マスター必須技能:コミュ力   作:ブリーム=アルカリ

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5日も放置して申し訳ない。
重ねて申し訳ないが今回も内容がないです。


報われる者とその価値もない者

「──戦闘終了です」

 

 決着は直ぐに着いた。予想以上にキリエライトさんが強くなっていた事と、聖女の助太刀があったのが要因だ。 

 盾で貫き、剣で断ち切り、獅子奮迅の活躍を見せるキリエライトさんはとても頼もしかった。…手放しで喜べるものでもないが。

 セイバーさんを温存できたのは大きいが、さっきからパスを通じて凄まじい感情が流れ込んできている。

 彼と聖女を引き合せるのはマズイ気がする。というかマズイ。

 てっきり認識した瞬間に飛び出てくるかと思ったが、彼も自重しているのだろうか。

 

「魔女だ!魔女が出たぞ!」

 

 我先にと逃げ出す兵士さん達。あの健脚ぶりを見るに、怪我人や死者は出なかったのだろう。少し安心した。

 

「…その、場所を変えてお話しませんか?」

 

 苦笑いを浮かべ、遠慮気味に提案する聖女。せっかく守ったというのにこの仕打ちだ。普通なら怒るか嘆く所だが、彼女にそういった表情は見られない。

 

「…だからこそ聖女、か」

 

「?」

 

「いえその提案、お受けします。よろしいですねオルガ?」

 

 オルガから了承を得る。

 取り敢えず近くの森へ向かった。

 

 

 兵士さんとの約束通り、周囲一帯の魔物の拠点となっていた森を掃討した。

 やっと落ち着ける様になったので、大きな岩に腰掛けて話を進める。

 

「私はジャンヌ・ダルクと申します…一応、ルーラーとして現界しています」

 

 

「私の個体名はマシュ・キリエライト。こちらはマスターの藤丸立香!それと今はいらっしゃいませんが、セイバーさんと三人でカルデアという機関からやって来ました」

 

 代わりに自己紹介をしてくれるキリエライトさん。彼女も察したのか、セイバーさんの話題に強く触れなかった。

 

「マスター…この聖杯戦争にもマスターがいるのですね」

 

「いえ、僕達は聖杯戦争への正式な参加者ではありません」

 

 結局戦闘はするから飛び入り参加者枠だろうか。

 

「聖杯戦争ではない…?すみません、私、ステータスも聖杯による知識も乏しくて…何がなんだかよく分からないのです」

 

「というと?」

 

「お恥ずかしい話なのですが…ルーラーの権限であるサーヴァントの感知や令呪。そういったものが一切使えないのです…」

 

 調停者としての役割を全く果たせない、ということか。

 

「ですからきっと…貴方がたの期待する様な【聖女】としては振る舞えないと思います…」

 

 

 

「───いいえ。そんな事はありません、聖女よ」

 

 

 !?

 何か強く思うところがあったのか、今まで姿を現さなかったセイバーさんが姿を見せた。

 

「ジル!?まさかセイバーさんというのは…」

 

「ええ。私です、ジャンヌ」

 

 動揺する聖女と、何か悟った様な雰囲気を見せるセイバーさん。

 その静謐な瞳には、強い信頼が浮かんでいる。

 …いや、いっその事信仰だろうか?

 

「貴女はいつも自身が普通の少女だと卑下する。しかしそんな事はないのです」

 

「で、でも私、サーヴァントとしての記憶も無くて…今の私は本質的には英霊ではないから…」

 

 大きく狼狽する彼女。目はしっかりとセイバーさんを向いているが、手が所在なさげに動いている。

 

「ジャンヌ。貴女は人々によりあんな仕打ちを受けて尚も彼らの為に戦っている。その戦いもまた、感謝されるものではないというのに」

 

 幾ら戦って民衆に尽くしても、結局の所【竜の魔女】という評価から動くことはない。報酬もないのに命を賭して戦うなんて、常人のできることではないだろう。

 

「強いから聖女なのではありません。人々をひたむきに想うその穢れなき心、それがあるからこそ聖女なのです。…そして貴女はその優しさを強く抱いている」

 

 セイバーさんが熱弁を振るい、何かに感じ入った様に静かに目を閉じると、彼女は笑い始めた。

 

「ふふふ。それでも私は自分がただの小娘だと思いますが…きっと、ひょっとしたら、もしかしたら聖女かもしれませんね!だってジルの言う事ですもの」

 

 ここまで言われてまだ認めないルーラーさん。その硬い意思も、聖女たりえる一因に思える。

 

「さあ藤丸さん!もう日も暮れました。後は我々に任せて睡眠をとってください」

 

「ではお言葉に甘えます。…正直、既に半分寝ている状態でして」

 

 レイシフトに戦闘、慣れない土地に言語と疲れる要素が目白押しだ。やはり【藤丸立香】である為には相当なスペックを要求されるのだろう。

 オリジナルは一般人だったはずだが…彼らは山育ちだったのだろうか?

