その音は月夜と共に   作:神光の宣告者

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6話

ーーー 一番隊隊舎 ーーー

 

 

満月の綺麗な夜、いつものように何も起こらない平和な夜が訪れると護廷十三隊の誰もが思っていた。

しかしそのはかない幻想は瀞霊廷に異常を伝える警報音によって打ち砕かれた。

白羽織を着た十一人の死神たちがその警報音を聞き一斉に一番隊隊舎に向かって移動を開始した。

 

最初に警報音が鳴ってから五分、一番隊隊舎には既に十一人の隊長たちが揃っている。

そして最初の警報音が鳴ってから丁度六分がたった時、十二人目の隊長、浦原喜助が息を切らしながら登場した。

山本は視線だけで浦原に早く整列するように促す。

浦原は慌てて列に加わる。

浦原がまだ息を切らしている中、隊首会が開始された。

 

「知っての通り、魂魄消失事件の調査に向かった九番隊隊長と副隊長の霊圧に異常が発生した。昨日までこの件はただの流魂街の事件に過ぎなかったが今は違う、護廷十三隊の威信をかけてこの件に対応する。」

 

隊長達は皆真剣な面持ちで山本の言葉を聞いている。

隊首会が始まってからずっと切迫詰まった様子である浦原が山本の言葉を遮り手を挙げた。

山本の射殺すような視線を受けても臆することなく進言する。

 

「ボクが現地に調査に行きます。」

「ならん。」

 

浦原の提案は一瞬で却下される。

浦原以外の隊長たちは予想していた展開だったのか、それとも山本の圧力に恐怖しているのか顔色ひとつ変えない。

浦原は一瞬何を言われたのかわからず動きを止めたがすぐに正気を取り戻し山本に嘆願する。

 

「ボクの副官が現場に向かってるんス!」

「喜助!」

 

夜一が険しい表情で浦原を咎める。

浦原は夜一の言葉で我に帰ると辛うじて感情を抑えられるようになった。

夜一は先に隊長になった先輩として古くからの親友に助言する。

 

「情けないぞ取り乱すな!自分で選んで行かせた副官じゃろう!お主が取り乱すのは其奴への侮辱じゃというのが解らんか!」

 

夜一の説教を聞き浦原は押し黙ると一歩下がり列に戻った。

その様子をいつものようにニヤリと聞いていた京楽が励ますように浦原の肩に手を置く。

 

「そんなに心配することはない。既に現地には玄ちゃんが向かってるんだ。」

「玄太郎三席がですか……?」

「そうだよ。何年ぶりだろうね、彼が剣を振るうのは。」

 

京楽は何か遠い過去を見るように目を細める。

京楽の言葉を聞いて浮竹や卯ノ花、古くから隊長を務めてきた者達の表情が少し変わる。

ある者は何かに怯えるような恐怖を、ある者は嫉妬にも似た怒りの感情をそれぞれの胸に抱いていた。

 

「……そう心配そうな顔をしなさんな。信じて待つのも隊長の仕事だよ。」

 

京楽はいつものように影のある笑みを浮かべて隊列に戻った。

浦原によって乱された隊首会の空気が山本の一言によって再び引き締められる。

 

「これより各隊長に今後の命令を下す。皆心して聞くように。」

 

 

ーーー 流魂街・森 ーーー

 

 

九番隊からの救援要請を受けて九番隊のキャンプへ向かったひよりだったが時既に遅し。

キャンプには無数の死体が転がっていた。

ひよりは周囲の状況を確認する間もなく背後から奇襲された。

咄嗟に斬魄刀を抜きその攻撃を受け流せたのはひよりの培ってきた長年の死神としての本能のおかげである。

 

相手の奇襲を退けた。

本来ならひよりが相手よりも精神的に優位に立てる状況のはずだ。

しかし相手よりもひよりの方ひどく動揺していた。

 

そんなひよりの様子など全く気にせず相手はひよりに斬りかかる。

ひよりはひたすら攻撃を受け流すだけで決して自分から攻撃を仕掛けることはない、正確には仕掛けることができないのである。

 

徐々にひよりの体に傷が増えていく。

最初は無視できる軽い傷だったが段々と傷が深くなっていく。

それでもひよりが反撃することはない。

受けた傷は痛みという形で徐々にひよりの体を蝕む。

 

痛みはやがてひよりの判断をほんの少しだけ遅らせることになる。

時間にしてわずかコンマ数秒。しかしその遅れが致命的なものとなってしまう。

 

ーーアカン、間に合わへん

 

ひよりの体は敵の斬撃によって縦に真っ二つに斬られるはずだった。

しかしその刃はひよりには届かなかった。

相手は目の前に現れた新たな敵を警戒して一度距離を取った。

 

「いつものじゃじゃ馬っぷりはどうした。」

 

