Ewigkeit Schlacht   作:羽月天夏(ユキア)

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第一章「復讐 - Rache -」(後半)

 重たい瞼を無理矢理持ち上げると、木が少し開けた場所で眠っていたことに、私は気付いた。

 額のあたりに冷たい温度を感じる。身体中が傷ついたせいだろうか、あちこち熱を帯びていたが、額だけは異様に冷たかった。

 その正体が気になって、私は自分の額に手を伸ばす。手に触れたのは、固く冷たいものと雪解け水。

(氷……?)

 硬い何かは、きっと氷塊だ。その証拠に、私の額の上にはいくつもの小さな氷の塊が乗っかっている。

 起き上がってみると、重力に耐えきれず零れ落ちた氷塊が、服の上に落ちる。服が濡れてしまうのも嫌だったので、氷塊を地面の上に置いておく。

 身体には、まだ痛みが残っている。回復しているわけではなさそうだ。だが、さっきよりは遥かに楽な状態だ。

「一体、誰が私のことを……」

 意識を失う直前、私は誰かの顔を見たような気がする。恐らくは私を助けた人物だろう。もうその時は視界もぼやけていたので、誰なのかを考えても全く分からない。

 カサカサッ。

 ふと、人為的な草音が耳に入って、私は思わず座ったまま身構える。しかし、急に動いたせいか身体に痛みが走り、地面に倒れかかてしまう。

「目が覚めたんですね」

 聞き覚えのある声だった。シュルスとは違う。シュルスに続く、この世界で会う誰か。

 現れたのは────

「ジーン君!」

 過去の戦争で何度か一緒に戦った、ジーンという名の青年だった。私が人間化した状態でい言えば、大体同年代くらいだ。

 彼の姿を見て、いくつか確信したことがある。

 私のことを助けてくれたのは、ジーン君だ。

 私がシュルスに殺されそうになった時、私の身体は誰かの鎖によって移動させられた。あの銀色の鎖は、ジーン君の能力だ。過去の戦争で何度か見た事がある。今回助けられたあの時は、頭が真っ白になっていたから何も思い出せなかったのだ。

「そういえば、なんでこの世界にいるの?ここ、ジーン君の世界じゃないよね?」

「ええ、確かに俺の世界じゃありませんよ。でも…いつの間にかここにいたんです。黒い何かに吸い込まれたと思ったら、この森の中に落とされて……」

 ようやく私と同じ状況の人に会えて、少し安堵した。

 彼も、私とほぼ同じ方法でこの世界にやってきたのだろう。私もここにやってくる直前、確かに何か黒いものが目に映った。

 もしかしたら、他にも誰か同じような状況の人がいるかもしれない。

「誰か他に人はいる?」

「ああ、天華さんと翔藍さんがいますよ。しばらくしたら様子を見に来てくれ、とは言いましたが……」

 カサカサッ。

 ジーン君の言葉が終わらないうちに、また人為的な草音が聞こえてきた。しかも、今回は複数人。

 私は思わず身構えてしまうが。

「あぁ、いたいた!……って、やっぱりユキアだ!」

 草むらの中から出てきたのは、金髪金目の白服の青年────天華だった。彼にも何度か会ったことがあるので、目に映った瞬間彼だと分かった。数か月経った今でも、優しそうな目つきは変わっていない。

「天華君!?じゃあ……」

「当然、俺もいる」

 天華君の後ろを追ってくるように現れたのは、青髪青目の青年────翔藍だ。天華君と同じく、彼も何度か会ったことがある人物である。右手には、一冊の本が抱えられている。前会った時と大して変わらぬ冷静な雰囲気を纏ったままだ。

