その音は月夜と共に   作:神光の宣告者

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18話

ーーー 瀞霊廷 某所 ーーー

 

 

「おい、ハゲども耳かっぽじってよーく聞けや!死にたくなかったら大人しく降参するんやな!!」

「断る。」

「んなっ!?」

 

猿柿ひよりに投降を勧められた石田はその返答を霊子の矢という形で表した。

その一撃を難なく躱したひよりの側に新たに二人の死神が姿を表した。

 

「面構えだけはちゃんとしてやがる。それだけの覚悟があるなら大人しく降参する筈がないか。」

「行っくよーっ。白〜スーパーキック!!」

 

空中に高く飛び上がり回転しながら繰り出されたキックは目に見えない壁によって防がれた。

 

「三天結盾」

「すごいよ拳西!!何かよくわからないけど弾かれたよっ!」

 

白は自分の攻撃がなぜ通らなかったのかわからず目を丸くしている。

 

「とても興味深い能力ダヨ。」

 

ひよりと拳西の背後からさらに2人の死神が姿を現わす。

1人は毒々しい見た目をしていて、見た目からして只者ではないことがわかる。

 

「何でお前まで来とんねん!うちら3人だけで自由にやれ言うたのはお前やないか。あんっ!?うちらじゃ役不足や言いたいんかおん!?」

 

早口でまくしたてるひよりを煩わらわしそうにしながら涅マユリはゆっくりと石田と織姫に近づいて行く。

 

「あんたがこいつらのリーダーかい?」

「……」

 

マユリは石田の問いかけを無視してなおも2人に近づいくる。

 

「聞いているのか?」

 

石田は弓を引き真っ直ぐにその照準をマユリの心臓へと固定した。

しかしマユリはそんなことは一切気にしていないように石田には視線を向けない。

 

「ひっ……」

 

井上はマユリのねっとりと絡みつくような視線を感じて背筋が凍った。

生まれて始めて感じる強烈な嫌悪感に体が硬直する。

 

「とても貴重な個体ダヨ。できれば無傷で手に入れたいのだが投降してくれないカネ?最高の待遇で迎えよう。」

「悪いね。井上さんを渡す気はないよ。」

 

井上を庇うように石田は前に出て弓を放った。

放たれた高濃度の霊子の弓矢はマユリに届く前に爆散した。

 

「悪いな、滅却師。こいつ守るのが俺たちの仕事なんだ。」

 

拳西は不本意そうに顔をしかめている。

拳西の様子を見て石田は目の前の5人の死神が完璧な協力関係にはないと推測した。

状況によってはこちら側についてくれるのではないか?

石田の頭が猛スピードで回転する。

 

 

「ぶっ手切れーーー

馘大蛇」

 

その石田の思考を遮るようにひよりが死角から姿を現した。

その顔には白い虚の仮面のようなものが付いている。

 

「面白いな。いつから死神は虚の真似事をするようになったんだい?」

「うっさいねん。……うちらも好きでやっとるわけやない。」

 

隊長格が2人に副隊長格が3人か。

石田は自分達の置かれている状況が非常に切迫していることを至って冷静に客観的に認識する。

そして石田はやはり冷酷にこの状況を脱する方法が一つしかないことに気付いていた。

 

石田は両手の散霊手套を丁寧に外し始める。

マユリ達は石田の覚悟に満ちた顔を見て、警戒度を最大限にまで跳ね上げる。

 

「白っ!」

「分かってるよー。」

 

拳西と白も虚化して一斉に石田に襲いかかる。

 

「何する気か知らんけど、やられる前にやったれば問題ないやろっ!」

「私は拒絶する!」

 

白の霊圧をまとった回し蹴りを三天結盾が受け止める。

しかし虚化した白の白打は先程の一撃とは比にならないほど重い一撃だった。

三天結盾にひびが入りいとも簡単に貫通してしまう。

白の白打が届く前に石田は己の奥の手を解き放った。

 

「攻滅却師最終形態」

 

白の足に込められた高濃度の霊圧を吸収した石田は攻滅却師の弓矢『弧雀』を引く。

散霊手套を外し爆発的に霊子集束力を高めた石田の矢の威力は隊長格の卍解に匹敵する。

 

「避けろ、白!」

「そ、そんなこと言ったてムリだよ〜。」

 

拳西も白もこの距離から石田の弓を避けられないことは理解していた。

拳西、ひより、白は即座に生存するための策を考える。

 

「あれ使うぞ。」

「なっ!?」

 

拳西の提案を聞いてひよりは一瞬躊躇する。

その理由は二つある。

一つ目はその策は自分たちの命を託すにはあまりにも付け焼き刃のものであるからだ。

二つ目はその策を使うことは自分の死神として生が終わってしまったことを認めることになる気がしたからである。

しかし背に腹はかえられない。

ひよりは悔しそうに唇を噛みながら自分の霊圧を一点に終結させる。

 