 

「オルガ、代わりに情報の交換と協力の要請をお願いします」

 

『承ったわ。…というか本来、こういうのは指揮官の仕事なのよね』

 

 確かに外部との交渉は最高責任者がすべ──いやもう無理だ。寝る。

 テントを設営するのも億劫なので、最低限必要となる寝袋だけを出す。のそのそと中に入り、内側からファスナーを閉じた。

 

「おやすみなさい」

 

 返事が帰って来る前に、僕の意識は堕ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォオオオオオウ!」

 

「うおっ!?」

 

 視界一杯に真っ白な毛玉。驚いて退かそうとするも、寝袋に邪魔されて腕を動かす事ができない。

 急いでファスナーを下ろすが、その間にも毛玉が顔に迫ってくる。

 

「絶対フォウさんでしょ!もう起きたのでやめてください!」

 

「フォウフォフォーウ?」

 

 制止の声に耳を貸さず、謎のテンションで尻を押し付けようとしてくるフォウさん。過激なモーニングコールかと思ったらそうでもないらしい。一体何がしたいんだ。

 

「というか誰かー!誰か助けてー!」

 

 

 

 

「───マスター!今行きます!」

 

 救世主の声が聞こえた。

 

「キリエライトさん!」

 

 川かなにかに水浴びに行っていたのだろうか。タオルを肩に掛けたキリエライトさんが彼を持ち上げてくれた。

 

「ありがとうございます。助かりました…」

 

「いえ!私はマスターの役に立てるならばなんでもしますので。お気になさらないでください」

 

 ニコリと儚げに微笑んだ後、摘み上げたフォウさんへ顔を向ける。

 

「ダメですよフォウさん。マスターは疲れていらっしゃいます。確かに予定時刻は迫っていますが寝かせてあげないと…」

 

「フォウフォウ?フォウフォフォーウ!」

 

 何か心外な様子でキリエライトさんに訴えていたフォウさんだったが、やがて諦めてトコトコとどこかに去って行った。

 

「いや時間がないなら起こして貰った方がありがたいんですが…」

 

「おや、そうでしたか。では明日から予定時刻になったら起こしに行きますね」

 

 レイシフトに際し、アラーム機能付き時計は持ち込んでいない。僕は割と寝坊するので、その申し出はありがたかった。

 

「できればお願いします」

 

「お任せください!」

 

 朝から元気一杯なキリエライトさん。サーヴァントとはいえ素晴らしいエネルギーだ。

 

「えっと、セイバーさんとルーラーさんは?」

 

「お二人は魔物の再確認に出かけられました」

 

 二人で、という事は思い出話でもしているのかもしれない。セイバーさんが報われると僕も嬉しい。

 それにまだ別れていないと言うことは…

 

「ルーラーさんは協力して頂けると?」

 

「はい。所長の交渉の結果、同行して頂ける事になりました」

 

 よかった。彼女は弱体化してはいるもののそれでも英霊だ。その戦力は高い。

 

「今日はラ・シャリテという街へ向かって情報収集するそうです」

 

「了解しました。じゃあ顔洗ってきますね」

 

 寝袋をしまってキリエライトさんが来た道を辿る。ニ分も経たない内に小川が見えた。昨日気付かなかったのが不思議だが、夕闇に紛れていたのだろう。

 

 両手を浸して水を掬う。左手に広がる痛み。擦り傷からか冷たさからかは分からないが目が覚める。

 顔を流すとすっきりした気がした。ハンカチで水分を拭き取る。

 

「はあ…」

 

 川で顔を洗うなど考えたこともなかった。山篭りさせられた時ですらウェットティッシュを使っていたのに。

 それだけ遠い所に来た、ということだろうか。

 

 元来た道を戻りながら考える。

 そういえば特異点Fから帰還してから願掛けをしていない。第四の壁を壊そうとしたアレだ。そんなものがあるかも分からないが。

 腕と一緒に甘えも斬られたのだろうか。

 そもそも僕が二次小説か妄想か何かの登場人物だったとして何なのか。今僕が感じている痛みは本物だし、僕の認識している世界になんら変わりはない。

 

「いい加減大人になるべきか…」

 

 僕も後数年で成人だ。悲劇のヒロインごっこからは卒業しなきゃいけない。

 現実を見て戦わなければ僕は死ぬ。ついでに人類も皆死ぬ。そうしたら根源でパーティーだ。それだけは絶対に嫌だ。覚悟を決める時が来たのだ。

 

 取り出した旧右手に令呪を一画消費して魔力を貯める。

 灰色に光るその腕は、らしくもない僕を嗤っている様に見えた。




◆主人公は 少し成長した!
 釣られてフォウ君も 少し成長した!
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