マスター必須技能:コミュ力   作:ブリーム=アルカリ

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知らない天井

 目が醒めるとそこは自室ではなかった。

 

 

 

 

──どうしよう。意味が分からない。

 

とりあえず落ち着いて周囲を見渡すと、窓の外には雪景色が広がっていた。真っ白で分かりにくいが山である…と思われる。

 次に頭に違和感を感じて触って見れば防音用のヘッドセットが耳にかけられていた。しかしその厚い防御を超えて低い爆音が耳朶を打つ。

 

 まとめてみると、ここはカルデアへ移動中のヘリの中ということなのだろうか。なんというか、反応に困る。所在なく目線を泳がせているとヘッドセットから声が響いた。

 

「やあ、お目覚めかい藤丸君!」

 

 聞こえた限りだと中年男性だろうか?なかなか陽気な雰囲気持った声である。

 

「ああ、そのえっとはい」

 

「おおっと、ごめんねえ?きっと混乱してるだろう。今説明するよ」

 

 前の座席からニュッと手が飛び出してブンブンと振るわれている。声の主の物だろうか。

 

「私の名前はハリー・茜沢・アンダーソン。あ、覚えなくていいよ!君を送ったら僕は下山するし」

 

「はあ…」

 

 なかなかハイテンションな御仁である。しかし流暢な日本語だ。名前からしてハーフの様だが日本育ちなのだろうか?

 

「私はね〜。君をスカウトした者なんだよ。日本語得意な人が少なかったからそのまま君を案内する事になったんだけどさ。いや〜まさか日本に君みたいな大当たりがいるなんて驚きだよ〜。ボーナスもいっぱい出てさあ!お陰様で新車買っちゃった!ほんとありがとね!」

 

 謎の感謝を受けた。適正者を見つけた事でボーナスがでて、それで新車を買ったということか。その新車は僕の命と引き換えである。せめて大切に使ってほしいものだ。

 

「あっと話戻さなきゃ。今君が勤めるカルデアに向かってるんだけど場所は重要機密でね!寝てる間に運ばせてもらったという訳さ」

 

 どうやら大方予想通りの様だ。

 

「しかし君…なかなかいい趣味してるねえ」

 

「え?」

 

「いや大丈夫さ。私は気にしないよ!でも職場では隠したほうがいいかもね!」

 

 何を言っているかよく分からないがサムズアップしているしたぶん任せとけば大丈夫だろう。

 

 その後もハリー氏のよくわからない話を聞いていると正面の窓から白いバームクーヘンの様な施設が見えた。きっとあれがカルデアだろう。

 

「OK着いた!それじゃあ着陸するよ!」

 

 ハリー氏が叫ぶと丁度パイロットさんが高度を下げ始め、あっという間に地面に近づきヘリポートに着陸した。

 

「じゃあ私達はここまでだ!運が良ければまた会おう!」

 

 そんな言葉を最後に残すと、降りた僕を残してヘリは飛び去って行った。しかし騒がしい人だった。

 ヘリを見送って一息つくと猛烈な寒さが僕を襲った。山の頂上なので当たり前と言えば当たり前であるが恐ろしく寒い。服は寝たときのまま、つまりは普段着である。このままだと本気で死にかねないのでささっと体温上昇の魔術を起動し、目の前の玄関へ急いだ。

 かなり大きな施設に比べ扉はずいぶんと狭い。きっと熱を逃がさない為だろう。近づくと扉は自動で開いた。小走りで中へ入るともう一つ扉が。その扉も抜けるとどこからか声が響いてきた。

 

「──塩基配列 ヒトゲノムと確認」

 

「──霊基属性 善性・秩序と確認」

 

「ようこそ、人類の未来を語る資料館へ」

 

「ここは人理継続保証機関カルデア」

 

「はじめまして。貴方は本日最後の来館者です」

 

「どうぞ、善き時間をお過ごしください」

 

 女性の声だろうか?しかしとても機械的である。AIかなにかといったところだろう。多分返事するだけ無駄だろうが一応どうも、と返しておく。

 

 迎えの一人でもいるかと思ったが誰もいない。いくら数合わせの一般公募とはいえ扱いが雑過ぎないだろうか。

 しょうがないので勝手に廊下を進んでいく。しかしまあSFチックな建物である。建材はどれも滑らかで、おそらくコンクリートではない。風変わりなこの景色は飽きないものでそこまで退屈しない。

 

 

 そろそろ10分は歩いている筈だ。これだけ歩いて人っ子一人いないというのはちょっとおかしくないだろうか。理由を考えあぐねていると、ある記憶が蘇った。そういえばストーリーの最初では所長が演説していた様な気がする。こちらに生を受けてから18年が経っている。序盤のストーリーはほとんど忘れていた。

 たしか管制室が爆破されて全滅だかなんだか。管制室の皆に教えてあげたいが、そんなことをすれば僕も死ぬ。

死は絶対に避けねばならない。悪いが彼らには生贄になってもらおう。

 

「それに管制室どこだか分かんないし」

 

 言い訳をブツブツと呟いて激しい罪悪感を誤魔化しながら歩く。すると向こうから走ってくる小柄な少女が見えた。

 

「あの、もう演説が始まります。急いだ方がよろしいかと」

 

 親切にも忠告してくれたのは髪色や眼鏡。そして何より目につく美貌から我らがメインヒロイン。マシュ・キリエライトで間違いないだろう。

 

「いやあ、僕は着いたばっかりでして。荷物を置いてから向かおうかな…と」

 

「!ではもしかして最後のマスターさんですか」

 

「その通りです…あの僕の部屋知ってたりしません?」

 

「それならばこの廊下をまっすぐ進んで右の突き当りだと思います。あそこはたしか空き部屋でしたので」

 

「これはご親切にどうも。それじゃあ向かうとします」

 

「はい。それでは」

 

 さっと答えてくれる優しいキリエライトさんに感謝して別れ、自室へと急ぐ。

 

 

 

(…女子と話すのめちゃくちゃ久しぶりだわ。昔なら顔赤くなってただろうな)

 

 そんなくだらない事を考えながら。

 

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