「「「虚閃」」」

 

高濃度の霊圧の塊が放たれた矢と正面からぶつかる。

激しい爆風が吹き荒れる。

その爆風のあまりの強さに井上は吹き飛ばされる。

吹き飛ばされた井上の体は地面に叩きつけられることなく誰かに受け止められた。

 

「ホンマに難儀なことになっとんな。」

 

爆風がようやく収まり石田とひより達の間にはまるで隕石が落ちた後のような大きな深い穴ができていた。

しかし両者の状態は対照的だった。

瀞霊廷のいたるところから常に霊子を吸収している石田は多少息が上がっているが大きな傷は負っていない。

一方のひより達は石田の強烈な一撃を辛うじて退けたに過ぎず、全員傷だらけである。

勝負は既に決していた。

石田はさらに弧雀に手を掛けて奥で不気味な笑みを浮かべるマユリに狙いを定める。

 

「実に素晴らしい。もしも私一人で相手していれば一泡ふかされていたかもしれない。しかしこの私にこれほど長く観察の時間を与えたのは失敗だったネ。」

「それはどうかな?」

 

石田は不敵に笑うマユリを不審に思うがも実際これ以外の攻め手がある訳ではない。

石田は疑念を振り払うように力強く矢を放った。

 

「それ以外の手はないようだネ。残念だヨ。」

 

マユリは刀を抜くと己の斬魄刀の真名を告げる。

 

「卍解ーー『金色疋殺地蔵』」

マユリの背後に芋虫のような巨体が姿を現す。

赤子の泣き声のような不快な声が周囲に響き渡る。

霊子の核弾頭と化した矢が金色疋殺地蔵を襲う。

金色疋殺地蔵は口を大きく開けるとその矢を飲み込んだ。

そして何事もなかったかのように不快な泣き声をあげる。

 

「なん……だと!?」

 

石田は最後の希望までもを失いその場に崩れ落ちる。

マユリは心底つまらなそうに顔をしかめる。

 

「全くガッカリだヨ。いくら霊子を集める力を上げてもそれを纏めて撃つだけでは芸がない。」

 

マユリは勝利を確信したようにゆっくりとゆっくりと歩みを進める。

身構える石田の横を素通りしてその後ろにいる研究対象を探す。

 

「研究対象を渡してくれるかネ?それとついでに研究対象になるかネ?」

「お断りや。オマエなんかに織姫ちゃんを渡したらどんなエッチなことになるか分からへんからな。」

「心外だネ。研究対象として最高の待遇で迎える予定だヨ。」

 

マユリの視線の先には井上を抱えてさりげなく胸の感触を確かめている平子の姿があった。

石田や黒崎がいたら真っ先に平子に怒る場面だが、あいにく黒崎は地下水路で傷を癒しており石田はもはや立てない状態だ。

この状況をいいことに思う存分、織姫の胸を楽しんでいる平子をマユリは舐め回すような見る。

 

「そうかネ。なら仕方ない。」

 

そう言いながらもマユリは胸元から謎の薬品取り出し放り投げる。

しかしその投げられた薬品は平子のいる方向とは反対方向に向かって行った。

 

「ほな、さいなら〜。」

 

平子は『逆撫』をグルグルと回しながら石田とひよりたちを拾い上げてその場からの逃走を図る。

 

追跡するために動き出したマユリは突然足を止める。常に人の悪い笑みをめったに感情を現さないマユリが珍しく困惑の表情を浮かべてた。

ネムは自分の生みの親をまるで敵を見るように冷徹な眼差しで睨みつけている。

自分の最高傑作の異変を感じ取ったマユリは咄嗟に指を弾く。

それが合図となりネムはまるで糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

「まったく、生意気な事をしてくれたネ。」

 

マユリは瞳の奥を烈火の如く輝かせながら心底楽しそうに呟いた。

廃墟となった瀞霊廷に取り残されたマユリの耳元に地獄蝶からの知らせが届く。

 

「全く、護廷十三隊の禁錮には穴でも空いてるのかネ。」

 

知らせを聞いたマユリは投げやりな口調で吐き捨てた。

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

一番隊より各隊隊長に通告。

旅禍と会敵した11番隊隊長更木剣八が瀕死の重体で発見された。

その後懺悔宮に到達した旅禍は6番隊隊長朽木白哉と交戦したが乱入者が入り行方をくらました。

 

この二つの事実が明らかになったのと同時期に禁錮から二番隊隊長『砕蜂』と五番隊副隊長『雛森桃』が脱獄した。

 

最後に

 

 

朽木ルキアの処刑を三日後に行う。

報告は以上である。




お久しぶりです。
次はなるべく早く出せるように頑張ります。
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