ひよりが霞む目で前を見るとそこには見慣れた一人の男の姿があった。

 

「なんでここにおんねん、ハゲ。」

「お前こそどうした?柄にもしおらしくなっちゃって。まぁいつもと違うしおらしいお前も可愛いけどな……。」

「……」

 

いつもならここで蹴りをいれるところだが生憎今のひよりにはその力すら残っていなかった。

求めていたツッコミが来なかった玄太郎はつまらなそうにはひよりに背を向ける。

 

「ツッコミも入れられないほど消耗してるようだな。仕方ない、その辺で隠れとけ。」

 

玄太郎はそう言うと剣を構えて獣のような奇声を発している相手と対峙する。

ひよりに斬りかかっていたのは玄太郎が最も裏切る可能性が低いと考え信頼して派遣した男だった。

しかしその姿はいつもの姿とは大分異なっていた。

体の半分以上が虚のような見た目をしていてもはや一目では彼が死神なのか虚なのか判断ができない。

 

ひよりがふらつきながら玄太郎に摑みかかる。

 

「あんた、相手が誰かわかっとんのか?拳西やぞ。」

「だからどうした?」

 

普段の玄太郎からは想像もできないほど冷たい声にひよりは恐怖を覚えて少し離れる。

それでもなおひよりは震える手で玄太郎を止めようとする。

 

「隊士須らく護廷に死すべし、護廷に害すれば自ら死すべし。真央霊術院で習っただろ。」

「せやけど……」

「いい機会だ、おれの本当の仕事を教えてやろう。俺の仕事は死神統括官、護廷に害しながら死ぬことができなかった憐れな隊士をその苦しみから解放してやる事だ。」

 

玄太郎はそう言うとひよりの腹に拳を入れて気絶させた。

玄太郎はひよりを抱えて少し離れた木に寄りかからせると再び拳西の前へ戻ってきた。

 

「待たせて悪かったな。お詫びに最高の音楽を聞かせてやろう。」

 

玄太郎は刀を自分の顔の前に持って行くと静かに己の斬魄刀の名を呼んだ。

 

 

「威を示せ音姫」

 

 

玄太郎の周りから大量の霊圧が放出される。

もし一般の隊士がその場にいれば、失神して倒れてしまうほど高密度の霊圧がその場を支配した。

始解した玄太郎の斬魄刀に目立った形状の変化は見られなかった。

形状は一般隊士が使う浅打と何ら変わらない。しかし様々な部分が普通の浅打とは異なっていた。

玄太郎の持つ斬魄刀の柄は鮮やかな青色だった。そしてその刀身は等間隔で親指大の小さな穴が空いていた。

 

目の前の強大な敵を前に理性を失った拳西は虚のような声をあげながら玄太郎に斬りかかった。

玄太郎は片手で拳西の斬撃を受け止める。拳西と玄太郎の斬魄刀がぶつかり合い激しい金属音を放つ。

その金属音を拳西が聞いた時、彼の全身に無数の切り傷が生じた。

 

「ウガガガガガガガガガガ」

 

拳西は言葉にならない悲鳴を上げて玄太郎から離れる。

玄太郎は斬魄刀をブンブンと回し自信満々の笑みで拳西の様子を観察する。

 

「いい音楽とは人の心を惑わせるとよく言われる。だが千年に一人の天才の俺の音楽はその程度じゃ済まない。俺の音楽を生半可な覚悟で聴くと火傷するぜ。」

 

拳西は正面から斬り合うのは危険と判断したのか左手で玄太郎の斬魄刀を押さえにかかった。

玄太郎はその攻撃をあらかじめ予測していたのか軽い身のこなしで躱すと、拳西の懐に入り斬りつけようとする。

 

しかし玄太郎が踏み込むと同時に背後から何者かが白打を試みる。

玄太郎は咄嗟にそれを受け流し一旦拳西から離れる。

 

拳西をかばうように立つ少女はやはり玄太郎がよく知る人物であった。

 

「悪いな今日はチョコレートは持ってないんだ。」

「……」

 

白も拳西と同じく体の半分以上は虚のような見た目になっており明らかに理性が残されていないことが見て取れる。

玄太郎は表情を一切変えずにまた斬魄刀を構える。

玄太郎の背後から三つ目の巨大な霊圧が突如発生する。

玄太郎は驚いて振り返ると先程気絶させたはずのひよりが立ち上がっていた。

そしてその顔には虚のような仮面が付いていた。

 

「隊長格が揃いも揃って仮装パーティーか!?」

 

玄太郎は斬魄刀で地面を無造作に叩く。

音姫から鈍重な音が森に響き渡った。




オリ主の斬魄刀の初披露となりました。
能力はそのうち説明していこうと思っています。

個人的にオリジナル斬魄刀はブリーチの二次創作の醍醐味の一つだと思うので楽しんでもらえると嬉しいです。
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