 天華君と翔藍君が一緒にいるということは、やはり『彼』も来ているのだろうか。

「君たちがいるってことは……ハル君も来てるってことだよね?」

 私は念のために彼らに尋ねる。

 彼も来ているのなら、相当心強い。何度かしか一緒に戦ったことはないが、戦女神の私でさえも凌駕する能力を持つ彼ならば、この事態をどうにかできるかもしれない。

 天華君達の代わりに、ジーン君が私の質問に答えた。

「ハルさんですか……実は俺達も、あの人がどこにいるかよく分からないんですよ」

「えっ!?」

 予想外というわけではなかったが、今は少し困った状況だということを、今更ながら理解した。

「ハルは、今僕達が探してるところだよ。この世界に来た時、確かに一緒にいたんだけど……『この世界を探る』って行ったっきり、戻ってこなくて…」

 失踪の前によくある動機だな、と私は小さくため息をついた。天華君の表情も曇っている。

 確かに前々から、彼がどこかに行ったっきりしばらく戻ってこないということはよくあった。その理由の大半が、「知らない世界に来たらその正体を探る」ことだったりする。私も心配していないわけではなかったが、彼やジーン君達と一緒にいる時は大体戦争の時だったから、探す暇もなかったのだ。

 天華君の隣で、黙っていた翔藍君が口を開いた。

「しかし、何かあったのか?格好がひどいことになってるぞ」

 私に向けられた言葉だと即座に理解した。

 あ、と私は今更思い出す。タイツは穴が開きまくってるし、ジャケットもシャツも砂と泥だらけだ。髪の毛もぐしゃぐしゃになっている。とても、人に会えるような身なりではない。

 急に恥ずかしくなって、私は少しだけ身を縮めて訳を話す。

「……シュルスって奴にやられただけ…直す暇もなかったんだっての…」

「シュルス?誰ですか、それって」

 ああ、そういえば彼らにはまだ何も話していなかった。彼らの今までの言動からすると、自分達が誰によってこの世界に送られてきたのか、恐らく三人は知らないのだろう。仮に知っていたとしても、こうなった経緯と今の状況を話さないわけにはいかない。

「ここに居続けるのも少し危険だし……歩きながら話すよ」

 私がそう提案すると、ジーン君達は少し戸惑ったような素振りを見せながらも、最終的に黙ってうなずいた。

 

 何故このような状態に陥ってしまったのか、私は歩きながら大体の説明をした。

 私達が今いる世界は、つい最近できたばかりの世界で、誰が作ったのかは分からない。私達をこの世界に送り込んできたのは、シュルスという女神の仕業である。

 シュルスは私の世界の神で、終焉を司る女神である。つい最近生まれた女神らしいのだが、彼女の言動や行動がどこか幼くて違和感を感じた。

 彼女は私の世界から、「トイフェル」という人形を持ち去った。トイフェルは私の世界で危険物に認定されている代物で、人形そのものに強大な魔力を秘めている。戦闘機能も備え付けられているトイフェルだが、あまりに力が強すぎて人間にも神にも制御しきれず、トイフェルの力が使われればその場は大虐殺の跡地になってしまうほどである。シュルスはそんなトイフェルを私の目の前で持ち去り、奪い返そうとした私をこの世界に落とした。

 落とされてきた当初、私の周りには誰もなかったし、私の人間としての体力もかなり削られていた。一人で行動している中でシュルスに鉢合わせし、彼女に問い詰めてもそんなに有益な情報は得られず、逆に殺されかけたところをジーン君に助けてもらったのである。

 

「なるほど……ユキアの世界の神だったんだね」

 私が大方話し終わると、天華君が静かにそう言った。声色は冷静だったが、天華君の顔には驚きの色がにじみ出ていた。天華君だけじゃない。ジーン君の顔には焦りが見えるし、翔藍君でさえも冷や汗を流していた。

 当然のことだ。こんな突拍子もない話をされれば、誰だって驚くに決まっている。私だってそうだ。私がジーン君達の立場であったら、きっと驚きの声を上げずにはいられなくなるだろう。

 一通り話を聞いて、翔藍君は呆れた顔をする。

「そんなに危険な代物を追っていたとはな……それなら、何故今まで一人で動いていたんだ?ジーンがいなければ危なかっただろ」

 一人で動いていた理由。そんなものは簡単だ。

「これは私が起こしてしまった戦いなの。だから、私が全て終わらせる。そのつもりだったから」

 それは他の三人だけに向けた言葉ではない。私自身に向けたものでもあった。

 シュルスは私の世界の神だ。トイフェルも私の世界でのみ問題にされている代物だ。ジーン君達の助けを借りなくとも、アイリスやアリアのような、私の世界の誰かに手伝って貰えばいいかもしれない、とは何度か思った。

