マスター必須技能:コミュ力   作:ブリーム=アルカリ

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すいません。愛用のスマホが没収されてしまいました。
ストーリーが複雑になってきた上に、タイピング速度が落ちたので上手く執筆できません。
それでも付き合っていただけるなら、これからもどうかよろしくお願いします。


素敵な仲間達

「──は、ははは」

 

 これぞまさに運命(Fate)といったところか。僕が一番最初に引いたサーヴァントであった彼が!この世界でも真っ先に助けに来てくれたのだ!!

 

 

「よろしくお願いします!ジルドレさん!」

 

 

「我が剣は貴方の為に。こちらこそよろしくお願いします、マスター」

 

 剣を掲げ、誓う様に宣言するジルドレさん。

 とりあえず自己紹介をするべきだろう。

 

「僕の名前は藤丸立香。不肖の身ですが、貴方のマスターを勤めさせいただきます」

 

「マシュ・キリエライトと申します。よろしくお願いしますね、ジルドレさん!」

 

 二人で挨拶をすると、朗らかな笑みで彼が返す。

 

「私はマスター運に恵まれているらしい。こんな聡明そうな方達に仕える事ができるとは」

 

 キリエライトさんはともかく僕はお世辞だろう。しかしお世辞、と否定できない真実味が彼にはあった。

 これが紳士という奴か。

 

「取り敢えず情報共有をしましょう」

 

 ブリーフィングで聞いた内容と明日の日程を話す。

 

「西暦1341年のフランス、ですか」

 

 神妙そうに、ともすれば鬱々と語る彼。

 

「私はこの為に呼ばれたのかも知れません…」

 

「ジルドレさんと言えば百年戦争での活躍ですもんね。その土地勘と記憶はとても役に立つと思います!」

 

 嬉しそうに語るキリエライトさん。確かにオルレアンにおいて、最も役に立つサーヴァントかもしれない。

 

「私と言えば…ですか…いえ、必ずやお役に立ってみせます」

 

 何か言いかけて口をつぐむジルドレさん。言いたかったのは晩年の彼のことだろうか。

 彼はフランス軍総帥ではなく、【青髭】としての知名度が高い。

 だがそれは彼にとって忌まわしい記憶だ。こちらも詮索するべきではないだろう。

 

「その…ジルドレさん用の部屋にご案内しますね」

 

 微妙な空気になってしまったので、苦し紛れに話題を変える。

 

「なんと!サーヴァントに私室を?」

 

「はい。といっても僕の部屋と同じような余り広くない所ですが…」

 

 善くも悪くも偉業を成し遂げた英雄達に贈るにしては狭い部屋だ。

 

「使い魔に個人部屋とは…カルデアは随分と懐が広いようですな」

 

 どうも僕と彼では少し価値観が違うようだ。サーヴァントの直訳を考えると彼の方が正しいのだろうが、そうはいかない。だれもかれもがジルドレさんと同じように慎ましいわけではないのだ。全うな人間扱いを求める英霊が大半だ。

 それにキャスターは工房が必要だ。そういった不平に先手を打つ形で英霊居住区を作ったのだろう。

 何しろカルデアの令呪には拘束性がない。いざという時の強制退去が召喚式に組み込まれているらしいが…それが起動するまでに起こる被害を考えれば、サーヴァントに気を使うというものだろう。

 

「まあカルデア側もそれだけサーヴァントに期待している、ということでは?」

 

 真正面から考えを言うのもなんだか失礼な気がするのでぼかして伝える。

 そんなものですか、とジルドレさんさんは頷いた。

 

「ここです。他の部屋は空き部屋なので、好きな部屋を好きに使って構わないと思います」

 

 話している内にサーヴァントの居住区画に着いた。他に英霊がいないので、当然他に使用者はいない。

 

「では先にやってきた者の特権ということで…この部屋にいたしましょう」

 

 彼が選んだのは出口に一番近い部屋だった。将来的に出入りする他の英霊で騒がしくなりそうなものだが…

 

「ここなら緊急出動の際もすぐに駆けつけられます。もしものことがあれば遠慮なく呼びつけてください」

 

 …良い人だなあ。軍人気質なだけかもしれないけれど、それでも少し嬉しかった。

 

「…それじゃあまた明日。今夜はくつろいでください」

 

「休息も戦士の努めですからな。マスターもマシュさんも、しっかりと休んでください」

 

 そう言い残して一礼すると、彼は扉の向こうに消えていった。

 

「さて、僕達も帰りましょう。キリエライトさん」

 

「そうしましょうマスター!」

 

 自室へ足を向ける。

 今日位は早めに寝た方がいいだろうか?いやでも礼装とか色々準備しておきたいし…職員の皆さんに挨拶回りするのもいいかもしれない。いや忙しいだろうし迷惑かな。

 

