マスター必須技能:コミュ力   作:ブリーム=アルカリ

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邪竜と迎撃

 聖女マルタを討った翌日。僕達はリヨンに来ていた。

 

『見るも無惨な廃墟…情報通りね』

 

 オルガの言うように、街は瓦礫の山となっていた。人の気配も全くない。

 

「付近の町の方によると、数日前に魔物による大規模な襲撃があり、守り神が時間を稼いでいる間に全員で逃げ出したとか」

 

 聞き込みした要点をまとめるとこんな感じだ。常人が魔物を相手取れる訳がない。その守り神とやらがマルタさんの言っていた竜殺しの可能性は高い。

 というかジークフリートさんだった気がする。原作の流れを忘れて久しいが、印象に残った所は流石に覚えている。

 

 ジークフリート。ニーベルンゲンの歌に謳われる英雄で、ニーベルンゲン族を征伐して数々の財宝を得た。此度の現界はファフニールを倒す為だった筈だが…

 

 

「本当にいらっしゃるんでしょうか…」

 

 キリエライトさんが溢すのも無理はない。荒れ果てた土地に加え、何かが這い回る音が聞こえる。まさしく死地といった様相だ。

 

「戦闘の音は聞こえませんが…急いだ方がいいでしょうね」

 

 魔力で聴力を強化したが、不快な声や肉を引きずる音以外は静かなものだ。

 

「レーダーはどうでしょうか」

 

『ん〜…微弱だけどサーヴァントらしき反応があるみたい。そこから東側に3kmの地点だね』 

 

 Dr.から返事が返ってくる。感謝の意を示した後、その方向へと進路を変えた。

 

 進む先々に死体があり、しかもリビングデッドと化している。一々相手をするのも面倒なので、魔力だけ吸収して義腕に貯めておく。

 

 ルーラーさんに気づかれても面倒なのでコソコソとやっているのだが、これがなかなか面倒くさい。お陰で当分魔力には困りそうにないが。

 

 

 

 

 道なりに歩いていると、そこそこ大きな聖堂が見えてきた。煤け、血液が所々に付着しており、神聖な雰囲気は感じられない。

 

「Dr.あそこですか?」

 

『確かにその城から反応があるんだけど…もっとヤバイのも反応してるよ!早くそこを離れて!』

 

 聖堂だ、と指摘できない語気の強さ。恐らくサーヴァントだろう。

 

「落ち着いてください!敵サーヴァントは何基ですか!?」

 

 

『サーヴァントじゃないよ!竜だ!!しかもめちゃくちゃでかい!!!』

 

 

 …お、おう。めちゃくちゃでかい竜ね。多分ファフニールだろう。

 

『竜殺しを回収した後、素早く撤退なさい。交戦は許可できないわ』

 

「了解です、オルガ!」

 

 三人をハンドサインで急かして走りだす。

 Dr.と所長の言い争いが風に消えていく。今すぐ逃げるかどうかで口論しているのだろう。

  

 我々は相変わらず遠距離攻撃手段を持たないので、上空から攻撃されれば反撃の術はない。

 本来ならさっさと逃げるべきだが、この機会を逃せば竜殺しは死んでしまう。それになによりオルガの命令だ。逆らいたくない。

 

 

「ハアッ!」

 

 閉じられた門をセイバーさんが抉じ開けた。教会に強行侵入なんて罰当たりだが、そこは目を瞑ってもらうしかない。

 

「どなたかいらっしゃいませんかー!」

 

 皆で声を張り上げ練り歩く。魔力を耳に回しているので、少しでも反応があれば気づくことができるはずだ。

 

 

「…ッ」

 

 

 …聞こえた。痛みに喘いだのだろう。その吐息は苦しげだった。

 

「セイバーさん!その扉お願いします!」

 

「承りました!」

 

 

 ずんばらりんと扉が断たれ、長身の美男、ジークフリートが現れた。

 

 

「なんだ…お前達は…」

 

 

 一見外傷はない。鋼の体故に肉体に傷はつかないのだ。しかし強大な呪いがその身を包んでいた。

 

 

「味方です。竜殺しの依頼に参りました」

 

 痛みに歪む顔が、疑問の歪みに変わる。

 

「竜…?」

 

「とても大きな竜です。彼を倒せるのは貴方しかいません。どうか助力を!」

 

 彼の表情はさらに微笑の歪みへと変わる。

 

「なるほど…その為に俺は召喚された訳だ…いいだろう。できるだけの事はする」

 

「ありがとうございます!我々ではどうしようもなくて…」

 

「気にするな。予想通りならその竜は俺縁の者だ」

 

 魔力ラインを飛ばし、簡易契約を交わす。ついでに貯めに貯めた魔力を流していく。毎日コツコツ令呪を解体した分と、リビングデッドから徴収した分の半分だ。

 

