎」
「…その穴をくぐればことはがいる場所に行けるかもって事だろ?一か八かだけど行ってやるよ」
「ありがとう‼︎それじゃ私は育児に戻るわ!」
一海は電話を切ったあと、リコと話した内容を幻徳に伝える。それを聞いた幻徳は車をフルスピードで津成木市へ向けて走らせていくのだった……