その音は月夜と共に   作:神光の宣告者

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先日発売したブリーチの小説の平子の挿絵がカッコよすぎる〜


15話

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現世から西流魂街に降り立った旅禍の一行は西の白道門の番人である兕丹坊を下して瀞霊廷に侵入した。

しかし三番隊隊長の市丸ギンが旅禍と接触し退ける。

その際、旅禍の死亡は確認されなかった。

 

後日、事態を重く見た護廷十三隊総隊長『山本元柳斎重國』は直ちに隊首会を開催し、市丸を問い詰めようとした。

しかしその隊首会の途中に再び旅禍が瀞霊廷内に侵入し、市丸の処分は持ち越しとなり護廷十三隊は戦時体制に移行した。

ーーーー

 

 

ーーー 技術開発局 ーーー

 

「旅禍の中で面白そうな個体はいたかネ?」

「そうですねぇ。この滅却師とその隣にいる女性はどうですか?」

 

マユリは阿近が指差したモニターに目を移す。

そこには鎌鼬の異名を持つ七番隊四席『一貫坂慈楼坊』と旅禍二人の戦闘が映し出されていた。

 

「滅却師の方はどうでも良いがこの女はとても興味深いネ。最高の待遇で迎えよう。」

 

局員たちはマユリの言う『最高の待遇』がどんな酷い扱いなのかわかっていた。

しかしその待遇に同情するような常識に囚われた者などここには居なかった。

皆、それが被検体に対する待遇だと何の疑問もなく思っていた。

そんな狂った連中の中には場違いに気の抜けた声が研究所内に響き渡った。

 

「チッ。またノコノコとここに来たのかネ。やはり普段は冷凍保存しておくべきだったかネ。……いやそれでは魂魄が劣化してしまうか。」

 

声の主たちが研究室に入ってくると半魚人のような見た目をした大男の鵯州が慌てて手に持っていたお菓子を隠した。

 

「あー!今お菓子隠したでしょ。チョーダイチョーダイチョーダイ!!」

 

駄々っ子になって地面を転げ回る少女に筋骨隆々とした大男の拳骨が落とされる。

 

「こら、うるせぇから黙れ。」

 

二人に少し遅れて入ってきた少女は驚いて立ち止まると頭に青筋を浮かべてまくし立てるように早口で言葉を紡いだ。

 

「ホンマに喜助のハゲがいなくなったら昔みたいに戻るか思たらむしろ悪化しとるやないかボケ!!」

 

一気に騒がしくなった研究室でマユリが悪魔のような笑顔でその原因に向き直った。

 

「どうカネ?百年ぶりに蘇った気分は?」

 

大男が面倒臭そうに頭をかいた。

 

「どうもこうも、実感がねぇな。」

「そうかネ。それは良い事ダ。」

 

マユリはその大男の返事を聞いていたのかすら分からない返答をしながら再びモニターに目を移して何やら思案をし始めた。

そして何かいい案が浮かんだのかポンッと手を叩き人の悪い笑みを浮かべる。

 

「早速だ。君たちには瀞霊廷の為に戦ってもらうとするカネ。」

 

マユリは三人にモニターを見せて滅却師の情報を説明する。

一通りの説明を聞いた三人のうち一人が案の定、渡された紙を放り投げてマユリに食ってかかる。

 

「なにが瀞霊廷のために、や!お前の悪事に加担させる気満々やないか!!」

 

怒る少女を止めて大男はため息混じりに諭す。

 

「まぁそう言うな。これでも俺たちの命の恩人なんだ。」

 

 

ーーー 三十分前 瀞霊廷某所 ーーー

 

 

遮魂膜にぶつかり光が四つに分裂した様子を屋根の上から見ていた玄太郎は背後に自分をつけている存在を感じて警戒する。

 

霊圧を視ると自分が知っているような古株ではないことはわかった。

玄太郎はその死神を撒くために移動を開始した。

 

 

✴︎

 

 

玄太郎は謎の追跡者と鬼ごとをしていると思ったよりも相手はしつこく中々振り切ることができずにいつの間にか日が落ちてしまっていた。

途中から追跡者の霊圧が二つになりついに戦闘も視野に入れたが二人の霊圧が徐々に離れていった。

 

一息ついて空を見上げると空には綺麗な満月が浮かんでいた。

無間から釈放されて初めて見る満月。

満月を見ると自然と色々な事が思い出される、夜一や平子たちと過ごした何気ない日々。

しかしそれを知っている人はもう玄太郎の側にはいない。

 

玄太郎はその事実を特段寂しいとは思わない。

何故なら玄太郎にとってこんな事は日常茶飯事なのである。

護廷十三隊が発足し一番隊三席になってから何人もの同僚を斬ってきた。

その中には親しい者もいた。

それでも玄太郎は斬り続けてきた、それこそが玄太郎の死神としての矜持だからである。

たとえ護廷十三隊の皆から恐れられ、恨まれようが山本を守る、それだけが自分を救ってくれた恩人への唯一の恩返しなのだと信じて。

 