 だけど、今回ばかりはそうはいかない。私がシュルスの罠にはまったからこの世界にいるわけだし、彼女を取り逃がしたせいでジーン君達を巻き込んだ。ジーン君達だけじゃない。きっと、彼ら以外にもこの世界を彷徨っている誰かがいるかもしれない。

 私のせいで皆が苦しんでいるのなら、私がこの騒ぎを鎮めなければならないのだ。少なくとも、私はそう考えている。

 はあ、とため息が聞こえた。翔藍君のものだ。

「……そんな身体で何ができる?満身創痍なのは分かってるぞ。お前一人で戦ったところで、さっきの二の舞になるだけだ。下手したら死ぬぞ」

「私は死んだって生き返れる。でも、皆は────」

「ユキアさん一人の問題じゃないでしょう」

 ジーン君の一言で、私は何故か黙り込んでしまう。特別強い口調でもなかった。なのに、言葉のみでねじ伏せられたような気がしたのだ。

「巻き込まれてしまったからには、俺達も手伝いますよ。あなたには何度も助けられていますから、その恩返しと思ってくれれば十分じゃないですか?」

 そうだけど、と私は曖昧に答える。自分でも、どう説得すればいいのか分からなくなってきた。私を助けようとする彼らの考えを変えさせるのは、やはり罪悪感がある。

 それに、と天華君が口を開く。

「ユキアだけに任せるのは嫌だからね。僕達だって元の世界に帰らなきゃいけないし、目的は同じだもん。一緒に動かない理由はないよ」

 ちょっと面倒なことにはなるだろうけどね、と彼は余計に言葉を付け足す。

 ────この人達は本当に親切だ、と思った。

 私の世界の人間達は、私のような神に協力してくれる人もいれば、他人事だと思って傍観するだけの者もいる。おまけに、神への協力者などごく少数派だ。何もしないで見ているだけなくせに、文句ばかり言い放ってくる者達ほど厄介で、残酷なものはないだろう。

 だけど、彼らは違う。他の世界の者である私を助けようとしている。端からみればお人好しだろうけど、今の私にとってはとても心強いと思った。

 さっきまで、私は何を馬鹿なことを考えていたのだろう。翔藍君の言う通り、一人で戦ったところでまたやられるだけだ。助けてくれる人がいるのはありがたいことである。助けてほしくても助けてもらえない苦痛と悲しさを、私はよく知っているはずだ。

「……分かった」

 彼らの思いを無駄にはできない。だから、私はそう答えた。

 ジーン君達が、ほっと胸を撫で下ろしたように息をついた。私が思う以上に心配させていたらしい。

「もう、変な心配させないでよね……どうなっちゃうことかと思ったよ」

「ま、俺は知ってましたけどね。心配しなくても、きっと分かってくれるって思ってましたから」

「……俺も、天華ほどは心配していなかった」

 三人の言葉に、私は微笑を浮かべた。やはり、彼らは初めて出会った日から変わっていない。世の中は目まぐるしいスピードで変わり続けていると言うのに、ほとんど変わらないのは賞賛に値するだろう。

 ────この時まで、四人で色々話していたわけだが。

 

 何か、ただならぬ気配を感じた。

 

「……!」

 突然、翔藍君がその場から飛び退き、右手に持っていた本を開いた。…いや、開いたと言うよりは、「開かれた」というべきか。自動的に、本のページがぱらぱらと捲られていく。

「『代行者《電撃》』」

 翔藍君の冷静な声と共に、本から文字通り電撃がほとばしる。雷電は、「何か」に直撃する。

 私達は敵襲だと思い、それぞれ武器を構えたりして戦闘態勢になる。私は戦女神の神剣を、天華君は白い槍────天澪槍を構える。ジーン君も、彼自身の能力である氷を発現させた。