「助かる。だが本調子でない今、すまないが一撃で倒す事はできない。それでもいいか?」

 

 頷きつつ窓を破壊して飛び降りる。その羽音はすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

「████▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━━━――――!」

 

 

 耳を劈く大咆哮。それそのものが兵器のような爆音だが、叫びには怯えが混じっている様な気がした。

 

 

「そのサーヴァントは…!突撃なさいファフニール!生かして帰す訳にはいかないわ!」

 

 竜の魔女の声が聞こえた。やって来たばかりだというのに煽る余裕もないらしい。それほどにジークフリートさんは脅威なのだろう。

 

「やはりファフニール…!すまないが少し時間を稼いでくれ!詠唱に少し時間がかかる!」

 

 そう叫ぶと、ジークフリートさんは剣を構えて何事か呟き始めた。彼の宝具は素早く撃てる方だが、呪いがそれを許さないらしい。

 つまりあの突進をどうにかして防がないといけない。こちらに向かっている以上、閃光弾ではそのまま突っ込まれてしまう。動くこともできない。ならば…

 

「ルーラーさん!」

 

「お任せください!」

 

 大きく息を吸い、一歩前に踏み出す彼女。

 

 

我が神は──(リュミノジテ)

 

 

 胸を張り、堂々と旗を掲げていく。

 

 

ここにありて(エテルネッル)

 

 

 

 

 光。光が僕達を包んでいる。強い光だ。眩しい光だ。《あそこ》と同じ光を超越した光だが…

 

 

 こちらは とても ここちいい

 

 

 

 

 

 

 

「マスター!魔力を回してくれ!」

 

 

 …しまった。呆けていた。

 謝罪しつつジークフリートさんに魔力を送る。

 

「助かる!ここで撃つぞ!」

 

 見上げればファフニールは光に絡めとられている。この好機は逃せない。

 ジークフリートさんが屈むと、剣の柄から蒼い光が溢れ出す。…あれは真エーテル?

 

「邪竜、滅ぶべし!」

 

 光は歪み、撓み、練り上げられて束となっていく。

 

 

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

 

 瞬間、音が飛び空が裂けた。

 

 

 

 

 

「▅▃▄▄▅▅!?」

 

 

 ファフニールの悲鳴で我に帰る。

 先程から高ランクの宝具が飛び交い過ぎて精神が辛い。天使の光だの失われた元素だのとスケールが大きすぎるのだ。

 

 

「やりました!対象の翼が破損しています!」

 

 キリエライトさんの歓声で目を向けると、確かに穴が空いている。それでも飛んでいるのは流石は竜種と言うべきか。…人間かドワーフか巨人の変身した姿らしいが。

 

 

「こんな失態…!私は…!絶対に…!」

 

 空から悔しげな声が響く。どうやら大きな被害を出せたようだ。

 

 

「次会ったら覚悟なさい…!絶対に焼き殺してあげる…!」

 

 

 捨てセリフを残したジャンヌオルタさんを乗せて、ファフニールは西へ飛び去って行った。

 

 

「どうにか…なったようだな…」

 

 絞り出すように呟くと、ジークフリートさんは膝から崩れ落ちた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 ルーラーさんが心配そうに駆け寄る。

 

「問題ない…問題ないがしばらく宝具は使えそうにない…役に立てずすまない…」

 

「いえ、撃退できたのは貴方の力があってこそです…」

 

 セイバーさんも励ますが、ジークフリートさんの体調は思わしくない。

 

「Dr. 彼の呪いを解呪する方法はありませんでしょうか?」

 

 呪術も一通り使えるが、ここまで大規模な呪いで英霊を縛る、という状況は流石に勉強していない。こういう時は体と魔術の専門家に聞くのが一番だ。

 

 

『相当強力だからね…聖人級の洗礼詠唱が複数必要かな…』

 

「聖人級…ですか」

 

 一枠はルーラーさんに埋めてもらえるが、もう一人がいない。そう簡単に現れるような位ではないし、最悪このままで戦ってもらうしかないのだろうか…

 

『そんなに心配顔をしなくても大丈夫さ!今聖杯を持っているのは竜の魔女だからね。そのカウンター…まあ抑止力として聖人が召喚されやすくなっているはずさ』

 

 

 …なるほど。ならばガムシャラに歩き回れば見つかるかもしれない。非効率的だがそれが一番だろう。

 

『聖人が召喚されたならば街を護衛している可能性が高いわ。近場の都市から虱潰しに探すべきね』

 

 言われてみれば確かにそうだ。聖人ならば人々を守る為に人口密集地を目指すはず。都市を巡れば一人くらいはいるのではないだろうか。

 

「ではオルガの言う通りに都市を巡っていきましょう!まずはボルドーで!」

 

 反対の声はあがらなかった。




戦闘描写が下手な事も需要がない事も分かっているんですが書くしかねえ!
はやくもっとギスギスさせてえ!
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