「何の用だ。」

 

撒いた二人とはまた違う霊圧が今度は玄太郎の前方からやってくる。

その男は明らかに動揺しており、震える手では斬魄刀も満足に振るうことすらできないのではないかと思われた。

死覇装に身を包み副官章もしていないため下級の隊士であることがわかった。

 

トラとネズミ、例えるならそれ程の霊圧の差があるにも関わらずその男は無謀にも玄太郎に斬りかかってきた。

 

玄太郎は難なくその斬撃を避けて斬り返した。

何の抵抗もできずになくその死神は斬られてその場に倒れた。

傷の深さからして恐らく即死だと思われた。

 

あまりに呆気ない決着に玄太郎は違和感を感じる。

その違和感は案の定的中した。

 

一度撒いたはずの二つの霊圧が再びこちらに近づいて来ていた。

その内の一つが一気に距離を詰めて玄太郎に斬りかかってくる。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

玄太郎はいつものように自信満々の笑みでその斬撃を受け止めようとする。

 

「お前何やって……止めろ!!」

 

しかしその必要は無かった。

その斬撃は追跡者のもう一人が受け止めたのである。

玄太郎は状況が掴めず眉を顰めた。

 

 

ーーー 同時刻 瀞霊廷某所 ーーー

 

 

十一番隊三席『斑目一角』及び同隊五席『綾瀬川弓親』が旅禍と交戦し敗北。

七番隊四席『一貫坂慈楼坊』が旅禍と交戦し敗北。鎖結と魄睡を撃ち抜かれた為、霊圧を失ってしまった。

六番隊副隊長『阿散井恋次』が旅禍と交戦し敗北。重傷で戦線復帰は困難。

隊長格の瀞霊廷内での帯刀及び、全面開放の許可が総隊長より下された。

 

次々と舞い込んでくる情報の渦に飲まれて日番谷は軽い頭痛を覚える。

日番谷は朽木ルキアの処刑から始まる一連の騒動には何か大きな存在の意思のようなものが反映されているのではないか、そう思っていた。

そしてその鍵を握る人物は間違いなく滝玄太郎だと確信していた。

 

「隊長〜どこ行くんですか?」

 

戦時中だというのに呑気にお茶と煎餅をボリボリと食べる乱菊に軽い苛立を覚える。

 

「お前はもう少し、危機感を持て!」

 

乱菊の煎餅を取り上げた。

 

 

乱菊はブーブーと不満を言いながらもはだけた死覇装を直しながら自分も部屋を出る準備を始める。

文句を言いながらも隊長の護衛のために外に出る。

日番谷も文句を言いながらも乱菊を副隊長として信頼している。

この凸凹さこそが十番隊の色なのだと思う隊士は意外と多くいる。

 

「見回りに行くぞ。」

「はい。」

 

 

✴︎

 

 

旅禍が襲来してから最初の夜を迎えた。

戦時中のピリついた空気に合わないほど綺麗な満月が空から瀞霊廷を照らしている。

夜になったが瀞霊廷内では旅禍の襲撃に備えて隊士たちが皆見回りを行なっており騒がしかった。

 

「雛森!?」

 

見回りも兼ねて十番隊隊舎周りを徘徊していた日番谷は屋根の上を走る雛森の姿を捉えた。

月明かりに照らされた雛森は普段からは想像できない真剣な表情をしていた。

 

「松本、お前はそこで待機してろ。」

 

日番谷は違和感を感じて雛森のあとを追う。

 

「どこ行くんだ雛森!!」

 

雛森は日番谷の言葉を無視して瀞霊廷の中心地からドンドンと離れていく。

 

やがて明かりの数も少なくなりすれ違う隊士の数も減っていく。

それでも雛森の歩みが止まる事はなく寧ろさらに速度を上げていっている。

日番谷も置いていかれぬよう雛森に合わせて速度を上げて行く。

 

結局雛森は立ち止まる事はなく、とうとう瀞霊廷の端まで来てしまった。

そこには雛森と日番谷とそして何故か藍染がいた。

 

「おい、どうしてこんな所にいるんだ!?」

 

嫌な予感を感じ取った日番谷は雛森に話しかけるが雛森はその声が聞こえていないように振り返ろうともしない。

日番谷は近づいてようやく雛森の様子がおかしい事に気付いた。

回り込んで正面から雛森を見る。

日番谷は驚愕した、雛森は目から涙を流し明らかに憔悴しきっていたのだ。

 

「ど、どうした……。」

 

雛森は日番谷を無視して震える手で斬魄刀に手をかけると抜き藍染に向かって斬りかかった。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

「お前何やって……止めろ!!」

 

自信満々の笑みを浮かべている藍染を庇うように日番谷は雛森の斬撃を鞘で受け止めた。




種蒔きがある程度終わったのではあとは派手に収穫していきましょうかね。
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