 正体の分からぬものに対して、すっかり警戒態勢になった私達の目の前に現れたのは。

「……シュルス!!」

 両手に人形のトイフェルを抱えた、宙を浮いている白髪の少女。さっき、私を地上へ叩き落とした敵。

 終焉の女神────シュルスが、私達の目の前に現れたのだ。翔藍君が放った電撃を受けたのは、恐らく彼女かトイフェルだろうが、どちらも無傷だ。

「生きていたのね…さすが、『創世の光の戦女神』様」

 シュルスの言葉には、若干ではあるが、やはり子供のような無邪気さを感じる。同時に、私達を陰から監視しているような大きな目も、不気味さを醸し出していた。

 天澪槍をシュルスに向け、天華君は彼女を静かに睨みつけた。

「……お前が、僕達を陥れた奴ってこと?」

「そうだよ。邪魔な人は、皆私が滅ぼすんだから」

 カタカタ、と物音がした。シュルスの腕の中にあるトイフェルが、不自然な動きをしていたのだ。損壊しているロボットが無理やり動くように、トイフェルも望まぬ動きをしているように見えた。

 ────見覚えのある雷電が、私達の目の前に襲いかかってきた。

「『ルクス・リフレクトサークル』!!」

 私は咄嗟に詠唱し、攻撃を反射させるバリアを出現させた。襲いかかってきた電撃は、シュルスとは別の方角の方に飛んでいった。

「さっきの電撃……翔藍さんが放ったものですね」

「あの人形に吸収させた、ということか…やはり、あれは相当危険だな」

 ということは、こちらが攻撃をしてもトイフェルに吸収されて、こちらにその攻撃を返してくるのだ。私が反射できるバリアを張り続けていればやられることはないだろうが、それではどちらかが力尽きるまで攻撃し続けなければならないのだ。おまけにどちらにもダメージがほとんど入らない。

 人数的にはこちらが圧倒的に有利だが、シュルスの力は未知数だ。トイフェルが強力なのは分かるが、やはり戦闘力の大きさが分からないシュルスと一緒にしてしまうと、どう対処すればいいのか分からない。

「……あんたは、何を企んでいるの?私達を殺して、どうするつもり?」

 私は時間稼ぎがてら、シュルスに目的を問い詰めた。答えようが答えられなかろうが、正直どうでもいい。無限ループに相当するような攻撃を続けるくらいなら、答えられる確率の低い問いをした方がいくらかマシだ。

 トイフェルを強く抱きしめて、シュルスはそっと口を開いた。

 

「私は…自由を手に入れるの。誰にも奪われることのない、永遠の自由を……」

 

 永遠の、自由。聞いただけで、私はすぐに胡散臭いと思った。

 自由になること自体は素敵なことだろう。だが、そこに「永遠」という単語が入っただけで、実現することのない虚構と化すのだ。

「永遠、ねぇ。ずっとそうでいられる確証なんかないのに、どうしてそう言えるのかな」

 天華君は自身の武器を下げたが、シュルスを睨む目は変わっていなかった。

 シュルスは私達のうちの誰かに目を向けた。誰に目を向けているのかは、私から見たのでは分からない。

「確かに、永遠なんてないかもしれない……だけど、私はそれでも…永遠の自由が欲しいの。その為なら……何だってするわ」

 そうシュルスが宣言した、その刹那。

 あんなに大事そうに抱きかかえていたトイフェルを、いとも簡単に手放した。天華君達だけでなく、私も驚いた。あの人形を手放して、どうするつもりなのか。

「……私の敵を、あなたの炎で燃やして」

 シュルスの声に反応して、手放されて自立したトイフェルが、眩い閃光を放つ。その光が何故かとても熱くて、太陽の強い光が自分に向かって突き刺さってくるかのようだ。

 ただ確信できたのは、このままじゃまずい────それだけだ。

「『アイシクル・ガードサークル』!」

 青白い冷気を纏った、ドーム状のバリアを張る。さっきのシュルスの言葉通りなら、トイフェルは炎を放ってくるはずだ。ならば、属性的に反対に値する氷を盾にすればいい。

 ────文字通り、紅蓮の炎が私達四人を襲ってきた。

「っ……!?あっつ…!?」

 氷のバリアに直撃してくる炎は、私達の目の前を眩しい赤で覆ってきた。バリアを維持するために魔力を放出する両手に、尋常ならぬ熱が漂ってくる。やけどしてもおかしくないだろう。

