事の始まりは中国、軽慶市。
発光する赤子が生まれたことを皮切りに、各地では次々と超常現象と呼ばれる能力を持つ人間が生まれるようになった。
そして世界人口の約八割が何らかの特異体質である超人社会となった現代。
人々の持つ超常の爆発的増加に伴い、それを用いた犯罪も増加していた。
法律ができる速度を無視して増え続けるそれらの犯罪者に対抗するため、同じく超常を使い、犯罪者を捕まえる者たちが現れた。
『ヒーロー』
空想の産物でしかなかった存在が『特異体質』と呼ばれた『個性』を持つ者が成り得る職業となった。
そして……それと対する様に『個性』を犯罪に使う者を人々は『敵(ヴィラン)』と呼んだ。
それが今の世の中である。人はヒーローという職業に憧れ、その道を目指す。間桐狂夜もその内の一人である。
「おい、間桐。何を黄昏てるんだ」
「っと……先生」
今此処は中学校で、狂夜は教室の窓から空を見ていたら後ろから声を掛けられた。振り返れば担任の先生が困った顔をしていた。
「なんすか、先生?」
「なんすかじゃないだろ……お前だけだぞ、進路希望出してないのは」
ああ、そういや出し忘れてたっけ、と狂夜は他人事のように思っていた。狂夜は机の中に入れっぱなしだった進路希望の用紙を先生に渡す。
狂夜が目指す高校は超難関。今年の偏差値は、なんと79にも及び、倍率が300倍と規格外の高校。国立、雄英高等学校。
「雄英か……いいのか?」
「もう決めましたよ。色々言われるだろうけど覚悟の上です」
先生の問い掛けは狂夜の個性を知っているが故である。狂夜の個性はヒーローと言うよりも寧ろヴィラン側だからだ。
「そうか……この学校から雄英に行くのは間桐だけだが頑張れよ」
先生は狂夜の肩をポンと叩くと進路希望の用紙を持って教室から出ていく。
悩むのも今さらだ。帰って受験勉強しよ。筆記の方はギリギリ……多分、アウトだから……と狂夜は自身の成績を嘆いた。
◆◇◆◇
そんなこんなで迎えた受験日当日。狂夜は玄関で靴を履いた後に荷物確認をしていた。筆記用具、受験票、ジャージ、スマホ。忘れ物は無いと確認をするとグッと背を伸ばす。
「狂夜、忘れ物はないか?」
「ん、へーき」
玄関先まで見送りに来た義理の父である雁夜は狂夜に忘れ物はないかと訪ねるが、今ほど確認したので大丈夫な筈と答えた。
「頑張ってください、兄さん!」
「ありがと、桜。少し緊張してるけど頑張るよ」
義理の妹の桜からも激励を受けた。狂夜は桜を安心させる様に笑みを浮かべた。
「まったく……誰に似たんだかな、このブラコンとシスコンは……」
「年上のお姉さんみたいな幼馴染に恋をしていた親父の影響かな」
「わ、私はブラコンじゃ……」
雁夜の溜め息に狂夜は悪戯小僧のような笑みを浮かべ、桜は恥ずかしそうにモジモジとしていた。
「ああ、でも……緊張は解れたわ。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい、兄さん」
いつもの会話に緊張が解れた狂夜は雄英高校へと向かった。
これは『狂化』の個性を持った少年がヒーローになる物語。
『間桐狂夜』
捨て子だった所を雁夜に拾われて間桐家に引き取られる。
良くも悪くもノリが良く、付き合いが良い。
義理の父である雁夜が家にいない為に家事能力に優れている。
『狂化』
狂夜の個性で理性と引き換えに身体能力を向上させる。個性の使用状況によっては完全に理性を失うわけではなく、その際どれくらいの狂化されているかで理性が保てるかが決まる。
例.
狂化5% 軽い興奮状態になる。
狂化30% 単語のみの発言になる。
狂化50% 喋れなくなり、叫び声のみとなる。
狂化80% 敵味方の区別がつかなくなる。
狂化100% 完全に理性を失い、バーサーカーとなる。
個性使用中は瞳が赤くなる。
『間桐雁夜』
狂夜の義理の父。とある理由から狂夜を間桐家の養子とした。普段はフリーのカメラマンで家にいる時間が少ない。
『間桐桜』
狂夜の義理の妹。狂夜の一つ下の年齢。
本当の兄妹同然に過ごしたので兄妹仲は良好。雁夜が家に不在の時間が多い為、間桐家の家事を狂夜と共に引き受けている。ブラコン気味。