 考えながら歩く僕を、堂々と追ける足音。

 

「…キリエライトさん。貴方の部屋は反対側では?」

 

「一人になりたいんですね!了解しました。おやすみなさい、マスター!」

 

 何故か着いてきていた彼女に確認すると、即座に帰っていった。なんとか返事をして送り出すも、勢いについていけない。

 まさか指摘しなければ着いてきていたのだろうか。特に用事も無いはずだが…

 …指示がないから追従した?そう言えば今日、彼女が何か自発的に動いたのを見ていない。

 微妙に噛み合っていない会話。快諾される命令。指示待機。

 

 ロボット、という単語が頭に浮かんだ。

 

「…いやまさかな」

 

 さっきも言葉にない僕の意思を汲んでくれたし、確実に思考能力が残っている。きっと腕の件の罪滅ぼしなのだろう。

 

 

 

 頭にこびりつく疑念を努めて無視して自室に入る。

 風呂をシャワーだけで済ませ、カバンから取り出した携帯食料を囓っていると、壁に取り付けられた端末が鳴いた。

 オルガからメッセージが届いていた。慣れない操作に苦労しながら通知を開く。

 

『寝る前に暇が出来たら、一人で私の部屋に来てください』

 

 まだ報告すべき事があるのだろうか。メッセージで送ればいいのに、と思いつつ向かうことにした。

 いい加減慣れてきた通路を進み、オルガの部屋を目指す。所長室は、地図を見た限りでは周囲に部屋が少ないところに構えられていた。

 頭痛対策だろうか。風邪の時は周りがうるさいと頭痛がするし、頭痛の時にうるさいと更に痛くなる。彼女のそれは慢性的なものなので、僕とは事情が違うかもしれないが、だいたいそんなものだろう。

 

 着いたのでノックしようとすると扉が開く。そういえば自動だった。

 間抜けな格好で恥ずかしさに立ち尽くしていると、中から笑い声が聞こえた。

 

「ぼーっとしてないで入ってらっしゃい」

 

 恥ずかしいので何もなかったりふりをして中にはいる。仕事が片付いたのだろうか。中にはパジャマ姿のオルガが居た。

 

「用件とはなんですか」

 

 自然とトゲトゲしい声が出る。

 

「誰にも言わないからそんなブスっとしないの!…用件はね、…また少しナカに入らせて欲しいの」

 

 ニヤニヤしながら注意し、その直後に頬を赤らめ、萎らしく照れる。相変わらずの百面相だ。というか人形の体もよく素早く反映できるな。さすが師匠の作品だ。

 

「…ダメ?」

 

「別に構いませんよ」

 

 特に断る理由もないので承諾しておく。前回でコントロールも上達したようだし、最初みたいに混ざりかけることもないだろう。

 さっさと魂を取り込む為にオルガに手を伸ばす。

 

「待って!貴方の部屋でやりましょ!」

 

「ええ?」

 

 ここでは駄目な理由があるのだろうか。

 

「寝る前にってメッセージを送ったでしょ!貴方のナカで私も一緒に寝たいの」

 

 潤んだ瞳で頼みこんでくるオルガ。

 

 …寂しくて一人で寝れないのだろうか?」

 

「べ、別に寂しい訳じゃないわ!?寝ながら今日呼び出したっていうサーヴァントの情報共有をして時間を短縮しようという合理的な目的があるのよ!だから温かさが恋しかったとかそんなことは全く無いしあるとしてもほんのちょっぴり!原子よりも小さいわ!絶対よ!」

 

 どうも心の声が漏れていたようだ。恥ずかしさを誤魔化すようなオルガの畳み掛けを聞き流しつつ考える。

 彼女は今まで一人ぼっちで真面目にオーバーワークをこなしてきたのだ。誰か甘やかす存在が必要だろう。先代甘やかし役は裏切り者だった訳だし。

 

「分かりました。じゃあ行きましょう」

 

 自分も精神的に余裕がない癖に、大人ぶってエスコートする。ホントできるならこっちが甘やかしてもらいたい位なのだが。

 

 

「…手」

 

 オルガが何か呟いた。振り向くと白い手をこちらに向けている。

 

「なんですか」

 

「…握ってよ」

 

 …幼児退行?

 

「恥ずかしいから嫌ですよ」

 

 取り込む時はともかく、必要ないのに他人の、しかも女性の体を触るなんて無理だ。相手が穢れる気がする。

 

「ケチ!」

 

 ポカポカと背中を叩くオルガ。本当は触られるのも穢れが移りそうで嫌だが、彼女の望むままにさせておく。

 

 部屋に着いた後は、特に何かあるわけでなく、オルガを取り込んでそのまま寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…もっと流し込めば、きっと」

 

 


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