「手伝いますよ、ユキアさん!」

 私の隣にジーン君が立って、手の平から冷気を放つ。そうだ、彼の能力は鎖と冷気……私が魔力を弱めてもいいわけではないが、たった一人でバリアを維持するよりはずっと気楽であった。

「……『代行者《氷結》』」

 背後から強い冷気が押し寄せてくる。一瞬態勢を崩しそうになったが、天華君が咄嗟に私の肩を支えた。

「大丈夫?」

 ありがとうという代わりに、私は静かに笑った。ついでに軽く後ろを向いてみると、やはり冷気を追加で放ってくれたのは翔藍君だった。彼の持つ本から青白い光が放たれている。

 トイフェルは大虐殺を平気で行えるような力を有している。大勢の人間を殺せるような存在に、やはり私一人で立ち向かうのは無謀だっただろう。

 だが、今は違う。共に戦える仲間がいる。それがどれだけ恵まれていることか、さっき殺されかけた私にはよく分かる。

 ……しばらく氷のバリアで耐えていると、翔藍君が口を開いた。

「天華、テレポート頼めるか?一旦引くぞ」

「え?……そうだね。このままじゃ、どっかで焼ける」

「それでいいか?二人共」

 私もそれで構わない、と縦に首を振った。ジーン君も、「分かりました」と了承の意を示した。

 確かに、このまま耐え続けても無意味な気がしてきた。トイフェルの魔力がどこまで持つのかは知らないが、シュルスが共にいるのなら正体が不透明で危険だ。一旦退却して、作戦を立てた方がいいかもしれない。

 天華君は槍をどこかにしまう。

 

「『永久《複数転送》』」

 

 温かな光が私達を包んだ時には、目の前が深緑になっていた。あの熱気も、どこかに消え失せた。

 魔力の放出をやめ、私は辺りを見回す。ジーン君、天華君、翔藍君は無事だ。先程までいた森と同じだろうが、森のどこなのかは分からない。ただ分かるのは、自分達が無事にシュルスから逃げて来られたということだ。

「はあ……どうにか助かったね」

 天華君はほっと胸を撫で下ろした。彼のおかげで、あの灼熱の炎から逃れられたのだ。今この瞬間だけは、安心させてもいいだろう。

「しかし……困ったな。ハルもいないし、またあのシュルスに出くわすのも厄介だ。しばらく、この辺りに潜伏していた方がいいかもしれないな」

 本を閉じて、翔藍君がそう提案する。確かに、こんな鬱蒼とした森の中をうろうろするのは自殺行為だ。翔藍君の言う通り、この辺りで休憩や作戦会議などをするのがいいかもしれない。

「そういえば、ユキアさんの身なり直すの忘れてましたね……ロアがいれば復元できるんですけど」

 自分でも忘れていた。自分だけでなく仲間の身も危なかったから、自分にばかり目を向けていられなかったのだ。

 確かに、服も髪もボロボロなままじゃみっともない。髪は自分でどうにかするにしろ、服は魔法でぐらいしか直せない。自分が知っている魔法の中で、復元する術式があったかどうかすら覚えていない。

 どうしようか考えていた時、翔藍君が本を開いた。

「そのくらいなら、俺でもできる。『代行者《復元》』」

 言葉と共に、白い光が私を包む。すると瞬時に、穴が開いていたタイツもボロボロの衣服も元に戻った。

 ようやく、人の前に出られなさそうな格好から逃れられたと言うわけだ。

「す、すご……!ありがとう、翔藍君!」

「……別に、どうってことないだろ」

 照れもしなければ笑うこともしない。思えば、彼が笑うところは見たことがない。常に冷静だし、誰かと話していたとしても真面目そうな話しかしていなかったりする。

 でも、だからといって冷たい人間であるとは限らないのだ。私はそういった人間を何人も知っている。

「これからどうするの?」

 疲れたのか木の根元に座り込んだ天華君が、私達のうちの誰かに聞いた。どうしようね、とかそういう曖昧な返事ばかりが思いつく。

 作戦を立てるのが最適だろうが、私にはまだ気になることがあった。

 

 ────この復讐劇に、何の意味があるのだろうと。

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