雄英が臨時休校となった、その翌日。
「皆!朝のHRが始まる、席に着くんだ!」
「着いてるよ、着いてねーのオメーだけだ」
フルスロットルでクラス全体に指示を出す飯田。呆れたようにツッコミが瀬呂から入る。
「お早う」
チャイムと同時にやって来たのは包帯で顔も両腕もぐるぐるにされているミイラ男だった。気だるげな声と長い髪と服装からその正体は相澤と推測される。
「相澤先生復帰早ぇぇぇぇぇっ!?」
重傷だろうから他の先生が来るだろうという予想を裏切り、遥かに早い復活を遂げた相澤にA組全員が驚愕した。
「先生、無事だったのですね!」
「無事言うんかなぁアレ……」
「いや、どうみても集中治療室行きの患者だが」
「俺の安否はどうでも良い。何より、まだ戦いは終わってねぇ」
飯田は相澤の無事を喜ぶが、麗日は相澤の姿を無事でカウントしても良いかと悩む。狂夜は明らかに無事ではない相澤の姿に、集中治療室行き患者と変わらないと思っていた。
杖も突かずにヨロヨロと歩いて、教卓に立った相澤は、包帯の隙間から、その鋭い眼光を飛ばす。
「雄英体育祭が迫ってる!」
「「くそ学校っぽいの来たぁぁっ!!」」
相澤の発言にA組全員のテンションがMAXになる。雄英体育祭。
それは日本において『かつてのオリンピック』に代わる人気を誇るビッグイベント。全国のトップヒーローがスカウト目的で観ている。
そういった者達の目に止まる為にも張り切らねばならない。
「資格取得後はプロ事務所にサイドキック入りが定石だもんな」
「そっから独立しそびれて、万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそう。アホだし」
上鳴の発言に耳郎のツッコミが入ると狂夜は「耳郎って上鳴への対応が塩だよな」と思っていた。
「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に1回…計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら、絶対に外せないイベントだ」
相澤の発言にA組全員の体育会に対する熱意が上がっていく。午前中の授業が終わり昼休みになると話題は当然、体育祭の事となる。
「なんだかんだとテンション上がるな!」
「活躍して目立てりゃプロへの一歩を踏み出せる!」
切島や瀬呂などはノリノリで体育祭でどう活躍するかを話している。
「あっちはテンションMAXだな。轟は静かに闘志を燃やすタイプか?」
「やるだけやる……そんだけだ」
切島達とは対照的に静かな狂夜や轟。狂夜は『狂化』の事で考え事をしていて轟も何か考え事があったのか、いつも以上に静かだった。
そんな中もう一人、闘志を燃やす者がいた。
「デク君、飯田君……頑張ろうね、体育祭」
「顔がアレだよ、麗日さん!?」
緑谷の指摘通り、麗日の顔は普段のほんわかした物ではなく凄みが増している。
「どうしたの?うららかじゃないよ麗日」
「ややこしいな」
芦戸の発言にやんわりとツッコミを入れた狂夜。
「皆!私、頑張る!」
「おー!けど、どうした?キャラがフワフワしてんぞ!」
ビッと拳を振り上げ、気合いを見せる麗日に切島達は釣られて腕を上げるが、普段とは違う麗日のキャラに戸惑いを見せていた。
昼休みも無限ではない、それぞれが話を切り上げると昼食へと向かう。
「お前、蕎麦ばっかだな」
「ああ……好きなんだ」
ランチラッシュの食堂で狂夜は轟と食事をしていた。狂夜は日替わりセットを頼んだが轟は蕎麦を注文し、ズルズルと啜っている。
「オールマイト、デク君に何の話やったんやろ」
「彼はUSJの時にオールマイトを救おうと飛び出したんだろ?その関係ではないか?それに彼の『個性』もオールマイトに似ていると蛙吹君も言っていたしな」
麗日と飯田の何気無い会話。だが、轟はその会話を注意深く聞いていた。
「どうした、轟」
「いや……なんでも。それよりも間桐、お前体育祭はどうするんだ?個性がまた暴走する心配があるんだろ?」
その様子を不思議そうに見ていた狂夜は轟に話し掛けるが、轟はそれを誤魔化す様に体育祭の話を振った。
「ああ……まあ、個性の方は上手く制御してみるわ。ヤバくなったら、また轟が俺を止めてくれ」
「……ああ、任せろ」
狂夜は『狂化』の事を悩んでいたのも事実だったので、先日のUSJの時に止めてくれた轟を頼る事にしていた。
逆に頼まれた轟の方が狂夜の発言に面食らっていた。